二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜   
日時: 2016/05/10 22:19
名前: ウルワルス (ID: LF8j4K3p)

〜第一部〜  目次

主要登場人物紹介 >>01

第1章  初めての友達 >>02 >>03 >>04

第2章  組分け >>05 >>06 >>07 >>08 >>09

第3章  魔法史と いも虫 >>10 >>11

第4章  ハグリッドの小屋にて >>12 >>13

第5章  飛翔 >>15 >>16 >>18

第6章  クィディッチ >>19 >>20 >>21

第7章  クリスマス休暇 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29

第8章  蛇と蠍 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34

第9章  禁じられた森 >>35 >>36 >>37

第10章  序曲終了 >>38

あとがき >>39


第二部 >>40


第三部 >>153


訂正>>132 >>135 >>136 >>145

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Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.72 )
日時: 2013/01/02 21:00
名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)

 実際に対戦してみると、サウロスの箒メテオライトのスピードは驚異ならぬ脅威だった。

「フリントがスコーピウスに向かっていきます! しかしスコーピウスは華麗な箒さばきで難なくかわし、ドミニクへパス! ドミニクはニコルソンをぬき、クアッフルはポッターへ! 速い速い、フリントもニコルソンも追いつくことが出来ない! ブラッジャーも軽く避けて、そのままゴー・・
 ああ、畜生! サウロス・マルフォイが・・」
 こんな調子で、いいところまでいっても、結局サウロスの、というよりメテオライトのスピードの前に、クアッフルを奪われてしまうのだった。それでも、スコープが先制点を決めた後も、アルバスとドミニクがそれぞれ1回ずつ得点できたため、グリフィンドールの攻撃時はまだましだった。
 スリザリンの攻撃時は、完全にサウロスの独壇場だった。試合開始後30分の時点で、90対30と、スリザリンは大幅にリードしていた。観客席のスリザリン側は、今や興奮と歓喜の坩堝にあり、「サウロス」コールが始まっていた。これまでの6年間、スリザリンはグリフィンドールに敗れ続けていたため、無理もなかったが。
「素敵よ、サウロス!」
 「サウロス」コールの中から、マリーゴールド・ウルクハートの癇に障るキーキー声が聞こえた。

「だから言ったではないか。」
 教員専用席では、薄ら笑いを浮かべたセオドール・ノットが、苦い顔をしたネビル・ロングボトムに語りかけていた。
「『今のスリザリンが相手では、やつが有終の美を飾るのは難しい』とな。」

 サウロスは完全に調子付いていた。彼は10回目のゴールを決めた直後、自身へのコールを繰り返すスリザリン席に向けて右腕を伸ばし親指を立ててみせた。かと思うと、今度は腕をグリフィンドール・チームの方に伸ばし、親指を下に向けた。
「あの野郎、大して上手くない癖に! いい箒があるからって調子に乗りやがって!」
 実況のルイスは、最早中立を装おうともしなかった。
「ジェームズがスニッチを見つけさえすれば!」

 その時、スコープは見た。ジェームズが見つけるべきスニッチを、というわけではない。彼が見たのは、今現在は静止しているサウロスのメテオライトの尾部から、数本の枝がパラパラと落下していく様子だった。
『そういえば、あいつの箒は「試作段階」だったな・・』
 試作段階ということは、まだ万全な安全対策は施されていないに違いない。過度な負荷が加われば、完全に損壊するということもありえる。スリザリン・チームがメテオライトを失えば、こっちのものだ。
 では、どうやってそこまで追い込むか。それについて、スコープはただちに妙案を思いついた。


「アンダーソン先輩。」
 スコープは、キャプテン兼ビーターのハロルド・アンダーソンのもとまで飛んで行った。ハロルドは、ちょうどサウロス目がけてブラッジャーを打ち込んだところだった。サウロスは直前まで気付かなかったが、メテオライトの御陰で辛くも逃れた。
「ウッド先生にタイムを要求してほしいのですが。」

 ハロルドがタイムをとり、スコープは集まってきたチームメイトに自分の作戦を話した。
「果たして、そんなに上手くいくものかな・・」
 ハロルドやヘンリー・ウッドは懐疑的だった。
「スコープがホグワーツでクィディッチをするのは、今日が最後なんだよ。スコープの思う通りにやらせてあげてもいいんじゃないかな。」
 ジェームズが助け船を出してくれた。
「それにどのみち、150点差をつけられるまでに僕がスニッチをとれば済む話だ。」
「・・いいだろう。」
 ハロルドの許可が下りた。


 試合が再開された。先程サウロスが得点していたので、グリフィンドールからのスタートだった。スコープはクアッフルを手に、フィールドを囲む、木杭がめぐらされた狭い空間* へと向かった。サウロスがついてきた。
 スコープは、杭の間を敏捷な動きで飛び回った。ミラージュスウィフトの機動性は、障害物だらけのこの空間では最大限に発揮された。
 一方サウロスは、あちこちにめぐらされている杭を避けるのに苦労していた。メテオライトのスピードは圧倒的だったが、そのぶんブレーキをかけにくく、この状況ではかえって足枷となっていた。
 これこそが、メテオライトに過重負荷を強いて戦線離脱させるためにスコープが考えた作戦だった。
 そうこうするうちに、残る2人の敵チェイサー、フリントとニコルソンがサウロスに加勢しに来た。前方からフリントが、右方からニコルソンが、後方からサウロスが迫ってきた。左方は壁で、真上にはちょうど杭が位置していた。








* 映画『秘密の部屋』のクィディッチのシーンで、ハリーとドラコがスニッチをめぐってレースしてた場所。
 


Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.73 )
日時: 2016/03/18 23:07
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

 スコープは空いている左手で頭上の杭を掴んだ。そして、ちょうど鉄棒の「逆上がり」をするような要領で杭の上に体を持っていき、そのまま観客席(ちょうどグリフィンドールの席だった)の辺りまで上昇した。フリント、ニコルソン、サウロスは互いに激突し、箒から落ちそうになった。
 グリフィンドール席から驚嘆の声があがった。スリザリン席の「サウロス」コールは、いつのまにか止んでいた。

「スリザリンのチェイサーどもを手玉にとっております!」
 ルイスの声が響いた。
「魅せてくれるじゃありませんか! スコーピウス・マルフォイ選手!」



           *



「素敵よ、スコープ・・」
 再び降下していくスコープを目で追いながら、ローズは観客席で小さく呟き、目頭を拭った。彼が最後に活躍できて、本当によかった・・






            *






 スコープはその後もスリザリン・チームを翻弄し続けた。クアッフルを奪おうと焦って がむしゃらにスコープに掴みかかろうとする余り、フリントが頭を杭にぶつけたり、敵ビーターが打ったブラッジャーをスコープが避けた結果それがニコルソンに当たったりした。

 何度目か分からなかったが、サウロスが杭を背後にしたスコープ目がけて突っ込んできた。スコープは急ターンし、杭の背後に回り込んだ。サウロスは杭を避けるため箒の柄の向きを変えようとした。そして、ついにその瞬間が来た。
 枝を束ねた尾部が丸ごと、メテオライトの柄から外れた。柄だけになったメテオライトは悲鳴を上げるサウロスを乗せたままフィールド上空に飛び出し、滅茶苦茶に飛び回った挙げ句、墜落した。グリフィンドール席から歓声と笑い声が湧き起こった。
「サウロス・マルフォイは我らがスコーピウスにより『撃墜』された模様です!」
 ルイスの声が響いた。
「残ったフリントとニコルソンも大分目を回しているようです! 最早グリフィンドールの勝利は明らかです!」

 ルイスの言う通りだった。スコープもアルバスもドミニクも、次々とゴールを決めて点を返していった。100対100までもってきたところでジェームズがスニッチをとり、グリフィンドールは250対100で勝利した。




           *




 チームメイトやグリフィンドール生達とひとしきり勝利を喜び合った後、スコープは競技場から校長室へと向かった。生徒の退学の際には、校長自らがその生徒の杖を折ることになっていた。

「プサルテリウム」
 予め教えられていた合い言葉を唱え、スコープは校長室へと足を踏み入れた。試合の観戦には来ていたはずだが、フィリウス・フリットウィック校長は既に室内で着席していた。壁にはたくさんの肖像画が飾られていた。歴代のホグワーツ校長なのだろう。
 端から2番目の肖像画の主は、20世紀最高と謳われる偉大な魔法使い、アルバス・ダンブルドアだった。肖像画の中のダンブルドアは、興味深そうにスコープを見やった。
 その隣、1番端には、鉤鼻・黒髪の男性の肖像画が飾られていた。ダンブルドアほど有名ではなかったが、ハリー・ポッターによるヴォルデモート打倒に重要な役割を果たしたことで、この男性もそれなりに名を知られていた。彼、セヴルス・スネイプの肖像画は、懐かしさと苛立ちが綯い交ぜになったような表情を浮かべてスコープを見ていた。







補足
 前校長マクゴナガルは引退しただけでまだ存命中のため(第三部で登場予定)、肖像画にはなっていません。

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.74 )
日時: 2013/01/14 14:24
名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)

「高貴なる由緒正しきブラック家の血を引く者が、退学処分とは。なんと破廉恥な・・」
 尖った顎髭を持つ老人の肖像画が、スコープに向かってぶつぶつと文句を言った。

「先程の試合での君の活躍は、実に素晴らしかったよ。」
 フリットウィック校長が切り出した。
「・・ところで、退学後はどうするつもりかね? 君ほど優秀なクィディッチ選手であれば、プロクィディッチチームのユースに入ることも可能だと思うが。」
「両親は僕が学業を続けるべきだと考えていて、1月からボーバトン魔法アカデミーに途中編入させるつもりです。12月下旬に編入試験があるので、それまでの1ヶ月間は試験勉強やフランス語の習得に費やすことになるでしょう。」
「・・そうか。では、また新しい杖を買ってもらうことになるのだろうね。そうである以上、今君の杖を折ることには何の意味もないが、しかしこれは儀式なのでね・・私としても、あまり気が進まないことではあるが・・では、杖を出してごらん。」
 スコープは、ユニフォームとシャツの間に挟んでいた杖を取り出した。校長は自分の杖を取り出し、スコープの杖に向けた。次の瞬間、スコープの杖は真ん中からポッキリと2つに折れた。いずれ新しい杖を買ってもらえると分かっていても、これまで馴染んできた杖が折られたことは、まるで体の一部をもぎ取られたかのように感じられた。
 スコープは一礼し、重い心を抱きながら校長室の外に出た。




「意外じゃな、セヴルス。」
 スコープが出て行った後、ダンブルドアの肖像画が隣のスネイプの肖像画に語りかけた。
「何がです?」
 スネイプが答えた。
「君なら、ルシウスの孫息子を弁護するじゃろうと思うておったが。」
「確かに彼はルシウスの孫でありドラコの息子ですが、規則を歯牙にもかけない傾向は むしろジェームズ、ハリーのポッター父子を思わせる。私好みの生徒ではありませんな。」
 スネイプは不機嫌そうに言った。
「まったくだ。ブラック家の末裔とは思えん!」
 フィニアス・ナイジェラス・ブラックが相槌を打った。
「それにどのみち、校長室に飾られた肖像画の1つにすぎない私が寮監の決定に異議を差し挟んだところで、詮無いことです。」
 スネイプは言った。
「それもそうじゃな。今の儂らが果たすべき役目は、現職の校長に仕えることだけじゃからのう。
 ところで、フィリウス。」
 ダンブルドアはフリットウィックに話を振った。
「君はミスター・スコーピウス・マルフォイについて、どのような印象を持ったかね?」
「直接対面したのは今日が初めてでしたが、セオドールが強調していたような凶暴性は少しも感じられませんでしたよ。」
 フリットウィックは答えた。
「祖父や父と違って、高慢なところも見受けられなかった。
 ネビルが言っていたように、基本的に高潔で心優しい少年なのでしょうね。」
「確かにそれはその通りなのじゃろうが、儂はそれ以上に、彼の中に恐ろしい程の力を感じた。」
「何ですと?」
 フリットウィックは驚いて言った。
「その秘められた力は、儂がこれまで見てきた強大な魔法使い、例えばグリンデルバルドやトム・リドル、或いは儂自身をも凌ぐ程のものに思えた。長ずれば、恐らく彼は何か偉大な功業を成し遂げるじゃろう。
 だが一歩間違えれば、グリンデルバルドやリドルを上回る史上最強の闇の魔法使いとして、歴史にその名を残すことになるやも知れぬ・・」





            *





 その晩グリフィンドール塔では、戦勝祝いとスコープの送別会を兼ねたパーティーが開かれた。スコープはあまり騒ぐ気にならず、アルバス、ローズと共に隅の方に座って、皆がゲームに興じたりジェームズとルイスが曲芸をしたりする様子を眺めていた。アルバス、ローズともあまり会話はしなかったが、2人が傍にいるだけでスコープは温かい気持ちになれた。2人と共に過ごすホグワーツでの最後の夜だと思うと、同時にとても寂しくもあったが。

 翌朝、ジェラルド・マクラーゲンなど一部を除く大多数のグリフィンドール生達に見送られながら、スコーピウス・マルフォイはホグワーツ魔法魔術学校をあとにした。

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.75 )
日時: 2016/03/18 23:13
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

第13章  





 屋敷に戻ったスコープは、12月20日に行われるボーバトン魔法アカデミーの編入試験にそなえて、それまでの1ヶ月余りの間 これまでホグワーツで教わったことの総復習をした。また、魔法省国際魔法協力部に勤める父からフランス語を学んだ。スコープは幼少時に既に、ロシア語・ギリシア語と共にフランス語を父から ある程度学んでいたので*、習得するのはそれ程難しくなかった。
 ローズは毎日ホグワーツから手紙を書き送ってくれたし、アルバスも1週間に1度は手紙をくれた。友人達からの手紙は、大いに励みとなった。
 しかし、由々しき内容が書かれた手紙もあった。


「親愛なるスコープへ


 昨日の朝(今この手紙を書いている私からすれば今朝だけど)、あなたへの手紙を梟小屋に持って行った時、何気なく「禁じられた森」の方に目をやったんです。そうしたら、ケンタウルスが次々と森から出て来て、校門の方に走り去って行くのが見えました。大人に背負われた子供のケンタウルスもいたし、大人の中にも左右から別のケンタウルス達に抱えられている者がたくさんいました。
 多分彼らは、余りにも発病者が多くなったため森を離れることにしたのでしょう。ハグリッドの病気も良くなる気配がありません。
 あなたも、体には気をつけてね。それから、ジェレイントの病気が快方に向かうことを祈っています。

              
                  
                       ローズより、友情を込めて」



 試験の3日前にローズから届いた手紙は、このようなものだった。
 ちなみにスコープは、ホグワーツから戻った翌日にはジェレイントを聖マンゴ魔法疾患傷害病院に診せに行ったのだが、癒者達も匙を投げていた。





 試験当日、スコープは父に連れられて「ポートシステム*2 」を使ってフランスの首都パリに移動し、そこから「付き添い姿現し」によって会場であるボーバトン校に到着した。
 ちょうどクリスマス・シーズンに当たっていたためか、魔法で造られた溶けない氷の彫像によって校舎の周囲が飾られていた。校舎の外観は一言で言えば、17世紀のフランス・マグル界の王が建てたヴェルサイユ宮殿の大型版で、ホグワーツ城とは大きく異なっていた。
 ボーバトンではホグワーツよりも休暇が始まるのが早いらしく、生徒の姿はほとんど見かけなかった。試験会場の教室に向かう途中で何人かの女生徒とすれ違ったが、皆とてもかわいかった。
 きちんと勉強しておいたため、試験は上出来だった。試験の後でボーバトン校長マダム・オリンペ・マクシームとの面接があった。彼女はハグリッド並みに背が高かった。マダムは、スコープが完璧にフランス語を話せることに感心しているようだった。
 夕方には合格が告げられた。スコープは父と共にパリに戻り、魔法使いの横丁でボーバトンの制服を購入した。制服の色は青く、薄いシルク製だった。スコープには、ホグワーツの黒い制服の方が自分には似合っているように思えた。
 教科書については、英語の方が分かりやすいだろうからそのままでよいと言われていた。新しい杖は、ロンドン・ダイアゴン横丁のオリヴァンダー杖店で買うことにした(ボーバトンの実技試験では、父の杖を借りていた)。






* フランス語はボーバトンの公用語
 ロシア語はダームストラングの公用語
 ギリシア語はメガソフィア・プラエスティーギアエ・アカデメイアの公用語

*2 >>28

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.76 )
日時: 2013/01/20 14:31
名前: ウルワルス (ID: e22GBZXR)

 翌日、スコープはダイアゴン横丁のオリヴァンダー杖店に向かった。しかし、何度試しても自分に合う杖が見つからなかった。
「退学処分になった者に相応しい杖など無いということなんでしょうか。」
 スコープは言った。オリヴァンダー氏は難しい顔をしていたが、不意にはっとしたような表情を浮かべ、店の奥に引っ込んだ。間もなくオリヴァンダーは、いかにも由緒ありげな年代物のケースを持って戻ってきた。
「この杖は、かの『聖杯の戦士』ギャラハッドの物だったと伝えられておる。」
 オリヴァンダーはケースから杖を取り出して言った。その杖には、銀箔が全体に貼り付けられていた。
「魔法史で勉強したことと思うが、ギャラハッドは闇の魔女モルガン・ル・フェイを激しい一騎打ちの末討ち取り、自らも致命傷を負った。
 ここからが我が家に伝わる伝説なのだが、死の間際に彼はこの杖を、当時から杖作りとして有名だった我が先祖に託したのだという。自分と同じような運命を背負った魔法使いがこの杖を使って功業を成し遂げる日が、いつか訪れるであろうという言葉を遺して・・
 もっとも、この伝説には何の信憑性もない。私は若い頃この伝説の信憑性を確かめるべくコルベニック史料館で調査を行ったのだが、ギャラハッドが死に際してそのような言動をとったと記録している史料は見つからなかった。」
「ギャラハッドは多くの人に看取られて死んでいったそうですから、彼がそのような重大で予言めいた言動をとったのであれば、当然記録されるでしょうね。」
 スコープは言った。
「しかも、直前呪文を調べたところ何の反応もなかった。つまりこの杖は、古いにも関わらずまだ誰にも使われたことがないのだろう。」
 オリヴァンダーが言った。
「さて、前置きが長くなってしまったが、この杖を試してごらん・・」
 スコープは杖を手に取ると、杖が熱を帯びて手が温かくなるのを感じた。次の瞬間、杖先から火花が散ったと思うと、目の眩むような金色の閃光が迸った。同時に、断末魔の絶叫と思しき女性の恐ろしげな叫び声が、微かに聞こえた。
「今のは一体・・・この子の手に触れることで、杖が直前呪文を思い出したとでもいうのだろうか・・・」
 オリヴァンダーは驚きを隠せないようだった。
 スコープは、まさにこの杖だと思った。
「この杖は僕に合っていると思います。お代はいくらですか?」
「お代はいりません。」
「え? どうして・・」
「その杖は元々売り物ではない。それに、もしかすると君は・・」
「僕が、『ギャラハッドと同じ運命を背負った魔法使い』だとでもおっしゃるのですか? ありえませんよ。あの伝説には何の信憑性もないと、あなたもそうおっしゃってたじゃありませんか。僕としても、魔法史家を志す以上、史料に記録されていない事柄を信じることは出来ません。」
 スコープは一気に言った。
「いずれ分かりましょう・・」
 オリヴァンダーはそう言って、やはり代金を受け取ろうとはしなかった。





           *





 翌日、ホグワーツから手紙が送られてきた。手紙を運んできたのは、アルバスのペットの梟・ヤドヴィガだった。





「スコープへ

 

 ボーバトンへの編入が決まったそうだね。おめでとう! もっとも僕達としては、君がホグワーツに復学できれば何よりだと思ってはいるけど・・・
 ところで、ホグワーツでは明日からクリスマス休暇が始まる。夏休みには君のところでお世話になったから、この冬は逆に君を我が家に招待しようと思うんだけど、どうかな? もちろん、ローズも来るよ。
 ナターシャも、是非一緒にどうぞ。リリーが会いたがってる。
 それから、他に2人の客人が来ることになってる。君に会いたいんだってさ。その2人が誰かは、来てからのお楽しみ。



                           アルバスより」 





            *





 12月24日、スコープと妹のナターシャはフルーパウダーを使って、ロンドン、グリモールド・プレイス12番地のポッター家に向かった。

「スコープ!」
 スコープが暖炉から出るやいなや、誰かが抱きついてきた。
「久しぶりね。元気だった?」
 体を離してから、ローズが言った。
「この通り、ぴんぴんしてるよ。
 ああ、そうだ。毎日手紙を送ってくれてありがとう。本当に嬉しかったよ。」
「あんなの、何でもないわ。でもあなたがそう言ってくれて、私も本当に嬉しい・・」
「お2人さん。」
 ジェームズが にやにやしながら言った。
「感動の再会の最中に悪いが、後ろがつかえてるよ。」
「え、あ。ごめんなさい、ナターシャ・・」
 ローズは慌てて脇にどき、スコープも倣った。暖炉から魔法の車椅子* に乗ったナターシャが出て来た。
「久しぶりね、ナターシャ!」
 リリーがナターシャのもとに駆け寄った。







* >>25





 


 
 


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