複雑・ファジー小説

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コドクビワ、キミイゾン。【完結】
日時: 2013/01/06 17:00
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)

+目次+
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参照100記念>>27  あ  コメント100記念>>100
参照200記念>>40  り  あとがき>>137
参照300記念>>52  が  桐への愛情度:低>>139
参照400記念>>62  と  孤独への愛情度:低>>141
参照500記念>>71  う  卓巳への愛情度:高>>142
参照600記念>>77  !
参照700記念>>88  
参照800記念>>103  
参照900記念>>113
参照1000記念>>126
参照1100記念>>131
参照1200記念>>138
参照1300記念>>140

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.83 )
日時: 2012/08/01 12:30
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)


いりこさん

らっしゃい!!!!!
おお、憶えててくれましたか!!
嬉しいです!

ちょっと距離の空いた人が必要だったんですけど、妙に名前決めるのもなあ、と思ったので彼女に土下座してまで来てもらいましたw

そうですねえ、ご想像にお任せしますが、確かに最終話の戸口さんかなあ
落ち着いてますしね

彼女にそんなに興奮していただけてうれしいですわーい!

いえいえ、大丈夫ですとも!

コメント、ありがとうございましたっ!

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.84 )
日時: 2012/08/02 11:01
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+50+


孤独が居ないと、本当に静かだ。休みの時以外、体験したことがない、静寂。その中で私はボーっとして、ただ仕事をこなした。余計な事をすることも、喋ることもしなくていい。
楽だよね。こんな事、無かった。私はこの仕事に就いた初めのころ、毎日卓巳のことを考えていた。首が何だかさびしくて、軽くてどうにかなってしまいそうな感覚に憶えていた。でも、そんな環境が、心境が幸せで。卓巳以外考えなくて良いんだって思って。

孤独、私もう分からない。

私、淋しいのかな。先輩先輩って、私を呼ぶ声がしないのは、淋しいのかな。だって、私には何も必要ないって、思っていたのに。私には必要ないけど、孤独には私が必要だって、そうやって私は何も思ってなくていいんだって、思ってた。
だけど、もう逆なの?私には、孤独が必要だったの?もう、孤独には、必要ないの?孤独は、私を拒絶するの?
なんでさ。なんで、今日休むんだよ。来てたら、いつもみたいにおはようって言ってくれなくても、私から言ってやって、これまで通りにしてあげたのに。
あげたって、なんかおかしいね。私が、そうしたいだけなのかもしれないのに。
こうも、自分のことが分からないのが、辛いなんて。

私が俯いて、ボーっとしているのを、店長は見ていなかった。声もかけなければ、気にもかけていなかった。

孤独、私もう優しさがなんなのか、分からないよ。

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.85 )
日時: 2012/08/03 13:34
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+51+


「じゃあ、彼に会うんで失礼しまーす」

戸口さんが携帯を片手に幸せそうな顔をして、出て行った。私もロッカールームに向かう。
疲れた。今日は何だかすごく疲れた。考え事してたからかな。

「桐、早めにな」

そういえば、買い物に行く約束をしていた。すっかり、というほどでも無いけど、忘れていた。
私は頷いて、どこに行こうか考えた。
やっぱりあそこかな。
孤独が私の物になりたいって言ったから、首輪を買ってあげた。
初め。始まり。私と孤独の、変な関係の、始まり。そこへまた足を運んで、首輪を買いに行こう。孤独に似合う、真っ黒い奴を。安くも高くも無い、私の中の孤独のような物を。
でも、少し高いのを買おうか。
そうして、与えて、さよならを言おう。
これでいいでしょ、これで終わりにしよう。全部、忘れよう。孤独は、私のために壊れる必要はない。いつかの卓巳のように、私も孤独を解放してあげよう。
卓巳に捨てられて、解放されて、私は少なくとも目が覚めたから。
孤独はそれを望んでないだろうけど、孤独が望む私は、それを望むから。

それで良いでしょう。

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.86 )
日時: 2012/08/03 23:53
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)


+52+


「なかなかいい働きはするよね」

昨日は桐の件で疲れていただろうから、私は自分の判断で夕方に忌屋を起こした。水を飲んでから忌屋が言った言葉を、私は一瞬疑いそうになった。
滅多に忌屋は私に対して笑わない。桐には笑う。この差が意味する事を、きっと忌屋自身は気付いていない。桐はきっと分かる。でも、認めない。桐と私は、会ってはいけない。そうしたら、孤独が危ない。孤独の幸せが危ないから。
話は戻るとして、そんな私に対しては厳しい忌屋が、少しだけ笑っていた。私を傷つけているときは笑ったりするけど、そんな黒い意味ではなくて、本当に普通に笑っている。
なんか、気味悪いな。

「……何言ってんの、忌屋。もしかして」

「褒めてんだよ」

昨日は着替えなかったので、忌屋はワイシャツを脱ぐ。線の細い体から、私はさりげなく目を逸らした。何となく、引き締まった体が目に毒のような気がするから。
それなのに、忌屋は私の肩を掴んで引き寄せて、高校の時に染めて痛んだ私の髪に、唇を寄せた。

「桐はボクが言わないと何もできなかったからね」

無意識に『桐』と繰り返す忌屋に、私は『触るな』なんて言えるはずもなかった。
風呂に向かう忌屋が触った肩を、そっと払うだけの、子供のような抵抗をしておいた。

それだけ。

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.87 )
日時: 2012/08/04 14:40
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+53+


裏口を出ると、目の前の壁に背中を預けていた店長が、携帯をぱたりと閉じた。そして、笑う。いつも通りだ。何だか仕事中は冷たい感じがしていたけど、そんなことは無かった。単に、私が構って欲しかっただけか。……そうか。

「桐、行こうか」

店長は歩き始めながら、私の様子を覗う。
ほら。ちょっと心配してくれているじゃんか。嬉しいね。私を心配してくれる人がいて、嬉しいよ。
孤独も、私を心配してくれていた。風邪気味の時、大量にねぎを買ってきてくれたときは、さすがに笑った。
お腹を抱えて笑う私に、スーパーの袋を床に落としながら、
「え、え、どうしたんすか、先輩」
なんて、おどおどして。いやいや、バカじゃないのって。ただちょっと喉が痛かっただけで、少し咳が出ていただけなのに。あんな必死になって。私がそんなに心配だったのか。本当に、孤独はバカだよね。私なんかに構って。
孤独は、私の心の隙間を埋めてくれた。卓巳に捨てられて、この世の終わりに突き落とされた私を、傷だらけになりながらも救ってくれた。だから、私は今こんな普通な生活を送っている。
そんな一途で可愛い孤独を、私のような汚い人間が、これ以上壊してはいけない。


「何、笑ってるんだよ」

店長は私を蔑むような目で見てくるけど、気にせずに口を触った。
本当だ、私笑ってる。変なの。

「別に何でもないですよ。さあ、行きましょう」



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