二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜
- 日時: 2016/05/10 22:19
- 名前: ウルワルス (ID: LF8j4K3p)
〜第一部〜 目次
主要登場人物紹介 >>01
第1章 初めての友達 >>02 >>03 >>04
第2章 組分け >>05 >>06 >>07 >>08 >>09
第3章 魔法史と いも虫 >>10 >>11
第4章 ハグリッドの小屋にて >>12 >>13
第5章 飛翔 >>15 >>16 >>18
第6章 クィディッチ >>19 >>20 >>21
第7章 クリスマス休暇 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29
第8章 蛇と蠍 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
第9章 禁じられた森 >>35 >>36 >>37
第10章 序曲終了 >>38
あとがき >>39
第二部 >>40
第三部 >>153
訂正>>132 >>135 >>136 >>145
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- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.52 )
- 日時: 2012/12/21 19:03
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
「自分の時代錯誤振りを誇示して、何が楽しいの?」
ローズが痛烈に言った。
「TVなどのマグルの利器を『穢れた血』の玩具だとか言って馬鹿にするのは、あんたのような旧時代の遺物だけよ。それに、『例のあの人』が復活するなんて、ほんとに信じてるの? だとすれば、あんたの頭は私が思っていた以上に腐ってるわね。」
「身の程をわきまえるんだな、ウィーズリー。」
サウロスの青白い顔は怒りでピンク色に変わっていた。
グリフィンドール生とスリザリン生は基本的に仲が良くないが、ローズとサウロスの相互嫌悪は格別だった。入学当日から決闘になりかけた程だから、それも当然と言えるが。
「ホグワーツの『禁じられた森』で起こっていることを、僕が知らないとでも思うのか? 学校側は公表していないが、ホグワーツの理事を務めている父上を通じて、僕はすべて知っている。諸々の事件は闇の帝王がお戻りになる前兆だと、父上はお考えだ。
帝王がお戻りになった暁には、お前達『血を裏切る者』は・・」
「或いは、君が第二の闇の帝王になった暁には、だな。サウロス・マルフォイ君。」
妙に明るい声が、サウロスの背後から話しかけた。黒髪に茶色の目をした少年が、彼の背後に立っていた。アルバスの兄、ジェームズ・ポッターだ。そういえば、そろそろ待ち合わせの時間だった。
「ジェームズ・ポッター・・」
スコープ達4人とジェームズに挟まれる格好になり、サウロスはたじろいだ。
「もっとも、君が数十年後にヴォルデモートに匹敵する強大な魔法使いになれるなら、僕は今すぐマクラーゲン* に代わる魔法大臣になれるだろうけどね。」
ジェームズの言葉にスコープ達は笑い、サウロスの顔色はピンクから朱色に変わった。
その時、暖炉に再び人の姿が現れた。スコープはその姿に見覚えがあった。サウロスの父親のトード・マルフォイだ。
「みんな、サウロスから離れて!」
スコープは小声で警告し、5人は急いで暖炉の傍を離れ他の客達の中に紛れた。ちなみに、TVの音や客の話し声などで店内はかなりさわがしかったので、サウロスとの会話を他の客が聞いたとは考えられなかった。
「サウロス、まだここにいたのか。とっくにダイアゴンに入ってヴァリー達と落ち合ったものと思っていたが。」
「ここのボーイに、『場が穢れるから』店内には粗大ゴミを入れないよう注意してたんですよ・・」
トード・マルフォイとサウロスは、ダイアゴン横丁への入り口がある「漏れ鍋」の裏庭へと向かっていった。
* >>24
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.53 )
- 日時: 2012/12/23 14:33
- 名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)
「ポッター先輩、さっきの皮肉は素晴らしかったですよ。」
トードとサウロスが行ってしまうと、スコープはジェームズに言った。
「先輩に侮辱された時のサウロスの顔を見ましたか?」
「普段は半病人のような顔が、あの時ばかりは人参みたいになってたな。」
ジェームズも愉快そうに言った。
「父さんから聞いたんだけど、ホグワーツの禁じられた森では、ユニコーンが殺されたりケンタウルスが原因不明の病気に罹ったりしてるんだって。マルフォイが言ってたのはそのことだと思うけど。」
フランクが言った。彼の父親は、ホグワーツで薬草学教授兼グリフィンドール寮監を務めている。
「僕達もそのことは知っているよ。」 スコープは言った。
スコープとローズは、先学期に罰則として森に入った際ケンタウルスから直接それらのことを聞いていたし、ユニコーンが殺される現場を目撃してもいた。アルバスも2人から聞いて知っており、彼はそれを家族に話したため、ジェームズも知っていた。
「そうか。スコープとローズは先学期、ノットによって『禁じられた森』に行かされたんだったね。今から思うと、2人とも無事で本当に良かったよ。」
フランクが言った。
セオドール・ノットは、ホグワーツの魔法薬学教授兼スリザリン寮監で、自寮を露骨にひいきする傾向があった。その妻ダフネ(旧姓グリーングラス)はスコープの母の姉で、つまりノットはスコープにとって伯父でもある。息子のマヌイルはスコープ達と同学年のスリザリン生で、サウロス・マルフォイの親友だった。
「糞マルフォイの糞親父が考えているように、諸々の事件は『あの人』が復活する前兆なのかな? 君達はどう思う?」
フランクがそう尋ねた時、カウンターから彼の母親マダム・ロングボトムの声が聞こえた。
「フランク、新しくお客様が御到着したわ! お出迎えしてくれる!?」
「分かった、今行くよ!」
「ようやく御到着か。」 ジェームズが呟いた。
「漏れ鍋」に入ってきたのは、3人の親子だった。黒髪に緑色の目を持ち、眼鏡をかけた父親は、スコープも面識があったし、それでなくとも知っていた。なにしろ、あの有名なハリー・ポッターだったからだ。先客達は、ちらちらと彼に視線を向けた。
やや太めの母親と、10歳くらいの娘はどちらも赤毛だった。ただ娘のほうは、父・次兄と同じ緑色の目をしていた*1 。
「やあ、ハンナ*2 。」
ポッター氏が、女将のマダム・ロングボトムに挨拶した。
「すまないけど、テーブルを4つ程つなげてくれるかい? かなりの人数になるんでね。」
マダム・ロングボトムが魔法を使ってテーブルを移動させ、ポッター家の5人とスコープ、ローズは着席した。
「君達の家族はまだみたいだね。」
ポッター氏が、スコープとローズに言った。
「彼らが来るまでに、スコープ、君に妻と娘を紹介しようと思うが・・」
その時、暖炉から立て続けに3人が姿を現した。スコープの家族だった。
「遅くなってすまない。」
父が言った。
「よくぞうちの愚弟を一週間も預かってくださいました。」
両親とナターシャが席に着くと、ジェームズが立ち上がり、大袈裟な程に深々とお辞儀した。
「ジェームズ・ポッターです。お見知り置きを。」
「こうして対面するのは、私がホグワーツの6年生だった時−−『あの人』が滅びた年に−−、お互いキャプテン兼シーカーとしてクィディッチの試合でまみえて以来ね。」
ポッター夫人が父に言った。
「子供同士が友達になったのだから、私達も仲良くしなくちゃね。」
それからポッター夫人は、スコープとナターシャに向かって言った。
「アルバスの母のジネブラです。
こっちは娘のリリー。仲良くしてやってね。」
「よろしくね!」
リリーが元気よく言った。
「こちらこそよろしく。」
スコープは応えた。
「こっちは妹のアナスタシアだ。ナターシャと呼んでやってくれ。
なにぶん人見知りなもので今はもじもじしているが、これでも君に会うのを楽しみにしていたんだ。君と同じく、来年からホグワーツに入学することになってる。体が弱いため不安があるようだから、是非仲良くしてやってほしい。」
「よろしく! ナターシャ。」
リリーに屈託のない笑顔を向けられ、ナターシャも微笑んだ。
「こちらこそ、よろしくね。リリー・・」
その時、また新しく客が到着したらしく、パブの入り口でベルが鳴った。フランクがとんでいった。
入ってきたのは、これまた3人の親子だった。赤毛の父親に、ローズによく似たキャリアウーマン風の母親、栗色の髪をした10歳くらいの息子だった。ローズの家族だということは、スコープにもすぐに分かった。
*1 原作の設定とは異なります。
*2 >>24
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.54 )
- 日時: 2012/12/29 18:39
- 名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)
「随分と待たせてしまったようね。ごめんなさい。」
ローズの母親、ハーマイオニー・ウィーズリー女史が言った。
「ここに来る途中で、『服従の呪文』をかけられたマグルに発砲されたの。その後始末に時間をとられちゃって。目撃したマグル達に『忘却術』をかけなくてはならなかったから・・」
「『発砲された』って、どういうこと?」
スコープは隣に座っているローズに小声で尋ねた。
「『発砲』というのは銃を撃つこと。銃というのは、マグルが使用する武器のことよ。」
「それって、大変なことじゃないか。どうしてみんな落ち着いてるんだ?」
「別に、今日が初めてじゃないの。ママは純血主義者に命を狙われてるから。」
「そんな・・」
「心配しないで。ママはとっても優れた魔女で、戦闘用や防衛用の魔法もたくさん知ってるから、テロリストなんかに殺されたりしないわ。」
「そのマグルに『服従の呪文』をかけて君を襲わせたのは誰か、見当はついてるかい?」
ポッター氏がウィーズリー女史に言った。
「オーガスティン・レストレンジでしょうね。純血支持諸法の撤廃の際には、いつだって強硬に反対していたわ。」
「何ですって!?」
スコープは思わず大声で言ってしまった。ウィーズリー女史がスコープの方を向いた。
「はじめまして、スコーピウス。到着早々に物騒な話を聞かせてしまって、ごめんなさいね。
ローズの母のハーマイオニーです。こっちは息子のヒューゴ。」
「初めまして、お義兄(にい)様!」
「黙りなさい、ヒューゴ!」
ヒューゴはスコープに向かって意味不明な挨拶をし、ローズが(何故か頬を染めながら)叱責した。
「君、かわいいね。名前はなんていうの?」
ヒューゴは姉を無視し、ナターシャに話しかけた。
「アナスタシア・マルフォイです・・」
「ヒューゴ、初対面でそれはないんじゃない?」
リリーが言った。
「ナターシャはドン引きしてるわよ・・」
こうして、来る予定だった全員が集まり、賑やかな昼食が始まった。
「ところで、あなたはオーガスティン・レストレンジについて何か知っているの?」
食事の途中で、ウィーズリー女史がスコープに尋ねた。
「僕達と同学年のスリザリン生に、ヴァレンティン・レストレンジってやつがいるのですけど、そいつの父親がオーガスティンなんです。」
「ヴァレンティン・レストレンジって、本当に嫌なやつよ。」
ローズが母親に言った。
ヴァレンティン・レストレンジはハンサムな黒髪の少年で、年の割に相当な女たらしだった。サウロス・マルフォイとマヌイル・ノットの親友で、サウロスとは従兄弟の間柄でもある*1 。
「女の子を口説き落としては捨て、また別の子を落としては捨て、を繰り返してるの。もっとも私に言わせれば、そんなやつに騙される子もどうかしてるけど。私も、去年言い寄られたことがあるんだけど・・*2 」
「君が、男子に言い寄られただって!?」
スコープにとっても初耳だったが、ジェームズがこの話題に食い付いた。
「ローズ、君がかい!? 女子として何の魅力もない、君が!?」
「姉さんでも、冗談を言うことがあるんだね。」 ヒューゴも言った。
ローズは、かなり赤くなって黙り込んだ。スコープは、見かねて言った。
「あの、ポッター先輩−−ヒューゴも−−。
女の子に対してそのような口を利くのは、あまりに礼を失した行為ではありませんか?」
「・・分かったよ、スコープ。君がそう言うなら、もう言わないさ。」
それからジェームズはヒューゴと顔を見合わせ、2人ともにやりとした。
「ありがとう、スコープ・・」
ローズは、さっきよりも赤くなっていた。
*1 サウロスの母はオーガスティンの妹、ヴァレンティンの母はトードの姉。
*2 >>12
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.55 )
- 日時: 2012/12/28 16:22
- 名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)
昼食がすむと、みんなはダイアゴン横丁に入った。母親達とローズは、学用品を買いに行った。ウィーズリー氏は、ヒューゴ、リリー、ナターシャのウインドウ・ショッピングに付き添うことになった。スコープとポッター兄弟は、それぞれの父親と共に高級箒用具店に向かった。
「何と言っても、一番の目玉はこの夏出たばかりの『ソニックファルコン(SF)Ⅱ』だな。」
道中でジェームズが言った。
「何しろ、5秒間で時速240キロまで加速可能なんだから・・」
スコープも、当初はSFⅡを購入するつもりだった。
箒用具店に入ってみると、SFⅡは真新しい陳列台に飾られていた。だがスコープはむしろ、その横に飾られた別の箒に目を奪われた。スコープは箒の脇にある説明書きに目をやった。
「ミラージュスウィフト(Mirage-Swift、蜃楼の雨燕)
この箒には、ほぼ同時期に発売が開始された『ソニックファルコンⅡ』ほどの加速力はありません。240キロまで加速するのに、約8秒を要します。
しかしこの箒には、SFⅡを上回る、現行のどの箒も遠く及ばない機動性が備わっています。乗り手次第では、1人のチェイサーに対し10人のチェイサー、10人のビーター及び同数のブラッジャーという状況であっても、2時間近くクアッフルを保持し続けることが可能であると、テスト飛行により検証されました。
スピードよりもターンやフェイントを得意とする選手に、お勧めします。」
「スコープ、君はこの箒を買うべきだと思うな。」
ジェームズが言った。
「これまでの練習で見てきた限り、君はスピードでは僕やアルに劣るけど、ターンやフェイントの技術はグリフィンドール・クィディッチチーム内でもピカ一だ。」
スコープも説明書きを読んで、ミラージュスウィフトを買うべきだと思った。
「父上、この箒にします。」
一方ポッター兄弟は、最初の予定通りSFⅡを購入した。
「やあ、ジェームズ。それに、アル、スコープも。」
店から出たところで、ポッター兄弟の従兄弟ルイス・ウィーズリーに出会った。
「さっき叔母さん達に会って、君達がここにいると聞いたもんでね。」
「やあ、ルイス。兄さんが監督生に選ばれたそうじゃないか。」
ポッター氏がルイスに声をかけた。彼の兄で、クィディッチチームに所属してもいるドミニクは、ハンサムな優等生だった。
「先学期卒業した姉も監督生でしたからね。2年後、僕が選ばれなかったら、両親はがっかりするかな?」
シルバーブロンドの髪をしたルイスは、姉・兄同様美形で成績も優秀だったが、ジェームズとつるんでしょっちゅう悪戯をしていたため、監督生になれるかは覚束無かった。ちなみに、ジェームズも成績は非常に優秀だった。
「僕が、君を監督生なんかにならせると思うかい?」
ジェームズが笑って言った。
「さて。ではノクターン横丁に行って、新しい悪戯グッズのアイディアを仕入れてこようじゃないか。いいよね? 父さん。」
「母さんに見つからないようにするんだぞ。」
ポッター氏が言った。
「言われるまでもないさ。
マルフォイさんも、どうか内密にお願いします。」
「ああ、そうしよう。」
父は、苦笑いして答えた。
「スコープ、君も来るかい?」
「駄目よ!」
いつの間にか、ローズがご到着していた。
「あなた達のことだから、危険な場所に行こうとするっていうのは分かってたわ。スコープまで巻き込むんじゃないかと思って、ママ達と別れてルイスの後をつけてきたけど、思った通りね。
スコープ、こんな人達の言うことを聞いては駄目よ。私達と一緒に行きましょう!」
ローズは、どっちつかずのスコープの袖を引っ張って、自分と、一連のやりとりを面白そうに見ていたアルバスの方に引き寄せた。
「まったく、救いようのない朴念仁だな。」
ジェームズがローズに言った。
「スコープ。間違っても、そういう女を嫁にもらうんじゃないぞ!
アル、これを持っててくれ。絶対に落とすなよ!」
ジェームズは捨て台詞を残し、アルバスに買ったばかりの箒を押しつけると、ルイスと共に去っていった。
- Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜 ( No.56 )
- 日時: 2012/12/28 21:57
- 名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)
9月1日がやって来た。スコープ、アルバス、ローズは、家族に別れを告げてホグワーツ特急に乗り込んだ。その直前、ハーマイオニー・ウィーズリー女史が、ホグワーツの制服に着替えた3人をプラットフォームに並ばせ、ローズが言っていた「スマートフォン」とやらで写真をとってくれた。
「それはマグル界の製品だろう? 写真はちゃんと動くのかね?」
スコープの父が尋ねると、
「設定をいじっておいたから問題ないわ。」
と、ウィーズリー女史は答えた。
昼食後、3人はあまり騒ぐ気にならず、スコープは歴史書『グリンデルバルドとヒトラー〜魔法界とマグル界の連動〜』を、ローズは『基本呪文集・2年生用』を読み、アルバスは買ったばかりであるにも関わらずSFⅡを磨いていた。そんな中、いきなりコンパートメントの扉が開き、サウロス・マルフォイ、ヴァレンティン・レストレンジ、マヌイル・ノットの3人が姿を見せた。
「ウィーズリー。先日、例の薄汚いパブで君と有意義な議論をさせていただいたことについて、お礼がしたくてね。」
コンパートメントの入り口で立ち止まったまま、サウロスが唐突に切り出した。
「受け取ってくれ。」
サウロスはローズの方に掌サイズの箱をほうった。ローズは素早く杖を取り出した。
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊せよ)!」
箱はローズの杖先で停止し、彼女は箱をそうっと手にとった。
それを見たサウロスは一瞬舌打ちをしたそうな顔をしたが、次の瞬間にはわざとらしく鼻をひくひくさせ、言った。
「それにしても、このコンパートメントは臭うな。」
「『混血』がいるからだろう。」
マヌイルが嘲りの色を浮かべて言った。
一方ヴァレンティンは、コンパートメントに足を踏み入れアルバスから箒をひったくり、手にとって眺めた。
「SFⅡじゃないか。乗りこなせるのか?」
「汚い手で触るな、レストレンジ!」
「ふん。」
ヴァレンティンは箒を投げて返した。
「『汚い手で触るな』か。君に言われたくないね、ポッター。
死んだ君の父方のばあさんは、『穢れた血』だったそうじゃないか。つまり、君には穢れた血が4分の1流れてるってことだ。」
アルバスは杖を抜き、立ち上がった。
「落ち着いて、アル。」
ローズが制した。
「こいつらにそんな価値無いわ。」
「スコーピウス。こんな連中と付き合っているようでは、」
サウロスが言った。
「いつか後悔することになるぞ。」
スコープは答えることも、本から目を離すことさえもせず、ただ杖をサウロス達に向けた。
「サーペンソーティア(蛇出でよ)」
スコープの杖先から出現したキングコブラがサウロス達に向かって鎌首をもたげ、胸部を広げて威嚇の態勢をとった。
「うわああぁぁぁ!」
サウロスが悲鳴を上げ、背を向けて逃げ出そうとした。すかさずローズが例の箱をサウロス目がけて投げつけた。箱は見事サウロスの頭部に命中すると大きな音を立てて破裂し、彼の頭部がナメクジだらけになった。ヴァレンティンとマヌイルも、髪に大量のナメクジをくっつけたまま逃げていくサウロスの後を追った。
「思った通り、あの箱に『高圧縮呪文』をかけたナメクジをたくさん詰め込んでたみたいね。」
スコープ、アルバスと一緒に笑いながらも、ローズが冷静に分析した。
「『高圧縮呪文』をかけたものが入っている入れ物は、ちょっとした衝撃でも破裂してしまうの。マルフォイが投げてよこした時に直接手で受け止めていたら、私の顔はナメクジだらけになってたでしょうね。」
「さすがローズ。
それにしても、スリザリン生の癖して蛇を怖がるとはね。自寮のシンボルじゃないか。
ではコブラ君、お役目御苦労。ヴィペラ・イヴァネスカ(蛇よ消えよ)」
スコープはコブラを消し去った。
「アル。あんな屑どもの言うことなんて、気にするなよ。」
「祖母は立派な人だったと、父さんが言っていた。『自分が今あるのも、母のおかげだ』とも。」
アルバスは呟くように言った。
「マグル生まれかどうかなんて、関係あるものか・・」
「君の父方のおじい様・おばあ様は、あいつらが崇拝している『例のあの人』に殺されたんだったね。当時1歳だった御子息を−−君の父上を−−守ろうとして・・」
「あいつらが信じているように『あの人』が復活したとしても、どうせまたすぐハリー叔父さんに退治されるに決まってるわ。」
ローズが言った。
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