ダーク・ファンタジー小説

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白と黒の境界 【CONNECT】
日時: 2013/02/16 20:48
名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)

はじめまして、和里と申します♪

小説書いてみました!

どこーにでもありそうなタイトルであることは承知しております・・・
で、内容も何処にでもありそ(以下略

 ・・・・・・・。

初心者なので、色々だめなところがあると思うのですが、どうぞよろしくお願いします

なお、更新が遅く、内容が複雑だったりしますがご容赦ください
誤字、脱字あれば教えてください。すぐ直します(多分結構多いと思います(焦))

中傷、荒らしなどは止めてください

あと、私は学生だったりしますので、成績が落ちると更新できなくなる可能性があります!

感想、アドバイスなどのコメントよろしくお願いします!!

最後に・・・・・・・
私なりに頑張っていきたいと思うので、よろしくお願いします♪

白と黒の境界 〜*+序章+*〜 ( No.2 )
日時: 2012/10/15 00:02
名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)



〜+∵ 序 ∵+〜



とても広い平原。見渡す限りの緑色。ここには様々な生き物が生息している。人に危害を加える魔物や、逆に人々が生きていくための糧となる生物もいる。
その南側、癖のあるブルーブラックの髪に金色の光沢を宿す少年、ルキアと金色の髪を少々長めに伸ばした少年、ゼアルがいた。2人は、全長1.5メートル程の魔物に何重にも囲まれていた。その魔物は、柔らかそうな白い毛皮に鋭い爪をもち、今にも襲いかかって来そうな勢いで地面の上を小刻みに跳ねている。

「——まったく、次から次ぎへと…」

2人は先程から、魔物を20匹ほど狩っているが、一向に減る気配がないのだ。それはこの地形も関係あるのかもしれない。ここは森、林とは言い難いが木の集合地帯があちこちにある。そのすべてが巣でもおかしくはない。

ゼアルの両手には変わった形の銃が一丁づつ握られている。そして、ルキアの手には、槍が握られている。

「さっさと殺って、さっさと帰ろうぜッ」

言い終わらない内にルキアは魔物の大群の中で槍を振り回し始めた。その槍の直撃を食らった魔物が後方に吹っ飛んだ。
一方ゼアルは、飛びかかろうとする魔物に銃弾を打ち込んでいく。
その間にも魔物の数は増えている。きりがない。

「あーあ、めんどくせー……」

ルキアが小さくぼやいた。その声はゼアルにも届いたようだった。

「まあそういうな。今日の任務は隊長から直々に頼まれたんだからな…」

きちんとこなさないとな、と隊長の顔を思い浮かべる。

「あと何匹だ?」

「目標値は30匹」

「もう終わってんじゃねぇか!」

魔物に攻撃を与えている武器を操ったまま、ルキアはゼアルに問う。
魔物の数は更に増えている。
この数を2人で片付けるのはさすがに無理そうだ。

「一気に片づけちまおうぜ。」

「お前がやれ」

「いやぁ、無理無理…ダメだって」

「………」

ゼアルは僅かな逡巡の後、魔物から遠ざかる為に後ろへ飛び退る。そして、呆れとも億劫ともつかぬ溜め息をこぼし、右手を前に突き出した。
クリスタルが放出する魔導エネルギーを手に集める。研ぎ澄ませて—鋭い刃。 右手に意識を集中させ、けっして長くない魔法スペルを心の中で素早く唱えた。ゼアルの片手が光を帯び始める。

「全てを貫き打ち砕け……」

ふとゼアルの口が開き、なめらかにその言葉を紡ぎ出す。その瞬間ゼアルの突き出された片手の前に、黄色の複雑な立体魔法陣が形成された。それと同時にルキアを中心に魔物を閉じ込めるように、魔法陣が形成された。

雷鋭雨ライア

そう力強く言い放つと、光を帯びた片手と魔法陣がより一層強い光を放った。
次の瞬間、ゼアルの右手の前に展開された魔法陣から細く光り輝く槍のような物が数十本放たれた。それは魔物を囲む魔法陣の上空で下向きに静止した。
ゼアルは右手を握り、人差し指と中指をあわせ、前に突き出した。

「降れ」

そう告げると同時にそろえた指を下へ振った。
その動きにあわせ、上空で静止していた光の槍が魔物一体一体に降り注ぐ。
それは、ドッという音と共に胴体に食い込み、とたん魔物は感電したように跳ねた。

「ギャンッ!」

魔物はそれぞれ断末魔をあげ、地面に伏してゆく。しばらくの沈黙の後、魔物たちに刺さったままの槍が、ピキッ……パリンッ、と音をそれぞれ発し、砕け散った。その欠片は光の粒子となってしばらく空中を漂っていたが、やがて数を減らし、消滅した。

「やっぱ、すげぇな…」

ルキアはすっかり感嘆した様子で言った。しかし、ゼアルは強い光を宿した黄金の瞳に呆れの色を滲ませる。

「お前は授業を真面目に受けろ」

「めんどーなんだよ…」

ルキアは頭を掻きながら、不満そうに言い返す。

「だが、白兵技術は大したもんだよな」

もう周りに魔物の気配は無くなっていた。ここは魔物すらいなければ、草のそよぐ音しか聞こえない静かな場所だ。何もないため、人も寄り付かない。そのために魔物の出現率が高い。

「新しいのが出てこないうちに帰るぞ」

そっけなく告げると、たかい指笛を吹いた。するとどこからか、クエェ—と言う鳴き声が聞こえた。タッタッ、という軽い足音がふたつ、だんだん近づいてくる。そして、ゼアルとルキアの前でぴたりと停止した。それは、黄金のふさふさした毛におおわれた鳥の様な生き物『ミューカ』だ。
2人はそれにまたがると、更に南に向けて走り出した。

「いま国境あたりでごちゃごちゃしてるっのにこーんなとこで無関係なことしてていいのかよ?」

ルキアが後方を走るゼアルに向かって疑問の声を投げた。

「これも立派な仕事だろ。それに、俺らが行ったって、どうせ無駄死にするだけだ。危ないことは人生経験豊富な大人に任しとくのが一番」

俺らまだ子供だからな、と付け加え、からかい加減に言った。

「そうか?軍隊の奴らだって、魔法使える訳じゃねーんだろ?」

「使えない人がほとんどだろうよ。まあ、全滅はしないだろがな」

「だったら俺らの方が戦力になるんじゃねぇか?」

「どうだか……。それに、今の王は好戦的じゃない」

ゼアルは現王にはあまり好印象を持っていない。だが、この国の軍は厳しい試験、訓練を突破してきたエリートで形成されているため、国境を越えられることはないと信じ切っているらしい。

「俺は出されなくてよかったと思ってるけどな…」

そういう彼の目はどこか遠かった。
森の木々たちがどんどん横を過ぎていく。ゼアルはふわふわの黄金にもたれるように前屈みになった。

頬をなでる風が心地よい。
ミューガは更にスピードをあげ、帰路を急いだ。


*∵*


永久の昔から続く戦乱。勝者なき争い。いまだに終わらぬ戦争。それは神結晶クリスタルの望みとすら云われている。
世界には神結晶クリスタルと言われるものが存在する。神結晶は人々に様々な恵みを与える。その代表的なものが魔力。魔力は人が生活していくためにはとても便利なものだ。
だが、神結晶は恵みを与えるかわりに力を要求した、と古い文書に記載されている。力、すなわち戦うことを要求したのだ、と。
戦争が始まったのはとても昔のこと。300年ほど前。何がきっかけだったのかなど、誰も知り得ない。ゆえに、どうすれば終わるかなど知るものはいない。
しかし、こんな言い伝えがある。
『神結晶の御声聴く者。世界を変化させる力を持つ者。世界に多彩な色。蘇る』
だが、それがどう言うことかは、今では分からない。
神結晶が人に与える恵みのひとつ、魔力。その恩恵を特に強く受けたものは魔法を使うことができ、魔導師と呼ばれる。神結晶に選ばれた者、魔導師は戦の際にはことを有利に運べるため、真っ先に最前線に行かされることが多い。
神結晶は魔導師の中から極めて優れた能力の持ち主に、その者の属性に応じて、ある称号を与えた。
その称号を与えられるのは各国7名。その者たちは各国の守護者と呼ばれ、慕われている。
それぞれの属性は、
空。雷。炎。氷。風。幻。地。

守護者の称号を与えられた者は、その属性に由来する強大な力が与えられる。しかし、守護者に選ばれるのは極めて稀な才能を持つ者のみだ。そんな守護者を所有する国は4つ。この大陸、カネルには国が4つある。
白輝の国、シェルアル。青輝の国、シャナイア。黄輝の国、ミュディア。赤輝の国、リオネル。
白輝、青輝、黄輝、赤輝。これは神結晶が人に与えたもの。半径3.5センチほどの半透明な球体の結晶。これひとつで国全体の生活が支えられている。
この輝石と呼ばれるものには不思議な点がある。輝石にはその国の中枢の人間しか触れることができない。それに、その安置場所と言うのが神結晶のとても近くなのだ。
この大陸にもいささか異様な部分がある。4国は、北にリオネル、南にシェルアル、東にミュディア、西にシャナイア。シャナイアはほとんど島国という感じで、大陸と接している部分が少ない。
その4国の境界線は複雑な形でうねった後、大陸の真ん中で綺麗に円を描くような形でどの線もぴたりと止まっている。その部分は上空からだと、巨大な森の中に黒い穴があって、その中に発光体があるようなふうに見えるだろう。その発光体が神結晶だ。国の境界線は周りの森の外周部で途切れている。この森も異様なことに、綺麗な、少しもずれることのない円形なのだから驚きだ。
神結晶は縦長のひし形のような形をしている。最上部から40センチ程に4国の輝石がふわふわと浮いているのだ。
輝石はその土地が自分たちの物であるという証明でもあるので、その輝石が敵の手に渡るということは敗北を意味する。
この輝石をめぐって時の権力者たちは争った。この争いは輝石を全て手中に収める国が現れない限り続くだろう。
これこそがクリスタルの望みなのだとすると、これは、この世界にかせられた宿命か。

白と黒の境界 〜*+1章+*〜 ( No.3 )
日時: 2012/10/06 19:51
名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)


*∵*


「あちらでは、望むまま、思うままにやってよい」

「わかった」

「だが、無理はするでない」

「分かってる。壊す気はないよ。あの子にはあの子の人生があるからね」

「彼女はそう簡単には壊れまい」

「そうだね。人にしては凄いよね」

「そういうところも含めて、おぬしらは似ている」

「うん。だけど、同じ道は辿らせたくない。私の使命はあの子の未来を見届けることだから」

「それだけでは無いのだろう?」

「……お見通しってわけ?」

「我らが引き起こした事ゆえ」

「…………もう終わったことだよ…」

「とにかく気をつけてくれ。我はいつ何時でもおぬしを見守っている」

「うん。でも行く前に……やることがある」


そして、少女は歩き出す。その瞳に雅な輝きを湛えて。



俺を乗せ、フルスピードで走っていたミューガは若干スピードを落とした。
俺たちの目の前には左右に見渡す限りの城壁が中のものを隠すようにそびえ立っている。そんな一カ所に、よくもまぁこんな立派な物を、と思わせる大門がある。この馬鹿でかい城郭都市が我が国シェルアルの中心部だ。
その門の目の前まで、2人はミューガから降りた。ここからはミューガの乗り入れ禁止地帯だからだ。

「身分証は持っているか?」

ここの門番の兵士が問いかける。この国のシンボルカラーの黒を主とした漆黒の軍服に身を包んでいる。
俺とルキアはそれぞれ細長い半透明の球体にチェーンを通した物を提示した。俺は黄、ルキアは茶だ。

「術徒か、通っていいぞ」

「お疲れさんっ」

そう言って、この門の操作機器のような物を操作した。

俺達が提示した半透明の球体は魔導院の生徒証の様なものだ。これを持っている者は、正真正銘の魔導師ということだ。この球体のことを『パージイクス』という。これは人によって色が違う。術師の性質によって色が変わる。
パージイクスは魔導師の証と共に、自身の命と並ぶくらい大切な物だ。いや、命そのものと言っても過言ではないだろう。
魔導師は皆、生まれつき身体が弱い。その代わり、いや、だからこそ魔法が使えるのだ。これはクリスタルのせめてもの慈悲なのか…。そんなことをするくらいなら、平等に健康な身体を与えてくれ、と思うのだが…。
魔導師は身体が弱い、これは病弱などではない。この世に生まれ出た瞬間、その<時>を生きているのが奇跡なほどに。そんな、生きることを否定されたような身体を支えているのはパージイクスだ。生命活動を支え、他と変わらない生活を送らせてくれる。また、魔法とも関係している。魔導師はそれ無しでも魔法は使える。しかしそれにも限界がある。魔法の密度、威力、精度、効果など。それを更に引き上げる為に必要なのだ。様々な方法でパージイクスを強化する必要がある。強化の仕方が魔導師の実力のひとつだ。またこれで魔法技術だけじゃなく、剣技に対しても同じ事だ。

「俺はこいつら返してから行くから、先いってていいぞ」

「俺に隊長ンとこに1人出行けってのかよ?」

俺はルキアが乗っていたミューガの手綱を掴もうとした手を止めた。

「嫌なのか?」

「あいつとは、合わねぇんだよ」

「合わない?」

ゼアルは頭の中の記憶データをぺらぺらとめくった。思い当たる頁を十数頁発見。

「……まあ、わからなくは無いけど。しょうがないだろ?」

「いや、いやいやいやっ、ムリムリムリっ」

「わかったよ、じゃあ後で一緒に行くから少し待ってろ」

そう言って俺はルキアを置いて歩き出した。




白と黒の境界 1章 ( No.4 )
日時: 2012/10/06 20:01
名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)


<迷子で悪魔の子で災厄の子で…私は悪い子?>

[1]

俺がミューガを牧場に返して戻ってくると、俺が待ってろといった場所から一歩も動くことなく、黒髪が待っていた。さっきの場所というのは、さっきくぐった門の前と言うことだ。そのおかげで俺はルキアのところに行くまでにとてつもなく長い時間を要するはめになってしまった。とゆうのは、ルキアの事だから先に戻っているだろう、と思ってしまい、足で魔導院まで戻ったのだが教室にルキアの姿はなく、クラスメイトに聞いても戻ってないとの事だったので、もしやと思って走ってここに戻ってきたためだ。
まるで主人の帰りを待つ犬みたいだな…。と内心で思いながらルキアになぜ帰らなかったのか尋ねてみた。
そしたら、
「道が分かんなくなった」
ときた。さらには、
「先に戻ったら、隊長に捕まるかもしれねーし」
だ。
確かにルキアが極度な超が10こ位つく程方向音痴だ。それをもっと早く思い出していれば…。俺は自分の判断ミスにがっかりした。
ルキアが方向音痴なのは重々承知しているが、隊長に捕まるかもしれない、と言うのは呆れるしかない。隊長は一応俺たちの院内での生活の責任者で、指導者でもあるのだからもう少し感謝して、とは言わないが、皆の態度があの人に対してぞんざいなのはあまりよくは思わない。
まあ、皆の態度がぞんざいなのは隊長自身の性格のせいなんだろうが…。実際、俺も苦手だ。

「とにかく、帰るぞ」

俺は後ろを振り返り、遙か彼方に見える巨大な宮廷を確認すると、深いため息をついた。


俺が押したでかい扉は重苦しい音を立ててゆっくりと開き、部屋の中を見せびらかせる。
超大量の本棚とそこにびっしり詰まった超大量の本が俺たちを迎え入れた。
馬鹿でかい部屋にびっしりと詰め込められた本棚は、きっと上から見ると迷路だろう。俺も何度か迷ったことがある。

そんな迷路の上見上げて約30メートル。そこに吃驚するぐらい豪華な装飾品で飾り付けられている。——別にこの部屋だけがこれだけ広くて豪奢な訳ではない。この院中が全て、王宮と多少は違えど、全く引けをとらない——この部屋(?)は2階だてで、2階は1階部分の半分の面積だ。
つまり、2階の床があるところ以外は吹き抜け、みたいな感じだ。無論、2階の縁にはきちんと足場が設けられ、その合流地点にはまたまた大きな階段がある。
この部屋ではどこを見ても、本、本、本、もちろん壁も本棚なため、ルキアが参りそうな空間だ。まあ、既に参っているのだが。

「うぅ。目が回るぜ、こらぁ」

そんな部屋の2階へ向かうべく、俺は2階の手すりに目を向けた。

「よし、行くかっ」

隣でルキアがまさか、というような顔をしたが、無視し、実行に移した。

——スパンッ

多少の埃が舞った。
俺はその場で床を蹴り、大きく跳躍した。そして20メートルはあろうかという高さを軽々と跳び、手すりに掴まってそのまま跳び抜いた。
俺は、さっきまで居た場所で立ちったままでいるルキアに軽く手を振って見せた。
ルキアはめんどくさい、というのを顔全面に出して大人しく階段を登り始めた。
ルキアは結構前だが、これに挑戦してたが、思いっきり失敗して頭から真っ逆さまに落っこちた事があるので、もうやりたくないらしい。少しは学習したようだ。
2階の奥には、俺達の隊長の自室がある。ここは、隊長の自室兼図書館なのだ。
ルキアが上がってくるのを少し待ってから、目の前の扉をノック、そして開く。
重々しい音と共に扉が開く。
数歩歩いて一礼する。「失礼します」と素っ気なく、そう遠くはない所に居るはずの上司に向かって声を投げた。

「只今戻りました」

感情を排した機械的な声で告げた。
隊長室。これがまた豪華なものだ。院長室なんかは、王室の奴らの私室と大差は無いほどの物だったのだが。
作業机に座って資料を整理していた紺色のロングヘアーが藍色の瞳をこちらを向いた。

「やあ、遅かったじゃないか、ぷーちゃん、みーちゃん」

ぷーちゃんはルキア、みーちゃんは俺だ。どういう基準でつけたのかは知らないが……。
それを聞いた瞬間ルキアの眉間にしわが寄った。それを見て吹き出しそうになるのを必死にこらえ、話を続ける。

「対象は無事討伐成功。対象の所持物も回収しました」

「そうですか。遅いから心配しましたよ、失敗したのかと。失敗作を育ててしまったとなれば、わたくしの評価はガタ落ちですからねぇ」

そう言って、彼は俺たちに少し黒いような気がする笑みを向けた。
ルキアがイライラするのを背中で感じた。黒髪の心の声が聞こえる気がする。
「(っ誰が失敗作だとこのやろぉぉ。てめぇに育てられた覚えはねぇんだよ!)」
隊長は嫌いだが、ルキアのこんな反応をいちいち見られるのは結構面白いものだ。

「隊長のキタイは裏切りません」

「そうですね(期待、がカタカナなのは気になりますが)。まあそのための君達、というところですからねェ。それで、所持物はどれです?」

隊長はニヤリと笑うと、<所持物>の提出を求めた。
俺は自身が身に付けている黒を基調とした、華奢な装飾が施されている制服に目をやる。これはこの国の軍の制服をもとに作られた物だ。そして、この魔導院の制服でもある。それに付いている内ポケットから所持物を取り出し、提示した。それは、パージイクス。

「ほうっ!まだこれほど綺麗に残っているとは!」

隊長は明るい水色の光を発しているそれを手に取ると、物珍しそうに色々な角度から眺めた。

「あー、君たちはもう帰っていいですよ。報告書の提出を忘れないように、特にぷーちゃん。ぷーちゃんは提出率3%ですからね。成績は最下位ですよ?君もみーちゃんを少しは見習ったらどうです?いつも一緒に居るみたいですしね」

「ってんめッ——ン、ん〜」

俺はついに開いたルキアの口を全力でふさいだ。幸い、隊長は俺が渡したものに夢中でルキアの事は見えていないようだった。

「では、失礼します」

できるだけ感情を排除した声で告げ、部屋をでた。



「いやぁ、今日も面白かったな」

「なにがだよ」

ルキアは拗ねたようすで問い返してきた。

「ルキアがイライラしてるのを前で感じてるのが楽しいんだよ」

さも愉快そうに俺は言った。しかしルキアは、

「ゼアル、お前、趣味悪いな?」

「はははッ、いいだろ?それぐらい」

ルキアが顰めっ面で言ってきたため、俺は思わず吹き出してしまった。
今日の任務だが、かなり昔の下界の人の物らしい。
隊長のノリが「ちょっとお使い行ってきてくれない?そのついでに、目障りな奴ら、殺ってきて☆」……みたいな。とても、大切な物って言うふうには聞こえなかったんだけどな…。

「ったく、あいつは本当っムカつくぜ」

相も変わらずいつものように隊長の悪態をついた。
そんな時、呼び出しのチャイムが高く鳴った。

「生徒No.0105、ゼアル。生徒No.0139、ルキア。至急、調理室まで。至急、調理室まで」

その放送が流れた途端周りの人々の視線が、俺たちに向けられた。

「なっ………あぁ、そう言えば今日の料理当番1組だったな…」

今日の昼飯は何だろ、と付け加え、ルキアの方を見た。特に意味なく視線を投げたのだが、ルキアはビクッと身を硬直させた。

「?…どうした?」

「んな呑気な事言ってないで早く行かないとまずいだろ!シオンにぃー!」

気が進まなかったが、呼び出しをくらってその上遅いとなると、何を言われるかわからない。

「行くぞ。俺は走るぜ」

ルキアは勢いよく右の通路に向けて走り出した。が、

「お、おい!待て!」

俺はとっさにルキアの襟首をひっつかんだ。

「お前、どこいく気だ?調理室は真逆だぞ」

ルキアそのまま引っ張って調理室への道を急いだ。





設定みたいの(一応) >>02

白と黒の境界 ( No.5 )
日時: 2012/10/06 20:02
名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)


シオン、とはルキアの想いを懸けている女性だ。珍しい銀髪に、少々つり気味の深い紫色の眼。かなりの美少女である。クール、とかではなく、元気や可愛いの分類に入るだろう。普段は優しく、いつも周りのひと達を気遣う模範的少女だ。
シオンの戦闘スタイルは女子では珍しい攻撃バランス型だ。バランス攻撃型は、魔法技術、剣術のバランスのとれた型のこと。防御系のスキルも使えるが、それを拝めることはそうそうない。それはめったに傷を負わない、と言うことだ。
勿論、成績は魔導院の中で両の手の指に入る。同じく戦闘技術もだ。先月、魔導院最強の魔導師を決定すべく、トーナメント形式で試合が行われた。それで7位を取った実力者だ。
容姿よし、性格よし、実力よし。3つのよし、が揃っている。その上面倒見がいいため、女子からも男子からも人気が高い。

対するルキアはというと、鋭い黒髪に攻撃的な黒曜石のような黒い瞳。いつも仏頂面で、言葉遣いも多少荒い。そのためライオン的な雰囲気を漂わせている。
気性が荒く、その上バカなため人との関わりがそれほど多くない。まあ、それはルキアの外見的な部分でも原因は有るのだろう。大抵の女子は怖がって近づかない。男子は…よくわからないが、ルキアに近づきたがるのは、よほどの天然か、よほどの物好きか…。ていうと、俺も物好きって事なのか?
ルキアの戦闘スタイルは、超攻撃型。白兵技術に特化した技法だ。
しかし、魔法が苦手なため一般兵と同じような戦闘スタイルになってしまう。そのため、魔導院での成績は結構悪い。魔法を習得しよう、という努力もしない。

全く釣り合いそうもない2人である。シオンは色恋沙汰にはとーっても鈍感だが、付き合うなら、強くて、思いやりがあって、いざってときに守ってくれる人がいいな、とか何とか言ってた気がするから、条件を満たせば不可能では無いだろう。

俺は振り向いてくれない、に賭けようか……。

白と黒の境界 ( No.6 )
日時: 2012/10/06 20:08
名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)



ゆっくりとガラス張りの部屋のガラス戸を開いた。ここが調理室だ。
取り込めるだけ太陽光を取り込める造りになっている。それができるのは、この部屋がこの棟の最上部だからだ。
中ではエプロン姿の男女がせっせと働きアリのように動き回っている。魔導院の全員分の料理を作らなければならないため、大忙しだ。しかも3食。
この仕事はクラスごとの日替わり制で今日の担当クラスは1クラスファースト、俺たちのクラスだ。
魔導院はクラス制で、一年経ったからと言って次の学年へ行ける訳ではない。
その術徒じゅと本人の実力でクラス移動が決まる。
ちなみに、これは2ヶ月に一回ある。番号変えも含めてだが。
この魔導院は、学習量、術徒の実力が一定に達したら卒業となる。
どの国も、戦争の為とかそう言う目的で術徒を育てている。そのため、卒業したら即軍に所属する事が義務づけられている。
術徒は貴重な戦力で、簡単に倒れるようでは困るため、日々の訓練はかなり過酷なものとなる。
魔導師は生き方を選べない。国のために生きている。
ここ7年間戦場いくさばには出ていないが、その間にも過酷な訓練が行われている。

「おそいぞ貴様等」

ガラス張りの戸を開けて、最初に飛んできたのは、委員長系の顔立ちをしたクールな男子だった。

「わりぃわりぃ」

「フン、任務が長引いたのであれば特別だからな。今回は特別無罪だ」

早く手伝え、と付け加え、委員長系のエプロン姿が遠ざかり、忙しそうに動き始めた。
あいつは顔を裏切らず、クラスのまとめ役だ。まとめ役だけに頭が切れる。

「着替えるか…」

俺たちは、エプロンが収納されているはずのロッカーへ早足で向かった。
中から自分の番号(0105)を取り、埃をたてないようにそっとかぶった。

「シオン、俺らは何やればいいんだ?」

俺は遠くからでも十分すぎるほど目立つ銀髪のところまで行き、指示を仰いだ。

「ゼアルは、この山を切っておいて。それで、ルキアは…ん……これが沸騰したら教えて。ゼアルはできるだけ急いでね」

「りょーかい」

この山、ねぇ…。
山は様々な野菜類で形造られている。
この量を切ると思うと気が遠くなる。しかし、近くにあった包丁を手に取ると、俺は山の頂上へ向けて手を伸ばした。
正直なところ、したから取っていって遊びたいところだが、今はそんな事をしている暇はない。
ルキアは鍋の見張りを任され、不満そうだった。


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