複雑・ファジー小説

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*Tarot-Labyrinth*  コメ募集中><
日時: 2011/10/15 15:23
名前: 奏 (ID: mtBKxXTx)

はじめましての方ははじめまして。
二次小説で「悪ノ物語」というものを書かせていただいていた奏(かなで)です^^
そっちが完結したので、今度はオリジナルで書かせていただきます。

ちなみに、複雑・ファジーということなのですが、
80%がコメディ・ライトです。
あまり重い話はないですので、ご安心を´ω`*

■読む前に注意■
・奏のことが嫌いな方は回れ右
・荒らし、中傷目的の方も回れ右
・複雑・ファジーなのに重い展開少ねぇじゃん!ヤダ!って人も回れ右
・更新が休日だけだったりとかが嫌なかたは回れ右
・厨二的なものが受け入れられない方は回れ右
 (↑実は一番重要)


基本金曜・土曜・日曜のいずれかの更新になるかもですが、
気長に待っていただけると嬉しいです。


キャラは多いのでここには書きません^^;

>>1 【主人公級キャラ】
>>2 【敵級キャラ】
>>3 【その他キャラ】

>>6 【用語説明】

Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.18 )
日時: 2011/05/02 23:24
名前: 奏 (ID: 39RfU1Y2)

>>17  夏茱萸s

お久ですw

そうですねwできるだけ早く更新していくつもりです^^
学校始まると一気に更新なくなってしまうので;;

真里亞はともかく、都和はこの物語の中でも結構謎キャラなので、
どんな人物なのか、楽しみにしていただけると嬉しいですw
(このあと、都和の倍ほど謎なキャラが登場しますけどねw)


はい!ありがとうございます^^*

Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.19 )
日時: 2011/05/03 00:55
名前: 奏 (ID: 39RfU1Y2)

第8話 タロットカードの物語


* 都和side

・・・・・・気分が悪い。

ゆっくりと目を開ける。

目に飛び込んできたのは、見慣れない真っ白な天井。

手に触れているものは、ふかふかしたやわらかいもの。

・・・そうか、ベッドに寝てるんだ・・・。

でも、ここはどこ?

扉の開く音がした。

「・・・あ、都和起きた?大丈夫?」

視界が若干ぼやけててよく見えなかったけど、声からして怜菜だろう。

きっと私が倒れた後、ここまで運んで来てくれたんだ・・・。

あ、いけないいけない。

口調を元に戻さなくちゃ。

私は・・・いや、ボクは体を起こした。



* 怜菜side

目の前の小さな少女は、無言のままベッドの上で上半身を起こすと、私を見上げた。

「あの、ありがとうございました・・・。」

「え?あ、あぁ、運んできたことなら気にしないで。都和、軽かったし。」

そう言うと、都和はほんの少しだけ困惑したような表情を浮かべた。

あれ?なんか言っちゃいけないことだったのかな。

軽かったのは事実だけど・・・それは、羨ましがるような軽さというより、

ちょっと心配になるような軽さ。

ろくなもの食べてないんじゃないかと思うくらいのものだった。

「あの、怜菜。」

「ん?」

「・・・さっきのカードのこと、いきなりすみませんでした。それと、ありがとうございます。」

「どういたしまして。・・・都和、カードのこと詳しく教えてくれる?」

都和はそれを聞くと、ちらっと壁掛け時計を見て、小さくため息をついて続けた。

「・・・えぇ、いいですよ。教えなくてはいけなくなってしまいましたから。」

『教えなくてはいけなくなった』?

どういうことだろう。

ちとせが、音も立てずに部屋に入ってきた。

「ジュース飲む?」

ちとせの手には、2つのコップが握られていた。

「ありがと。都和、飲むでしょ?」

都和は俯いていた。

「い、いえ。ボクは結構です・・・。」

そうつぶやいたが、ちとせが机に置いたコップを見るなり、

「・・・すいません、やっぱり頂きます。」

と言い、コップを取った。

ちとせはそれを見ると軽く微笑み、部屋を出た。

「で・・・都和。」

「・・・ジュース飲みながらで申し訳ないですが、話します。

 少々長くなると思いますが、よろしいですか?」

私は頷いた。

都和は再び時計を見ると、コップに口をつけて私に向き直った。

それほど時間を気にするタイプだとは知らなかった。

「ボクも、あまり詳しいことは話せないのですが・・・

 昔、とある1人の男がいました。その男は、占いや魔術、呪術なんかに興味があり、

 自分でもその用具や何かを作ってしまうほどのもので、家族も呆れるほどでした。

 ・・・で、その中で使われたタロットカード・・・それが、今ボクらの持っているものです。」

私は1度頷いた。

何か言いたかったのだが、話を邪魔するわけにもいかないので、出来る限り無言でいた。

「男は亡くなりましたが、自らのそのような用具は、全て自室に残しておきました。

 ただ、タロットカードだけは、実の娘に託し、娘はそれを大事そうに金庫に仕舞いました。

 ・・・しかし、突然タロットカードは金庫から消えてしまいました。

 何年か経ち、カードが戻ってきて、厳重に管理していても、

 カードはいつの間にか消えてしまうのです。」

「・・・まさかとは思うけど、カードが消えている間って・・・。」

都和はジュースを飲むと、頷いて続けた。

「・・・その間、ボクらのような使いが何人も誕生しました。

 そしてその使いたちがカードを集め、あるべき場所へと戻したのです。

 それが今は僕らの手の中にあるということです。」

「集めるなら、どうして戦おうとするの?」

都和は一瞬厳しい顔つきになったかと思うと、

呆れたような口調で続けた。

「このカードは、集めれば願いが叶うと言われています。特に『世界』を得れば・・・

 マリアたちは、願いを叶えるためにカードを集めているのであって、

 あるべき場所に戻すために行っているのではありません。だからわた・・・ボクとは敵対してます。」

「じゃあ、どうして都和は倒れちゃうの?

 マリアが言ってた。都和は力があるって。なのに・・・。」

そこまで言いかけたとき、都和がストップの合図を私に向けた。

「・・・ごめんなさい。それは、ボクにも分からないことなんです。

 気づいたら意識を失ってることが多くて・・・ボクも、理由を知りたいのですが。」

失言だったかな。

「怜菜。」

急に都和が口を開いた。

「何?」

「今日の話、理解することは難しかったと思います。

 後日、ちょっと色々ありまして・・・再びちゃんと説明はしますから。」

それだけ言うと、都和は机にコップを置き、布団から足を出し鞄をつかんだ。

「あ、都和!」

慌てて呼ぶと、都和は厳しい顔つきで振り返った。

どどどうしよう、、

何となく呼びかけちゃったけど・・・。

「・・・あの、ちゃ、ちゃんとご飯は食べたほうがいいよ?」

情けな・・・。

慌てて出た言葉がそれか。

本当に思っていたことではあったけど。

都和はクスっと微笑むと、

「大丈夫なのですよ、ちゃんと食べてます。じゃあジュースご馳走様でした。

 ちょっとバイトがありますので、失礼します。」

そう言った都和の顔は、いつもの、見る者を癒す笑顔ではあったけれど、

どことなく、私は怖かった。




* ちとせside


都和が帰るような気配がしたので、部屋の扉を開けた。

都和はちょうど扉を開けるところだったらしく、私のすぐ目の前に立っていた。

少女は丸い目で私の目を見つめてきた。

「ちとせ。」

「ん?」

「・・・ちとせには途中から、マリアと怜菜の姿は見えていなかったと思います。

 ・・・見えてませんでしたよね?」

その声には、何処となく圧する感じがあった。

たしかに、私には倒れている都和以外、何も見えなかった。

「うん。そうだね。私にもいずれ、説明してくれるのかな?」

都和は少しだけ口角を上げると、

「・・・まぁ、いずれは。

 ちとせ、今日あったこと、怜菜とボク・・・あと要以外には内密に。」

「え、要も?」

「はい。このことも後日説明します。では、お邪魔しました。」

そう言って、都和とその後につく怜菜は玄関へ向かった。

今日の都和は何か違う。

いや、もしかしたら今日だけじゃないかもしれない。

彼女は、たまにこういうことがある。

そして彼女があんな態度をとるときには、

少なくとも、絶対に良いことは起こらないのだった。

Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.20 )
日時: 2011/05/03 13:39
名前: 奏 (ID: 39RfU1Y2)


第9話 心優しき少女


* ちとせside

翌日。

昨日のことがあったため、今日も都和の様子がおかしいかもしれないと考える。

・・・・・・が、その心配は無用なようだ。

蘭、都和、冬弥、要と合流したとき、彼女は満面の笑みで「おはようございますです」

と、言ってきた。

私も怜菜も、拍子抜けして、要にさりげなく心配される始末となった。



* 怜菜side

幼馴染グループで通学路を歩いていると、いきなり目の前を歩いていた

金髪少年・・・冬弥がいきなり足を止めた。

「・・・どしたの?」

「・・・・・・いや、アレ・・・。」

冬弥は電柱にむかって指をさした。

しかし電柱に向けてではなかったようで、その下の小学校低学年くらいの少年たちにだった。

「何してんだろう?」

片手に木の棒を持って、地面に向けて振り回している。

途端に、隣にいた蘭がそこに向かって走り出していた。

パシッ

軽快な音と共に、蘭の手には少年たちの振り回していた木の棒が収まっていた。

「こら、そんなことしちゃ駄目だよ。この子だって生きてるんだからね。」

語りかけるようにその少年たちを叱る蘭は、優しくも厳しいお姉さんって感じだ。

少年たちは、木の棒を捨て、逃げるように立ち去った。

やれやれ、と笑いながら言い立ち上がった蘭の腕の中には、1匹の小さな猫がいた。

「・・・さ、君ももう大丈夫だよ。学校につれてってあげるからね。」

蘭は猫に微笑みかけた。

「可愛い猫だね。」

私はそう言って蘭を見上げた。

微笑んでいるが、どことなく寂しそうな表情を浮かべていた。

蘭は、たまにこんなことがある。



学校に着き、傷ついた猫を先生に預けた後、蘭に言った。

「蘭ってさ、勇気あるよね。」

「え?・・・そんなことないよ。全然・・・。」

蘭は振り返りもせず、そう答えた。

すると、いきなり振り返り言った。

「・・・じゃあ、またお昼にね。」

そう言って蘭は自分の教室に向かっていった。

気のせいだとは思うけれど、微かに、「勇気なんか・・・ない。」と聞こえた気がした。

「・・・なんかさ、蘭、変じゃない?」

「そうかな?・・・まぁ、元気ない感じはあるけどね。」

ちとせは鞄を肩に掛け直しながら言った。

既に廊下から、蘭の姿は消えていた。



* ちとせside

お昼休み、お弁当を食べ終え廊下で怜菜と話していたところに、蘭がやってきた。

「やっほー。」

そう言う笑顔は、いつもの蘭のものだった。

3人で色々話していて、私は、ふと廊下の向こう側を見た。

都和よりも背の小さな女の子が、もじもじしながら困った表情を浮かべ、

ゆっくりと歩いていた。

楓藍の制服は、デザインが同じで一見何年生か分からないが、リボンの形からして

初等部の子だろう。

すると、怜菜も蘭もその子に気づいたらしく、不思議そうに見ていた。

かと思うと、蘭の姿が途端に消えた。

「どうしたの?何年生?名前は?」

相変わらず行動が早い・・・。

そして必殺質問攻め・・・。

少女は顔を赤らめ、俯き加減でそれに答えた。

「しょ、初等部3年・・・清野、有花・・・。

 お兄ちゃんに用があったんだけど・・・クラスとか分からなくて・・・。」

「お兄ちゃん?お兄ちゃんって誰のこと?」

お姉さんっぷりを発揮した蘭は続けた。

有花と名乗る少女は、弱弱しくも答えた。

「えっと・・・清野、要・・・です。」

有花ちゃんと向かい合っている蘭も、私の隣にいる怜菜も、

私の耳がはちきれそうなほどの声をあげた。

「かっ・・・要のいもーとぉぉおぉぉぉおお!??」

有花ちゃんは一瞬びくっと震えると、苦笑しながら続けた。

「は、はい・・・。そうですけど・・・?」

「え、あ、ごめんね!じゃあ今呼んでくるから、この人と待っててね。」

「うん、ありがとうお姉ちゃん。」

お姉ちゃんと呼ばれた蘭は、要を探すため、立ち去った。

そして有花ちゃんは、怜菜と私のところに近づいた。

「要に妹がいたなんて知らなかったなぁ。」

「そうだね。昔から一緒だったのに。」

怜菜は有花ちゃんの顔を覗き込んだ。

「うーん。でもあまり似てないよね。有花ちゃん可愛いもん。」

頬をぷにぷにと突かれた少女は、再び苦笑した。

「それはなんというか・・・失礼だよね。」

「えー何々?要がかっこいいとでも言うの?ちとせは。」

「・・・アンタ・・・相変わらず要には厳しいねー・・・。」

そんな話をしているうちに、

「有花」

という声がした。

声の主は、要だった。

・・・たしかに、こう見てみると似てないかもしれないな。

可愛いうんぬんじゃなくて、パーツ的に。

「お兄ちゃん!」

少女はツンツン髪の少年に駆け寄った。

「どうしたんだよ、いきなり。」

「あのね、桜ちゃんからの伝言・・・言うの忘れてて・・・。

 あたし、今日は多分お兄ちゃんより帰るの遅くなっちゃうから、今言おうと思って。」

戻ってきた蘭と共に、私たちは話した。

「・・・桜さんって誰のこと?」

「あ、桜さんていうのは、要の家にいるお手伝いさん。

 ・・・ていうか、いとこだったかな?詳しいことは知らないけど。」

私の問いかけに、蘭はそう答えた。

「あ、蘭、ごめんね。今日一緒に帰れないや。」

いきなり怜菜がそう言った。

「え?なんで?」

「ちょっとした用事・・・ってやつかな。ちとせもたしか・・・」

「私は委員会があるから・・・。」

「・・・そっかぁ。うん、分かった。」

蘭はさも残念そうに言った。

怜菜の用事と言うのは、カード関連のことらしいが、私もよく知らない。

都和絡みだとは思うけど。


誰も、この時点では知らないだろう。

蘭を1人で帰らせたことで、

タロットカードのあの物語に、巻き込ませることになるなんて。

Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.21 )
日時: 2011/05/03 15:57
名前: 奏 (ID: 39RfU1Y2)


第10話 正義と出会い


* 蘭side

私はとぼとぼと帰り道を歩いた。

1人で帰ることは何度もあったけれど、やっぱり寂しい。

・・・それに、すごく昔にあったあの事件を思い出してしまう。

あれの1件が発端で、母さんと父さんは別々になってしまったし・・・。

家に帰ってもどうせ1人だから、それもちょっと怖いな。

母さん・・・次はいつ帰って来れるのかな。

母さんは昔から女優だった。

ドラマや映画はもちろん、最近はバラエティにも出ているようで、

家に帰ってくることがほとんどない。

それでも私は、テレビの中の母さんを見ることが好きだったし、

母さんも帰ってくると、すごく私に構って愛してくれた。

私は・・・どうしても孤独感を抑えることができない。

昔の事件からずっとだ。

1人でいるのがどうしても不安になるし、1人じゃなくても孤独に思えてくることがある。

・・・父さんはあれからいないし、母さんもほとんど帰ってこない、そして・・・

“あの子”も転校しちゃって、会えなくなった。

そんなことを考えながら、ふと近くの公園に目を移した。

「あれ?」

1人の子どもがウロウロと公園内を彷徨っていた。

見た感じ探し物をしているというような感じだ。

滑り台の影や、ベンチの下、植え込みの中など、様々なところを探索していた。

身長的には・・・有花ちゃんと同じか、それよりちょっと高いくらいかな。

遠くからだからよく分からなかったが、服はぶかぶかで真っ黒。

頭にも黒い大きな帽子をかぶっていて、全身黒尽くめだった。

衝動的に・・・というか、無意識のうちに公園の門をくぐる。

その子どもは、人が来たことに気づいたらしく、チラッとこちらを見ると、

無言のまま自分の作業に戻った。

しかし不思議だ。

この時間なら他にも人がいておかしくないのに、あの子と私以外誰もいない。

私はさりげなくパンダの乗り物や砂場付近を見回った。

すると、砂の中から何か出ているのが見えた。

丁寧に砂を掘り、それを取り出す。

それは、写真だった。

砂が濡れていなかったので、写真自体は汚れることがなかった。

そこに写っていたのは、1人の優しげな女性と、

それに抱きつく、中学1年くらいの綺麗な黒髪の女の子だった。

きっと親子なんだろうな。

これが、あの子の探し物だろうか。

私は、未だに探し続けている子どもに話しかけた。

「あの・・・探しているのは、これ?」

子どもは振り向いた。

なんというか、その顔から感情がまったく読めない。

「・・・・・・これをどこで?」

「砂場だよ。砂に埋もれてたの。」

「・・・・・・そうですか。どうも、ありがとうございます。」

淡々と話すその子どもは、私の手から写真を受け取った。

突然、強い風が吹き、その風は目の前の子の帽子をさらった。

「あ。」

私はジャンプして間一髪、その帽子をつかむことが出来た。

「ふー・・・はい、どうぞ・・・」

子どもを見て、目を丸くした。

なぜなら、帽子ですっぽり隠れていたその頭の色が、真っ白だったからだ。

そのショートヘアは、毛先まで綺麗な白だった。

染めてる・・・ようには少なくとも見えない。

不意に、子どもが手を出してきた。

「帽子。」

とだけ言って。

私は慌てて帽子を手渡すと、その子は無言で帽子を被り直した。

その子は、正直言って男の子なのか女の子なのか、分からなかった。

「ね、ねぇ・・・君、名前は?」

「・・・・・・」

子どもはだまったままだった。

沈黙が辛い。

「あ、ご、ごめんね、言いたくなかったら・・・。」

そこまで言いかけたとき、子どもはぼそりと呟いた。

「・・・禾音。」

「え・・・カノン?」

子どもは黙って頷いた。

「男の子?女の子?ごめんね、見た目じゃ分からなくて。」

勇気を出して聞いてみた。

禾音と名乗る子どもは私を見上げ、

感情の読めない眼差しをぶつけてきた。

「・・・それは・・・貴女にとって必要な情報ですか・・・?

 僕が、男だろうと女だろうと、貴女には関係ないような気がしますが。」

「え、で、でも・・・呼び方的に困るから・・・。」

「果たして、会うことがありますかね。

 ・・・ま、お好きなように呼んでくれて構いませんから・・・。」

それだけ言い放つと、カノンという子どもは公園を出た。

私は、長い長いため息をつきながら、再び砂場を見る。

「・・・・・・あれ?」

さっきは気づかなかったけれど、なにか光るものが埋もれていた。

拾い上げ、砂を払うと・・・

それは、銀色の剣の形をしたチャームだった。

「これも・・・あの子の落し物かなぁ・・・?」

そんなことを考えていると、いきなりめまいが襲い、私は目を瞑った。







目を開くと、そこは白い世界だった。

足が地に付いてなくて・・・なんだかふわふわしている。

頭に声が響く。

『・・・・・・ラン・・・ラン・・・』

私を呼ぶ声。

でもそれは、聞いたことのない声だった。

また、意識が遠のく。






そして気づいたとき、

さっきと全く同じの公園の景色だった。

チャームを見つけたときと、体勢もすっかり同じ。


ただ1つ違うことは・・・

手に持っているのが、剣のチャームではなく、

1枚のカードだったこと・・・。





Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.23 )
日時: 2011/05/04 19:13
名前: 奏 (ID: Wb.RzuHp)


第11話 使い誕生


* 怜菜side

ちとせが委員会のため別教室に移動し、蘭が帰り、

冬弥が用事で教室に残り、要がバスケ部に顔出ししているころ、

私は、初等部の昇降口前に来ていた。

疎らではあるが、初等部生徒が帰宅を開始している。

すると、私の目当ての人物が、足早に校舎から出てきた。

「都和!!」

目当ての人物である都和は、私の呼びかけに驚きつつも振り返った。

その顔には、なぜだか焦りが見える。

「・・・・・・怜菜・・・。」

「あの、ちょっと質問したいことがあって。」

「・・・ボク、今すごく急いでるんですが、後でじゃ駄目ですか・・・?」

それを聞いて、私が少々戸惑っていると、

都和はごくりと唾を飲み込み、続けた。

「・・・分かりました・・・話聞くくらいならいいですよ。」

「ありがとう。あのね、さっきから肩のあたりがすごく重いんだけど、

 なんか霊とかついてないよね・・・?」

自分でも結構マヌケな質問のような気がしたが、

どうも気になるし、それに不思議な重さだったので、質問せざるをえなかった。

都和の表情が、焦りから驚きへと変わる。

「・・・安心してください。それは霊ではありません。」

それだけ告げると、都和は私を人目につかない建物の影に連れ込んだ。

「あの・・・都和、一体何を・・・?」

「怜菜、ボクが何をしても、叫んだり暴れたりしないようお願いしますね。」

そう言って、都和は私に、都和の腕をしっかりつかんでいるように命令し

『魔術師』のカードを取り出した。

「Practice」

そう呟き、マリアとの戦いのときに持っていた分厚い本を出すと、

ページを捲り、指で文字をなぞりながら何かごにょごにょ呟いた。





気づいたとき、私の足は、地から遠く離れていた。

そう、私は、都和にしがみついたまま飛んでいたのだ。

「・・・とっ・・・都和・・・?ななななにコレぇぇえぇ!!」

「怜菜、叫ばない約束ですよ。

 ちょっと目的地までひとッ飛びしますんで。」

都和は私から顔を背けたまま続けた。

「ちなみに、他人には見えないようにする力も使っていますので、

 地上にいる人には見えてません。でも、音は聞こえてしまいます。」

「あ、あぁ・・・だから叫ぶなと・・・。」

私は1人で納得した。

「でも、目的地って・・・?」

「・・・実は、少々前からカードの気配がしまして・・・早めに回収しないと厄介なことになるので。」

「気配・・・なんて分かるの?」

「はい。怜菜の言う、肩が重い、というのがそれです。

 でも、怜菜はまだ使いなりたてですから・・・あまりはっきりとは感じ取れないでしょう。」

都和はそう言って、ぐんぐんスピードを上げた。

・・・これ、落ちたらどうなるんだろう。

あまり下を見ないようにしながら、私は都和の細い腕をしっかり掴んだ。

ふと、都和が声を上げた。

「・・・いた・・・。」

「え?」

「ここら辺が、一番気配が強いです。

 ・・・ちょっと降りてみましょうか。」

そう言って、私と都和は地に足をつけた。

情けないけれど、足元がふらついてしまう。

都和が入ったのは、公園だった。

そこにいたのは・・・・・・

「あれ・・・?蘭・・・?」

呆然と立ち尽くした蘭だった。

「ふぇ!?・・・あ、2人とも・・・なんでここに・・・。」

「蘭、そのカード、どうしたのですか!?」

都和が食い気味で話しかける。

「・・・え、あぁ・・・チャームを拾ったら、いきなりコレに変わって・・・。」

蘭は寝起きのような、へなへなした声で喋っていた。

かと思うと、何を思ったか・・・

「ぷ・・・Practice」

と呟いた。



放たれた光に目を瞑り、

そして開いたとき、そこにいたのは・・・

大きな剣を片手に持ち、目を丸くしている蘭だった。

「実行・・・しちゃったよ・・・。」

「これは・・・蘭にもあとで説明が必要なようですね・・・。」

隣の都和が、半ば呆れ口調で言った。

一方、蘭はわけが分からないようで、わたわたしている。

すると、剣からなにか光るものが出てきた。

『ラン』

「あ、貴女、さっきの・・・」

『・・・あまり驚かないでね。私は正義。

 貴女をこのカードを持つに相応しい者と見て、これを託すわ。』

「え、託すって・・・え?」

『ふふッ・・・ごめんね、ちゃんとした説明は・・・そうね、その子から聞いてね。

 使いになるかならないかは貴女次第だけれど・・・ま、ゆっくり考えて。

 じゃあ、またいつか会いましょう。』

そう言って、ソレは消えた。

「ねぇ、今のって何?」

「精霊みたいなものですよ。あまり人目には現れませんけど。」

「精霊がいるなら、使いなんて必要ないんじゃ・・・?」

「・・・精霊はカードそのものみたいなものなので・・・別の使いが必要なんです。」

私との会話を終えた都和は、蘭に向きなおった。

「さ、蘭、どうしますか?」

「え、何が・・・?」

「使いになりますか?なりませんか?」

「で、でも、使いって何なの?」

「カードを護る者です。説明は後でちゃんとします。」

「・・・・・・都和も怜菜も、使い・・・っていうものなの?」

「えぇ、そうです。・・・あ、要も一緒ですけどね。」

何か今信じられないことを聞いたような気がした。

私の心を読んだかのように、都和は言った。

「要はボクと同じころに使いになりました・・・が、言ってしまえば、

 それほどカードには詳しくないです。基本部分は理解してますが。」

不意に、蘭が声をあげる。

「・・・あっ・・・あの、このカードは、なんで私を選んだの?」

「・・・さぁ?ですが、正義が蘭に相応しいからでしょうね。」

「でも、私には正義感なんて・・・」

私は無意識のうちに、びしっと蘭に向けて指差した。

「蘭!たとえ蘭がそう思ってなくても、周りがそう認めてるならいいじゃん!」

都和も蘭も、びっくりしたようにこっちを見ていた。

「・・・ははっ・・・そうだね。分かった、いいよ。なる。」

蘭はかすかに笑った。


これが、優しき正義の誕生だった。


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