二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜
- 日時: 2016/05/10 22:19
- 名前: ウルワルス (ID: LF8j4K3p)
〜第一部〜 目次
主要登場人物紹介 >>01
第1章 初めての友達 >>02 >>03 >>04
第2章 組分け >>05 >>06 >>07 >>08 >>09
第3章 魔法史と いも虫 >>10 >>11
第4章 ハグリッドの小屋にて >>12 >>13
第5章 飛翔 >>15 >>16 >>18
第6章 クィディッチ >>19 >>20 >>21
第7章 クリスマス休暇 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29
第8章 蛇と蠍 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
第9章 禁じられた森 >>35 >>36 >>37
第10章 序曲終了 >>38
あとがき >>39
第二部 >>40
第三部 >>153
訂正>>132 >>135 >>136 >>145
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- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.42 )
- 日時: 2012/11/23 19:10
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
「ジェームズが悪戯して、アルの腰からクジャクの羽根が生えてきたのよ。」
母が答えた。
「取ってあげるよう言っても、なかなか実行しないの。あなたからも何か言ってやって。」
「取ってあげたくても、出来ないんだよ。『解毒剤』はまだ作ってないんだ。」
ジェームズは、いかにも残念そうに言った。
「3日もすれば自然に取れると思うけど・・」
「だったら、どうしてアルを実験台にしたの!」
母の雷が落ちた。
「今後、WWWでアルバイトすることは許しません! それから、今までにアルバイトで稼いだお金はすべて没収です!」
「母さん、それはあんまりだよ。もう絶対にやらないから・・」
「その台詞は聞き飽きたわ!」
「どうする、アル?」
ジェームズと母のやりとりを聞き流しながら、父が尋ねた。
「マルフォイさんのお宅に伺うのは、クジャクの羽根が取れてからにするかい?
だが私としては、その羽根は結構いけてると思うがね。」
アルバスは改めて鏡を見た。確かに、言われてみるとなかなか綺麗だ。
「父さんの言うとおりだよ、アル。」
ジェームズが、救われたように言った。
「そもそも、クジャクの羽根が美しいのは求愛のためなんだ。だからスコープの妹さんも、お前の求愛にきっと応えてくれると思うよ。」
「だから、そんなやましい下心は抱いてないって・・」
そう言いながらもアルバスは、クジャクの羽根をつけたままマルフォイ家に行く気になっていた。
家を出たのは昼過ぎだったが、全速力で箒を飛ばしたところ、夕暮れ時にはマルフォイ家の屋敷が見えてきた(住所は、互いにプレゼントを贈るため、昨年のクリスマス前に教え合っていた)。屋敷の手前にはかなり広い庭があり、高い塀で囲まれていた。
父が門を叩くと、小さな人型の生物が「姿あらわし」した。アルバスはそれが屋敷僕妖精だと分かった。ポッター家にも僕妖精がいたからだ。
「ようこそお越しくださいました、ポッター様。」
僕妖精は、深々とお辞儀をして言った。
「どうぞお入りください。ウィーズリー様は既にご到着なさっています。」
アルバスが住んでいるグリモールド・プレイスの屋敷*1 ほどではないものの、マルフォイ邸*2 も相当大きな屋敷だった。アルバスは父と共にダイニングルームに案内された。テーブルには、既に6人が着席していた。
「ようこそ、我が家へ。ポッター殿。」
スコープによく似たプラチナブロンドの男性が立ち上がり、挨拶した。
「遅いぞ、ハリー。」
赤毛の男性が言った。ローズの父親、ロナルド・ウィーズリー氏だ。娘を送ってきたのだろう。
アルバスの父とは学生時代からの親友で、義兄でもある。父が局長を務める魔法省魔法法執行部闇祓い局に所属しており、上司と部下の関係でもあった。
「久しぶりだね、ドラコ。直接話すのは何年ぶりかな。」
父はマルフォイ氏に応えた。
「私は、ドラコの御厚意に甘えて夕食を頂いていくことにした。」
ウィーズリー氏が言った。
「年代物のトスカナ産高級ワインがあるそうなんだ。これを逃す手はないぞ。」
「パパ。マルフォイ御夫妻の前で、そんなやましいこと言わないで。」
ローズが言った。
「だから私は、付き添いはママの方がいいって言ったのに・・」
「私は、自分からついて行くと言ったわけではないぞ。ハーマイオニーが、過去のことを完全に水に流すためにもあなたが行く必要があると、そう言ったからだ。」
「わたくしどもの紹介はまだでしたわね、ポッターさん。」
マルフォイ夫人が言った。
「ドラコの妻のアステリアです。こちらは息子のスコーピウス。」
スコープが立ち上がり、アルバスの父に向かってお辞儀した。それからスコープは、アルバスに笑みを向けた。
「こちらこそ、よろしく。ご子息には、ここにいる息子のアルバスが、いつもお世話になっております。」
父は、マルフォイ夫人に言った。
「それから、娘のアナスタシアです。」
マルフォイ夫人が言った。
「生まれつき足が不自由なため、立ち上がってお辞儀することはかないませんが・・」
アルバスは、マルフォイ夫人の隣で車椅子に座っている、プラチナブロンドの髪に明るいブルーの瞳をした少女に目を向けた。少女、アナスタシア・マルフォイは、座ったまま父に向かって頭をさげた。それからアルバスに向かって、はにかんだような笑みを浮かべながら言った。
「素敵なファッションですわね、アルバス・ポッターさん・・」
その口調には一欠片の皮肉も感じられず、心からの賛辞であることが感じられた。彼女の姿を見、彼女の声を聞いたアルバスは、一瞬で心臓を鷲掴みにされた。
*1 旧ブラック邸。クリーチャーによって美しく改装された。ちなみにクリーチャーは既に故人。
*2 原作に登場するマルフォイ邸とは別に、ドラコがマグルの館を改装したもの。
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.43 )
- 日時: 2012/12/21 15:24
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
「そのクジャクの羽根は、一体どうしたんだ?」
夕食の席で、スコープはアルバスに尋ねた。
「ナターシャは素敵なファッションだと褒めていたけど、僕にはかなり奇抜に見えるね。」
「ジェームズに悪戯されたの?」 ローズが尋ねた。
「うん。『ピーコックリーム』とかいう悪戯グッズを、気付かずに試食させられちゃって。」
アルバスは答えた。
「あの人ってば、ろくでもないことばかりしでかすんだから・・」
ローズは、少し忌々しげに言った。
どうやらローズは、ジェームズに対してあまり良い感情を抱いていないようだ。スコープとしては、昨年の「組分け」の際に、グリフィンドールに選ばれた自分を真っ先に歓迎してくれたのがジェームズだったこともあり、彼のことは結構好きだった。とはいえ、ローズのような真面目な優等生タイプの人物が、ジェームズのようなお調子者タイプの人物にあまり好感を抱けないことは、分かるような気がした。おそらくは、その逆もまた然りなのだろうが。
「そのジェームズという人は、どなたですか?」
ナターシャが尋ねた。
「僕の兄だよ。」
アルバスが答えた。スコープには、彼の顔がいつもより上気しているように見えた。
「アルバスさんには、他にきょうだいはいるんですか?」
ナターシャは、続けて尋ねた。
「妹もいるよ。リリーという名前で、来年ホグワーツに入学することになってる。」
「ローズさんはどうですか?」
ナターシャは、今度はローズに質問した。ナターシャは人見知りするほうだったが、友人達と自然に会話できている彼女を見て、スコープは安心した。
「私には弟がいるの。名前はヒューゴで、リリーと同じく来年ホグワーツに入学する予定よ。スコープから聞いたけど、あなたもそうなのよね? ヒューゴもリリーも、きっとあなたと友達になれると思うわ。」
「お二人には、私と同い年のきょうだいがおありなんですね。会ってみたいな・・。」
「あなた達御一家は、来週の土曜日にダイアゴン横丁で買い物をするんでしょう? 私とアルの家族も同じ日にダイアゴンに行くことになってて、そこで落ち合う予定だから、その時に会えるはずよ。」
昨年のクリスマス休暇に話した時* とは違って、ナターシャはホグワーツに行きたいと思い始めているはずだと、ローズとナターシャの会話を聞きながらスコープは思った。兄として喜ばしいことだった。
*
「息子から聞いたんだが、近頃ホグワーツは少し物騒らしいね。」
ドラコは、トスカナ産高級ワインの威力もあって、すっかりくつろいだ気分になっているハリーとロンに言った。
「私も娘から聞いたよ。」 ロンが答えた。
「禁じられた森で、ユニコーンやアクロマンチュラが殺されたり、ケンタウルスの子供達の半数が原因不明の病に苦しんでいるそうだね。
しかし、学生時代に様々な危難に直面してきた私としては、それほど大したこととは思えないな。アクロマンチュラが殺されるのはむしろ大歓迎だし−−私見では、巨人のグロウプが軽い運動のつもりで殺したんだと思うね−−、ケンタウルスの病にしても、彼らは医学にも通じているから、じきに治療法を見つけるんじゃないかな?」
「ユニコーンが殺されたというのは由々しき事態だと、私は思う。」
ハリーが言った。
「アクロマンチュラが殺されたことにしても、私はグロウプが犯人だとは思わないな。彼は、我々が学生だった時に比べて随分と進歩しているよ。一昨年ハグリッドに引き合わせてもらった時には、ヒトと普通に会話するのが可能なくらいだった。軽い運動のつもりで生き物を殺すほど粗暴だとは、思えない。」
「では、誰が、或いは何が、元凶だと思う? まさか、『例のあの人』が生き返ったとは言わないよな?」
ロンは、ドラコの方にちらりと目をやりながら言った。一瞬、ドラコの顔には隠しようもない恐怖の表情が浮かんでいた。子供達も、今や話すのも食べるのも休止して、親達の会話に耳を傾けていた。
「そう言えば、明日はアルバスとローズも一緒に、カムランの古戦場にピクニックに行く予定ですの。」
話題を変えるように、アステリアがハリーとロンに言った。
「スコープが提案したんだ。」 ドラコが言った。
「息子は、歴史が好きでね。」
「すまないね。」 ハリーは言った。
「アル、ご迷惑をおかけしないようにするんだよ。」
「分かってるよ。」
「ローズ、お前もだぞ。」
ロンが言った。
「パパに言われたくないわ。」
ローズはそう切り返し、他の7人は、ロンも含めて皆笑った。
* >>25
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.44 )
- 日時: 2012/12/29 18:28
- 名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)
子供達が食事を終えて寝室に向かった後も、ハリー、ロン、ドラコは、それぞれの職務や家庭の現状、或いは学生時代の思い出を語り合った。学生時代の数々の諍いも、今では笑い話として済ませることが出来た。
ハリーが時計を見た時には、12時を過ぎていた。
「いかん、そろそろ帰らないと。朝帰りしたら、ジニーに怒られる・・」
「どうやって帰るつもりだ? 酒気帯び状態では、箒での飛行も『姿くらまし』も禁じられるようになってるんだぞ。」
ロンが言った。
「その法律を立案したのは、確か君の奥方だったね?」
ドラコが言った。
「そう。だから私の場合は、朝帰りするよりも今すぐ帰る方がリスクが大きいってわけだ。というわけで、今晩はこの屋敷に泊めてもらってかまわないかな?」
「世話が焼けるやつだな。夕食の席でローズが言っていた通りだ。娘よりも父親の君の方が、よっぽど迷惑をかけてるぞ。」
ドラコは呆れたように言った。
「で、君はどうする? ハリー。」
「・・やはり朝帰りは避けねばならない。法に触れようと、私は今から『姿くらまし』して家に帰るよ。」
「天下のハリー・ポッターも、自分の妻には頭が上がらないと見えるな。」
ドラコは悪戯っぽく笑いながら言った。
「だが、法を破る必要はないぞ。
レヴァル。ポッター殿に『付き添い姿くらまし』をして差し上げなさい。」
ドラコは、屋敷僕妖精のレヴァルに向かって言った。
補足
箒と「姿くらまし」が駄目ならフルーパウダーを使って帰ればいいとお思いになる方もいらっしゃるでしょうが、酔って呂律が回らなくなった状態で使えばどこにとばされるか分かりませんからね。
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.45 )
- 日時: 2012/12/03 15:52
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
翌朝、北サマセットにあるカムランの古戦場に「姿現し」するため、アルバスはマルフォイ一家とローズと共に、庭に向かった。ちなみに、ロン伯父さんはまだ寝ていた(「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありません・・」と、ローズはマルフォイ夫妻に対して何度も謝った)。
庭に向かう途中、アルバスは玄関ホールで足を止めた。入ってくる時には気付かなかったが、壁に銀灰色の敷物のような物が掛けられていることに気付いたからだ。何となく見覚えがある物だった。
「あの、マルフォイさん・・」
アルバスはマルフォイ氏に声をかけた。
「どうかしたかね?」
「この、壁に掛かっている物は、何ですか?」
「ああ、それはヌンドゥの毛皮だよ。少なくとも、そう言い伝えられている。」
マルフォイ氏は答えた。
「私はそれをタンザニアで手に入れた−−スコープから聞いているかもしれないが、私は魔法省国際魔法協力部に勤めていて、外国に出張することが時々ある−−。
タンザニアのようなアフリカの国々では、魔法の技術がヨーロッパほどには発達していない。それに加えて、あちらではマグル界の環境が悲惨な状態でね。その影響で、魔法界でも薬草が育たなくなってきていた。
そんな中、タンザニア魔法省の要請で私が派遣された。私が現地で考案した『地下水脈呼び寄せ呪文』と『降水術』が功を奏し、タンザニアでは再び薬草が育つようになった。私が滞在していた村落の長はそれに感謝して、家宝である『ヌンドゥの毛皮』の一部をくださったというわけだ。」
「ヌンドゥって、すごく危険な生き物なんですよね?」
ローズが言った。
「その村長さんの御先祖様は、どうやってヌンドゥの毛皮を手に入れたんでしょうか。」
「言い伝えによると、何世紀も昔、その村は近隣の森林に棲むヌンドゥによる被害に苦しめられていたそうだ。ヌンドゥは図体は巨大であるにも関わらず、誰にも気付かれずに移動して人や家畜を殺すことができたらしい。また、ヌンドゥの襲撃の前後には必ず病が流行ったとも伝わっている。
しかし、『海の彼方』から1人の『白い肌の魔法使い』が到着してからは、状況が一変したという。彼の名は『イグノートゥ・ペーベール』といって、村の魔法使い達を組織してヌンドゥに立ち向かった。そして、激しい戦いの末にヌンドゥは退治されたそうだ。」
「そのイグノートゥ・ペーベールの子孫が、マルフォイさんにヌンドゥの毛皮を差し上げた村長、ということですか?」
アルバスは言った。
「いや、それは違うと思うな。」
スコープが言った。
「『海の彼方』からやって来た『白い肌の魔法使い』となれば、現地の黒人魔法使いではなく、喜望峰を回って航海してきたヨーロッパ出身の白人魔法使いに違いない。
父上。イグノートゥ・ペーベールは、ヌンドゥを退治した後どうしたんですか?」
「ヌンドゥの毛皮の一部を剥ぎ取り、自分用のマントを作った後、再び『海の彼方』に去って行ったそうだ。」
「マント」と聞いて、アルバスは何故この毛皮に見覚えがあるのかが分かった。この毛皮は、元来父・ハリーの所有物で、近頃は兄・ジェームズが学校での悪戯に使用している「透明マント」によく似ている。
「では、そろそろ行きましょうか。」
マルフォイ夫人が言った。
*
スコープは、アルバスと共に父に「付き添い姿現し」をしてもらい、ローズとナターシャは母にしてもらった。
カムランの古戦場は、見渡す限りに広がる平原で、花もたくさん咲いていた。魔法族にとっては重要な史跡であるため、厳重な保護呪文がかけられており、マグルには位置探知が不可能になっている。なお、マグルは「カムランの戦い」に参加しておらず、この戦いのことは噂で聞き知っただけであるため、マグルにとって「カムラン」は伝説上の土地に過ぎない。
スコープにとってカムランを訪れたのは今日が初めてだったが、何故か以前にも来たことがある気がしてならなかった。スコープは不思議な感慨を抱きながら、辺りを見渡した。平原のそこかしこで、魔法族の家族が休暇を楽しんでいる。100メートル程前方には、「カムランの戦い」の戦死者の供養のために築かれた塚山があり、その傍らに魔法史博物館があった。
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.46 )
- 日時: 2012/12/21 14:17
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
スコープ達は、まず博物館に入った。館内では、カムランの戦いの前後の時代の事物ばかりか、ブリテン魔法界の歴史全体が扱われていた。スコープとローズは大いに楽しんだが、アルバスとナターシャは少し退屈そうだった。
「全体として、マグル史との関連性についての言及が少なすぎると思わないかい?」
出口に近い最後の展示物を眺めながら、スコープはローズに言った。
「これまでの歴史観は、『魔法界の発展にはマグル界からの影響はほとんど無い』という立場に基づいているからでしょうね。」
ローズは答えた。
「だけど実際には、魔法界はマグル界と無関係ではいられなかった。中世から近世初頭にかけての『魔女狩り』みたいに、魔法界にとっては迷惑千万な場合もあったけど、例えばヨーロッパとアメリカのような、世界の各地域の魔法界の繋がりの緊密化は、『大発見時代』に端を発するマグルによる『グローバル化』に多くを負っていると、僕は考えるね。」
「実は私も、歴史観の問題に限らず魔法族はマグルのことをもっと重視すべきだと思ってるの。
例えば、私達魔法族の主要な意思疎通手段は梟便じゃない? だけど今時のマグルは、『スマートフォン』っていう小さな携帯型の装置を使って、いつでもどこでも瞬時に連絡を取り合うそうよ。私のママは両親−−つまり、私の母方の祖父母−−との連絡のために1つ持ってて、私も使わせてもらったことがあるけど、本当に便利なの。伝えたいことを、口頭でも文字でも伝達できるんだから・・」
「ホグワーツ特急にしても、汽車ではなく『リニアモーターカー』とやらを使った方が、時間短縮になるし環境にも良いんだろうね・・」
「私達魔法族がマグルの利器を取り入れるだけでなく、私達の魔法をマグルのために役立てることも必要だと思うの。そうすることで、魔法族とマグルは互いの長所を生かし、よりよい世界を築けるはずよ。」
「いっそのこと、魔法界とマグル界が一つになればいいのにね・・」
*
アルバスとナターシャは、いきいきと会話を交わすスコープとローズを、後方から見ていた。
「アルバスさん。」
「何だい?」
「私のお兄様とローズさんって、すごくお似合いだと思いません? 2人とも知的ですし、興味や関心の対象が似通っているように感じられるんです。」
「そう言われると、確かにそうだね・・」
今までは特に意識してこなかったが、アルバスは自分の親友と従姉妹が互いをどのように思っているのかについて、考えてみた。
アルバスの目には、2人が互いを異性として意識しているようには見えなかった。先学期、スコープがローズを「夜の空中デート」に誘ったことが明らかになった時には、グリフィンドールの同級生であるラウル・アンダーソン、ジム・カーペンターなどは、スコープはローズのことが異性として好きに違いないと思ったようだった。しかしそう訊かれたスコープは、まったく怪しさを感じさせずに否定したし、アルバスには2人の関係が親友以上のものであるとは思えなかった。
*
博物館から出て昼食を食べると、スコープはアルバス、ローズと共に、食後のひとときにのんびりとくつろいでいる家族を残して、塚山に登った。登るにつれて、最初にスコープが感じたデジャヴが甦ってきた。
頂上には巨大な石碑があり、一面に古代ルーン文字が刻まれていた。
「何て書いてあるんだろう?」 アルバスが言った。
「刻まれているのは、すべて人名だよ。戦死者の名前だろうね。」
スコープは言った。
「どうして読めるの!? 古代ルーン文字を勉強するのは、3年次からのはずよ・・」
ローズが驚いて言った。
「ホグワーツに入学するまでに、独学で勉強していたんだ。僕の将来の夢は魔法史家になることで、そのためには古代ルーン文字くらい すらすら読めなくてはならないからね。」
「スコープ。あなたって、本当にすごいわ・・」
ローズはスコープに尊敬の眼差しを向けた。
「ローズ、もしかして君・・!」
今度はアルバスが驚いたように言った。
「どうかした? アル。」 ローズは尋ねた。
「あ、いや。何でもない・・」
何故かアルバスは、嬉しそうだった。
しかし、スコープにはアルバスの発言に不自然さを感じる精神的余裕はなかった。石碑を見つめるうち、スコープは自分でも説明のつかない衝動に駆られ、碑の表面に手を置いた。その時、厳かな声が聞こえてきた。
「己が何者であるかを思い出せ、スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ・・我らの犠牲を忘れるな・・」
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