複雑・ファジー小説
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- *Tarot-Labyrinth* コメ募集中><
- 日時: 2011/10/15 15:23
- 名前: 奏 (ID: mtBKxXTx)
はじめましての方ははじめまして。
二次小説で「悪ノ物語」というものを書かせていただいていた奏(かなで)です^^
そっちが完結したので、今度はオリジナルで書かせていただきます。
ちなみに、複雑・ファジーということなのですが、
80%がコメディ・ライトです。
あまり重い話はないですので、ご安心を´ω`*
■読む前に注意■
・奏のことが嫌いな方は回れ右
・荒らし、中傷目的の方も回れ右
・複雑・ファジーなのに重い展開少ねぇじゃん!ヤダ!って人も回れ右
・更新が休日だけだったりとかが嫌なかたは回れ右
・厨二的なものが受け入れられない方は回れ右
(↑実は一番重要)
基本金曜・土曜・日曜のいずれかの更新になるかもですが、
気長に待っていただけると嬉しいです。
キャラは多いのでここには書きません^^;
>>1 【主人公級キャラ】
>>2 【敵級キャラ】
>>3 【その他キャラ】
>>6 【用語説明】
- Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.39 )
- 日時: 2011/05/22 00:05
- 名前: 奏 (ID: dwViS6JR)
第22話 鎌
* 都和side
真里亞は、初めから合成の・・・悪魔の姿で現れた。
蘭と冬弥に関しては、相当驚いているようだ。
まぁ、私の話した「敵」というのが
こんな小さな子供だったのだから、仕方ない。
「・・・マリア・・・なんでここに・・・。」
要が呟く。
「・・・・・・・・・ふん。」
見下したように鼻で笑った真里亞は、
背丈より大きなフォークを、地面に思い切り突き刺した。
この間私を吹き飛ばした、忌々しいその強風は、
隠者・・・南由に向かって放たれた。
すかさず要がフォローに回り、
空間をゆがませて風を南由から逸らす。
何もできないことが歯痒い。
・・・でも、正直意識が朦朧としているこんな状況で、
カードなんて使えるはずがない。
使えたとしても、技を繰出す前に気絶して終わる。
私は、怜菜にアイコンタクトを送った。
それに気づいたのか、怜菜は少々戸惑いながらも、
軽く頷き、節制のカードを取り出した。
真里亞の次の攻撃が出される前に、怜菜が節制の姿へ変わる。
「・・・・・・。」
無言のまま、ちらっと怜菜を見た真里亞は、
無表情のまま、フォークを要に向かって振り切った。
そんなものは物ともせず、
要は再び空間を歪ませ、ソレを横の木にぶつけた。
その瞬間を狙い、怜菜は水の円盤を飛ばす。
・・・が、分かっていたかのように、真里亞は羽を広げて飛び上がり、かわした。
「要!!」
呼びかけると、要は空中で静止した瞬間を見逃さず、
青い球を真里亞の周りまで飛ばし、その空間を歪ませ、
真里亞の身動きを取れなくした。
「・・・・・!」
流石の真里亞も、いきなりのコレには驚いたようだ。
「怜菜!!お願いします!」
「う、うんっ!!」
怜菜の持つ銀のグラスから、滝のような水が噴出された。
それは、真里亞に向かってまっすぐ突き進む。
一瞬だけ、瞬きをした瞬間、
その水は、消えた。
「・・・え?」
怜菜も急な展開に目を丸くした。
そんなとき、木の間から、水に濡れた鎌が現れた。
「・・・マリア、油断は禁物って、いつも言ってますよ、僕。」
「・・・申し訳ございませんわ。
ありがとう、助かりましたわ、カノン。」
カノンと呼ばれた、鎌を持つ人間は、
無表情のまま、白髪を揺らしてその姿を現した。
「・・・さ、もう動けるはずですよ、降りてきてください。」
そう言うと、真里亞は羽を広げて、地に足をつけた。
これはまた、
厄介なことになりそうだ。
- Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.40 )
- 日時: 2011/05/22 18:12
- 名前: 奏 (ID: 6vo2Rhi6)
第23話 隠者を懸けて
* 真里亞side
禾音のおかげで助かった。
技を使っても、まだ体力は大丈夫なようだ。
禾音は実行のみの状態だが・・・問題はないだろう。
この子の力は侮れないものだ。
「・・・カノン、無茶は禁物ですわよ。」
「分かってますよ。・・・マリアこそ、油断しないよう。」
「了解、ですわ。じゃあカノンはあちらの方、お願いしますわね。」
私は節制を指差してそう言った。
カノンが軽く頷いたのを確かめると、私は、青い球を操る法王向かって駆け出した。
ちなみに、隠者は攻撃を仕掛けず、ずっと粉々に割れた黄色い球の
修復を行っていた。
* 要side
俺に向かってきた真里亞は、フォークを俺に向けて振り落とした。
ぶつかる寸前、俺は身を低くして避ける。
それでも真里亞は、何度も何度も体の向きを変え、
そのいかにも重そうなフォークを振りかざしてきた。
「ち・・・しっつけーなぁ・・・。」
こっちは飛ぶこともできない。
それを知っているからこそ、こんなにしつこくしてくるのだろう。
体力を消耗させるためか・・・。
「・・・レディに対してしつこい、だなんて、嫌われてしまいますわよ?」
馬鹿にするようにそう笑う。
「レディって・・・お前はまだまだガキだろう・・・がッ!!」
青い球を真里亞の周りに飛ばす。
「・・・。」
真里亞は途端に動かなくなった。
いや、動けなくしたのだ。
「またこれですのね・・・。貴方も相当しつこいですわよ・・・?
ですけれど・・・。」
安堵したのもつかの間、
真里亞は、動かないはずの羽を思い切り広げた。
「なっ!?」
「甘いですわね。同じ手に2度かかると思いまして?
貴方の力はありますけれど、やはり実行だけなら、私には勝てないと思いますの。」
真里亞は羽と右腕をぱたぱたと動かしてみせた。
そしてそのまま、フォークを一回転させると、
先を俺に向ける。
「Poison Numbness」
なんかよく分からん英語が聞こえた。
自分の馬鹿さ加減を嘆く前に、この状況をどうにかしなくては。
が、間に合わなかった。
気づけば俺の体は、身動き一つ取れないほどに痺れていた。
「・・・ぐ・・・。」
痺れた感じが気持ち悪い。
目の前の真里亞は、満足そうに笑うと、
角と尻尾を左右に振った。
犬かこいつは・・・。
「痺れる毒の技、ぶつかるだけで痺れて動けなくなる。
・・・甘く見てるとこんな事になりますのよ。」
真里亞は、痺れに耐える俺に背を向け、怜菜へと視線を移した。
「カノン、そっちはどうですの?」
カノンと呼ばれたそいつは、
ゆっくりと振り向くと呆れ口調に言った。
「マリアの痺れ技、こっちまで飛んできてしまいまして・・・
僕がどうにかする前にこんな状態ですよ。」
怜菜は、俺と同様、痺れたまま動けなくなっていた。
「一石二鳥ってやつですわよ!!」
「・・・ていうか、狙い定めきれてなかっただけですよね・・・。」
「うっ・・・うるさいですわ!!」
俺は都和を見た。
未だ、苦しそうに木にもたれかかっている。
こういうときなら、何とかしてくれるやつだけど・・・
流石に今は・・・どうしようもないか。
ちとせが、都和に話しかけた。
「・・・と、都和・・・私たち、何もしなくていいの?」
「・・・・・・・・・生半可な気持ちで素人が手を出しても、状況は悪化するだけだと思いますから・・・。」
つまりは手を出すな、ということだ。
だが・・・何かおかしい。
都和がこんな状況を見過ごすと思えない。
何か作戦でもあるのか・・・?
「カノン、大丈夫ですの?」
「・・・今の所は。
でも・・・さっき結構動きましたし・・・念のためここで・・・。」
「分かりましたわ。あとは私が何とかしますわね。」
真里亞はフォークを構えると、体勢を低くし、委員長向かって走り出した。
委員長は、1歩も動かないまま、ただただ黄色い球を浮かせ、何か呟いている。
ただ、表情だけは少しだけ焦っていた。
痺れがキツくなり、
地に手をつけて目を少しだけ閉じた。
すぐに開き、再び元の場所へ視線を移す。
そこにいたのは、委員長と真里亞だけではなかった。
フォークは、銀色の大きな刃にぶつかっている。
その剣を持ち、フォークを支えるのは
紛れもない、
気の弱い『正義』の使い、反田蘭だった。
- Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.41 )
- 日時: 2011/05/24 21:49
- 名前: 奏 (ID: RstPacfE)
第24話 雷鳴
* 怜菜side
蘭は怯えていた・・・が、その表情は真剣そのものに見えた。
「・・・あなたは・・・・・・・・・ド素人に、私が負けるとでも思ってますの?」
一瞬だけ驚いた真里亞だが、
すぐにいつものあざ笑ったような顔と口調に戻った。
蘭も、それに対抗するかのように声をはる。
「・・・わた・・・しはッ・・・生半可な気持ちなんかじゃ・・・ないッ!!」
蘭は剣を支える手に力を込め、真里亞のフォークを押した。
真里亞は、ほんの少しだけ地に足を埋もれさせ、後ろに滑る。
「くっ・・・!!」
真里亞は真横にフォークを振り、
自分の体と蘭の体を弾き飛ばした。
「きゃッ!!」
その反動で、蘭は委員長のすぐそばで後ろに転んだ。
「いってて・・・。」
真里亞はそんな蘭を思い切りにらみつけながら体勢を低くし、
フォークを構えて、威嚇するかのように動かない。
一方、弱りきっている都和は、
蘭でも、真里亞でもなく、無言のままこちらに背を向け、
黄色い球を浮かせている委員長を見つめていた。
* 蘭side
私は手についた土を払い、剣を構え直した。
真里亞という女の子の顔が・・・目が怖い。
獲物を狙う鷹のような、鋭い眼差しが、私を捕らえている。
怖い・・・けど・・・でも・・・。
私がそんなことを考えていると、後ろにいた本郷さんがいきなり振り向き、
私のすぐ隣に来て、私に向かって言った。
「・・・ありがとう。」
「え?」
本郷さんは、怜菜たちを見回して、かすかに微笑み、言った。
「・・・みんなもありがとう。おかげでまた準備ができたわ。」
「準備・・・って・・・?」
本郷さんは、さっきまでのクールな表情と一変、
私に微笑みかけた。
「見てて。それから・・・あとは私に任せて。」
真里亞は未だ私を睨み付けながら言った。
「・・・いつまでお喋りを続けているんですの?
私、それほどまで甘く見られているのでしょうか・・・ねッ!!」
真里亞は私と本郷さんめがけて走り出した。
私たちに、フォークが届くか届かないかギリギリのとき、
目の前の、鬼のような形相の少女は、
動かなくなった。
「・・・・・・え?」
隣の本郷さんの足元を見る。
本郷さんは、真里亞の影を踏んでいた。
「もしかして、本郷さん・・・。」
「・・・影を踏んで、その人の動きを封じる。
隠者特有の技よ。ここは木が多いから、木の影のせいでその人だけの影は見えないけど、
逆に、どこか踏んでしまえれば動きは封じられるわ。」
真里亞は舌打ちをして言った。
「カノ・・・は・・・もう行ってしまわれたのですね・・・。」
また鬼のような形相に戻った。
が、どことなく悔しそうで、切なそうな表情だった。
本郷さんは影を踏んだまま、黄色い球を
灰色の空へ向けて投げた。
「・・・thunder swirl」
そう呟くと、今にも雨が降ってきそうな空から
重々しい雷の音が聞こえてきた。
「・・・ねぇ、ちょっと離れていてもらっていい?」
そう言われた私は、本郷さんから離れ、
ちとせや冬弥の元へ戻った。
戻った・・・途端。
鼓膜が破けるかと思うくらいの、とてつもなく大きな音と共に、
本郷さんと、影を踏まれたままの真里亞の周りが光った。
というか・・・
『雷』が、『そこ』に『落ちた』
- Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.42 )
- 日時: 2011/05/26 21:33
- 名前: 奏 (ID: C.lv7ZoY)
第25話 影と雷
* 怜菜side
あまりのまぶしさにぎゅっと目を瞑る。
音と光が止み、
私はゆっくりと目を開け、委員長のいた場所を見た。
そこにいたのは、
何事もなかったかのように立ち尽くす委員長と、
その足元でぴくりとも動かず、うつ伏せで倒れている真里亞だった。
「・・・え・・・?」
「大丈夫よ、ちょっと気絶させただけだから。」
微笑みながらそう言う委員長は、どことなく怖い。
それを見た都和が言った。
「すごい・・・さすが隠者・・・。威力が半端じゃないですね・・・。」
「その分、技を繰出すには時間がいるけどね。
ここにいたのは、さっきの雷技を完成させるためだったの。
隠者の精霊に、隠者の技は集中しなきゃ出せないって言われてね。」
不意に、木の上の方からガサガサと音がした。
皆がいっせいにその方向を見る。
飛び降りてきたのは、小柄な子供、禾音と呼ばれた死神だった。
「・・・アンタ、まだいて・・・」
ちとせが声を荒げる。
禾音はそれを無視し、倒れたままの真里亞のそばへ駆け寄った。
「・・・全く・・・あれほど油断は禁物って言ったのに・・・。」
そう呟く禾音は、真里亞を抱き起こすと、
真里亞の片手を自分の肩へ回した。
「ちょっと待てよ!」
「・・・なんですか?」
叫んだのは冬弥だ。
これには、静かに反応を見せた。
「なんでこんなことするんだよ。
俺たち、どっちもカードを集める身だろう?」
「・・・・・・集めてはいますが、元の場所に返すためじゃありませんから。」
「・・・そこまでして叶えたい願いってのがあるのかよ・・・。」
禾音は、真里亞をおんぶしながら立ち上がると、
冬弥から顔を逸らして答えた。
「・・・・・・・・・ありますよ。
なかったら、端からこんなことしてませんから・・・。
・・・それに、僕らは、貴方たちと違いますから。」
それだけ呟くと、私とちとせの間を通り抜けようと歩き出した。
気づくと、委員長が再び黄色い球を浮かせ始めている。
「・・・・・・あー・・・。」
後姿だけを見せながら、禾音が呟く。
「・・・言っておきますけど・・・僕、1人でいるときは戦う気ありませんからね。」
つまり、委員長の攻撃を受ける気もない、ということだ。
「・・・あ、あの、カノン君!!」
蘭が叫ぶ。
あからさまに迷惑そうな瞳で、蘭をちらっと見る。
「正義さん、これで僕がどんな存在か、よく分かったと思います。
今後、僕を見かけたとしても、絶対に関わらないでくださいね。」
それだけを言い放つと、
禾音は真里亞をおんぶしたまま、
大木の立ち並ぶ此処を出て行った。
気づけば、真里亞の放った痺れ毒は切れていて、体は動くようになっていた。
「・・・あの、ちょっといいですか?」
都和が、よろけながらも立ち上がり、委員長の前へ向かう。
「そのカード・・・ボクらに預けてくれませんか?」
「え・・・?」
しばらくの沈黙の後、制服姿に戻った委員長は、隠者のカードを手にとった。
「隠者、ちょっと出てきてもらっていい?」
そう言うと、カードから、先ほどまでの委員長と似た服装の精霊が飛び出してきた。
『・・・話は聞いていたわ。ナユ、貴女とももうお別れかしら。』
「かもね。寂しくなるけど・・・。」
『・・・でも、貴女には私がついていなくても、もう大丈夫よ。
ナユが私のことを覚えていてくれるのなら、私はそれでいいわ。』
「覚えてるよ、ずっと・・・。」
委員長は、弱りきり、呼吸の荒くなっている都和を見た。
「いいわ、これ、貴女に預けるわね。」
「あ・・・ありがとうございますです・・・あの、最後の手続き、お願いします。」
都和がそう言うと、委員長は精霊に顔を近づけた。
「さよなら、隠者。」
『さようなら、ナユ。ありがとう。』
精霊の姿が消え、カードだけになった。
委員長は、目を閉じ、呪文のように唱える。
「隠者の使い、本郷南由は、隠者との契約を解除し、
使いを終えること、カードを仮封印することをここに誓う。」
言い切った後、
カードは委員長の手からすっぽりと抜け、
都和の手の中へと移った。
「・・・ありがとうございました。」
「いいのよ。もう使いじゃなくなったけど、私に協力できることがあったら言ってね。」
委員長はそう言って、都和に微笑みかけた。
それに答えるように微笑んだ都和だったが、
突然、驚きと恐怖の入り混じったような表情に変わった。
「・・・・・・都和?」
都和が、その表情を崩さないまま、ゆっくり振り向く。
そして、ゆっくり、ゆっくりと口を開いた。
「・・・ボクの思い違いだといいのですが・・・
また・・・新しいタロットカードの気配がするのです・・・。」
都和はそう言って、
灰色の空を見上げた。
* ??side
人目につかない細い路地。
1人の少女が膝を付き、泣き崩れている。
少女の足には靴がない。
少女の服は継ぎ接ぎと破けているものでボロボロ。
少女の髪は手入れもされず、何日も放っておいたようなもの。
少女の身体は傷だらけ。
少女は血と涙を流し、そして空を見上げて呟く。
「・・・・・・助けて。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
だんだん厨二的なことになってきた
- Re: *Tarot-Labyrinth* ( No.43 )
- 日時: 2011/05/27 21:10
- 名前: 奏 (ID: C.lv7ZoY)
第26話 傷だらけの少女
* 怜菜side
「新しい・・・カード?」
「・・・はい。調子が悪くて、気配は感じられなくなっていたのですが・・・
これははっきり分かりますです。」
冬弥が腕組しながら都和に向かって言った。
「・・・分かってるとは思うけど・・・行くなよ。」
都和はゆっくりと振り向き、よろける体を支えながら問う。
「・・・・・・なぜ、ですか?」
「そんな体で行ったって、何も出来ないだろ?」
「そうだよ都和、そんなに弱ってるのに無理して行っても・・・
都和の体が危ないよ・・・!」
私もついつい口出ししてしまった。
都和は俯き、そして怒りと悔しさの混じる表情で、
私たちに訴えた。
「・・・ボクらには・・・時間がないのですよ・・・。」
そう言ったとき、
なぜだか彼女のすぐ後ろの空間が、
ほんの少しだけ揺らめいたような気がした。
* 真里亞side
「・・・ん・・・」
目を開けると、見慣れた天井が目に映った。
私の部屋か。
あれ・・・でもどうして・・・。
ドアノブが回る音が聞こえ、ある人物が入ってきた。
その人物は、起き上がる私の姿を確認すると、
安心したように微笑んで言った。
「気が付いたんだな、真里亞。」
「えぇ・・・あの、私何をしていたんでしたっけ・・・。」
その人物は、近くの椅子に腰掛けながら、キョトンとした顔で私を見た。
「覚えてないのか?
隠者の攻撃をまともに食らって、気絶したって話だったんだが。」
・・・あぁ、思い出した。
「・・・そうでしたわね。申し訳ございませんわ。」
「いいって、カードはまた取り返せばいいし、お前が無事で何よりだよ。
・・・あ、あと、カノンに後で礼言っておけよ?」
「え?」
「お前をここまで運んできたの、カノンだからな。」
あれ?
でも禾音は途中で帰ったはずなんだけど。
「途中まで帰ってたらしいんだが、様子を見に行こうと
戻ってみたら、お前が気絶して倒れてるところだったんだと。」
「なるほど・・・あの、カノンはどこに?」
目の前のその人は、
首を傾げつつ答えた。
「さぁな・・・30分くらい前に、出かけてくるって言ったきり戻ってきてないな。」
すると突然、玄関のドアを叩く・・・いや、蹴っているような音が聞こえた。
私の部屋は玄関の近くにあるため、玄関の音はよく聞こえる。
「誰でしょう。」
「・・・ちょっと行ってくる。」
その人物は立ち上がり、私の部屋の扉を開けっ放しにしたまま
玄関へ向かい、向こう側の人物と話した。
「どちら様ですかー?」
「・・・僕です。ちょっと両手が塞がっているので、此処開けて欲しいんですけど。」
あきらかに禾音の声だった。
両手が塞がるほどの大きなものを持っているというのだろうか。
扉を開けると、そこには禾音・・・と、
禾音におんぶされ、ぐったりしている1人の少女がいた。
「おま・・・どうしたんだよ、そいつ。」
「なんか近くで倒れていたので・・・。
それにこの子、カードの気配がするものですから。」
「カードは持っていましたの?」
「持ってませんでしたが・・・気配はやみそうになかったので一応・・・。」
つまり、これから使いになる可能性もあるので、
念のためこちらで保護をする、といことだ。
禾音は少女をソファに預けた。
「よく担いで来れたな・・・身長は大体お前と一緒だろ?」
「・・・まぁ・・・でも妙に軽かったですし・・・。」
突然、気を失ったかのようにぐったりしていた少女は、
薄く目を開けた。
暴れることも叫ぶこともしない彼女に、私は尋ねる。
「貴女、名前は?」
少女は、とろんとした目のまま、
ゆっくり、小さく口を動かしながら答えた。
「・・・近枝・・・瑠璃・・・。」
と———。
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