複雑・ファジー小説
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- コドクビワ、キミイゾン。【完結】
- 日時: 2013/01/06 17:00
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
+目次+
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参照100記念>>27 あ コメント100記念>>100
参照200記念>>40 り あとがき>>137
参照300記念>>52 が 桐への愛情度:低>>139
参照400記念>>62 と 孤独への愛情度:低>>141
参照500記念>>71 う 卓巳への愛情度:高>>142
参照600記念>>77 !
参照700記念>>88
参照800記念>>103
参照900記念>>113
参照1000記念>>126
参照1100記念>>131
参照1200記念>>138
参照1300記念>>140
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.43 )
- 日時: 2012/06/22 19:51
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+21+
結局、卓とはシなかった。
私の言葉でぽかんとしている卓を無視して、勝手にホテルから出てきてしまった。
罪悪感はある。でも、不思議とすっきりしていた。途中で荷物を運んでいる店長に声をかけて、ゆっくりとのんびりアパートに帰ってきた。
長い階段を久しぶりに上ってみた。いつもはエレベーターだけど、気分だ。
辺りは夕焼けで赤が蔓延っている。そんな光に包まれながら、私のドアに背中をつけて、蹲る一つの影。
「孤独」
声をかけた。呟くくらいの音量で。聞かせるつもりなんて無いくらいで。
だから、孤独がそんな声に反応して、顔を上げた時には正直驚いた。
私の姿を確認して、右手に黒い首輪を持って、駆け寄って来る。
「お、おかえりなさい……」
孤独は嬉しそうな顔をすぐに消して、寂しそうに眉を傾けた。俯いて、右手を背中に回す。隠しているつもりなのだろうか。
残念。もう私、気付いちゃってるよ。
「ただいま。ほら、それ」
私は驚いている孤独の右手を強引に引き寄せて、首輪を奪う。
あまり慣れていないが、そう時間をかけずに孤独に首輪をつけてあげた。
孤独の私の指に触れようとする動きを見抜いて、そっと避ける。気が付いているのかは分からないが、多分気が付いている。
「我儘な後輩だなー」
そんな言葉で誤魔化してみるけど、やっぱり。
私、孤独が怖い。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.44 )
- 日時: 2012/06/23 18:49
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+22+
「変な笑い方」
凛とした声に、振り返る。驚いた。まだ生徒が残っていたとはな。俺は持っていた本を机に置いて、入り口に立っている少女を見つめた。
時刻はもう6時程度。日が沈みかけて、赤い光が図書室の本の影を伸ばす。
眩しくて、目を細めた。
「何がさ」
攻撃的に喋らないように気を付けながら、言葉を紡ぐ。
彼女は、俺だけをその長い睫で飾られた瞳で、じっと見つめていた。
彼女の髪はすごく茶色い。多分、染めているのだと思う。痛んでいるようだし。短くなっているスカートから延びる脚は長く、それなりの美人。いや、文句なしの美人。
面識は、無い、はず。記憶に無い。
「君のことだよ、小片辰臣」
そんなことは分かっている。だってここに居るのは俺とコイツしかいないのだから。
ご丁寧にも俺の名前をフルネームで呼んでくれた彼女。何だか、好きになれないなぁ。俺は俺の名前好きじゃない。だって古臭いし。そんな高校生の気持ちを、彼女は全く考慮していないようである。
「俺? 俺と君って、何か接点合ったっけ?」
彼女に変だと言われた表情を作りながら、本を再び手に取った。
本棚に押し込んでから振り返ると、彼女はもう俺の側まで来ていた。いつの間に。全く気が付かなかった。
「無いよ。無いから、気になったの。君は、とても笑顔が変だ。嘘っぽいもの。ねぇ、貴方は、どんな人?」
これが俺、小片辰臣と彼女、穂波築の出会い。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.45 )
- 日時: 2012/06/24 13:47
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+23+
私が部屋に入っても、孤独は足を動かそうとしなかった。首を傾げると、サラサラと髪が落ちる。孤独は、私に何かを訴えるような視線を向けていた。
何が、言いたいのだろうか。私は手招きをしようとして、止めた。孤独が口を開いたからだ。それから、孤独が言葉を発するのには、少しの間があった。その間すら、恐ろしい。怖い。
「茅菜さん」
ドクリと心臓が跳ねた。
てっきり、
「何処行ってたんすか」
とか聞かれると思っていたのに。
予想外の質問をされたから?違う。違う。
孤独が、初めて私の名前を読んだから。苗字でもなく、名前で。それだけで、こんなにも慌ててしまう。私は、臆病者だ。
「茅菜、」
「孤独、おいで」
遮りたかった。孤独に私の名前を、呼ばないで欲しかった。なんで。なんで。私は孤独、と呼ぶのに。こんなの、不公平だ。
それでも孤独は私を見つめたままで。それでも、私の言葉に従ってくれる。
そう。それでいいよ。それがいいよ。孤独は私に従って。私の思い通りでいて。私をひたすら求めて。私の側に居て。私に傷つけられて。私で苦しんで。
「ね、孤独。シようか」
私が生きる価値だと、そう感じていて。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.46 )
- 日時: 2012/06/25 21:15
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+24+
いつものように本の整頓を終えて、校舎を出ると、校門に立っている人影が見えた。校舎にはもう、教師しか残っていない。きっと生徒は、俺とこの穂波築だけだ。
俺は頭を掻きながら、穂波に近づいた。彼女は相変わらず、何とも言えないような表情を浮かべて、俺を射抜くように見つめている。
「あのさ、穂波。どうして俺のこと待ってるわけ?」
笑い方を卑下されたあの日から、穂波は俺のことを待つようになった。待っている、というか、俺が出てきたらなぜか横を歩いて、付いてくる。意味が分からない。俺は最初、無視をしていた。たまたま、なのだろう。なんて無理な言い訳をして、頭の中だけで片付けていた。それからしばらく経っても、穂波の謎の行動は続いた。
ちょうど3週間目の今日、俺はついに穂波に問いかけた。
「何故、と言うのはどういうことだ。小片辰臣」
俺の問いに、穂波は首を傾ける。
う、可愛い。可愛いんだよ。この学校では不良の分類に入るのだが、誰とも絡むことなく、一匹オオカミのような雰囲気の彼女。ミステリアスな雰囲気の彼女に釣られる男も多いらしい。ということを、俺は調べた。穂波に、少なからず、興味が湧いていたのだ。それは認める。
「私はただ、お前に興味が湧いただけだよ、小片辰臣」
これが、俺と穂波が一緒に帰ることになったきっかけの話。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.47 )
- 日時: 2012/06/27 21:58
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: ae8EVJ5z)
+25+
目を丸くして、突っ立っている孤独を無理やりに引っ張って、短い廊下に押し倒す。
驚いて固まっている孤独は、私の力でも簡単に押し倒すことができた。
「先輩、」
眉をしかめて、不満そうな表情を作る。なんで、そんな表情を作るの。それじゃあまるで、私が間違っているみたいじゃないか。気が付かせないでよ。分からないフリをさせていてよ。
「孤独」
名前を、呼んでみた。それなら、喜んでもらえると思って。私は、きっと今、孤独を満足させたい。そうすれば、許されるような気がして。孤独、怖いよ。孤独に触れられることが、怖い。
孤独、私は今日卓に触れられてしまったの。ごめんね。孤独のことを、少し、忘れてしまったの。ごめんね。だから、満足して。
私も、満足させて。
私がそっと孤独のズボンに触れた時、私の思考が、止まった。全てが、止まった。
孤独は手で口を覆い、涙を流していたのだ。
「あ、れ、孤独、孤独」
どうしよう。意味が、わからない。孤独の涙は止まらない。ねぇ、どうすれば。どうすれば。涙を、止めなくちゃ。止めてあげないと。じゃないと、私まで、変になってしまう。
孤独、孤独、ごめん。許して。
私の手が、孤独の首に押し付けられた。
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