二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜   
日時: 2016/05/10 22:19
名前: ウルワルス (ID: LF8j4K3p)

〜第一部〜  目次

主要登場人物紹介 >>01

第1章  初めての友達 >>02 >>03 >>04

第2章  組分け >>05 >>06 >>07 >>08 >>09

第3章  魔法史と いも虫 >>10 >>11

第4章  ハグリッドの小屋にて >>12 >>13

第5章  飛翔 >>15 >>16 >>18

第6章  クィディッチ >>19 >>20 >>21

第7章  クリスマス休暇 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29

第8章  蛇と蠍 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34

第9章  禁じられた森 >>35 >>36 >>37

第10章  序曲終了 >>38

あとがき >>39


第二部 >>40


第三部 >>153


訂正>>132 >>135 >>136 >>145

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Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.67 )
日時: 2013/02/04 12:08
名前: ウルワルス (ID: JnbcEu1t)

「やめろ!」
 マクラーゲンに引っ張られながらも、ローズは声のした方を振り返った。スコープが杖を抜き、杖先をマクラーゲンの顔面に向けていた。その薄青い目は、爛々と輝いていた。取り巻き達に逆に杖を向けられても、まったく臆する風もなかった。
「僕自身に対する非難・暴力なら、いくらでも受けてやる。お前たちのような屑どもにそうされても仕方のないことを、僕はしてしまったからな。
 だが、僕の友人に手を出すなら話は別だ・・」

 ローズは、スコープから強力な「気」というか、オーラのようなものが発現しているように感じた。今の彼は、神々しいまでの気品に満ちていた。古の王をも斯くやと思わせた。魔法薬の授業で彼が垣間見せた凶気とは、対照的だった。
 いや、そう感じているのは、何も彼女だけではなさそうだった。スコープの傍にいるアルバスとフランクは、何か尊いものを仰ぎ見るような表情を浮かべていたし、逆にマクラーゲンとその取り巻き達は怯えたような顔つきをしていた。談話室内の傍観者達も、少し前までの非難・恐怖が入り混じった視線とは対照的な、崇めるような視線を彼に向けていた。

「・・ふん。」
 マクラーゲンはローズの腕を放した。
「こんなガキを弄ぼうとした俺が馬鹿だった。
 ・・行くぞ。」
 マクラーゲンは取り巻き達に声をかけた。
「図書室で、OWLの勉強でもしよう・・」
 マクラーゲン達は背を向け、離れていこうとした。
「彼女に杖を返せ。」
 スコープが言った。ローズから杖を取り上げた生徒は、一刻も早くスコープから離れたかったせいか、杖を返すのも忘れて立ち去ろうとしていた。ローズは杖を受け取ると、腹いせにマクラーゲンに対して「足すくい呪い」を使った。彼は無様に転倒した。
「覚えていろ。マルフォイ、ウィーズリー! お前達の親は『ケンタウルス室』行きだ・・」
 マクラーゲンは起き上がりながら吐き捨てるように言うと、足早に立ち去った。

「大丈夫かい? ローズ。」
 スコープが優しく言った。
「ええ、何ともないわ。ありがと・・」
「それにしても、グリフィンドールにあんな屑どもがいたとはね。文字通り『獅子身中の虫』だな。」
「さっきの君はすごかったよ。」
 アルバスがスコープに言った。
「何というか、昔の王様みたいな威厳に溢れてた。いや、もちろん僕は昔の王がどんなだったか知らないけど、何故かそう感じたんだ・・」
「君の気のせいだとは思うけど、そう言ってもらえるのは光栄だよ。
 それより、ローズ。君の御両親は・・」
「両親は、今の大臣はあまり良くないと思ってるみたいだけど、あんな馬鹿息子の言うことを聞くほど愚かではないと思うわ。それに、ママは大臣に対して影響力があるみたいだから、私の両親についてもあなたのお父様についても、心配する必要は−−−」
「スコープ。」
 ロングボトム先生が談話室に入ってきていた。先生は、今さっきホグワーツの教授職を解雇されたばかりであるかのような顔をしていた。
「話がある。私の事務室まで来てくれ。」

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.68 )
日時: 2014/03/30 14:34
名前: ウルワルス (ID: BgA0tTDI)

 事務室にてロングボトム先生から決定を聞かされ、「ジェレイントを失って学校に残るか、ジェレイントと共に学校を去るか」という二択を提示されたスコープは、迷わず後者を選んだ。確かに、アルバスやローズと共に学校生活を送れなくなるのは辛いことではあったが、彼らと二度と会えなくなるわけではない。彼らの休暇中には会えるはずだ。
 前者を選べば、ジェレイントの存在は永久に失われる。他者にとっては危険な害獣であろうと、3歳の時から一緒に育ってきたスコープにとって、ジェレイントは弟のような存在だった。ジェレイントの方でも、彼によくなついていた。





            *





 スコープに対する学校側の処置を知った時の皆の反応は、様々だった。



 ローズはスコープに抱き付き、彼の胸に顔をうずめ、我が事のように泣きじゃくった。



「君のためにも、スリザリン戦では必ずスニッチをとってみせる・・」
 ジェームズは、決然とした口調で言った。



 サウロス、ヴァレンティン、マヌイルの3人は有頂天だった。
「退学後の予定はあるのかい? スコーピウス。」
「病気で起き上がれないハグリッドの代わりに、ホグワーツの森番の役を買って出るといい。そうすれば、君もいずれ口から紫色の息を吐けるようになるだろうよ。」
「そうなったらしめたものだぞ。『奇術』だと称して無知な『穢れた血』どもの前で呼吸を行うだけで、小銭が稼げるからねえ・・」
 こんな調子で、大広間や廊下で会う度に3人はスコープをからかった。
 魔法薬の授業ではアルバスとローズがキレて、アルバスがヴァレンティンに「歯呪い」を、ローズがサウロスに「鼻呪い」を、セオドール・ノットの面前でかけてしまい、グリフィンドールはさらに減点された。



 梟便で退学処置について知らされた父は、その翌日にスコープに手紙を送ってきた。

「この件の詳細は、ロングボトム先生が書き送ってくださった。
 お前は、自分を恥じる必要はない。もちろん私もアステリアも、お前を勘当するつもりなどない。
 残されたホグワーツでの最後のひと時を、友人達と共に悔いのないように過ごしなさい。
 退学後の予定だが、私達はお前が学業を続けるべきだと考えている。年が明けたら、ボーバトン魔法アカデミーに途中編入させようと考えているが、お前の意見も聞いておきたい。気持ちが落ち着いてからで構わないから、返事を送ってくれ−−−」




            *




 スコープがホグワーツで過ごす最後の週の木曜日に、「決闘クラブ」が開かれた。本来は12月に開かれる予定だったのだが、何故か1ヵ月前倒しにされた。
「こんにちは、生徒諸君。」
 決闘クラブで指導する先生は、皆の予想通り、「闇の魔術に対する防衛術」教授のアダルベルト・ルーデンベルク先生だった。

 ルーデンベルク先生は2年前にダームストラング専門学校を(首席で)卒業したばかりの、ハンサムなブロンドのドイツ人青年で(英語は完璧)、先学期からホグワーツで教鞭を執っていた。授業中の私語を許さないことはもちろん、ただぼうっとしているだけでも容赦なく減点する程の厳しい先生だったが、授業は丁寧で分かりやすく、端正な容貌も相俟って、生徒達(特に高学年の女生徒)から人気があった。
 ただ、スコープは入学の日に初めてルーデンベルクを見た時から、どうもこの先生のことが苦手だった。授業中に目が合った際には、まるで蛇を前にした蛙になったかのように、奇妙な戦慄を覚えることが度々あった。アルバスやローズに話してみても、2人とも、ルーデンベルクを見てそんな気持ちに襲われたことは無いと言った。もっとも、今となってはどうでもいいことであったが・・


「この『決闘クラブ』では、単に決闘のやり方だけではなく、闇の魔法使い・生物に対する、ある程度高度な防衛術も諸君に伝授するつもりでいる。
 闇の勢力に襲われる可能性は、誰もが有している。ヴォルデモート卿が滅びたとはいえ、デスイーターの残党が細々と活動を続けているし、」
 スコープには、ルーデンベルクがヴァレンティン達の方にちらりと目をやったように思えた。
「魔法省・ヴォルデモート双方の統制から離れたディメンターが跋扈している。ブリテン国外のことではあるが、トランシルヴァニアでは3年前の大規模な法改正*1 以来、純血主義組織『Glorios-Pursange*2 』の活動が活発化している。
 とはいえ、君達はこのホグワーツにいる限り、外の世界にいる者達に比べて安全だといえる。
 しかしこの中には、間もなく退学処分に処されようとしている者もいる−−−」
 ヴァレンティン達が、意地の悪い笑みをスコープに向けた。






*1 >>28   
*2 ルーマニア語で「栄光ある純血」。略称GP。純血支持諸法の撤廃により、かえって先鋭化した。

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.69 )
日時: 2013/01/01 23:40
名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)

「闇の勢力にとって、魔法学校を追放された未成年の魔法使いほど手頃なカモはいない。つまり、この決闘クラブの開催日を早めたのは、その生徒が退学前にある程度の防衛術を身に付けることが出来るようにするために他ならない。」
「でも、先生。」
 サウロスが言った。
「そいつは退学に際して杖を折られるんでしょう? 決闘のやり方や防衛術を知っていても−−−」
「君に発言を許可した覚えはないが。サウロス・マルフォイ。」
 ルーデンベルクが言った。
「よって、今の君の発言は『私語』である。スリザリン、10点減点。」
 スコープは、思わず顔が綻びるのを感じた。同時に、これまでは「生理的に無理」だと感じていたルーデンベルク先生に対して、沸々と感謝の念が沸き起こってきた。アルバスとローズも、魔法薬での溜飲を下げたかのように、小気味よげな笑みを浮かべていた。

「では、始めようか。
 決闘の練習の前に、まずは『武装解除術』を伝授しようと思う。もっとも、これはブリテン魔法省の指導要領では、5年次で習得すべき呪文だ。君達2年生の全員が、現時点で習得できるとは期待していない。もしかしたら、誰も習得できないかもしれない(ローズが挑むような目を先生に向けた)。しかし、やるだけやってみよう・・・」
 ルーデンベルク先生は、まず実際に「武装解除術」を使って見せた。実験台にされたのはサウロスだった。サウロスは杖を奪われただけでなく、後方に吹っ飛んだ。滑らかなブロンドの頭髪が乱れ、逆立っていた。スコープ、アルバス、ローズを始めグリフィンドール生は先生に拍手喝采をおくった。サウロスは憎々しげにルーデンベルクを睨みつけた。
 それから先生は術の理論を一通り説明し、その後で2人組になっての練習が始まった。スコープはアルバスと組んだ(ローズはフランクと組んだ)。
 最初に武装解除術をマスターするのは学年トップの秀才であるローズに違いないとスコープは思っていたが、最初に術を成功させたのはアルバスだった。スコープの杖は宙を飛び、アルバスの手の内に収まった。
「素晴らしい、ポッター。」
 ルーデンベルクが称賛した。
「グリフィンドールに10点。」

 アルバスの次にはローズが成功させ、その後にレイブンクロー生のアーノルド・パラックスとキャロライン・ゴールドスタインが成功した。
 練習時間のタイムリミットが近づくにつれ、スコープは焦ってきた。スコープが呪文を唱えると、アルバスの杖は今にも宙に飛び出しそうになるのだが、どうしても最後の一線を越えることが出来ないでいた。既に術を習得したローズはフランクの相手をしながらも、横から色々とアドヴァイスしてくれた。
「よくやった、レストレンジ。」
 ルーデンベルクがそう言うのが聞こえた。
「スリザリンに10点。」

「エクスペリアームス(武器よ去れ)!」
 ついに、アルバスの杖が彼の手を離れ、スコープの掌の中へと飛び込んできた。
「よく頑張ったな、マルフォイ。グリフィンドールに10点。」
 ルーデンベルクは笑みを浮かべていた。

 結局、時間内に武装解除術を習得できたのは、グリフィンドール生3人、レイブンクロー生2人、スリザリン生1人、だけだった。

「さて、決闘の練習に入ろうか。
 これまでと同じ2人組になっての練習だが、組を変えようと思う。私が決めた組で練習するのだ。友人同士だと、どうしても手心を加えてしまうからな。それでは練習にならない。
 怪我をしても治してやるから心配するな。自慢ではないが、私は『癒者』の免許も持っているのでね。
 では、ポッターとレストレンジ・・・」
 アルバスとヴァレンティンは睨み合った。新学期最初の日のホグワーツ特急内での一件や、先日の魔法薬の授業での一件のため、2人は互いに対して強い敵意を抱いていた。
「・・・ウィーズリーとゴイル・・・ロングボトムとノット・・・
 スコーピウスはサウロスとだ・・・」

「怖いか? スコーピウス。」
 皆が先生に言われた通りの組をつくり、指示に従って向き合っている時、サウロスが言った。彼の髪は魔法で元通りになっていたが、でかい態度も元通りになっていた。
「僕が君を怖がると思うかい?」
 スコープはせせら笑った。
「武装解除術を習得できなかった癖に・・」
 サウロスの青白い顔がピンク色に変わった。先生が互いに対してお辞儀をするよう指示を出したが、2人ともするはずがなかった。サウロスにお辞儀するのは、芋虫* にキスするのと同じくらい耐え難いことだった。
 先生の指示に従わない組は他にもいくつかあったが、先生は杖を振り、それらの生徒達に互いに対して強制的に頭を下げさせた。
「では、私が3まで数えたら互いに対して術をかけるのだ。
 1、2、」
「タラントアレグラ(踊れ)!」







* >>11

 
 

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.70 )
日時: 2013/01/02 00:42
名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)

 サウロスは、「2」で呪文を唱えた。呪文の閃光が命中すると、スコープの両足が勝手にクイック・ステップを踏み出した。サウロス、ヴァレンティン、マヌイルを始め、スリザリン生達が笑い声をあげた。
 一方スコープは、サウロスに対して「ナメクジげっぷの呪い」を放った。緑色の閃光が、笑っていたサウロスの胃の辺りを直撃した。サウロスは、これで2回目だったが、後方に吹っ飛んだ。
「サウロス、大丈夫!?」
 パグ犬のような顔をしたスリザリンの女子生徒、マリーゴールド・ウルクハートがサウロスのもとに駆け寄った。サウロスは彼女に答えるどころではなかった。
「ウオゥエッ!」
 サウロスの口から、大きなナメクジがぼとりと落ちた。ウルクハートは悲鳴を上げて飛びのいた。スリザリン生を除いて、皆が爆笑した。
 ルーデンベルク先生が杖を振ると、スコープの両足はクイック・ステップを踏むのをやめた。しかし、サウロスは相変わらずナメクジを吐き続けていた。
「私の指示に従わなかった罰だ、サウロス・マルフォイ。自然におさまるまで、ナメクジの発作に苦しむがいい。」
 ルーデンベルクは冷たく言った。
「分かって・・オエッ・・いるのか!」
 サウロスは言った。
「僕の父上は、この学校の・・オエッ・・理事なんだぞ! お前なんか、いつでも・・オエッ・・クビにすることができるんだ!」
「私はある1人の人物を除き、何物をも恐れない。お前の父親が私を解雇できると思うなら、言いつけるがよかろう。」
 ルーデンベルクは平然と言った。
「私が恐れるのは・・・いや、今はまだ言うまい・・・」
 その時、スコープは、ルーデンベルクが自分の方に視線を向けたように感じた。絶対気のせいだとは思うが・・



 練習が再開された。スコープは、対戦相手のサウロスが決闘できる状態ではなかったので、他の組の様子を眺めていた。

 アルバスは、すさまじい速さで武装解除術を決め、一発でヴァレンティンを戦闘不能にした。

 ローズとルクレティア・ゴイルの組は、練習になっていなかった。ゴイルは、杖を使おうともせずに素手でローズに襲い掛かろうとした。ローズが「足縛りの呪い」を使うと、豚のような声で「卑怯者! 魔法を使うなんて!」と叫んでいた。

 フランクとマヌイルの組は激しく呪文の応酬を繰り返しており、見応えがあった。2人とも父親が教師であるためか、お互いライヴァル意識を抱いているのかもしれない。







新登場人物紹介

・マリーゴールド・ウルクハート
 パラディン・ウルクハート(ハリー・ポッター6年次のスリザリン・クィディッチチームのキャプテン)とパンジー(旧姓パーキンソン)の娘。サウロス・マルフォイに気がある。 


 

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.71 )
日時: 2016/03/18 22:56
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

第12章  






 スコープがホグワーツで最後に過ごす土曜日には、寮対抗クィディッチ杯の第一戦、グリフィンドール対スリザリン戦が行われる。

「頑張って、スコープ・・」
 試合前、城の大広間の出入り口で、アルバスと共に競技場に向かおうとしていたスコープに、ローズが声をかけた。それからローズは、スコープの頬にそっとキスした。スコープはどう反応すべきなのか分からなかったが、彼女の栗色の髪を優しく撫でておいた。
 アルバスは青い顔をして、ガチガチに緊張しており、2人のやり取りに気付いた様子はなかった。




            *



 
「今年度も始まりました! 寮対抗クィディッチ杯!」
 待機中、今年度から実況を担当することになったルイス・ウィーズリーの、魔法のマイクで拡大された声が聞こえてきた。
「自信を持つんだ、アル。」
 同じチェイサーで、5年生のドミニク・ウィーズリーが、先程にも増して青い顔をしているアルバスを激励していた。
「君にもスコープにも才能があるし、その上ずっと練習を重ねてきたんだ。あとは気持ちの持ち様だよ・・」
 アルバスと違って、スコープはまったく緊張していなかった。ただ、これが最初で最後のホグワーツでのクィディッチ試合だと思うと、寂寥感が高じてきた。
 スコープは、先程のローズのキスを思い出した。不思議と心が温かくなり、寂寥感に代わって闘志が高まってくるような気がした。

「選手の入場です!」
 ルイスの声に合わせ、スコープはミラージュスウィフトに跨り、他の選手達と共に、フィールド上空へと飛翔した。反対側からは、スリザリン・チームが入場してきた。
「まずはグリフィンドール・チームの紹介から!
 アンダーソン、ウッド、ドミニク・ウィーズリー、フレッド・ウィーズリー、ジェームズ・ポッター、」
 観客席のグリフィンドール側から、大きな歓声が巻き起こった。
「そして、今年度選抜された2人の、ひっじょーに優秀な新人チェイサーをご紹介しましょう!
 アルバス・ポッター! スコーピウス・マルフォイ!」
 スコープの名前が呼ばれた途端、スリザリン席からグリフィンドールの歓声をかき消すほどの大ブーイングが巻き起こり、スコープに向かってクソ爆弾やら臭い玉やらが飛んできた。スコープがローズをマクラーゲンから救い出すのを見て、グリフィンドール生の多くは「やはりスコーピウスはいいやつだ」との結論に達していたようだが、寮監を攻撃されたスリザリン生はそういうわけにはいかなかった。セオドール・ノットは、自寮の生徒には絶大な人気があったのだ。
 しかし、ミラージュスウィフトの機動性は抜群だった。大量の投擲物にも関わらず、スコープはクソ爆弾の爆発に巻き込まれることも、臭いがつくことも免れた。 

 審判のウッド先生の指示に従い、両チームの選手達は、フィールド中央の真上で向かい合って整列し、静止した。敵チェイサーのサウロス・マルフォイは、激しい復讐心を剥き出しにした表情をスコープに向けてきた。グリフィンドールのキャプテン、ハロルド・アンダーソンと、スリザリンのキャプテン、ガイアス・フリントが握手した(というよりは、互いの手を握りつぶそうとした)。

 スニッチ、ブラッジャー、クアッフルが空に放たれ、試合が開始された。
 ドミニクとフリントが同時にクアッフルに飛びつき、クアッフルが2人の手の間からこぼれ落ちた。すかさずスコープはクアッフルをキャッチし、一気にゴールに向かった。アルバスが、いつでもパスを受けられるよう側面を飛んでいた。ゴール前で、スコープはいかにも今からアルバスにパスするかのような動きをした。敵キーパーはまんまと引っかかり、重心をアルバスの側に移した。その隙を衝いてスコープはキーパーの脇をすり抜け、クアッフルをゴール内に投げ入れた。
「グリフィンドール、先制点です! スコーピウスが早速素晴らしい技能を披露してくれました! 10対0!」
 スリザリンのブーイングは、グリフィンドールの歓声にかき消された。スコープはアルバスとハイタッチした。実際に飛んでみることで、アルバスの緊張も解きほぐれたようだった。

「待って! 今のは・・?」
 試合が進む中、突然ルイスの狼狽したような声が聞こえた。
 今しがた、フリントがサウロスにパスを出したばかりだった。しかし、その瞬間サウロスの姿が消えたかと思うと、次の瞬間にはクアッフルがグリフィンドールのゴールポストの裏側から落下していき、サウロスが自陣に戻っていくのが見えた。
「・・どうもサウロス・マルフォイが得点したようです。10対10・・」

  
 


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