二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜
- 日時: 2016/05/10 22:19
- 名前: ウルワルス (ID: LF8j4K3p)
〜第一部〜 目次
主要登場人物紹介 >>01
第1章 初めての友達 >>02 >>03 >>04
第2章 組分け >>05 >>06 >>07 >>08 >>09
第3章 魔法史と いも虫 >>10 >>11
第4章 ハグリッドの小屋にて >>12 >>13
第5章 飛翔 >>15 >>16 >>18
第6章 クィディッチ >>19 >>20 >>21
第7章 クリスマス休暇 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29
第8章 蛇と蠍 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
第9章 禁じられた森 >>35 >>36 >>37
第10章 序曲終了 >>38
あとがき >>39
第二部 >>40
第三部 >>153
訂正>>132 >>135 >>136 >>145
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- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.92 )
- 日時: 2014/03/23 14:23
- 名前: ウルワルス (ID: K.HEaMnc)
第17章 ホグワーツでは
カトリーヌ・デラクール。
新年最初のスコープからの手紙を受け取って以来、その名はローズ・ウィーズリーの脳裏に焼き付けられていた。
どんな子なんだろう? ヴィーラの血を引くのであれば、きっと自分などよりずっと可愛いに違いない・・・
それと同じくらいローズを不安にさせているのが、カトリーヌがクィディッチ チームのメンバーだということだった。1年次にスコ−プが指導してくれた御陰で、人並みに箒で空を飛べるようになってはいたが、ローズはクィディッチは不得手だった。父や弟とは違いプロクィディッチに興味があるわけでもなかったので、スコープがアルバスやフランクとクィディッチ談義をしている時は、話に入ることが出来なかった。だけどカトリーヌなら、そういうことは無いだろう。それに、もしスコープがバロンデュール・クィディッチチームに入れば、カトリーヌとの仲は一層親密になるだろう・・・
そんなことを考えながら、ローズはスコープへの「恨み」のようなものが生じているのを感じていた。「ボーバトンに行っても、君のことは決して忘れない」と、言ってたくせに・・・
客観的に見れば、わざわざボーバトンから手紙を書き送っていることからもスコープがローズを忘れた訳ではないのは明らかなのだが、ローズはそのことに思い至るだけの精神的余裕を失っていた。
だがローズは、ただ悶々としていたわけではなかった。
スコープからの手紙には、ジンについても言及があった。新しく出来た友人の1人であるアイサム・ムウィレレが、「ジンを召還して殺しを行った」という疑惑をかけられているそうだ。
ジンについては、魔法史や「闇の魔術に対する防衛術」で少し勉強していたが、ローズはもっと詳しく知りたいと思い、放課後に図書室で、ジンについて書かれた本を探した。
原書が13世紀にアラビアで書かれたという『異界の歴史と住人』には、ジンの種類と歴史が詳しく記されていた。著者が、自分でジンを召還し、聞き取り調査をした結果分かったことらしい。もっとも この本の英訳者は、1人のジンからこれだけ多くの情報を聞き出せるとは考えにくく、従って本の内容も出鱈目である可能性が高いと、こき下ろしていた。
「・・・ジンとは、異界の住人である。マグルの多くは、彼らが精霊だと思っているが、彼らは我々と同じく肉体を持つ。ただ、その魔力は我々よりも強力である。だからこそ我々は危険を冒して彼らを召還するのである。
・・・異界の住人の全てが魔法を使えるわけではない。魔法を使える者だけが、『ジン』として我々の世界に姿を現すのである。
・・・私が召還したフィアレンという名の、銀色の長髪と白い肌をした、丈高く美しい−−ただ、その耳は尖っていた−−男性のジンによると、彼らの世界において高度な知能を持つのは、人間、エダール、シャートゥグル、イルフ、ゴブリン、クルーという6つの種族である。人間は言及するまでもないとして、ゴブリンとイルフは我々の世界にも存在する。
・・・イルフは、元々この世界に存在する生き物ではなかったが、『暗黒の王』ヴァルガトレイオンとの戦に敗れた結果、彼によって『自分達が何者であるかを忘れ、自分達より劣った異界の者達(つまり我々のこと)に裸で隷従しなければならない。その者達から衣服を与えられるまでは、解放されることはない』という、子々孫々に渡って持続する呪いを生き残った種族全体にかけられ、この世界に送られてきたのだという。
私は、イルフとは『屋敷僕妖精』として知られている生き物のことではないかと、推測している・・・」
ローズもその通りだと思った。
屋敷僕妖精が持つ強力な魔力については、両親、特に母から聞かされていた。両親がハリー叔父さんと共に「例のあの人」を倒すための旅をしていた時も、ドビーという僕妖精によって窮地を救われたことがあったらしい。ローズは、人間より強力な魔力を持つ僕妖精が何故人間に隷従しているのか不思議に思っていた。もしかしたら、この本に書かれていることは事実かもしれない・・・
そういえば、母が魔法省魔法生物規制管理部に勤めている間、「給料を欲しがる僕妖精」と主人の間の揉め事が何件か持ち込まれたという(母の尽力で、その僕妖精達は給料を支払ってもらえるようになった。主人が妖精を解雇した一件もあったが、その妖精は現在ローズの家で働いている)。先に挙げたドビーもホグワーツで有給奉仕をしていたそうだ。アラビアの魔法使いが記す「ヴァルガトレイオンの呪い」は、効力が薄れてきているのかもしれない。
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.93 )
- 日時: 2014/05/21 15:36
- 名前: ウルワルス (ID: BgA0tTDI)
ローズは、先へと読み進めた。
「・・・エダールは、人型の種族としては最強の魔力と身体能力を持ち、寿命が尽きて死ぬことがない。容姿は人間の標準より遙かに美しく、外見における人間との一番の違いは耳が尖っていることである。私に様々な情報を提供してくれたフィアレンは、エダール族のジンである。
・・・シャートゥグルの外見はドラゴンに似ているが、人間に匹敵する知能を持つという。彼らはテレパシーによって意思疎通を行う。戦闘の際には、エダールもしくは人間の戦士を騎乗させるという。・・・エダール同様、寿命によって死ぬことはない。・・・彼らが『ジン』として こちらの世界に召還されたことはない。
・・・クルーは人間程の背丈の、凶暴で醜悪な化け物である。ジンの召還に不備があった場合、召還したジンに取り憑かれたり殺されたりすることがあるが、こうした事例を引き起こしたのは多くの場合クルーのジンである。
・・・異界には、『暗黒の王』ヴァルガトレイオンが君臨している。クルー・エダール・シャートゥグルはその支配下に置かれ、先に述べたように、イルフは彼によって呪われ放逐された。彼は現在(『こちらの世界』でいうと西暦1250年頃)ゴブリンの征服を計画しているという。
フィアレンは、自分は異界においてはヴァルガトレイオンの軍指揮官だと言った。イルフとの戦闘も彼が指揮したという。彼はヴァルガトレイオンによって『忠誠の呪い(Allegiance-Curse)』をかけられているため、その命令に従わざるをえないのだという。進んで仕えているクルーは別にして、エダール・シャートゥグル・人間の中で有力な者達は彼同様忠誠の呪いをかけられている。・・・」
ローズは本の内容に引き込まれた。
続きは寮の寝室で読もう。今の時間帯なら、誰もいないはず・・・
*
忠実な4人の友人(ホグワーツ卒業後の魔法省へのコネを期待しているだけなのかもしれないが)と共に、OWLに向けて図書室で勉強していたジェラルド・マクラーゲンは、少し離れた席で2年生のローズ・ウィーズリーが1人で読書しているのを目に留め、ほくそ笑んだ。ついに復讐の機会が巡ってきた・・・
ウィーズリーが本を借りて図書室から出て行くと、ジェラルドも友人達を伴って図書室を後にし、適度な距離を保ちつつウィーズリーの跡をつけた。
夕食にはまだ間があり屋外は寒いため、大抵の生徒は談話室におり、廊下を歩いているのは彼らだけだった。
「久しぶりだな、ウィー・・・」
「イモビラス(動くな)!」
問答無用で攻撃すべきだったと、ジェラルドは後悔した。ウィーズリーの反応は驚くほど早く、彼の声を聞くやいなや杖を抜いて呪文を唱えた。
だが、不意を衝かれたせいか選んだ呪文は良くなかった。「イモビラス」呪文はピクシー程度に対してなら絶大な効果を発揮し、一度に数十体を仕留めることが出来るが、人間に対してはさほどの効果を発揮しない。ジェラルドの友人のうち3人が呪文にかかって一時的に動きが止まったが、ジェラルドと、友人達の背後に隠れるように立っていたサミュエル・ペティグリューは何の影響も受けなかった。
ジェラルドは杖を抜いた。呪文を唱えることが出来ないようにしてやる・・
「シレンシオ(黙れ)!」
「エクスペリアームス!」
ジェラルドの「黙らせ呪文」は、ウィーズリーの「武装解除呪文」によって相殺された。2年生の分際で、5年生の自分と互角に渡り合うとは・・
「インペディメンタ(妨害せよ)!」
ジェラルドを手伝おうと、サミュエルがワンテンポ遅れて放った妨害呪文の閃光は、あらぬ方向に飛んでいった。分不相応に高度な呪文を使うからだ・・
「ペトリフィカス・トタルス(石になれ)!」
「インペディメンタ!」
ウィーズリーが前方に走り出しながら全身金縛り術を使ったが、ジェラルドは妨害呪文で相殺した。ちなみに、彼はまだ盾の呪文を習得していない。
「エクスペリアームス!」
早くも「イモビラス」呪文の影響から逃れたサイモン・アンダーヒルが、武装解除呪文を放った。ウィーズリーは避けたが、バランスを崩してよろめいた。その隙を衝いてジェラルドも武装解除呪文を使い、ウィーズリーから杖を奪った。
「手こずらせやがって。」
ジェラルドはウィーズリーに近付いた。彼女は尚も逃げようとしたが、妨害呪文で動きを止めてやった。
ジェラルドはウィーズリーの腕を掴み、大声を上げることが出来ないよう黙らせ呪文もかけた。近くには、都合のいいことにトイレがあった。
「さて、どう料理してやろうかな・・」
ウィーズリーを引きずりながらジェラルドは独り言ちたが、次の瞬間、右肩の辺りに激しい痛みをかんじたかと思うと、何も分からなくなった。
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.94 )
- 日時: 2014/03/23 14:43
- 名前: ウルワルス (ID: K.HEaMnc)
マクラーゲンに引きずられながら、ローズは、もう駄目だと思った。自分はこの卑劣漢の玩具となり、弄ばれる・・・
一方で、ローズは奇妙な思いにとらわれていた。今自分をトイレに向かって引きずっているのがマクラーゲンではなくスコープだったら、自分はそれを嫌だと思うだろうか? 答えは多分ノーだ・・・
「さて、どう料理してやろうかな・・」
マクラーゲンが言った。
次の瞬間、マクラーゲンの右肩から鮮血が迸り、ローズの袖にかかった。彼の手はローズから離れ、体は前のめりに倒れた。マクラーゲンの取り巻き達が悲鳴を上げた。
ローズは一時の間呆然としていたが、妨害呪文の効果が切れていることに気付くと、ショック状態から立ち直れていない取り巻きの1人に合図して「黙らせ呪文」を解除させた。それから本と杖を拾い、「スコージファイ」で袖を浄めた。
「ウィーズリー、お前がやったんだろ・・?」
取り巻きの1人が恐る恐る言った。
「私じゃないわ。−−仮にそうだとしても、あんた達に文句を言う筋合いはないけど−−」
ローズは、軽蔑に値する上級生達に答えた。4人とも怯えているようで、先程の戦闘の際に的外れの妨害呪文を放った小太りの少年に至っては、今すぐにも逃げ出したそうな表情を浮かべていた。
「それより、早くマクラーゲンを医務室に運ぶべきじゃない?」
取り巻きの1人がマクラーゲンを運ぶため「モビリコーパス」と唱え、もう1人が血の飛び散った廊下を清めるため「スコージファイ」と唱えるのを聞きながら、ローズは歩き始めた。無論手伝う気などなかった。
それにしても、マクラーゲンが突然出血して倒れる様子は、先学期に「禁じられた森」で目撃した、ユニコーンが透明な何者かに殺された時の様子に酷似していた。もしかしたら、あの時ユニコーンを殺した何者かがホグワーツ城内を徘徊しているのかもしれない・・・
ローズはこの推測を伝えるため、寮監・ロングボトム先生の部屋に向かった。
ローズの話を聞いたロングボトム先生は、すぐに暖炉を通じてフリットウィック校長に報告した。程なくして「生徒が廊下で何者かに襲われた。室内にいる生徒はその部屋から出てはいけない」という通告が城中に伝達され(ローズはロングボトム先生の部屋に留め置かれた)、先生方による捜索が行われた。しかし異常は見つからず、城の出入り口に厳重な防護呪文が施された上で、生徒達は室外に出ることを許された。
城の出入り口に施された防護呪文にも関わらず、1月中に5件の「大量出血事件」が発生した。玄関の警備のために雇われたトロールは、その翌日に喉元から血を流して死んでいるのが発見された。
「トロールなんかじゃなくて、屋敷僕妖精を警備に付けたらどうでしょう?」
薬草学の授業後、変身術教室への移動中に(授業間の移動の際には教職員が警護するようになった。)ローズはロングボトム先生に提案した。翌日から3人の僕妖精が警備に付くことになったが、1週間後、彼らも絶命した(死体に損傷はなかった)。自分の提案のせいで彼らが死んだのだと思うと、ローズの胸は痛んだ。
何とか犯人を突き止めようと、ローズは暇な時間には図書室に通った。魔法生物の中では、「カマイタチ」が犯人である可能性が高そうだった。もっともカマイタチの棲息地は日本であるし、トロールを殺せる程強力な魔法生物ではない。
僕妖精の死に方からすると、犯人が強力な闇の魔法使いである可能性の方が高かった。サウロス・マルフォイが言っていたように、「例のあの人」が甦ったのかもしれない。
さらに、1月上旬から例の「紫息病」が流行り始めた。伝染病の可能性もあるため、紫色の呼気を出し始めた生徒は医務室に隔離された。この病への対処法は、ホグワーツ医務室でも聖マンゴ病院でも、相変わらず見つかっていなかった。
アルバスはこのような状況を、こまめに手紙でボーバトンのスコープに知らせていた。ローズはというと、スコープからの最初の手紙を読んで以来彼に手紙を書いていなかった。
*
2月の第一土曜日の朝、「紫息病」に罹っていない生徒達の大半は、大広間で平日より遅い朝食を摂っていた。
「僕に手紙?」
梟が運んできた封筒を手に取り、ジェームズ・ポッターが言った。
「WWWホグズミード支店* でアルバイトしていることがジニー叔母さんにばれて、それでお説教の手紙を送ってきたんじゃないのか?」
ルイス・ウィーズリーが言った。
「こいつは僕の家の梟じゃない。それに、長旅で相当疲れてるみたいだ。」
ジェームズはそう言い、封を開いた。梟は弱々しく飛び去った。
「スコープからだ!」
その声は、アルバス、フランクの傍に着席していたローズの耳にも届いた。
* 旧ゾンコ
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.95 )
- 日時: 2013/04/07 16:18
- 名前: ウルワルス (ID: MDrIaVE2)
「へえ。スコープのやつ、ボーバトンでも『やらかす』つもりらしいな。さすがは僕の後輩だ・・・」
「やらかす」ってどういうこと? ローズは思った。
ジェームズが嬉しそうにしているからには、良いことであるはずがない。下手すれば退学につながるような、危険なことだろう。スコープは既にホグワーツを退学になっているのに・・
それに、スコープは1人で行動を起こすのではないだろう。多分カトリーヌ・デラクールが一緒だ・・
突然ジェームズが手紙から目を上げ、ローズの方を見やった。それからルイスに目配せし、2人は大広間から出て行った。ローズは食べかけの料理を消失呪文で消し去ると、2人の後を追った。
ジェームズとルイスは男子寮に向かっていた。
「スコープからの手紙には、何て書いてあったの?」
寮の階段の手前で2人に追いついたローズは、かなり険悪な口調で言った。
「君が気にするようなことじゃない。」
ジェームズが言った。
「大体予想はついてるわ。
スコープは、何か−−退学につながるような−ー危ないことを計画していて、あなた達に助言か協力を求めてきたんでしょう?
スコープをボーバトンまで退学にさせたくないなら、彼を手伝うようなことはしちゃ駄目よ!」
「スコープがノットの授業に闘蛇を持ち込むという『危険』を冒そうとした時、君は止めようとしたかい?」
ジェームズに言われ、ローズは言葉に詰まった。
「どうして今回は止めようとするんだい? もしかして、ルイスの又従妹のミス・デラクールのことが気になってるのか?」
図星だった。もし今回の計画が上手く行けば、スコープとカトリーヌの仲は「共に『冒険』をやり遂げた」ということで一層親密になるだろう。そもそも、スコープがカトリーヌと秘密の計画を共有していること自体、ローズには耐え難かった。
「私は・・私はただ、スコープがボーバトンまで退学になるのが嫌なだけよ! それより、スコープからの手紙を私にも見せなさいよ!」
「くれぐれも、この計画がローズの耳に入らないようにしてください。」
ジェームズが言った。
「何を言ってるの?」
「手紙の一部を読み上げたんだ。」
ローズは言葉を失った。
「この通り、スコープは君に計画を知られたくないと思っている。だから、手紙を見せるわけにはいかない。」
ローズはジェームズとルイスに背を向け、寮の出口に向かった。どこに行く当てもなかったが。
どうして? 何故私に教えてくれないの? カトリーヌとは計画を共有してるのに・・。
それだけ彼女のことが好きなの?
気が付くと、ローズは誰もいない飛行訓練場に来ていた。
ローズは芝地の端に腰を下ろし、ホグワーツ城の礎石に背を預けた。
1年次の飛行訓練の時間、スリザリン生によって箒から落とされたローズを、スコープが身の危険も顧みずに受け止めてくれたのは、この場所だった・・
初夏の夜、2人きりで星空の飛行を楽しんだのもこの上空だった・・
ローズは、涙が頬を伝うのを感じた。
あの頃に戻ることができたら・・
もしやり直すことができるなら、スコープがホグワーツを退学になるような事態は必ず防いでみるのに・・
「ウィーズリー。」
突然声をかけられ、ローズは慌てて涙を拭い、顔を上げた。
スリザリン生のヴァレンティン・レストレンジが、彼女を見下ろして立っていた。
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.96 )
- 日時: 2013/04/07 15:50
- 名前: ウルワルス (ID: MDrIaVE2)
レストレンジは、防寒用のマントの下にスリザリン・クィディッチチームのユニフォームを着用していた。
2週間前のスリザリン対ハッフルパフ戦には、彼は出場していなかった。チームの誰かが「紫息病」に罹り、その代役として起用されたのだろう。
「ちょうどクィディッチの練習が終わって寮に戻る途中だったんだが、君が城の裏門* に向かって『心ここにあらず』の状態で歩いているのを目にしてね。君の方では僕達に気付いてなかったようだけど。
気になったから、寮の入り口でチームメイトと別れて、表門経由で−−サウロス達には、君を追っているのだと気付かれたくなかったから−−ここまで来たんだ。」
レストレンジが話すのを聞きながら、ローズは沸々と怒りが湧き上がってくるのを感じていた。こいつやサウロス・マルフォイがセオドール・ノットに告げ口しなければ、スコープがホグワーツを退学になることはなかっただろうに・・。それにこいつは、スコープが退学になったことを喜んでいた・・
レストレンジは続けた。
「まだ2月なのに、そんな格好で外にいたら体調を崩すぞ。」
ローズは城内での服装のまま外に出ていた。
「『紫息病』も流行っていることだし・・」
レストレンジは防寒用マントを脱ぎ、ローズに着せ掛けようとした。
「余計なお世話よ。」
ローズはそれを払いのけ、立ち上がった。
「ほっといて。あなたとは関わりたくないの。」
レストレンジは悲しげな表情を浮かべた。ローズは、酷いことを言ってしまったと後悔しかけたが、次の瞬間には彼は歪んだ笑みを浮かべていた。
「スコーピウスのことが忘れられないようだな?」
「!」
「さっき泣いていたのも、それが原因だろう?
もしかしたら君は、スコーピウスが自分を異性として見てくれないのは、恋愛感情を持つには彼がまだ幼いからだと、自分を納得させてきたのかもしれないな。だが12歳の少年とは、君が思っている程幼くないぞ。
12歳は、そろそろ精通がある年頃だ−−僕の場合は10歳だったから、あいつも経験していておかしくない−−。やろうと思えば、そして相手がいれば、性行為が可能になる年頃なんだ。スコーピウスのやつ、ボーバトンの可愛い子と毎晩のように励んでるかもな。
幼いのは、むしろ君の肉体だ。あいつが君を異性として見ないのも頷ける。凹凸の少ない、その体ではね・・」
言いたいだけ言うと、レストレンジはマントを纏い、足音も荒く立ち去った。
ローズは再び座り込んだ。
『だからなのね、スコープ・・』
またもや涙が溢れ出てきた。
冷静に考えれば、12歳の少女が学童体型なのはおかしいことではないのだが、衝撃に継ぐ衝撃のせいでローズの精神状態は冷静からほど遠かった。
突然、ローズは何かの気配を感じた。杖を取り出し、立ち上がって辺りを見回した。異常は見受けられないが、「大量出血事件」の犯人が傍にいるのかもしれない。
逃げる気にはならなかった。ユニコーンを殺せる程の相手から逃げられるとは思えないし、それに今までのところ人間は誰も殺されていない。一時の痛みと引き替えに、犯人の正体を暴けるかもしれない。
加えて、今のローズは多少自暴自棄になっていた。
「スペシアリス・レヴェリオ(化けの皮、剥がれよ)!」
呪文を唱え終わった時、ローズは3メートル程手前で、銀灰色の毛並みに赤い目をした獣がこちらに顔を向けているのを目にした。体型は豹に似ているが、豹より遙かに大きい。
ローズは幼い頃、その獣の姿を『魔法動物図鑑』の挿絵で見たことがあった。確かにこの獣なら、ユニコーンだろうとアクロマンチュラだろうとトロールだろうと殺せるだろう。
だが、この獣がブリテンに棲息しているはずがない。誰かが持ち込んだとも考えられない。こんな危険極まりない生き物を遙々原産地から連れてくるなど、ヴォルデモートですら無理だろう。
そもそも、この獣が姿を消せるなんて、『魔法動物図鑑』にも『幻の動物とその生息地』にも書いていなかった・・
不意に、獣の赤い両眼が光った。その光が目に入った瞬間、ローズは脳髄が侵食されるかのような激しい痛みを感じ、意識が遠のいていった。
『許して。私とて望んでやっているわけじゃないの。』
完全に意識を失う直前、頭の中でそんな声が聞こえたように感じた。
参考・・ >>32
* 飛行訓練場は、ホグワーツ城の裏門を出てすぐの所にある。
原作には登場しない。
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