複雑・ファジー小説

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*Tarot-Labyrinth*  コメ募集中><
日時: 2011/10/15 15:23
名前: 奏 (ID: mtBKxXTx)

はじめましての方ははじめまして。
二次小説で「悪ノ物語」というものを書かせていただいていた奏(かなで)です^^
そっちが完結したので、今度はオリジナルで書かせていただきます。

ちなみに、複雑・ファジーということなのですが、
80%がコメディ・ライトです。
あまり重い話はないですので、ご安心を´ω`*

■読む前に注意■
・奏のことが嫌いな方は回れ右
・荒らし、中傷目的の方も回れ右
・複雑・ファジーなのに重い展開少ねぇじゃん!ヤダ!って人も回れ右
・更新が休日だけだったりとかが嫌なかたは回れ右
・厨二的なものが受け入れられない方は回れ右
 (↑実は一番重要)


基本金曜・土曜・日曜のいずれかの更新になるかもですが、
気長に待っていただけると嬉しいです。


キャラは多いのでここには書きません^^;

>>1 【主人公級キャラ】
>>2 【敵級キャラ】
>>3 【その他キャラ】

>>6 【用語説明】

Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.74 )
日時: 2011/07/22 21:21
名前: 奏 (ID: QwdVpVQe)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?676949

第42話 清野有花

* 要side

「お兄ちゃーん。」

英語の参考書を食い入るように見つめていた俺に、

突如声をかけてきたのは、

たった1人の妹、有花だった。

「桜ちゃんが、お夕飯できたから呼んできてって・・・。」

桜というのは、いとこであり、清野家の手伝いをしてくれている人物だ。

「・・・あぁ、もうそんな時間か・・・。

 分かった、ここ片付けたらすぐ行く・・・って、桜に伝えて。」

「うん。」



有花、現在楓藍学園初等部3年。

俺たち兄妹は、別段仲がいいというわけではない。

かといって、喧嘩をしたこともない。

それは、俺と有花、そして桜の間にある壁が原因なのか。

その壁ができたのは、もうずっとずっと前のこと。

きっと、この壁を壊すことができるのは、もっと先のことになるだろう。


・  ・  ・


「ごちそうさまでした!

 今日も桜ちゃんのご飯おいしかったよ!」

「そう言ってもらえると、毎日作ってる甲斐がありますー。

 ・・・あ、そういえば有花ちゃん、明日友達と出掛けるんでしたっけ?」

「・・・あ!そうだった。準備しなくちゃ!!」

有花は椅子から飛び降り、自分の部屋がある

2階の階段を駆け上がって行った。

「・・・本当・・・有花ちゃんの笑顔は癒されますね・・・ね?要くん。」

突然桜が話を振ってきた。

「そうか?」

「そうですよー。
 
 ご近所でも評判なんですよー。

 有花ちゃんの笑顔がおば様方にとっては元気の源だそうですよ。」

確かに、毎朝近所の人に

笑顔で挨拶している有花を見かけたことは何度もある。

あれで癒される、というわけか。

「要くんも、あのくらい笑えるようになるといいですね。」

「・・・・・・悪かったな、無愛想で。」

「でも、ずいぶん丸くなったほうだと思います。

 ・・・・・・だって・・・あの時は普通に話なんて出来ませんでしたし・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

桜が何を言いたいのかはよく分かる。

ただ、正直昔のことについては触れたくない。

しばらくの沈黙の後、

俺は、前から気になっていることを桜に投げかけた。

「・・・有花は・・・平気なのかな。」

「え?」

「・・・両親が、いないこと・・・

 帰ってきてほしいとか・・・思ってないのかな。」

「・・・・・・どうでしょうね。

 要くんは、戻ってきてほしいと思うんですか?」

そんなの、悩まなくてもすぐに答えられる。

「そんなこと思わない。」

でしょうねと言わんばかりに、

桜はちいさく微笑み、軽くうなずいた。

「ただ、有花にとって両親はどうだったのかなと思って。

 ・・・あいつが寂しい思いをしてるなら、考え直そうと思ってさ。」

俺がそう言うと、

一瞬にして桜の顔が苦々しいものに変わった。

「・・・寂しい思いをしてたとしても・・・

 あの人たちがここに帰ってきてくれるなんて思えませんよ。」

分かりきっていたことだった。

あの人たち・・・俺らの親は、

俺らのことなんて、今頭にないだろう。

生活費を送ってきてはいるものの、

それはただの偽善に過ぎない。

俺も有花も、

両親からの愛情など受けていない。

有花は、それでもまだ修復可能だった。

だからこそ、今の笑顔が評判な有花がいる。

俺の修復には・・・

とてつもない時間をかけた気がする。

少なくとも、公園で“アイツ”に出会うことが出来ていなかったら、

笑うことを少しでもしなかっただろう。



「・・・要くん、今は、この生活を続けてみませんか?」

「・・・・・・あぁ。」

有花に問いただしたところで、

あいつは「大丈夫」としか言わないだろう。

本当、今思うと親に似てない。

俺にも、ぜんぜん似てない。

怜菜たちに俺の場所を聞いたあの日、

俺と有花が似てない、というようなことを言われたらしい。

俺らにとっては心臓に悪い話だ。

どう答えていいものか困る。

有花には、本当のことを言わないように言っている。

だから、きっと・・・

俺と、有花と桜・・・そして“アイツ”以外、

誰も知らないだろう。





俺と有花の血が、繋がっていないことを。



Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.75 )
日時: 2011/07/24 15:43
名前: 奏 (ID: c6qcjh7E)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?678050


真里亞キャラ絵です。


順番で行ったほうがいいかなーとも思いましたが

真里亞は結構出演回数多いのでww

あと敵キャラも好きなのでww


それから、合成後の姿についてなんですが、
各キャラ(合成してないキャラも)
ほんの少しだけ右側に描きます(すぐに消します。)

時間かけると姿がばれるんで
超絶雑に描きますww

Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.76 )
日時: 2011/07/27 00:18
名前: 奏 (ID: 6JEcwaCG)


第43話 太陽

* 要side

有花が生まれたとき、俺は最初から“兄貴”だったから、

連れ子どうしで引き合わせるより、幾分かギクシャクした感じはなかったが、

俺はその頃、自分の母親が亡くなった悲しみと、

父親がすぐに有花の母親と再婚してしまったショックで

ずっと内気なまま、家族と関わりを持とうとしなかった。

だから幼い頃、兄貴としての振る舞いをしたことはほとんどない。

家にちょくちょく来ていた桜にも、そして桜の両親にも、

俺は心を開こうとしていなかった。

そんな俺を、今の状態まで変えてくれたのが“アイツ”———・・・

いや、この話はまた今度にしておこう。


とにかく、俺と有花は本当の兄妹ではない。

そして現在、俺たちの両親は不在。

戻ってくる可能性は、0に近い。

その代わり、いとこである桜が住み込みで手伝っている。

俺の家の事情は、そんなところだ。

詳しいことは後で話す。




「ただいまぁー。」

有花の声が家の中に響いた。

「おかえりなさい。楽しかったですか?」

「うん!あのねー、ひぃちゃんがバスの中でねー」

2階の自分の部屋にいるというのに、

有花の楽しげな声はまる聞こえだ。

それにしても、勉強開始して2時間か・・・。

そろそろなんか飲みたい。

そう思った俺は1階に降りることにした。


「あ、お兄ちゃん、ただいまー!」

「おう、お帰り。」

降りてきた俺に気づいたのか、有花が笑顔を向けてきた。

桜が有花に続いて声をかける。

「有花ちゃん、続きは部屋着に着替えてからにしましょうか。

 その服じゃ窮屈でしょうから。」

確かに、有花の着ていた服はよそ行き用というか・・・

少なくともいつもよりおしゃれなものだった。

それを気遣っての桜の言葉だろう。

「・・・あ、そうだね。」

有花はすぐさま2階に駆け上がっていった。



「要くん」

俺がペットボトルに入ったジュースに口をつけていると、

まるで有花がいなくなるのを見計らっていたかのように、桜が声をかけてきた。

「・・・ん?」

「あの、有花ちゃんのこと・・・昨日のことなんですけど。」

「・・・うん。」

「あくまで私から見ての考えですが・・・

 有花ちゃん、両親のこと、気にしてないと思います。」

「なんで?」

「・・・有花ちゃんの笑顔は偽物じゃありません。

 空元気というわけではないと思うんです。

 それに、私と要くんとの生活も、楽しんでるみたいですし・・・。」

桜は怜菜並みにドジだったりするが、

ここらへんはさすが大人。

しっかりした考えを持っている。

「・・・有花に聞いてみないと分からないさ。

 だけど、有花がもしも寂しい思いをしていたとしても、

 俺たちにはどうすることも出来ないだろう?」

「・・・そう・・・ですけど・・・。」

「俺たちには、俺たちなりにやるしかないんだよ。

 有花にとって楽しい生活にしてやれれば、それで・・・。」

それを聞くと、桜は柔らかく微笑んだ。

「・・・さすが、“お兄ちゃん”ですね。」

「からかってんのかー?」

桜は違いますよーといいながら

クスクスと笑っていた。

「そういえば要くん。無理しなくていいんですよ?」

「何が?」

「バスケ・・・部活、正式入部しても・・・。

 わざわざ早く帰ってくることも・・・。

 私は要くんに、やりたいことをやってほしいんです。」

「そうもいかないだろ。」

確かに今、バスケ部に正式入部していない。

たまに練習に参加したり、助っ人として試合に出るくらいだ。

俺も、バスケはしたいし、“アイツ”に教えられたバスケを手放したくない。

ただ、桜ばかりに家のことを任せるわけにも行かない。


「桜ちゃーん。お話の続きー!」

階段をトタトタと有花が下りてきた。

「あ、はいはーい。」

「じゃあ俺は部屋に戻るから。」

有花が、部屋に戻るため、階段に向かう俺とすれ違う。

そのとき俺は気づいてしまった。


さきほどまで感じなかった気。

いや、すでに以前からあったが、俺が気づけていなかったのかもしれない。

その気は、感じることに慣れてしまった「アレ」だ。

タロットカード。



  それは、「太陽」 




Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.77 )
日時: 2011/08/01 23:41
名前: 奏 (ID: kSUj1nMa)


第44話 妹

* 要side

カードの気配に気づいた俺だったが、

その日のうちに有花本人に確認することはなかった。

気づいたときには有花は寝てたっぽいし、

同じ家に住んでいるため、あせって伝える必要もないと感じたからだ。

ただ、あとで俺は、早く伝えておくべきだったと後悔することになる。

翌朝。

「お兄ちゃん起きてー!!」

「・・・んぁ・・・?」

毎朝のように有花からの必殺たたき起こしを食らうわけだが・・・

今日はそんなことより気になることがあった。

「有花ちゃん、要くん起きましたー?」

「うんっ!」

有花は俺が起き上がったのを見ると、1階へ降りようと部屋を出て行こうとした。

「あ、有花!」

いきなり呼び止めたことに驚いたらしく、

有花は目を丸くしてこちらを振り向いた。

「・・・あー・・・っと・・・。

 いや、やっぱなんでもない。」

「んー?わかった。じゃあ早く降りてきてね。」


今のはただの確認だ。

やはり、『太陽』の気配はしている。

すでに契約済み。まぁ、それは分かりきっていたことだけど。




「じゃあ要くん、今日も有花ちゃんを途中まで送って行ってあげてくださいね。」

桜の言葉とともに、俺らは家を出た。

有花が友達と合流するまでまだ少しある。

・・・ほんの少し、カードのことについて触れてみるか。

「なぁ・・・最近変わったこととか・・・あったか?」

「変わったこと?・・・んーとねー・・・なかったかなぁ。」

「・・・そっか。」

よくよく考えたら、契約するときにカードの精霊は、

『他の人には絶対に言わないこと』とかなんとか言うもんだったな。

だったら、こいつが何も言わないのも納得できる。

「有花ちゃんおはよー!」

なんやかんや考えてたら、いつもの合流地点に着いた。

有花の友達らしき女子が2人、こちらにむかって手を振っている。

「じゃあお兄ちゃん、先に行くね!」

「おう、気をつけてな。」

俺の横から駆けていった有花は、友達と談笑しながらゆっくり歩いていった。

今日も、あの会話が聞こえる。

「有花ちゃんのお兄さん、優しくていいねー。」

「えへへ、そうかなぁ。」

たまに聞こえる。

お兄さん・・・ねぇ。


俺は、有花と別れた後、別の道を通って学校へ向かう。

こっちの道は、怜菜たちと遭遇することが多い。

いくら俺でも、毎日1人で登校というのは、寂しいところもある。

だからこうして、

わざわざ別の道に入っていくのだ。










・・・・・・・・・





放課後。

今日はバスケ部に顔を出さず、直帰だ。

俺が玄関の戸を開けると、

なぜか桜が心配そうな顔でうろうろしていた。

「・・・ただいま。何やってんの?」

「おかえりなさい・・・。あの・・・有花ちゃん、見てませんか?」

「え?帰ってないの?」

「はい・・・。今日はすぐ帰るからって言ってたんですけど・・・

 まだ帰ってこなくて・・・心配で・・・。」

「途中で予定が変わったとか。」

桜は首を横に振った。

「有花ちゃん、そういうときは連絡くれるんです。

 ・・・・・・要くん、探してきてもらっていいですか・・・?」

勉強しようと思ってたとこだけど・・・

まぁ、別にいいか。

誘拐とかだったら困るし。

どっか友達の家にでもいるんだろ。



そんな軽い気持ちで探しに来たが、

それは、明らかに間違いだったようだ。

まさかとは思って、人通りのない薄暗い路地に来たのだが。

・・・そこにいるのは、

もうすっかり見慣れてしまった、生意気悪魔少女、真里亞と、

その姿に怯える有花だった。



Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.78 )
日時: 2011/08/02 23:16
名前: 奏 (ID: kSUj1nMa)

第45話 兄妹

* 要side

「有花!」

「・・・お・・・お兄ちゃん!!」

呼びかけてこちらを振り向いた有花は、半泣き状態だった。

一応真里亞のほうが背も高いし、

無言で睨まれてりゃ怯えるのも無理ない。

「なんでお前こんな所に・・・。」

「な・・・なんでって・・・あ、あのお姉さんが・・・。」

真里亞が“お姉さん”ねぇ。

あまり似合わない言葉だが、まぁ今はそんなことどうでもいい。

「・・・知り合いでしたの?」

「知り合いも何も、有花は俺の妹だ。」

「・・・へぇ・・・。兄妹そろって使いとは・・・何が起こってるんでしょうね。」

「さぁな。とにかく、こいつに手出すのは許さない。」

無表情だった真里亞は、

俺のその言葉を聞くと、小さくにやりと笑った。

「・・・このまま私が、黙って帰すと思ってますの?」

「・・・・・・ま、帰さないだろうな。」

真里亞は目を細め、カードを取り出すと、

あっという間に、右手にフォークを構え、羽の生えた小悪魔のような

あの姿へと変わった。

「よく分かってるじゃありませんの。

 さて・・・貴方がかかってきますか?法王。」

あたりまえだと言わんばかりに、俺は法王のカードを取り出した。

ただ、今の俺は合成することができない。

勝てるかどうか・・・自信は全くない。

ただ、後ろで怯えている妹を見れば、やるしかないかとも思う。

・・・ところで・・・こいつは実行と合成、できるんだろうか?


「!?」

どうやら、真里亞はよそ見する暇さえ与えてくれないらしい。

もう少しで痺れの毒を食らうところだった。

「spatial reduce!」

青い2つの球を飛ばす。

が、いつものように上手くはいかない。

あの羽は伊達ではないため、普通に飛んでかわすこともできる。

・・・やっかいなもんだ。

「・・・pursuit!」

ちなみに言っておくが、最初に出したのが

対象の周りの空間を狭め、身動きを取れなくさせるもの。

次に出したのが、その追撃バージョン。

だが、これも真里亞はすいすいと避けていく。

もういっそ、あの羽をもぎ取りたい。

「・・・有花。」

「え?」

「今のうちに家に帰れ。」

「で・・・でも・・・お兄ちゃんは・・・?」

「俺ももう少ししたら帰るから・・・。

 先に帰ってろ。桜もすごく心配してたからさ。」

「う・・・うん・・・。」

有花がもと来た道を戻ろうと駆け出したとき、

追撃用のあの球が、俺の足元に落ちた。

「帰さないって・・・言ってますわよ!!」

「!!」

有花が毒風で2メートルほど吹き飛ばされる。

「有花!!」

「・・・うっ・・・いたた・・・。」

すぐ起き上がったから、どうやら無事なようだ。

傷を負っているものの、重傷というわけではないらしい。

「人のこと構ってる場合じゃありませんわよ!」

俺の目の前に現れたもの、それは紫色の壁。

少し前に怜菜に聞いた、毒の壁・・・ってやつか。

ただ・・・なんだ・・・?

もう、体が重い。

こいつ・・・まさか・・・。

「申し訳ありませんけれど、節制、女教皇のときの失敗を踏まえ、

 毒を少しだけ強力にさせてもらいましたの。」

申し訳ないだと?

そんなこと思ってもいないくせに、よく言う。

「お前・・・。

 ・・・絶対、有花に手出すなよ・・・。」

「“悪魔”は、約束なんてしませんのよ。」

そう言って、真里亞はまたにやっと笑った。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!!」

有花はいつの間にか、壁をドンドンと叩いていた。

「有花、ここから離れろ!」

「・・・だって・・・お兄ちゃん苦しそうだもん、できないよ!

 ・・・私、知ってるよ、タロットカードのこと・・・だから、大丈夫だよ・・・!」


有花は、カバンの外ポケットを漁り、

箱の・・・いや、真里亞の前に立った。

「お兄ちゃんのこと傷つける人は、許さないよ!」

「・・・今度は、貴女が相手になってくれるんですの?」

「・・・・・・怖いけど・・・でも、私、強くなりたいもん。」

有花の右手には、

さっき外ポケットから出したものと見られる、

『太陽』が握られていた。

「やめろ、有花・・・お前が勝てる相手じゃない・・・!」

「だって、私がやらなかったら、お兄ちゃんこのままなんだよ?」

有花は、いまだ半泣き状態だった。

止めたくて仕方がなかったが、

どうやら本当に、人のことを考える余裕がなくなってきたようだった。

頭がくらくらして、息も荒い。

もう、意識が途絶えるのも時間の問題のようだった。

「・・・・・・ずいぶん兄想いなんですのね。」

「あたりまえ・・・だよ。お兄ちゃんだもん。」


「Composition!」


意識が途絶える前、

最後に見たものは、楓藍の制服から、制服とは明らかに違う

オレンジ色の服へと変わる、

有花の姿だった。






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