複雑・ファジー小説

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*Tarot-Labyrinth*  コメ募集中><
日時: 2011/10/15 15:23
名前: 奏 (ID: mtBKxXTx)

はじめましての方ははじめまして。
二次小説で「悪ノ物語」というものを書かせていただいていた奏(かなで)です^^
そっちが完結したので、今度はオリジナルで書かせていただきます。

ちなみに、複雑・ファジーということなのですが、
80%がコメディ・ライトです。
あまり重い話はないですので、ご安心を´ω`*

■読む前に注意■
・奏のことが嫌いな方は回れ右
・荒らし、中傷目的の方も回れ右
・複雑・ファジーなのに重い展開少ねぇじゃん!ヤダ!って人も回れ右
・更新が休日だけだったりとかが嫌なかたは回れ右
・厨二的なものが受け入れられない方は回れ右
 (↑実は一番重要)


基本金曜・土曜・日曜のいずれかの更新になるかもですが、
気長に待っていただけると嬉しいです。


キャラは多いのでここには書きません^^;

>>1 【主人公級キャラ】
>>2 【敵級キャラ】
>>3 【その他キャラ】

>>6 【用語説明】

Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.100 )
日時: 2011/09/11 00:38
名前: 奏 (ID: ZEtdBFlK)

第53話 舞台

* 怜菜side

舞姫が帰ってから数日後。

私たちは今、とある建物の前にいる。

チケットを握り締めて。

「へぇー、ここが会場かぁ・・・大きいねぇ。」

「・・・っていうか・・・入り口ってどこなんだ・・・?」

変なところから入ってきたためか、

どうやら私たちは入り口がある側と正反対のほうへ来てしまったらしい。

「・・・あ!みんな!!」

私たちの真後ろ、

開けっ放しにされた扉の陰から、着物姿の舞姫が顔を覗かせた。

「舞姫!!」

「うわぁー本当に来てくれたんだ。ありがとう。」

「えへへ、だって舞姫の舞台見たかったんだもん。
 
 それにしても舞姫、ずっごく綺麗!それで出るの?」

蘭が嬉しそうに舞姫に話しかける。

舞姫は、私たちに目を配った後、やわらかく微笑んだ。

「ううん、まだ途中。

 これから髪のセットもあるし、着物も、今着てるコレの他にまだあるんだ。」

今の舞姫は、そのままでも十分綺麗だった。

桜の花びらの模様が描かれた、うっとりするほど綺麗な着物に、

化粧をした舞姫は、見たものを魅了するだろう。

扉の向こう側から、舞姫を呼ぶ声が聞こえた。

「・・・あ、すぐ行きます!

 じゃあみんな、また後でね。」

「うん!・・・あ、帰りは一緒に帰れるの?」

「あー・・・っと・・・。ごめんね、帰りは片付けもあるから・・・。

 後で連絡するから、先に帰ってて。

 ・・・じゃあ、楽しんでいってね!!」

そういうと、舞姫は手を振りながら扉の向こうへ引っ込んだ。

「・・・・・・ん・・・?」

ふと隣にいた要が首をかしげた。

「どうかしたの?」

「・・・え。あぁ・・・いや、なんでもない。」




私たちは無事に入り口を見つけ、会場に入ることができた。

座席の場所は、なかなかいいところだった。

近すぎると舞台を見上げるせいで首を痛めるし、

遠すぎたら見えないし・・・それを考えたら絶好の場所だろう。

会場は、あっという間に人で溢れた。

「踊り手としての藤城家って・・・こんなに有名だったんだね。」

「・・・まぁ・・・雑誌にも載ってることあるし・・・

 ポスターもそこらに貼ってあったりするしね。」

辺りが暗くなる。

舞台の上だけに、まぶしく黄色い明かりが当てられる。

その後、着物を纏った男性、女性が何人も登場し、

演技を繰り広げたり、優雅な踊りを披露した。



暗転。

未だに舞姫は舞台の上に姿を現さなかった。

「・・・どうかしたのかなぁ・・・。」

蘭が不安げに呟く。

「まだまだ舞台は続くから、大丈夫だよ、きっと。」

暗転が終わり、再び舞台上に明かりが落とされる。

『凛子、やっと見つけたぞ。』

『・・・いつまでも逃げ切れると思っているのか。

 幼い子供だからといって、その罪を見逃すわけにはいかぬ。』

数人の男性に囲まれ、凛子と呼ばれた少女は、

舞台の中央でゆっくり客席側へ振り返った。

数え切れないほどの桜の花がついた枝を肩にかけて。

「・・・あ・・・舞姫!」

蘭が思わず前のめりになった。

『・・・あら、お役人様方ではないですか。

 ・・・・・・私が何をしたと?』

『とぼけるでない。その桜の枝は、とても大切にされている木のもの。

 その枝を折れば、どんな災厄があるか・・・。』

『災厄・・・?ふふっ・・・あはははっ!』

『何がおかしい?何故笑う!?』

『災厄・・・ですか・・・。お役人様とあろうお方が、そんなことを信じているなんて・・・

 私でも笑ってしまいます。』

舞姫の演技を今まで見たことがない分、

その迫力はとてつもないものだった。

まるで、本物の“凛子”がそこにいるかのように。


演技も中盤に差し掛かり、踊りをはさんだ。

舞姫の踊りは、それまでの出演者に劣らず、とても綺麗なもので、

瞬きをすることを忘れてしまいそうなほどだった。

普段見ることはけしてできない舞姫の表情。

ただ、踊りを終え、足をスッと床に滑らせ落ち着かせたとき、

舞姫の表情は、一瞬だけ苦しそうに見えたのは・・・

私だけ・・・なのかな?



「舞姫綺麗だったね。」

「ほんとほんとー。目に焼き付けておくんだぁー。」

今日の蘭は本当にご機嫌だ。

私たちは会場を出て、外の空気を吸った。

「・・・要?」

冬弥の足が止まった。

というより、先に足を止めた要に声をかけるために足を止めた、というほうがいいかな。

「あ・・・悪い、先帰ってて・・・。用事思い出したから。」

「用事?」

「うん。ちょっと桜に頼まれてて・・・寄る所があったの忘れてた。」

「そっか・・・じゃあ、また月曜日に学校で。」

私たちは、会場の前で要と別れた。

そして、このとき要が何に気づいていたのか、

私たちはこれから先もずっと、知ることはないだろう。




* 舞姫side

私は私服に着替え、楽屋・・・というか、待機用の部屋に1人いた。

ロッカーのすぐ脇の椅子に腰掛けて、自分の足元を見つめる。

本来なら片付けの作業を手伝うべきだが、

今、私はそれを行っていない。

不意に、部屋の扉がノックされる。

「舞姫さん、入ってもよろしいですか?」

「・・・あ、はい。どうぞ。」

姿を見せたのは若い女性。

桜ちゃんよりちょっと上、ってところかな。

「あの・・・お友達がお見えになってますが・・・。」

「友達?誰?」

女性は、横をチラッと見ながら口を開く。

「・・・清野様・・・と申しておられますが・・・。」

「・・・・・・・・・入れてあげてもらっていいですか?」

私がそういうと、

女性は“どうぞ”と部屋の中へ人物を促し、

そのまま部屋から出て行った。

扉がバタン、と閉まる。

「お疲れ。」

入ってきた人物は・・・要は、片手を上げてそう言った。

「ありがとう。・・・帰ったんじゃなかったの?」

「気になることがあったから残った。」

「へぇー・・・なに?」

要は私の前まで歩いてくると、

私の足元をチラ見して呟いた。

「・・・お前、怪我してるだろ?」と。



Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.101 )
日時: 2011/09/12 01:02
名前: 奏 (ID: ZEtdBFlK)

53話続き


* 要side

目の前の舞姫は、目を丸くして俺を見ていた。

「・・・なんで・・・?」

「前も言ったじゃん、見れば分かるって。

 ・・・舞台始まる前も、踊ってる最中も、なんかおかしかったし。」

「・・・よく気づいたね。他のみんなは?」

「さぁな・・・でも、何も言ってなかったから気づいてないんじゃないか?」

「そっか・・・よかった。」

こいつならそう言うと思った。

どうせ、心配かけたくないとか言うんだろうな。

「でもなんで怪我したんだ?」

「・・・あぁ・・・2日前、稽古の途中で痛み始めて・・・

 たぶん、どっかで挫いたか捻ったか・・・思い当たる節はないんだけどさ。」

「ちょっと見せて。」

俺がそう言うと、舞姫は何も言わずに左足の靴下を脱いだ。

それは、思い当たる節がない、という言葉が似合わない足。

誰が見ても、怪我してるって分かるものだった。

「・・・めっちゃ腫れてんじゃん・・・。なんで放っておいたんだよ。」

「だ、だって・・・本番直前で・・・親に言ったら舞台出れなくなっちゃうじゃん・・・。

 まぁ、朝にバレて、直前に出るか出ないかで言い争って、

 ちょっと予定より出番の時間が遅くなっちゃったけど・・・。」

あぁ、それでか。

・・・どうりで遅すぎると思った。

「だから片付けもしなくていいって。

 要、わざわざ来てくれてもらったのに悪いけど、私これから病院だから・・・。」

「そんな足で病院まで行けんのかよ。」

舞姫は一瞬だけ動きを止めると、

横のロッカーに手をついて立ち上がった。

「あ・・・ほら、大丈・・・・・・・・ッ!!?」

「危なっ!!」

ドサッと舞姫が俺の腕におさまる。

「・・・ったく・・・なんで無理しようとするかなー・・・。

 痛いなら痛いってはっきり言えばいいのに。」

「・・・・・・・・・・・・・・・ごめん。」

舞姫がうつむいてポツリと呟いた。

しおらしいこいつも珍しいもんだ。

「とりあえず、1人で行くのは無理だろうな。」

「で、でも・・・。」

「でもじゃないだろ?歩けないってこと、分かっただろ?」

「・・・・・・・・・・タクシー拾えばいいし・・・。」

こいつ・・・相変わらずひねくれてるっていうか・・・

頑固って言うか・・・人を頼ろうとしないんだな。

「タクシー拾うまでは?病院着いてからは?」

「・・・・・・・・・・。」

さすがの舞姫も、返す言葉が見つからなくなったようだ。

・・・・

こいつが従うかどうかは分からないけど、

試してみる価値はありそうだ。

それに、こういうことしか俺にはできない。

俺がこいつから貰ったものに比べれば、こんなもの比じゃない。

「ほら。」

俺はしゃがみ、背を舞姫に向けた。

「え?」

「乗れよ。病院まで連れてくから。」

「ちょ・・・で、でも、要に悪いし・・・それに、恥ずかしいって・・・!」

またも珍しいことに舞姫が慌てている。

「大丈夫だって、大きい道は通らないようにするから。」

「・・・いいの?」

「あぁ。このまま放っておけないだろ、その足。」

少しの間を置いて、舞姫がゆっくりと俺の方に腕を伸ばしてきた。

「・・・お、重いから・・・そこらへんは分かっててよね。」

舞姫を背負い、俺は待機室を後にした。

重いって言うのは・・・まぁ当たり前のように嘘だ。

こいつは本当に自分が重いとでも思っているんだろうか。

俺はなるべく人や車の通らない道を歩くことにした。

舞姫がおずおずと口を開く。

「・・・ねぇ、要。」

「ん?」

「・・・・・・あり・・・がとう。」

「・・・・・・・・・いいよ。」

礼を言われただけなのに、なぜか照れる俺。

これは本当に謎だ。

ただ、いつも気張ってるが素直になると、こんなに違うものなんだな、とは思った。






「・・・あ。」

病院について数十分。

廊下を、松葉杖をついた舞姫が歩いていた。

「大丈夫か?」

「・・・あ、うん。しばらくこのままでいたほうがいいらしいけど。」

「そっか・・・。」

「ありがとね。もう大丈夫だから・・・帰ってもらっても大丈夫だよ。」

俺は舞姫の頭の上に手を置いた。

「残念ながら、そうもいかないかな。

 心配だし、最後まで送り届けるさ。」

「・・・・・・要・・・。ごめんね。」

「謝るなよ。俺が自分でやってることなんだからさ。」

俺がそういうと、舞姫は俺に向かって微笑んだ。




「松葉杖か・・・初めてだから慣れないね。」

「ゆっくりでいいからな。急いで歩いて転ばれても困るし。」

「大丈夫大丈夫。」

帰り道は、談笑する余裕が出てきた。

が、突然舞姫の足と手が止まる。

「舞姫?」

辺りをキョロキョロと見回す舞姫。

そのとき、俺にもとある気配が感じられた。

これは・・・。

「きゃあっ!!」

「あ・・・舞姫!!」

俺と舞姫の間で爆発が起こる。

といっても、煙が巻かれるだけのものだ。

これは・・・見たことがある。

「コレは・・・もしかして・・・。」

「『道化』・・・・・・。」

俺が言う前に、松葉杖で体を支える舞姫が言った。

・・・あれ?

なんでこいつ、道化のこと知ってるんだ?



「・・・なの。」

物陰から、いつか見た道化が飛び出してきた。

だが、髪は初めて見たときよりずっと短くなっていた。

「・・・今日は一人だけど・・・みんなの分も頑張るの・・・なの。」

道化は右手にカラフルなボールをいくつも構えると、

小さな声でポツリと呟いた。

「ターゲットは、“法王”・・・そして、“力”。」













■奏の戯言■

舞姫が登場したことによって、

一部の恋愛模様がどうにかなっちゃったりしたり・・・。

といってもはらはらどきどきの恋愛はよくわからないので

平凡(?)なものになってしまいますが。

Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.102 )
日時: 2011/09/12 22:38
名前: 奏 (ID: ZEtdBFlK)

第54話 力の使い

* 要side

「お前、ここ座ってろよな!」

「え・・・で、でも・・・!!」

「危ないから・・・それに、そんな足で無理すんなよ。」

俺はそう言って舞姫を近くのベンチに、半ば無理やり座らせた。

目の前の道化は、既に合成済み。

前みたいに急に暴走しなきゃいいけど・・・。

「・・・うー・・・。」

道化は小さく唸る。

「・・・かかってこないのか?」

「・・・言われなくたって・・・そうするのっ!」

俺に向かって4,5個のカラーボールが飛んでくる。

が、あせる必要もあまりない。

ボールは、俺を避けるように飛び、

俺の後ろで小さな爆破音を立てた。

次々とカラーボールが飛んでくるが、すべて俺を避ける。

「・・・なんで・・・なんで当たらないの?」

道化の顔には、明らかに焦りの表情が見えた。

俺は微かに笑う。

「・・・法王の技は空間操作だし・・・

 俺の周りの空間を一瞬だけ歪ませれば、

 その空間にある物体の飛ぶ方向だって変わるさ。」

「・・・うぅー・・・だったら・・・!!」

道化が真上に両手を伸ばす。

息を吸い込み、天に祈るように彼女は叫んだ。

「Big juggling !!」

道化の両手の上に、巨大なクラブが現れた。

それは、身長に似合わないほど巨大なもの。

まさか・・・こんなでかいのが爆弾ってわけじゃ・・・。

「これだけ大きいのなら・・・空間歪ませられない・・・なの!」

道化がにっこりと笑った。

こんなチビっ子が・・・あっというまに真里亞たちの影響を受けたとでもいうのか・・・。

いや、そんなこと考えてる場合じゃないな。

確かにこんだけでかいんじゃ

俺の空間操作も足りない。

・・・・・・合成ができていたなら・・・どうなってたのか分からないけど。

道化がそれを投げ飛ばそうとする瞬間。

道化の腹部に、見えない何かがぶつかる。

「・・・ぐ・・・っ!?」

クラブから手を離し、道化は何メートルか飛ばされた。

「・・・え?・・・俺、何も・・・。」

俺は周りを見渡す。

目に入ったのは、ベンチに座ったままの舞姫。

ただ、右手の人差し指と親指を伸ばし、ピストルのような形にしている。

それは、さっきまで道化がいた場所に向けられていた。

「・・・ま、舞姫・・・?」

舞姫は一度こっちを見ると、手を元に戻し、空を見上げた。

その間に、道化は立ち上がる。

「・・・何を・・・・・・ゲホッ・・・。」

道化は、近くに転がり落ちたクラブに手をかけた。

だが、そのとき、向こうからバサバサと羽の音が聞こえた。

それは、10羽ほどの烏。

真っ黒な烏が、道化めがけて飛んできた。

「!?」

その烏たちは、まるで道化を邪魔するかのように、

道化の周りを飛び回っていた。

「う・・・うぅ・・・避けて・・・なのっ!!」

それでも烏は避けようとしない。

技を出すこともできないし、烏がうっとおしくなったのか、

道化はその場から姿を消した。

地に足をつけた烏たちに、舞姫が語りかける。

「ありがとうみんな、あとで何かお礼するね。」

そういって微笑むと、烏はその場を飛び立ち、住宅の屋根を越えて飛んでいった。



「・・・舞姫、いったいどういう・・・。」

「黙っててごめんね。みんなが使いだってことは知ってたけど・・・

 言うタイミングがなかなか掴めなくてね。」

「お前のカードって・・・。」

「“力”だよ。女性と動物の絵が描いてあるカード。」

「・・・でも、俺たちはお前のカードの気配、感じなかったんだけど。」

「・・・あぁ・・・それは・・・。

 力の能力は風、風って言うのは空間に溶け込むものじゃん?

 それと同じで、力の気配も空間に溶け込ませて

 気づかれないようにもできる・・・って、力本人が言ってた。」

「なるほど・・・。さっきの技と烏は?」

「あれも力の能力。技は風を集めて放ったもの。空気砲みたいな感じ。

 それと・・・動物との意思疎通ってやつかな。」

ていうことは、さっき空を見上げたとき、

近くにいたあの烏たちに呼びかけてたってことか。

「このこと・・・あいつらに言ってもいいのか?」

「・・・うん、何れはバレることだったし、言ってもいいよ。

 ただ、この怪我のことは・・・。」

「分かってる、言わない。」

舞姫は小さく微笑む。

「ありがとう。」






「送ってくれてありがとう。迷惑ばっかかけてごめんね。」

「迷惑とか言うなよな。

 ・・・・・・なんか困ったことがあるなら、何にも気にしないで、

 俺を頼ってほしいし・・・それが、恩返しだと思ってるし。」

舞姫が首を横に傾ける。

「恩返しって?」

「あ・・・こっちの話。」

こいつは、自分が人に与えているものに気づかない。

それはいいことなのか悪いことなのか・・・。

よくわからないけど、

俺はこれからも自分の意思で、

お節介だろうとこいつを助けようとするだろう。

「・・・じゃあ、またね、要。」

「おう、元気でな。」

「また、天ノ宮が嫌になったら、そっち行くから。」

「ははっ。みんな嬉しがるだろうよ。待ってる。じゃあな!」

「うん、ばいばい。」

舞姫は、姿が見えなくなるまで手を振っていてくれた。



Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.103 )
日時: 2011/09/14 23:08
名前: 奏 (ID: ZEtdBFlK)

第55話 生意気少年

* 怜菜side

「それにしてもびっくりだよねー、舞姫まで使いだったなんて。」

「そうだね。・・・でも、それを聞くと納得できるかも。

 あの子猫の存在と気持ちを知るなんて、普通はできないことだし。」

私は今、蘭と冬弥と一緒に中等部の前に来ていた。

ちとせは委員長と一緒にとある仕事で、

要はバスケ部に顔出ししに行ってるため、今日は一緒に下校していない。

「都和はもう終わったのかな?一緒に帰れればいいけど。」

そんなことを話していると、ちょうど目の前を都和が通り過ぎた。

「あ、都——・・・。」

呼びかけようとしたそのとき、

別のほうへ目が行った。

なぜかこそこそしている少年。

まるで、都和のあとをつけるかのように。

「都和ー!」

私が呼びかけないでいると、冬弥が代わりに都和に向かって声をかけた。

私たちの後ろにいるその少年は、慌てふためいたかと思うと、

サッと物陰に身を隠した。

「・・・?・・・あ、怜菜たちでしたか。」

「一緒に帰ろうよー。」

蘭も続いて声をかける。

「あー・・・えっと、実は・・・。」

そこまで言いかけた都和は、突然一点を見つめる。

それは、私たちの向こう側、

あの少年が隠れた場所だった。

「・・・・・・ヤマト?」

少年は、もぞもぞと立ち上がった。

「・・・どうしてヤマトがここに?しかも・・・なんで隠れてるのですか?」

「都和、この子は?」

「・・・クラスメートの滝沢大和です。」

同級生か・・・。

大和と呼ばれた少年は、頭にバンドのようなものをつけ、

むすーっとした顔で地面を見つめていた。

「・・・なんでもねーよ。」

もう一度都和が何をしていたのか問うと、大和くんはそう言った。

ふぅっと息を吐くと、都和は私を向いた。

「ごめんなさいです。今日、早めにバイト行かなくてはいけないので・・・

 先に帰りますです。」

「え・・・あ、そっか。バイト頑張ってね。」

私が告げると、都和は小走りでその場を後にした。

大和くんは、むすっとしたまま、今来た道を戻ろうとした。

「君は帰らないの?」

「・・・帰るからこっちにいくんだよ。こっちのほうが近いし。」

じゃあなんでわざわざ逆の道に来たんだというツッコミをよそに、

蘭がニヤリと笑う。

「はっはーん。

 ねぇ大和くん。正直に答えてもらっていい?」

「・・・なんだよ。」

蘭は人差し指を立て、大和くんを指した。

「大和くん、都和のこと好きなんでしょ?」

「はぁっ!?」

「えぇぇぇぇえぇーっ!!?」

私と冬弥が一度に奇声を上げる。

大和くんは、突然の言葉に、すっかり固まってしまっていた。

「な、なんでそう思うの?蘭・・・。」

「なんとなく、女の勘みたいな?

 だって、わざわざ都和についてきたんでしょ?」

「ち・・・ちげーしっ!!」

大和くんが顔を真っ赤にしながら怒鳴った。

「照れるな照れるなー。なんでも分かっちゃうんだぞー。」

「・・・・・・・・ッ・・・!」

「ほらほら、返す言葉がないってことは、図星ってことだもんね?」

「ほ、ほ・・・本当なのか?」

なぜか冬弥の声が震えている。

まぁこのロリコ・・・もとい、都和を妹のように可愛がっていた冬弥なら、

ショックを受けても仕方ないかな。

「・・・・・・・・・ん。」

大和くんは真っ赤な顔のまま小さく頷いた。





急遽中庭に移動。

「・・・で、つけてたのはどうして?」

大和くんは、生意気な態度とは裏腹に、

妙にちょこんとした座り方をしていた。

「俺・・・俺、ただあいつと話したいだけなんだ・・・。

 でも、俺、こんな性格だから、いっつも上手く話せなくて。

 いっつも・・・なんか捻くれたことしか言えなくて。」

可愛いと思ってしまう自分が悔しい。

普段生意気なくせに、恋愛事になると急に可愛くなる・・・

ギャップって・・・すごいね。

「なるほどー・・・じゃあ、都和のどんなところが好きなの?」

「どんな・・・って・・・うーん・・・。

 普通の女子と、なんか違うんだ。性格もだけど・・・。」

「それは私も分かる。」

「・・・周りの女子はあまり俺と話したがらない。

 ・・・まぁ、さっきも言ったけど捻くれてるし・・・よく怖いって言われたりもする。

 でも、柏葉は俺と普通に話してくれた。」

「そっか・・・うん、都和ならありえることだよね。」

「都和が恋愛事に興味があるとは思えないけどな。」

不意に冬弥が呟く。

・・・大人気ない。大人じゃないけど。

よっぽどショックなんだろうな。




中断

Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.104 )
日時: 2011/09/17 22:27
名前: 奏 (ID: ZEtdBFlK)

続き


「・・・それは・・・俺も、なんとなくわかってる・・・でも・・・。」

「ったくもー!!冬弥、余計なこと言わないの!!」

蘭が、おずおずと話す大和くんを庇うように冬弥を叱った。

・・・しかし、なんでこんなに楽しそうなんだろう。

「でも、何でわざわざつける必要があるの?」

私が大和くんにそう投げかけると、

大和くんは一瞬困った表情を浮かべて俯いた。

「・・・教室だと・・・あいつ、いつも1人でいるから・・・。

 そこで声かけると他の奴らに冷やかされるし・・・

 そうなると、あいつにも迷惑かかると思って、

 だから、2人になれる放課後はっ・・・て思ってたんだけど、

 あいつと向き合えなくて・・・結果、ストーカーみたいなことに・・・。」

「う・・・うぅぅー・・・もう!可愛いなぁっ!!」

気づくと蘭が大和くんに抱きついていた。

・・・な、なんなんだろう、今日の蘭は・・・。

まさか、他人の色恋沙汰にこんなに興味があったなんて知らなかった。

「で、大和くんは結局のところどうしたいの?」

「・・・柏葉と話すとか、そういうことだけじゃなく、とにかく素直になりたい。

 それができるようになったら・・・今度は柏葉と、ちゃんと話して・・・。」

その先のことは、大和くんの口から漏れなかった。

顔が真っ赤になってることからして、言うのが恥ずかしいんだろう。

「・・・よしっ!じゃあ協力してあげる!!」

蘭が、横で明らかに嫌そうな顔をしている冬弥を無視して

大和くんに顔を近づけた。

「きょ、協力って・・・どうやって・・・。」

「とにかくっ!素直になりたいのなら、

 まずは都和への気持ちをここで吐き出しちゃいなさいっ!」

「こ、ここでっ!!?」

「だって、まずはそういうところから始めなくちゃ!

 ・・・それに、まだ君の口から『好き』って言葉、聞いてないよ?」

大和くんは、さっきよりも顔を真っ赤にする。

よくアニメとかで見るようなくらいに、

顔から湯気がでそうなくらいに赤い。

「ら・・・蘭、かわいそうだし無理やりそういうこと言わせるのは・・・。」

私がそう止めに入ろうとすると、

「わ、分かったよ!言うよ!!」

ぶっきらぼうながらに大和くんが叫んだ。

思わず私と冬弥が大和くんを振り向く。

「い、いいの?大和くん。」

「だって、悔しいし・・・ここでこんなこと言えなかったら、

 柏葉にだって絶対言えるわけない。」

男らしい・・・。

さっきまで可愛いと思っていたけど、

今は強くてかっこいいとすら思う。

大和くんは立ち上がるとすぅっと大きく息を吸い込み、

蘭の方を向いて言った。

「俺は・・・俺は・・・っ・・・柏葉のことが・・・す・・・す・・・っ・・・。」

そこでぷはぁーっと息を吐く。

やっぱりいきなりは無理なんじゃないかな・・・。

「頑張って!!ここで言わなきゃ都和にだって伝えられないよ!!」

蘭が追い討ちをかけるように言った。

この子、もしかしたらSなのかもしれない。

「・・・・・・わかった・・・。」

再度息を吸い込む大和くん。

「俺は・・・柏葉都和のことが・・・す・・・好きだっ!!」

言った瞬間、大和くんはへなへなと座り込んだ。

「だ、大丈夫?」

「よく言ったよ大和くん!

 これでちょっとは素直になれたんじゃないかな?」

「・・・・・・気に入らない・・・。」

ニカッと笑う蘭と、むすっとしたままの冬弥、

2人の表情は対照的だ。

「もー・・・2人ともちょっとは大和くんの心配も——・・・。」

私がそう言って大和くんの背中を擦ろうと手を伸ばし、

その背中にちょんっと触れたとき、

私は妙な違和感に襲われた。

違和感といっても、それは最近よく感じるソレ。




タロットカードの、気配。






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