複雑・ファジー小説
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- コドクビワ、キミイゾン。【完結】
- 日時: 2013/01/06 17:00
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
+目次+
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参照100記念>>27 あ コメント100記念>>100
参照200記念>>40 り あとがき>>137
参照300記念>>52 が 桐への愛情度:低>>139
参照400記念>>62 と 孤独への愛情度:低>>141
参照500記念>>71 う 卓巳への愛情度:高>>142
参照600記念>>77 !
参照700記念>>88
参照800記念>>103
参照900記念>>113
参照1000記念>>126
参照1100記念>>131
参照1200記念>>138
参照1300記念>>140
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.133 )
- 日時: 2012/09/08 17:21
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+91+
苦しそうに語る、孤独。私の顔色を覗うように語る、孤独。自分の発言に確実な自信を持てない、孤独。
良かった。今は、いつもの孤独だ。前の孤独だ。私が知っている、私の掌の中に収まっている、孤独。
私は、私の中で生きる孤独を気に入っていたのだろうか。私はなんで、自分の心の支えに孤独を選んだのだろう。同性の戸口さんでも、いつでも味方だった店長でも、良かったはずなのに。いつの間にか、そばにいるのは孤独で。私が壊れないためのストッパーは、孤独になっていた。
でも、孤独はその立場が不安定だって、思ったんだ。
私のせいか。私が心配させたから。
「だから、俺、先輩の好みになるようにって、っ、」
目が潤んできた。声が震えてきた。泣く。孤独が泣く。心が締まる。
孤独はよく、私の前で涙を流した。堪えていたりもした。私はいっぱい、孤独に我慢をさせてきた。
「だから、忌屋卓巳みたいになれば、先輩を縛れば、先輩、俺のこと、みてくれるかなぁってっ」
鼻を啜る。瞬きの回数が増える。泣かないようにしてるんだ。
私のクッションを抱える手に、また力が入る。
「俺のこと好きになってくれるかなぁってそう思ったんですっ」
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.134 )
- 日時: 2012/09/10 21:57
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+92+
好き。ライク。愛してる。ラヴ。
私は、昔卓のことがラヴだった。卓は私のことがライクだった。卓は今、私のことがラヴだ。
そして孤独は、私のことがずっと、ずぅーっとラヴ。今もラヴ。昔もラヴ。
私は。私は今、誰がラヴで、誰がライクなんだ。
「先輩は、俺のことが嫌いですか」
ハッキリと、孤独が言う。
私に答えを求めている。私だけの言葉を待っている。私の決断を待ってきた。
孤独はずっと、待っていてくれた。限界までずっと、我慢してきてくれた。私を手に入れた、願いが叶った後でも苦しみ続けてくれた。
私がいつか、孤独を見る事だけを、信じて。
その期待を我慢を全部全部裏切ったのは私か。私はもう逃げてはいけない。そう思う。
卓巳は、自分の気持ちから逃げなかった。店長も、一人を思い続けてきた。築だって、自分を見失ってなんかいなかった。
私だけ。逃げているのは今、私だけ。
私は孤独を見ていられなくて、目線を落とす。
またか。私はまた、俯いて孤独から逃げている。
私はゆっくりと、顔を上げた。孤独と目が合う。
孤独は私を見てくれている。ずっと、ずっと。
私は目をつぶって、首を横に振った。
今までの自分を否定するかのように。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.135 )
- 日時: 2012/09/12 22:36
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+93+
そっと、目を開く。
孤独がいた。我慢していた涙を、頬に伝えながら私を見ていた。震える手で、自分のシャツをつかんでいる。
皺になっちゃうよ、なんて私は口に出さない。
私の言葉が予想外だったようだ。孤独はすっかり、私が孤独を否定しているって思っていたようだから。
そう。怖かったよ。私を求める孤独が。昔の卓みたいな孤独が。でも、違った。孤独はただ、私の愛が欲しかっただけ。私に認めてもらいたかっただけ。ただ、それだけだったんだ。
「ごめんね」
私は言った。
私の言葉で孤独を壊してしまわないように、気を付けながら。
私の言葉の意味を孤独は理解できないようで、黒い瞳から私を外さない。
私はテーブルの下にあったバッグを取って、その中から店長と買った首輪を取り出した。
それを見て、孤独の止まりかけていた涙がまた流れ始める。
私の手の中にある、私と孤独をつないできた物。
本当は、孤独にもなって欲しかった。私のように。卓に縋っていた私は、首輪がすべてだった。首輪が無いと、卓から離れてしまいそうで。そんな不安を背負って欲しかった。仲間が欲しかった。同類が欲しかった。それで自分を救おうと支えようとしていた。
だから、ごめんね。待たせて、ごめん。私は私を認めるよ。
巻き込もうとして、ごめん。孤独は強いね。私のようにならなかったね。
買ったばかりの首輪を、私はゴミ箱に入れた。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.136 )
- 日時: 2012/09/14 17:56
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+コドクビワ、キミイゾン。+
先輩の彼氏、忌屋卓巳。
その関係を壊してもらった。ねーちゃんが忌屋と付き合うことで、すべてを壊して、すべてを作り直すことにした。忌屋は自分が先輩のことを必要として居ることに気が付けずに、面白そうっていう理由だけでねーちゃんと付き合う事にしたんだ。ねーちゃんは我儘な忌屋に合わせるために、傷だらけになっていた。先輩の代わりになるなら、これくらいは当然だって、忌屋は言いたかったんだ。そうに違いない。
俺は、先輩に認めてほしかった。
最近、忌屋と先輩が会ったって聞いて目が覚めた。細かった。首輪をして、先輩を支えているつもりになっていた。
先輩はもう俺がいらないんじゃないか。そう気が付いた時、ねーちゃんが店長とよりを戻した時。頭の細胞が全部死んだ。
もう終わってしまうかもしれない。ねーちゃんも先輩も、俺の味方じゃなくなってしまう。それは嫌だ。それだけは。
先輩の側に居たかった。先輩は俺の側に居てほしかった。俺のこんな醜い感情を、先輩は認めてくれた。今、認めてくれた。
俺たちをつないで来たものを、捨てた。今までの関係を、すべて。今までの俺たちは死ぬ。死んだ。俺は死んだ。先輩も死んだ。
化粧をしなくても白い肌。整った眉。茶色い瞳。長い髪。
全部、俺の好きな先輩。何も変わってない。
中身は、どうですか。心は、どうですか。
俺は、涙をぬぐった。
「先輩、好きです」
変わる。終わる。もう、大丈夫。
先輩がそう言った。行動で示してくれた。
もう、俺は大丈夫。
「うん、知ってる」
もう依存の証が付くことのない首に、俺はそっと爪をくいこませた。
- Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.137 )
- 日時: 2012/09/14 18:07
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+あとがき+
最後に、自分への愛情度が低いと、自分が分からなくなって孤独が本当に好きなのかわからなくなって自殺します。逆に高すぎると、自分の事しか考えなくなってしまって、物語が成立しません。
孤独への愛情度が高いと、孤独のことばかり優先して、卓巳がないがしろになります。低いと、孤独への気持ちを認めず、ショックを受けた孤独に殺されます。
卓巳への愛情度が高いと、店長のフォークを卓巳をかばって受けて、罪悪感におぼれた店長に一生守られます。低いと、お見舞いに行かないで卓巳に殺されます。
店長への愛情度が高いと、築を殺してしまいます。店長への愛情度が低いと、店長の忠告や励ましを聞かないで、感情に任せた行動をとってしまうようになります。
そんな乙女ゲームを考えたので、誰か作ってください。
嘘です。
いろんなエンディングを考えていました。桐は自殺する予定でした。それならもっと早く終わっていたかもしれません。
後輩から『先輩』と呼ばれたい。そんな小さな願いから生まれた、変態の変態による変態のための小説でした。
きっと、みんなハッピーエンドです。終わるのはあっけないですね。
いろんな人に応援していただきました。30話くらいで終わる予定だったのですが、意外に続きました。
だらだらと日常を描くだけの話になる予定だったんですけど。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
また違う小説出会えたら、嬉しいです。
それでは!!
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