複雑・ファジー小説

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コドクビワ、キミイゾン。【完結】
日時: 2013/01/06 17:00
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)

+目次+
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参照100記念>>27  あ  コメント100記念>>100
参照200記念>>40  り  あとがき>>137
参照300記念>>52  が  桐への愛情度:低>>139
参照400記念>>62  と  孤独への愛情度:低>>141
参照500記念>>71  う  卓巳への愛情度:高>>142
参照600記念>>77  !
参照700記念>>88  
参照800記念>>103  
参照900記念>>113
参照1000記念>>126
参照1100記念>>131
参照1200記念>>138
参照1300記念>>140

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.98 )
日時: 2012/08/11 22:42
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
参照: http://長い、ごめんなさい



+63+


「ちょっと、店長!」

店長はプレートを机に置くというより落して、店の奥に進む。他の客が、ちらちらと店長と私を見る。腕を一瞬掴んだけれど、すぐにふり払われる。男の人の力を感じて、恐怖を感じた。それでも、店長を追いかける。卓巳に近づくのは嫌だけど、店長の様子が変だ。
いつもは優しくて、一番大人で、冷静で。そんな店長が、今、私を不安にさせている。感じるんだ。
卓巳の私への固執を見てきた。孤独の私への固執も感じてきた。私の卓巳への盲目的な愛も、知っている。そんな私が、不安に感じている。つまり、店長は、今の店長は、愛に不安定だ。
店長はどんどん進む。私の姿を確認した卓巳が、驚いたようにして、すぐに顔を歪ませる。向かいに座っていた髪の傷んだ女性が、店長を見上げている。傷ついたような、そんな顔で。

「たつ、おみ」

それは、店長の名前だ。滅多に店長の名前を呼ぶ人は居ない。それなのに、下の名前で。

「あーれ、なぁに、築。知り合い?」

卓巳がにやにやと笑う。
気付いている。この人たちが親しくて、昔何かあったことに、絶対に気付いている。嫌だな。この人、どんどん人の心の傷を抉る。

「ち、がう。違う、違うんだ、忌屋。違う、知らない」

女の人は必死に首を振るけど、そもそも卓巳と店長から目を逸らしている時点で、なんだか不自然。卓巳は細かいところに目をつける。そこそこ卓巳のことを理解しているようだけど、まだ。まだ足りないな。

「何言ってんだよ、築」

そうか。店長の人の名前をよく呼ぶ癖は、この人のせいかな。でも、辰臣と、忌屋。
店長は、築の手に視線を落とした。

「……なんだよ、この傷。築」

店長が自分の手を見ていることに気が付いた築が、隠すようにテーブルの下に手をしまう。
ちらっと見えたけど、そこにはガラスの破片で切ったような赤い線が入っていた。

「貴方、なんの用? ボクたちデート中なんだけど」

卓巳が、追い打ちをかけるように言う。築は、唇を噛み締めて卓巳を見る。ダメだよ、煽る。
店長と卓巳は私のことを気にしていないようだけど、築は気にしてる。そりゃあ、店長にとっての卓巳と、築にとっての私は同じ立場なのだから、仕方がないだろう。

「そうなのか? 築」

「……辰臣」

築は悲しそうに、店長を見上げる。卓巳は笑ってる。私は店長を見上げた。
店長は、目を閉じて、そして開いた。
そのときにはもう、落ち着いた店長に戻っていた。

「……築にこんな顔、」

戻って、いた?

「させてんじゃねぇーよ!!」

私は、どこをどう見て、そう思ったんだろう。どうして、そんな愚かなこと、思ったんだろう。速かった。誰も止められなかった。

ケーキのクリームが少しついたフォークを、店長は、突き刺した。
いちごのような赤が、宙を舞う。

私の腰から力が抜けて、その場に崩れ落ちる。

「あ、ぁ? あ、ああぁぁぁぁ、あっぁあぁ、ああぁ」

卓巳が、立ち上がって顔から必死に赤を拭う。でも、止まらない。築は慌てて店長を抑えている。
店長は、笑っていた。
何その笑い方、変なの。

私はただ、眺めていた。見上げていた。卓巳の名前も、呼べなかった。
ただ、私は見ていた。
卓巳の右目に突き刺さったフォークを、ただ見ていた。

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.99 )
日時: 2012/08/11 23:00
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+64+


頭が真っ白になった。でも、不思議と視界は色を捉えている。でも、赤しか捉えない。他の物は全てモノクロなのに、赤だけが目に刺激を与えて。でも、目をつぶれなかった。
辰臣に後ろから抱きついてみると、辰臣は落ち着いてくれた。でも、私がこんなことする必要、あるのかな。辰臣は、理解ができる人間だ。だから、だからこそ、私のために行動を起こしてくれたんだ。
涙が出てきそうになって、必死にこらえる。
私が泣いて、どうする。私は我慢して来た。今も我慢する。我慢して、辰臣と離れた。頑張って勉強して入った大学を、辞めた。そうして、ずっと我慢してきた。だから、ここで不満とかを出したら、今まで頑張ってきた意味がない。
桐と、会っちゃった。桐は情けなく忌屋をじっと見ている。助けたりとか、叫んだりとか、怒ったりとか、そんなのは全くしない。ただ、見ているだけ。
周りの人が慌てて警察と救急車を呼んでいる。ケーキ屋の人が辰臣を警戒しながら、忌屋を介抱し始める。忌屋は顔を抑えて蹲っている。
痛そうだ。

「築、築」

辰臣は私の腕の中で身をよじって、私を抱きしめ返す。
嬉しいとか、ずっとこうしていたいとか、そういう思いが私の心に生まれる。
生まれてはいけない、欲望の芽。
でも、今くらいは許してくれるかな。誰も見てないよね。誰も、咎めないよね。良いよね。

私は辰臣の胸板に、顔を埋めた。
何度も、辰臣の名前を呼んだ。

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.100 )
日時: 2012/08/12 19:04
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+コメ100+


〜プロフィール?〜
揶揄菟唖(やゆうあ)♀ 5月23日生まれ O型
身長:忘れた 体重:忘れた
酒は飲みたいと思っている タバコは大嫌い
好きな物:ヤンデレ 男性の指、鎖骨、わき腹 後輩、先輩 たらこ わさび 本 綺麗な絵
嫌いな物:優柔不断な人 細かいことを気にする人 パプリカ 揚げ物
成績:中の下
趣味:音楽鑑賞 パソコン弄り 執筆 
名称:自分→私 彼氏→苗字 桐→桐 孤独→孤独 卓巳→卓巳 辰臣→辰臣、臣 築→築


+おわり+


コメ100というわけで……要るのか?これ
かくものがなかったので、とりあえず特別編ということでw
ここまでだらだら続けるつもりはなかったのですが、続いてしまいました
もしかしたらあと少しかもしれません
最後までできればお付き合い願います
ありがとうございました!

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.101 )
日時: 2012/08/12 20:21
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)



+65+


頭は冴えていた。そうして、頭で考えて、行動した。
視界に居る、顔の整った小奇麗な男に向かって、フォークを突き立てる。簡単だった。机の上に2本もあるんだ。
俺を、誰が止められるっていうんだ。俺を、誰が止めて良いっていうんだ。俺は悪くない。
だって、コイツが、この男が築にあんな顔させるから。
警察に声を掛けられながら、パトカーに乗り込む。抵抗もしなかった。大人しい俺を、最初は気味悪がっていた警察も、しばらくして何もしないと知ると、警察は笑いかけてきたりしたけど、気にしないで置いた。
俺は別に、なんだって良いんだ。
心配そうに俺を見つめる築を振り返る。

「築、心配するなよ、すぐ帰ってくるよ。築」

そしたらさ、俺が帰ってきたら、俺たちずっと一緒に居ようよ。さっき、抱きしめ返してくれたじゃん。つまり、そういうことでしょ。俺と同じ気持ちだったんでしょ。
どんなに綺麗な女が俺を誘っても、俺は避けてきた。だって、築のことを忘れる事なんかできなかったから。ずっと、築しか考えてこなかった。ずっと築でアレも処理して来たよ。
築はまた唇を噛み締めた。俺の前でもそんな顔するのかよ。
アイツは俺がどけてやったじゃんか。
俺たちを邪魔する奴はもう、誰も居ないよ。

俺は築に笑ってやった。
どんな風に笑っているか、なんて考えずに。

Re: コドクビワ、キミイゾン。 ( No.102 )
日時: 2012/08/22 17:21
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)

+66+


「先輩」

その翌日だった。いつも通りの時間に一人で出勤して、着替えようとした時だ。
振り返ってみると、ラフだけど決してださくない私服姿の孤独が、ロッカールームの入り口に立っていた。
少し髪が伸びたかな。後、隈がある。眠れなかったのかな。不安で?不安がる事なんか、何もないのに。バカなのは、変わりない。
でも、なんだろう。少し、暗くなったかな。

「孤独、おは、」

「ねぇ、先輩」

おはよう。いつもはそう始まる私たちの関係も、少し変わったか。
行き場のない半端に開いた口を、閉じる。
持っていたエプロンを置いて、孤独に向きなおった。

「先輩、まさかさぁ、」

孤独が一歩近づいてくる。私は動かない。
確かに、いつもと違う様子の孤独は、少し怖い。でも、私は逃げちゃいけないと思う。こうなるまで追い込んだのは、私だ。私の行動だ。
店長と買いに行った首輪は、私のロッカーの中。お別れは、告げようと思えば告げられる。

「お見舞いとか、行かないっすよね」

卓巳のことか。近くの病院に入院している卓巳。
私はとりあえず、頷いておいた。

『その時には俺も呼べよ』

……あぁ、そうだね。
店長との約束を守るために、別れを告げるのはやめようか。
今は。


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