複雑・ファジー小説
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- *Tarot-Labyrinth* コメ募集中><
- 日時: 2011/10/15 15:23
- 名前: 奏 (ID: mtBKxXTx)
はじめましての方ははじめまして。
二次小説で「悪ノ物語」というものを書かせていただいていた奏(かなで)です^^
そっちが完結したので、今度はオリジナルで書かせていただきます。
ちなみに、複雑・ファジーということなのですが、
80%がコメディ・ライトです。
あまり重い話はないですので、ご安心を´ω`*
■読む前に注意■
・奏のことが嫌いな方は回れ右
・荒らし、中傷目的の方も回れ右
・複雑・ファジーなのに重い展開少ねぇじゃん!ヤダ!って人も回れ右
・更新が休日だけだったりとかが嫌なかたは回れ右
・厨二的なものが受け入れられない方は回れ右
(↑実は一番重要)
基本金曜・土曜・日曜のいずれかの更新になるかもですが、
気長に待っていただけると嬉しいです。
キャラは多いのでここには書きません^^;
>>1 【主人公級キャラ】
>>2 【敵級キャラ】
>>3 【その他キャラ】
>>6 【用語説明】
- Re: *Tarot-Labyrinth* コメ募集中>< ( No.115 )
- 日時: 2011/10/19 21:33
- 名前: 奏 (ID: .7qV.whT)
続き
「じゃ、じゃあさ、私たちがピンチのときには
式乃ちゃんは助けてくれるの?」
「は・・・はい、“そのときにそこにいれば”ですけど・・・。」
式乃ちゃんはまだ落ち着かない様子で答えた。
「どういうこと?」
私の質問に、都和が真顔で淡々と答えた。
「この子は、気づいたらどこかに行ってることが多いというか・・・
普段はボクの傍にくっついてるんですけど、フラフラ出掛けることも少なくなくて。」
「な、なるほど。」
都和がふと時計を見て、すっと立ち上がった。
式乃ちゃんはそれを確認すると一層あわあわと手を動かした。
「・・・式乃。」
「うぅぅふあっ!!はいっ!」
「・・・あと、頼みますね。」
「わ、分かりましたです。」
そう言うと、都和は私たちに何も言わず、そのまま家を出て行った。
「どうしたの?」
「都和は神社のお手伝いに行ってしまったのです。」
「そっか・・・そういえば今日はバイトの日だっけ。」
しばらくの沈黙が流れ、式乃ちゃんは居心地悪そうに
私たちから目を逸らすと、もごもごと口を開いた。
「あ、あのぅ・・・。」
「ん?」
「霊体化になっても・・・いいでしょうか・・・。
長時間の実体化は避けておきたいので・・・。」
「え、あぁ、いいよ。
てことは、私たちと話せなくなっちゃうの?」
「いえ・・・話はできるようにしますから・・・
本来は都和にしか聞こえないのですが・・・・・・・。」
式乃ちゃんはそう言いながら姿を消した。
・・・が、実際は今までいた場所にいるんだと思う。
突然、ちとせが質問を投げかけた。
「ところで、あんたは本当に幽・・・いや、死者なんだよね?」
『はい、もう長いこと前に・・・。
小さな村・・・まだ生贄を行ったり、龍神に祈ったりしていたそんな時代に
・・・娘を残してあっさり死にました。』
「・・・む、娘?」
『あ、あの、シキは本当は20歳くらいなんです。
自分の姿は、20歳までは自由に変えられるので・・・今は都和に合わせているのです。』
「そうなんだ・・・。
あ、それで・・・死んでからはずっと柏葉家についていたの?」
しばらくの間を置いた。
姿が見えないので分からないが、たぶん思い出そうとしているんだろう。
『大体はそうでした・・・が、一時期・・・
えっと、都和の祖父が子供の頃は、柏葉を見守ることをやめました。
と言っても・・・2週間ほどそこを離れていたら、
住む場所を変えてしまっていたらしくて・・・つくことができなかったんです。』
「それで、都和が生まれたときにまた見守るようになったの?」
『・・・はい。』
「・・・・・・じゃあ、なんで都和の両親がいないのかは、知ってるんだよね?」
沈黙が流れた。
これは思い出そうとしてるんじゃないはずだ。
答えに迷っている。
私は直感的にそう思った。
『・・・知っています・・・が、知ろうとしても、駄目なのですよ。』
「・・・どうして?」
『・・・都和が今までこの家の場所を教えなかったのは、
そういうことも含めて、みんなに知られたくなかったからなのですよ。
都和、言ってませんでしたか?
“詮索しないように”って・・・。』
確かに言っていた。
それに、今質問しているちとせも、この間までは
人の事情に自分から首を突っ込みたくないとも言っていた。
『・・・だから、シキから言うことはなにもありません。
都和が自然と言えるようになるまで、待ってあげてください。
・・・・・・いずれきっと、言わなくちゃいけないような
都和にとっての大きな事件が・・・起こってしまう気がするのです。』
「事件・・・?」
『それについても、またいずれ。』
続いて、冬弥が話し出した。
「それにしても、よくそんな長い時間やってこれたよな。」
『“強い想い”だけで、シキは怨霊にならずに過ごしてこれました。
自分が姿を保ちながらやっておきたいことがありました。
でももう、そのうちの1つは叶いません。
・・・・・・だから、柏葉とこの世の行く末を見守ろうかと思ったんです。
せめて、都和が大人になって別の家庭というものを持つ日までは、
シキは傍にいようと思います。』
さっきまでおどおどしていた式乃ちゃんは、
真直ぐで透き通るような、どこか神々しさすら感じさせる声で、
私たちにそう告げた。
そして、一瞬だけ私たちに姿を現した。
その、未来を見据えるような綺麗な瞳を私たちに向けて。
- Re: *Tarot-Labyrinth* コメ募集中>< ( No.116 )
- 日時: 2011/10/23 23:27
- 名前: 奏 (ID: Byb50NrS)
第59話 「有」
* 有花side
「有花ちゃんまたおつかい?いつも偉いねえ。」
「ううん、桜ちゃんの役に立てるなら私も嬉しいもん。」
「そうかい、じゃあこれ、一個おまけね。」
「え、いいの?ありがとうございます!」
私は軽く会釈してお礼を言うと、その店を出た。
もうおつかいは済んだし、早く家に帰らなくちゃ。
小走りで家へ帰る道をまっすぐに駆ける。
「・・・ん?あれ?」
違和感に気づいて、桜ちゃんのくれたカゴの中を探る。
「お財布・・・落としちゃったのかなぁ・・・。」
急いで取りに戻ろうと後ろを振り返り、
再び駆け出そうとしたとき、
ドンッ
気づくと尻餅をついていた。
「・・・った・・・。」
目を開くと、そこにいたのは
私と同じように尻餅をついている、髪の長い人だった。
「・・・あ・・・ごめんね。」
その人はか細く呟いた。
「いや・・・ごめんなさい、私もちゃんと前向いてなくて。」
その人は先に立ち上がると、私の目の前に手を差し伸べてきた。
「・・・立てる?痛いところとかない?」
「え?あ、大丈夫。」
私はその手を握り、立ち上がった。
白くて綺麗な手だったけど、
なんだか違和感があった。
こういうの、「健康的じゃない」って言うのかなぁ。
真正面で向かい合ってみると、その人はお兄ちゃんよりも背が低かった。
長い髪は肘くらいまで伸びていて、
前髪は片目を隠している。
「・・・そうだ、さっき財布落としたの、君でしょ?」
「え、どうして知って・・・。」
「・・・さっき、偶然近くにいて、財布落とすの見かけたんだ・・・。
・・・ごめんね、すぐに呼び止めればよかったんだけど、
君、すぐに走って行っちゃったから・・・。」
そう言って、その人はピンク色の長財布を手渡してきた。
「!!・・・ありがとう!
えっと、お姉さん・・・名前は?」
私が笑顔でそう言うと、その人は一瞬目を逸らし、
小さな声で言った。
「・・・僕は———・・・。」
* 桜side
「たっだいまー!」
「有花ちゃんおかえりなさい。
おつかいありがとうございます。」
有花ちゃんがニコニコと笑ってカゴを手渡してくる。
「・・・ん?上機嫌ですね、なにかあったんですか?」
私が尋ねると、有花ちゃんは太陽のような笑顔で
私にさっきあったことを次々に話した。
「なるほど・・・それで、有花ちゃんはその子とお友達になったんですね。」
「うんっ!ちょっと変わった人かなって思ったんだけど、
すっごく優しい人だったんだよ!」
「ふふっ・・・よかったですね、
その子はどこに住んでいる子なんですか?」
「んー?分かんない。
聞いてみたんだけど、今は教えられないって言われちゃった。」
有花ちゃんはちょっと落ち込んだように肩をすくめた。
「そうなんですか・・・残念ですね。」
「でもね!いつか家に遊びに来てくれるんだ!
あっちこっち散歩してるから、またどこかで会えるって。」
そう話す有花ちゃんは、本当に嬉しそうだった。
* 真里亞side
「——というわけでー、今回から仲間に入ることになりましたー。」
「リーダー、その言い方、
まるで転校生を紹介する教師みたいですわよ。」
「ま、実際そんなもんだし、いいじゃんか。」
現在、ソファの上に座らされている、転校生ポジションのその子。
そしてその周りでその子をいじっては楽しそうに遊ぶ璃雨。
「・・・もう使いになっているんですか?」
禾音がリーダーに尋ねる。
「・・・あー、まぁな。
でも本当に成り立てだから、あんまり気は感じさせないみたいだけど。」
「あの子、名前は何になりましたの?年齢は?」
「名前は“或斗”。年は12だったかな。」
「へぇ・・・12歳にしては気弱に見えますわね。」
「お前が気強いだけだろ?」
思わずリーダーの足を踏みつける。
レディに対して失礼なのだから、
これくらいの仕打ちは当然だ。
「ただな、ちょっと問題があるらしくて。」
「問題?」
「なんか・・・本人曰く・・・。」
ガシャン!!
「んなっ!」
璃雨の驚きの声が響く。
声の方向を見ると、
箪笥の上で粉々に砕けている破片たちがあった。
えーっと・・・たしかあそこには
ちょっと大き目の花瓶があったような・・・。
花は挿してなくて、水も入ってなかったけれど・・・。
「ご、ご、ごめんなさいっ!!」
壊したであろう張本人—或斗—は、
こっちを振り向くと少々涙目で頭を下げた。
おかしいな・・・箪笥に乗ったまま粉々になってるってことは
落として壊したわけじゃない・・・それってつまり・・・。
小さくため息をついたリーダーは、
或斗の頭にポンと手を置くと、なだめるように言った。
「大丈夫だ、安物だから。
それより、手切ってたりとかしてないか?」
「う・・・は、はい・・・。ごめんなさい・・・。」
「いいって。ま、壊れやすいものにはあまり手を出すなよ。」
「はい・・・。」
或斗は小さく俯くと、再び大人しくソファの上に座った。
「リーダー、これ・・・。」
私が再度リーダーに声をかけると、
リーダーは頬を指で軽く掻きながら言った。
「なんか・・・本人曰く、
相当な怪力の持ち主らしい。」
「あ・・・あれ、怪力ってレベルじゃありませんわよ!!?」
「まぁまぁ・・・事情は聞いたけど、
それにも色々理由があるらしいから、気にしないでやってくれよな。」
「は・・・はぁ・・・。」
こうして、私たちは新たな仲間を迎えた。
- Re: *Tarot-Labyrinth* コメ募集中>< ( No.117 )
- 日時: 2011/10/25 07:05
- 名前: 奏 (ID: Byb50NrS)
続き
* 有花side
「・・・あ!ゆーくん!!」
「・・・?あ、有花ちゃん、こんにちは。」
小さな植木鉢を抱える私を見て、ゆーくんは会釈をした。
そうそう、ゆーくんっていうのは私が考えたニックネームで、
本名は別にあるんだけど。
・・・やっぱり、どこからどう見ても「女の子」にしか見えないなぁ。
でも、前に見かけたときと違って、両目はちゃんと見えるようになっていた。
「・・・何してるの?」
「んっとね、今お兄ちゃんのお友達の家に来てて、
で、メイドさんたちのお手伝いっていうか・・・一緒に遊んでるっていうか・・・。」
「なるほど・・・ていうか、メイドさんがいるくらい裕福な・・・
まぁ、見た目から大きい家だしね・・・。」
ゆーくんが家を見上げる。
確かに大きいし中も豪華なんだよね・・・。
私は今日たまたまここに来れたんだけど。
「ゆーくんも一緒に遊ぼうよ!」
「・・・え、で、でも・・・。」
「・・・?どこか行く用事でもあるの?」
「いや、ないけど・・・。」
「じゃあ遊ぼうよ!」
私がそう言うと、ゆーくんは目を背けて、照れたように頷いた。
「ていうか有花ちゃん、お兄さんいるんだね。」
「え?うん、そうだよ。
・・・本当のお兄ちゃんじゃないけど、でも私にとってはすごく大切!」
ゆーくんはそれを聞くと柔らかく笑った。
「・・・お兄ちゃんに会ってみる?」
「え?お兄さんもここにいるの?」
「うんっ!あ、でも他の友達も来てると思う。」
「あれ、有花ちゃん、その子は?」
ゆーくんと話していると、廊下の向こうから怜菜さんと蘭さんが歩いてきた。
ゆーくんは一瞬びくっと震えると、私の服の裾を掴んだ。
「・・・?どうしたの?」
「・・・・・・あ、ご、ごめん、ちょっと人見知りしがちで・・・。」
「そうなんだ・・・大丈夫だよ、2人ともお兄ちゃんの友達だから。
怜菜さん、蘭さん、この人がさっき話した・・・。」
そう、ゆーくんが来る前に、何気なくゆーくんのことは
みんなに話していた。
「あぁ・・・確か・・・“長谷川 有斗”くんだっけ?
・・・・・・・ってえぇっ!?」
蘭さんが驚いたような奇声を上げる。
まぁ、誰でも最初は驚くはずだと思う。
中断
- Re: *Tarot-Labyrinth* コメ募集中>< ( No.118 )
- 日時: 2011/10/25 18:18
- 名前: 奏 (ID: n5JLvXgp)
続き
だって、さっきも言ったけどゆーくんは本当に見た目が女の子で、
今日は特に・・・
なぜかツインテールだったから。
似合ってたからあえて触れなかったけど。
「・・・えっと・・・初めまして・・・長谷川有斗です。」
ゆーくんはちょっとおどおどした様子でお辞儀をした。
2人も、それにつられるように挨拶をする。
「え、えっと、水名月怜菜です。」
「たっ、反田蘭です、よろしく。」
挨拶を済ませた後、
私は怜菜さん、蘭さん、ゆーくんと一緒に、
お兄ちゃんたちのいる書斎に足を運んだ。
「ところで・・・さ、」
みんなが円形に机を囲むようにソファに座ると、
蘭さんが口を開いた。
「ゆーくんは、有斗“くん”でいいんだよね・・・?」
それに対してゆーくんは少々困ったように答える。
「え?あ、はい・・・そうですけど・・・。」
「ど、どうして、ツインテールなの?」
「・・・えーっと・・・知り合いに、有花ちゃんよりちょっと年下の女の子がいて・・・
その子に遊ばれた結果こうなって・・・
で、直しても直しても、結びなおそうとして追いかけてくるので諦めてこのまま外出したんです。」
女の子に間違われるのにはもう慣れたので、と言いながらゆーくんは笑った。
「な、なるほど・・・大変なんだね。
・・・でもすごく似合ってるよね、普通に女の子だよね・・・。」
なぜか怜菜さんがそう言いながらがっくりと肩を落としていた。
何を落ち込んでいるんだろう?
そんなことを考えていると、隣のソファに座っているお兄ちゃんが首をかしげた。
「・・・?お兄ちゃん、どうかしたの?」
「・・・え、あぁ、いや、なんでもない。
それより、舞姫と都和は?」
お兄ちゃんの問いに、冬弥さんが呟くように答えた。
お金持ちでハーフ(金髪)の冬弥さんだけど、
お兄ちゃんたちと並ぶと普通の男の子に見える。
「舞姫は溜まってる課題があって来れないし、
都和は用事があるから少し遅れるってさ。」
そのとき
「冬弥様、お友達がいらっしゃってます。」
1人のメイドさんが、部屋の扉を開けた。
と、そのすぐ後に、
「こんにちは・・・です。」
扉から、ひょっこりと都和ちゃんが顔を出した。
都和ちゃんはたまに廊下ですれ違ったりする程度だけど、
向こうは私がお兄ちゃんの妹だってことを知ってたみたいだし、
言うほど年も離れているわけじゃないので「ちゃん」で呼んでる。
「お、いらっしゃい。」
都和ちゃんがゆーくんの向かい側のソファに腰掛ける。
そして、誰?というようにゆーくんを見ると、
冬弥さんに目を向けた。
「あぁ・・・有花の友達で、“長谷川有斗”くん。
・・・正真正銘男子・・・だ。」
「・・・へぇ・・・。」
都和ちゃんがゆーくんをまじまじと見つめた。
ゆーくんは明らかに動揺した表情でちょっとだけ後ずさった。
後ずさったといっても、さっきより深く腰掛けただけなんだけど。
* 怜菜side
まじまじと見つめ、ソファに再び座り直した都和は、
短く、それも小さな声で呟いた。
「式乃。」
と。
「・・・はいっ。」
その返事と共に、いつか見た髪の長いあの子——式乃ちゃん——が現れた。
「式乃ちゃんも・・・来てたんだ。」
「都和の行くところになら、ついていきますよ。
・・・・・・practice!」
唐突に式乃ちゃんがそう言い、
両手の人差し指をピンと伸ばし、空中に円を作ると、
できた円をゆーくん目掛けて投げ飛ばした。
「SleepingRing」
「!!」
輪がゆーくんを包むように潜り、
ゆーくんは有花ちゃんが座っている反対側に横たわった。
「ゆ、ゆーくん!?・・・都和ちゃん、何したの・・・?」
有花ちゃんが慌ててゆーくんを擦った。
都和はそれに対して何も答えなかったが、
「眠らせただけなので安心してくださいね。」
と、代わりに式乃ちゃんが答えた。
都和はゆーくんの傍に立ち、方に触れた。
「・・・ふーん・・・カードは持ってないんですね・・・。」
「ど、どういうこと?」
「この人、カードの使いみたいです。微かに気配がします。
・・・けど、どうやらカードは持ってないみたいですね。」
「に、にしてももうちょっといいやり方ってものが・・・。」
「マリアたちの仲間だったとしたら厄介じゃないですか。
・・・でも、逆十字のデザインのものは持ってないみたいですから、
仲間かどうかは分かりませんけど。」
カード絡みになると、一気に表情も雰囲気も冷めた感じになる。
こういうときの都和は苦手だ。
「もしかして、お兄ちゃんも気配を感じ取ってたから
さっき首かしげたの?」
有花ちゃんが要に向かって尋ねた。
「い、いや・・・それもあるんだけど、
不思議に思ったのはそっちじゃなくて・・・。」
要は曖昧に返事をした。
「・・・式乃、記憶のほうは任せますから。」
「分かってますよ。たぶん、もうすぐ目を覚ますと思いますけど。」
都和と式乃ちゃんがそんな会話をしている中、
私はゆーくんの袖がめくれ上がってることに気づいた。
そしてそこからなんとなく見えたのは、
腕に巻かれた白い布・・・
取れかけの包帯だった。
直そうとゆーくんの傍に座る。
手を伸ばし、一度包帯を全て腕から取った。
「!!」
そこにあったゆーくんの腕は、
白い肌からは想像できないほどあざみたいに青緑に変色していて、
何か太めの針で刺されたような後がいくつも見られた。
「こ、これ・・・。」
私が近くに座っていたちとせを呼んだとき。
ガシッ
ゆーくんは突如私の手首を掴み、唸るような声を出しながら
大きな瞳で睨みつけてきた。
「・・・った・・・。」
それは、12歳とは思えないほどとてつもない力だった。
「ゆ、ゆーくん、ゆーくん!!」
有花ちゃんが慌ててゆーくんに声を掛けた途端、目の色が変わる。
ゆーくんは我に返ったように私から手を離した。
「・・・ご、ごめん、なさい・・・。」
そこにいたのは元の気弱そうな少年だった。
- Re: *Tarot-Labyrinth* コメ募集中>< ( No.119 )
- 日時: 2011/10/28 21:35
- 名前: 奏 (ID: AQHMnU3E)
* 怜菜side
その後、ゆーくんは何度も何度も私に謝ってくれた。
私は別に気にしなくていいって言ったけど・・・
本当のところ、掴まれたところはほんのり赤くなっていた。
どうしたのかと聞いてもみたけれど、
ゆーくんは黙ったまま俯くだけだった。
ただどうやら、私が見たあの青いあざのようなものと刺されたような痕は、
少なくとも彼にとって見られたくはなかったものだったらしい。
ちなみに、カードを所持しているかどうかを探ったあの短時間の記憶は、
都和の指示通りに式乃ちゃんが消去していた。
その後ゆーくんは逃げるようにその場を去った。
有花ちゃんに「また遊びに来るから」とだけ言って。
* リーダーside
「まったくもー!アルト!!
何敵陣にノコノコと入ってしまってますの!!」
「て、敵陣・・・?」
「そうですわよ!幸いカードはここに置いていってましたし、
逆十字の印もまだ渡していませんでしたから、仲間だとは気づかれなかったでしょうけど。」
或斗の帰宅後、仏頂面の真里亞は無理やり或斗をソファに座らせ、
どっかの子持ち主婦みたいな説教を始めた。
或斗が、ふと質問を投げかける。
「・・・ところで、その“印”ってどうして必要なの?
仲間ってことがばれたくないのなら、そんなもの必要ないんじゃ・・・。」
真里亞は少し沈黙すると、短くため息をつき
自分の逆十字デザインの髪飾りを指差して言った。
「・・・契約ですわ。裏切らないことの契約。
鎖の付いた首輪のようなものだと思ってくれても構いませんわね。
これがないものは、全てが敵だと判断しますわ。」
「・・・・・・裏切ればどうなるの。」
「決まってるじゃありませんの。
・・・容赦なくカードは奪いにかかりますわ。
それまで仲間だったからといって、手加減はしませんのよ。」
真里亞が鷹のようなきつい目をして、或斗を見た。
年下にこっぴどく叱られるのを見るのは、どうにも変な気分だ。
「とにかく!もうあの方たちに近づかないようにしてくださいませ!」
「・・・!で、でも、有花ちゃんはいい子だし・・・。」
有花という言葉を聞いて、真里亞が首を傾げる。
すかさずフォローを入れるように、部屋の置くから出てきた禾音が言った。
「・・・“元”太陽の使いの、清野有花ですよ、マリア。」
「・・・あぁ!私が奪ったカードの・・・ずいぶんちびっ子だった気もしますけれど。
なるほど、貴方が親しくなったのは柏葉都和たちではなく、そっちのちびっ子の方でしたのね。」
「大丈夫だと思いますよ。使いではなくなった太陽は、ほぼカードとは無関係な存在ですし。
関わりを持ったとしても困らないと思います。」
禾音の言葉を聞くと、真里亞は腕を組み、考え込むように俯いた。
「・・・まぁ、いいですわ。その、清野有花と関わるくらいなら。
ただ、絶対にその兄たちとの交流は避けてくださいませね。」
或斗はしぶしぶといった風に頷いた。
ただ俺は、何故俺たちともそれほど馴染めていない或斗が
突然太陽の使いと親しくなったのかが不思議でたまらなかった。
* 桜side
「要くん、どうかしたんですか。」
「・・・長谷川有斗のこと。」
「あぁ、有花ちゃんのお友達の・・・。」
「なんっか引っかかるんだよなぁ。」
要くんはさっきからずっと机に突っ伏しては考え込んでいた。
有斗くんの顔は私も少し前にチラッと見ている。
女の子みたいだったけど・・・。
「有斗と有花って、顔似てると思わないか?」
「え?・・・えぇ、そうですね、言われれば結構・・・。」
「有花ってたしか母親似だったよな、顔は。」
確かに、要くんは父親似だけれど、有花ちゃんは母親似だ。
と言っても、要くんと有花ちゃんの母は違うんだから、
どちみち似ないんだろうけれど。
「母親って・・・確か再婚する前に1度結婚してて・・・バツイチだったよな?」
「・・・えぇ、そうですね。」
「・・・【有】花と【有】斗ねー・・・。あ!」
「ど、どうしました?」
「なぁ、有花の母親、1度目の結婚の時の苗字なんだったっけ。」
私は突然の質問に戸惑いながらも、
思い出そうと必死に考え込む。
「えーっと・・・確か本当の苗字が畠で・・・
1度目の主人の苗字がー・・・えっと・・・。」
思い出したときにふと衝撃を感じた。
要くんの言う「引っかかること」というのが、私にも分かった。
私と要くんは同時に声をあげる。
「「長谷川・・・!」」
現在の清野家の奥様の前の苗字が「長谷川」ということ。
有花ちゃんと有斗くんの顔が似ていること。
「有」花と「有」斗という名前。
ここから要くんが考えたことは、既に大体分かる。
要くんが言いたいのはきっと———・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そういえば前回のを読んで思ったんですが、
有斗(或斗)は怪力ではありますが
握力自体は普通(もしくはちょっと↑)ぐらいです。
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