複雑・ファジー小説

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*Tarot-Labyrinth*  コメ募集中><
日時: 2011/10/15 15:23
名前: 奏 (ID: mtBKxXTx)

はじめましての方ははじめまして。
二次小説で「悪ノ物語」というものを書かせていただいていた奏(かなで)です^^
そっちが完結したので、今度はオリジナルで書かせていただきます。

ちなみに、複雑・ファジーということなのですが、
80%がコメディ・ライトです。
あまり重い話はないですので、ご安心を´ω`*

■読む前に注意■
・奏のことが嫌いな方は回れ右
・荒らし、中傷目的の方も回れ右
・複雑・ファジーなのに重い展開少ねぇじゃん!ヤダ!って人も回れ右
・更新が休日だけだったりとかが嫌なかたは回れ右
・厨二的なものが受け入れられない方は回れ右
 (↑実は一番重要)


基本金曜・土曜・日曜のいずれかの更新になるかもですが、
気長に待っていただけると嬉しいです。


キャラは多いのでここには書きません^^;

>>1 【主人公級キャラ】
>>2 【敵級キャラ】
>>3 【その他キャラ】

>>6 【用語説明】

Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.125 )
日時: 2011/11/01 23:02
名前: 奏 (ID: WtPXn5LU)


>>124 瑚雲

長いもんなぁ・・・。
自分で「矛盾発生しないように」って思って
読み返そうとするだけでも眠くなるs((


おうふ(´ω`*)
ありがとぬーw
見に行きますわww

Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.126 )
日時: 2011/11/02 01:00
名前: 奏 (ID: WtPXn5LU)

番外編続き

*視点なし

それは、要たちが小学校に入学する前の物語。

要は、新しく家に来た母親を恐れていた。

母は、自分の息子ではない要に愛情を与えることができなかったのだ。

さらに、自分の実の娘である有花のことも「可愛がる」様子はなかった。

「邪魔だよ、どいて。」

「・・・ごめ・・・なさい・・・。」

邪魔だと言われては突き飛ばされる要。

実の父親の部屋に足を踏み入れても、

「・・・お父さん・・・。」

「え、あ、あぁ要か。今忙しいんだ、後でにしてくれないか。」

口調は優しいものの、それはまるで何かに怯えるような振る舞いで、

いつもいつも要から逃げるような仕草をとっていた。

そうしていつの間にか両親は海外へ発ち、

哀れに思った親戚の人たちが手伝いに訪れた。

そのときに出会った桜にさえ、要は心を開かなかった。

「要くん、こんにちは。」

「・・・・・・。」

要は無言でそっぽを向くだけだった。

その後、桜と有花が一緒に遊んでいる頃、要はいつも家を離れるようになっていた。

居場所は公園。

だが誰かと遊ぶというわけではなく、いつも一人でボーっとしていた。

家にいるそれまで会ったこともなかった従姉と、血の繋がらない妹と一緒に過ごすことが、

当時の要にとっては苦痛でしかなかったのだ。

公園に来るようになって数日後。

初めて要に話しかける子供が現れた。

「・・・1人で何してるの?」

「・・・」

「ね、今暇なの?」

「・・・」

要は何も答えなかったが、その子供は要の周りをうろうろしたり、顔を覗き込んだりしては

質問攻めを繰り広げていた。

「ねー、答えてよぉー。暇なら一緒に遊ぼうよ、ね?」

「え・・・?」

不意に疑問符を投げかける。

『一緒に遊ぼう』

それは今まで、桜にしか言われたことがない言葉だった。

「ね!」

そう言って目の前の子供は要に手を差し伸べてきた。

笑顔の眩しいその子は要とは対照的だったが、性格が悪そうには全く見えず

要がその子を『嫌い』になる要素など見当たらなかった。

「・・・うん!」

要は細く小さな手で目の前の手に触れた。



「君、名前は?」

ブランコを漕ぎながらその子が尋ねる。

「せ、せいの、かなめ・・・。」

「かなめくんか、よろしくね。

 わ・・・僕はえーっと・・・・・・ま、マサって呼んで。」

「マサ・・・くん?」

「そうそう!」

一瞬名前を言うことを躊躇ったように見えたが、

幼い要にはそんなことどうでもよかった。


そうして、楽しい時間はあっという間に過ぎていき、

空と道がオレンジ色に染まる時間を迎えた。

「楽しかったよ、ありがとう。

 ・・・・・・かなめくんは、明日もここにくるの?」

「・・・え?・・・うん、くるよ、絶対。」

「そっか。じゃあ、僕もまたくるね!

 明日はバスケットボール持ってくるから、それで一緒に遊ぼ!」

「ばす・・・?」

「あ、えっとね、ほら、あの網みたいなのに入れるんだよ。」

指を指した方向には、2つのゴールがあった。

この公園の隣には、スケボーやバスケができる空間もある。

「・・・色々、ばすけのこと教えてね。」

「うんっ!じゃあ、また明日ね!!」

そう言って、満面の笑みで要の初めての友達は去っていった。

このときから、要が周囲の人々に心を開き、

バスケ少年に目覚めるまでのカウントダウンが始まっていた。




その後。

約束どおりにバスケットボールを持ってきて、

ゆっくりゆっくり、初心者である要は教授されていた。

「じゃあぱーっす!」

マサと名乗る子供に向かってボールを投げたそのとき、

「かなめくん上手——・・・うわっ!」

キャッチしたときに足元にあった段差に躓き、マサは背中から地面に倒れてしまった。

そのとき——

「・・・いったた・・・。」

「ま、マサくん大丈夫・・・?あれ・・?」

そこにいたマサは、パーカーと半ズボン姿はさっきまでと全く変わらなかったが、

肩辺りまでの短めのポニーテールの姿だった。

よく見ると、転がったバスケットボールの傍に、別の髪の毛が落ちている。

「わ、わわっ!」

慌ててそれに気づき、急いで拾い上げると慣れた手つきでそれを被った。

申し訳なさそうにマサは要を見る。

「・・・あ、その・・・ごめんね、ちょっとわけがあって・・・怒ってる?」

「え、ううん、全然。ちょっとびっくりしただけだよ。」

「そっか・・・。あのね、私家から逃げてるっていうか、それで、その、

 男の子の格好すればばれないと思ってね・・・。

 本当の名前はふじさきまきっていうんだ。」

「えっと・・・じゃあ本当は女の子なんだよね?」

舞姫は小さく頷いた。

要は申し訳なさそうに立っている舞姫に向かって柔らかく微笑み、

初めて出会ったときにされたように手を伸ばした。

「・・・これからも、友達でいてくれるよね、まきちゃん。」

「え・・・?」

呆気にとられたような表情をする舞姫だったが、

すぐに微笑み返して手を握った。

「うんっ!」



そうして何日か、要と男装した舞姫は

夕方まで公園で遊ぶようになっていた。

そうして要も、少しずつではあったが桜や有花と話すようになり、

控えめではあるが、多少の笑顔も見せるようになっていた。

だがそんなある日、

突然舞姫は、公園に姿を現さなくなった。




Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.127 )
日時: 2011/11/02 21:44
名前: 奏 (ID: zuIQnuvt)

番外編続き

*視点なし

「・・・あ、要くん、おかえりなさい。」

「・・・・・・・・・ただいま、桜お姉ちゃん。」

もう5日も、舞姫は公園に姿を現さなかった。

肩をがっくり落としながら俯き加減で歩く要に、桜が声をかける。

「あのね、要くん。私のお父さんが噂で聞いたらしいんだけど、

 舞姫ちゃんね、入院しちゃったんだって。

 ・・・だから、病院にいるから、こっちに来れないんだって。」

「・・・どうして・・・?まきちゃん、病気なの?」

桜は悲しそうに目を細め、ゆっくりと首を左右に振る。

「舞姫ちゃんは、あの日公園に来る途中に、転がっちゃったボールを取ろうとしたら、

 スピード出してる自転車にぶつかっちゃって、怪我したんだって。」

要は目を丸くした。

「・・・で、でもね、死んじゃったりするわけじゃないから・・・

 きっと、怪我が治ったらまた一緒に遊べるようになるよ、ね?」

「・・・僕、まきちゃんに会いに行きたい・・・。」

涙声で、小さな少年は訴えた。

桜は、しばらくうろたえるように周りを見回したり、要の背中を擦ったりしていた。

が、しばらくして意を決したように一度頷く。

「・・・分かった、明日、私と一緒に行こう。」

「・・・うん。」




翌日。

そろーりと戸を開ける。

舞姫が入院していた病室には、他に3人の患者がいた。

邪魔にならないように静かに歩き、一番奥のベッドを見る。

目当ての人物は、遠い目で窓から外を眺めていた。

「まきちゃん。」

「!?・・・か、かなめくっ・・・!!」

言いかけて慌てて舞姫は口を押さえる。

周りに別の患者がいるということを忘れるほど驚いたのだろう。

と言っても、周りの患者にも見舞いが来たり、テレビを見たりしているので、

普通に喋る程度なら問題なかった。

「・・・ごめんね、一緒に遊べなくて・・・。」

「ううん、それより・・・痛いの?」

「ちょっとね。でも全然大丈夫だよ。」

舞姫はにこっと笑いながら言った。

「あの、舞姫ちゃん、お家の人は?」

不意に桜が尋ねる。

「今日はまだ来てないんです。・・・でも、お昼になったら来ると思います。」

「そう・・・。じゃあ私飲み物買って来るね。

 要くん、それまでここで待っててね。」

「うん。」

桜がにこにこと手を振りながら病室を後にした。

それを見ながら、舞姫は小さく微笑む。

「・・・みんなと仲良くしてるんだね。」

「うん。まだ“家族”みたいにはなれてないけど・・・。

 ・・・そうだ、まきちゃん、怪我が治ったら、また一緒に遊べるんだよね?」

要がそう言うと、舞姫はそれまでの笑顔を消し、

悲しそうな瞳を自分の手元に向けた。

「・・・あのね、私今まで、踊りのおけいこを抜け出して遊んでたの。」

「おどり・・・?」

「うん。まだちゃんと踊ってるわけじゃないんだけど、

 母さ・・・お母様たちの踊りをちゃんと見てなくちゃいけなかったの。

 でもそれがいやで家を抜け出してたの。」

「・・・うん。」

「皆、それを知ってたけどしばらく何も言わないでおこうってことにしてたみたいなの。

 でも、この怪我のこともあって・・・もう遊びに行けなくなっちゃった。」

「え・・・?」

「諦めておけいこしなさいって。

 ・・・だから、ごめんね、私——・・・。」

「・・・じゃあ・・・じゃあ、今度は僕がまきちゃんの家に・・・。」

「それは——・・・。」

要の言葉を遮るように言葉を重ねた舞姫は、

一度落ち着くように深呼吸し、続けた。

「・・・止めたほうがいい。私の家には、来ないほうがいいよ。

 きっと、かなめくんが私のところに来ても、私は一緒に遊べないから。

 それどころか、かなめくんが追い返されちゃうかもしれない。」

舞姫は申し訳なさそうな表情と微笑を浮かべて言った。

要はその表情を見た後、ゆっくり俯く。

「・・・・・・・・・ごめんね、かなめくん。」

「今度は・・・いつ会えるのかな。」

「わかんない・・・でも、きっとまたすぐ会えるよ。

 そしたらまた、一緒にバスケしようよ。ね?」

「うん・・・。」

未だに俯いている要を見て、舞姫はベッドの下のほうに手を伸ばした。

そうして手に取ったのは、

あのバスケッットボールだった。

「はい、これ。」

「え?」

「かなめくんにあげる。

 ううん・・・私と次に遊ぶときまで、それは持ってて。

 絶対、また遊ぶっていう“やくそく”のしるし。」

「やく・・・そく?」

「そうだよ、また、絶対、ぜーったい、遊ぼうね。」

舞姫はそう告げて、首を傾けながら笑った。

それにつられるようにして要も小さく微笑む。

「うんっ!」




それから1年近く、要と舞姫が会うことは1度もなかった。

その間、要は怜菜たちと知り合い

一緒に遊ぶことも多くなるが、頭の中から舞姫の存在は消えなかった。

そして、桜が舞う春の日。

それは、小学校の入学式の日のことだった。

「要くん。」

不意に呼ばれ、振り向いた先に、

ずっとずっと、会いたくて仕方がなかった舞姫の姿があった。

「舞姫・・・ちゃん。」

「6年間、よろしくね。

 ・・・それから・・・いっぱい、一緒に遊ぼうね!」





Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.128 )
日時: 2011/11/03 22:37
名前: 奏 (ID: vVtocYXo)


*怜菜side

「・・・小学校に入学したとき、要がどうして舞姫とあんなに親しいのか不思議だったけど・・・

 私たちと会う前にそんなことがあったんですね。」

「はい。でも、舞姫ちゃんはお家の都合で4年生のときに転校しちゃったじゃないですか。」

確かに、舞姫は4年のときに1度転校してしまっている。

あの時は蘭がすごく泣いてて大変だったような・・・。

みんなが蘭を慰めて、舞姫に贈り物したりして・・・。

「あの日、要くん部屋にこもって泣いてたんですよ。」

桜さんがクスクスと小気味良さそうに笑う。

「え?か、要が?でも学校では・・・。」

「たぶん、泣いてないと思います。

 でも、お家に帰ってきたら無言でお部屋に入っちゃって・・・

 心配してちょっとお部屋を覗いたら、ベッドに顔をくっつけて泣いてたんです。

 舞姫ちゃんは特別な存在でしたし、2度目のお別れでしたから、よほど寂しかったんでしょうね。」

「要・・・4年生の頃は弱虫じゃなくなってたから分からなかった・・・。

 そっか、本当は要も・・・いや、要が一番辛かったのかな・・・。」

「・・・でも、今はこうやってまた会えることができました。

 要くんも表情には出してませんけど、内心舞姫ちゃんと一緒にいられることが嬉しいんです。」

初めて要の心中を聞かされた気がした。

桜さんが笑顔のまま写真の中で微笑む2人に目を向ける。

「要くんは・・・いや、私たちはみんな舞姫ちゃんのおかげで今があります。

 舞姫ちゃんには感謝しなくちゃならないし、要くんも舞姫ちゃんのためなら、

 きっとどんなことでもするでしょうね。」

「・・・それは、要が昔のことをちゃんと覚えてるから・・・?」

「それもあります。でも、それだけじゃないんです。

 ・・・きっとこれは、あまり人に話されたくないと思うので、私からは言いませんけどね。」

桜さんはそう言って笑うと、アルバムのページを捲り

雪の降る中舞姫1人だけがカメラを向いて微笑んでいる写真を見た。

いつの写真かは分からなかったけど、

小学校4年より後・・・つまり舞姫が転校してしまって、私たちが会えなかった頃のものだと思う。

「さて、じゃあそろそろ2人が降りてくると思うので、お話はここまでにしましょう。」

桜さんがアルバムを閉じ、私に微笑みかけると部屋を出た。

そして、部屋の横にある階段下から声を掛ける。

「舞姫ちゃん、要くん起きました?」

「あ、うんっ!もうそろそろ準備終わると思うー!

 ・・・って要、何してんの・・・絡まったって・・・ほら、こっちおいで。」

微かに舞姫の声が聞こえた。

それを聞いて、また桜さんはクスクス笑いながら私の向かい側に座った。

「なんだかあの2人、姉弟みたいですね。」

「ふふっ、ですよね。

 舞姫ちゃんは要くんを放っておけないみたいですし。」

桜さんは一口お茶を啜ると、

しばらく何もない空間に目を向けて、そういえば、というように手を口元に触れさせた。

「要くんにとって舞姫ちゃんは恩人で大事な人ですけど、

 最近は、本当にそれだけなのかなって感じがしますね。」

「・・・?それってどういう・・・。」

「・・・要くんも舞姫ちゃんも、お互いのことを大事な友人で相棒・・・みたいに感じていると思います。

 でもなんだか、それだけじゃない気もするんですよね。

 2人とも自分のことに鈍感だから、全然気づいてないと思いますけど。」

桜さんはそう言ってまたお茶を口に含んだ。

それでも私は、その意味をちゃんと理解することができなかった。

そのとき階段のほうからドタドタと音が響いてくる。

「怜菜ちゃんおまたせっ。」

笑顔の舞姫が長いポニーテールを揺らして顔を覗かせた。

そしてその後ろに

「・・・悪い。」

申し訳なさそうに私を見つつ、頬をポリポリと掻く要の姿が見えた。

私は立ち上がり桜さんに向く。

「あ、えっと、ごちそうさまでした。」

「いえいえ、楽しんできてくださいね。」

桜さんはそう言って微笑む。

「じゃあ桜ちゃん、いってきます。」

「・・・いってきます。」

舞姫と要も挨拶を済ませ、先に玄関へ向かう。

私もそのあとに続こうとすると、

「あ、水名月さん。」

「え?」

不意に呼び止められ、桜さんを見ると、

彼女は笑ったまま、右手の人差し指を唇に当てた。

きっと、さっき話したことを誰にも・・・要たちには言わないようにってことだろう。

私は桜さんと同じポーズをして、笑顔で頷いた。

「怜菜ちゃん?」

「あ、ごめん、すぐ行く!」

私は慌てて玄関へと向かった。

そこで私を待ってくれていた2人を改めて眺めると、

それは確かに私の幼馴染ではあるのだが、

どことなく他の者を寄せ付けないような、とても強い絆のようなものが感じて取れた。

「・・・?どうかしたの?」

「え?ううん、なんでもないよ。

 ただ、舞姫と要って本当に仲がいいなーって思っただけ。」

「どうしたんだよ急に。」

要すらも不思議そうな顔で私を見た。

私はとにかくなんでもないとだけ告げて、外へ飛び出した。





■番外編1■〜バスケ少年と舞踏少女〜 完

Re: *Tarot-Labyrinth*  コメ募集中>< ( No.129 )
日時: 2011/11/04 18:48
名前: 奏 (ID: 2.GeU6Nm)

第60話 琥乎

* 怜菜side

「あれ?都和は?」

朝になり、私の家の前で待っていてくれたのは、蘭だけだった。

「あぁ、さっき式乃ちゃんが来てね、

 具合が悪いから学校休むってさ。」

「ふぅん・・・大丈夫かな。」

「大丈夫だと思うよ、式乃ちゃんがついてるし。

 会ったときも、薬を買いに行く途中だったんだって。」

「そっか・・・それにしても、都和って急に体壊すこと多いよね。

 元から体弱かったっけ?」

「ううん、そんなことなかったと思うよ。

 小さい頃よく一緒に遊んでたけど、全然そんなことなかったじゃん。」

私たちの朝は、そんな会話から始まった。



* リーダーside

「ココ、入るぞ。」

俺は片手に飯やらおかずやらを乗せた盆を持ち、

とある部屋の扉をノックした。

ここの部屋の住人、偽名は琥乎——ココ——。

璃雨がここに来るより前にここにいたが、

ほとんどの日は体調を崩していて、部屋から出ることがない。

だから俺は毎日、琥乎の部屋に来ては食事を与えている。

ぶっちゃけ戦闘に行ったこともないし、あまりカードに関わったことも、

俺たちと深い交流をしたことも未だにない。

が、それでも俺たちの仲間だということは、誰もが知っていた。

「・・・あれ、なんだ、今日は調子いいのか。」

ドアを開けると、そこには窓を全開にして風に髪を靡かせている琥乎の姿があった。

「飯持ってきたけど・・・食うだろ?」

俺が尋ねると、琥乎は無言のまま頷いた。

こいつは真里亞たちが言うには、柏葉都和と瓜二つらしい。

俺は禾音が撮った写真でしか見たことがないのでよく分からないが、1つ言えることは

正直似てるってことだ。

「じゃあ、食い終わったらこっちに持ってくるか、

 部屋のドアの前に置いておけよな。

 ・・・それと・・・たまには外出てみてもいいんじゃないか?」

琥乎はそれを聞くと

机に盆を乗せ、椅子に腰を落ち着かせながらまたこくりと頷いた。

俺が部屋を出ようとするとき、

微かに琥乎の可愛らしい声が聞こえた。

「・・・ありがとうございます。」

と。







■なんかの伏線になってるといいなぁ。


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