複雑・ファジー小説
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- コドクビワ、キミイゾン。【完結】
- 日時: 2013/01/06 17:00
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
+目次+
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参照100記念>>27 あ コメント100記念>>100
参照200記念>>40 り あとがき>>137
参照300記念>>52 が 桐への愛情度:低>>139
参照400記念>>62 と 孤独への愛情度:低>>141
参照500記念>>71 う 卓巳への愛情度:高>>142
参照600記念>>77 !
参照700記念>>88
参照800記念>>103
参照900記念>>113
参照1000記念>>126
参照1100記念>>131
参照1200記念>>138
参照1300記念>>140
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.108 )
- 日時: 2012/08/18 20:28
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+71+
「心配することも優しくするってことに入るんだね」
「当然じゃないですか」
あ、でも反論できる。子供のような嫌味なら、言うことができる。
それならまだ私は孤独だと認識できるんだな。少し卓巳のような感じがしても、孤独だと理解できているんだな。良かった。
今の孤独は卓巳のようだ。自分の欲に私を付き合わせようとしている。私はそうしないといけないような、そんな錯覚を植え付けようとしている。
私はもう、そんなのごめんだ。
孤独のために縁を切ると決めた。
でも、今確信した。この関係を切ることは、私のためになる。私は、こんな状態の孤独とは一緒に居たくない。これじゃあ、せっかく卓が私を突き放してくれたのに、二の舞だから。
卓巳、か。卓は大丈夫かな。右目をやられた、卓巳。
あれだけ自分の思い通りにならないことが嫌いな卓巳が、店長にプライドを傷つけられたんだ。不意打ち。まさか店長があのタイミングであんな行動を起こすとは
。孤独の言うとおり、すぐ店長は帰ってくるだろう。
「誰かのことを思うことが、罪なんですよ」
もー、なんなんだよ、コイツは。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.109 )
- 日時: 2012/08/18 20:46
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+72+
「罪、ね。罰はあるの?」
ねぇ、ずっと前は私が孤独に罰を与えていたのに。今度は孤独が私に罰を与えるんだね。いつからそんなに孤独は偉くなったのさ。
私が卓巳と寝ようとしたから?それだけで私たちの立場は反対になるの?そんな簡単な物だった?そうしたのは、私?孤独?違うよ。きっと違う。孤独をこんな風にしたのは、私だけじゃない。私だけの責任じゃない。
孤独1人でこんなに変われるか?なれない。あんな不安定で私が居ないとガタガタだった孤独が、私を飲み込もうとするなんて、おかしいもの。
「ありますよ。ちゅー」
孤独が、自分の唇を指でトントンと叩く。
意味が分からなくて思考が停止した。
チュー?チューって、チュー?そんなことを強請られたのは初めてだった。最後に人の唇に触れたのは何時だ。
確か、卓巳に暴力を振るわれて、気を失って目覚めたら卓巳が寝ていたから、何も考えずに唇を重ねた。
それが最後。まぁ、その直後に殴られたけど。それで心も体もボロボロにされた後に、ぽーい。
今思うと、私ってバカだよね。
「もー。……じゃあ、俺からね」
声が低くなった孤独の唇が重なる。抵抗はしなかった。
だって、罰なんでしょう?孤独も、よく考えたもんだ。いい罰だよ。
私は今、最高に気分が悪い。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.110 )
- 日時: 2012/08/19 21:48
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+73+
「……満足?」
「ん、少しだけ」
孤独の足元に視線を落とす。孤独は私の髪を撫でて、そっと離れていった。すぐさま、ロッカールームを出る。訳もなく、涙が滲みそうになって、目を思い切り擦った。
「あれ、桐さん。どうしたんですか。目にゴミでも?」
運が悪かったのか、その状況を戸口さんに見られていた。染めていなくても綺麗な茶髪を揺らして、戸口さんは笑う。私は首を振った。
声が上手く出ない。首を絞めつけるような感じがする。首輪で、締めつけられたような感覚だ。
どうして、こんな時に。私の首輪は、外れたはずなのに。
ロッカールームのドアの前からどいて、レジに着く。戸口さんは私のことを気に掛けながら、ロッカールームに入っている。
孤独とは、大丈夫だろう。私以外にはあんまり興味が無いようだし。
もう、なんなんだよ。早く私なんか捨てて、世界に目を向ければ良いのに。良い感じで、距離が開いたのに。なんでまた、変な方向で、方法で、詰めてくるの。このまま離れてくれば良いのに。
気が付いたら、涙は引いていた。
ただ、目の痛みだけが、残っていた。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.111 )
- 日時: 2012/08/19 22:01
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+74+
孤独に、何か言われた気がする。私はそれを一言で返していた気がする。それで、済ませた。孤独と話したくなかったから。そうしたら、孤独は眉をひそめていた気がする。時々、傷ついた顔をしていた気がする。それを全部、私は無視した。
客への対応は完壁なはずだ。
気が付けば勤務時間は終わっていたから、ロッカールームで素早く着替えて、引き留めようとする孤独の声を無視して、挨拶をしてくる戸口さんに軽く頭を下げて、アパートまで一直線で帰った。
エレベーターを待っていられなくて、階段を駆け上った。鍵を手慣れた手つきで開けて、床に寝そべる。電気もつけない。
全部、面倒だ。なんか、疲れた。久しぶりに、孤独を見た。孤独と喋った。でもあれは、もう孤独じゃない。私の言いなりになっていた孤独じゃない。昔の卓のようになってしまった孤独。
嫌だよ。私、どうしたら良いの。孤独は、どこに行っちゃったの。
私の、孤独。……私の?そう、だよ。孤独は私の物じゃない。私は孤独の物じゃないけど、孤独は私の物。それで良かったんじゃないの。それで良いって言ったのは、孤独じゃないの。
頭を抱えて頭皮を爪で削っていると、頬り投げたバッグの中の携帯が、悲鳴を上げた。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.112 )
- 日時: 2012/08/20 13:04
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
+75+
這ってバッグに手を伸ばして、着信音を叫び続けている携帯を取り出した。非通知。私は何となく、それに応えた。
多分、淋しかったんだと思う。常識人の店長があんなになっちゃって、孤独が変わって。
誰でも良いから、私とつながってくれる人を探していたんだろう。
「……もしもし」
『桐?』
前にもこんなことがあった。前に電話を掛けてきたときに、電話帳に登録しておけば良かった。
私は以前の事を思い出しながら、唇を噛み締めた。
あの時はまだ、ズルズルでガタガタ。私たちの関係が崩れないで、ただその状況を幸せだと、平凡だと錯覚していた時。この前の電話が、今私と孤独の関係を壊している。
「……卓巳」
大丈夫、なんて言葉は、少しも思いつかなかった。声だけで、彼だと分かる。卓巳への盲目的な愛は、すっかり私に染み付いてしまっているんだ。
私の苗字を呼ぶその声が、なんだか懐かしくて、優しくて。孤独が卓巳みたいなんて思っていたのに、今の孤独と今の卓巳は全く違うのだと、確信した。
変なの。孤独の次に、卓巳も変わってしまうんだね。
変わっていないのは、私だけ。
『大丈夫?』
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