二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜   
日時: 2016/05/10 22:19
名前: ウルワルス (ID: LF8j4K3p)

〜第一部〜  目次

主要登場人物紹介 >>01

第1章  初めての友達 >>02 >>03 >>04

第2章  組分け >>05 >>06 >>07 >>08 >>09

第3章  魔法史と いも虫 >>10 >>11

第4章  ハグリッドの小屋にて >>12 >>13

第5章  飛翔 >>15 >>16 >>18

第6章  クィディッチ >>19 >>20 >>21

第7章  クリスマス休暇 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29

第8章  蛇と蠍 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34

第9章  禁じられた森 >>35 >>36 >>37

第10章  序曲終了 >>38

あとがき >>39


第二部 >>40


第三部 >>153


訂正>>132 >>135 >>136 >>145

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Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.87 )
日時: 2013/04/07 16:12
名前: ウルワルス (ID: MDrIaVE2)

 教員テーブルの前方の台座の上には、精巧な細工が施された水盤が置かれていた。水盤は、黄金色の液体で満たされていた。スコープが水盤に掌をかざすと、水面にさざ波が立った。次の瞬間、液体は眩い光を上方に放ち、その光の中にバロンデュールのシンボルであるヒッポグリフの巨大な映像が生成された。
 バロンデュール・テーブルから盛大な拍手が巻き起こった。スコープは安心し、アイサムの隣の席に座った。

 その後は夕食だった。スコープはフランス料理を楽しみながら、バロンデュール生達から浴びせられるホグワーツについての質問に答えていった。
 彼らは、ホグワーツでは未だに梟が主要な連絡手段であることに驚いていた。
「ボーバトンでは、既にスマートフォンが普及してるよ。」
 スコープの隣に座っていた2年生のセザール・デーツが言った。スコープは、ローズの母親が持っていた小さな機器を思い出した。
「もちろん、魔法力で狂ってしまうことがないように特別な仕様が施されたものだけどね。」
 セザールが続けて言い、実物を見せてくれた。
「マグルが開発した物は好まないディオールシアン生達でさえ、スマートフォンを使ってるわ。」
 カトリーヌが言った。
 他にも、ボーバトンについて色々なことが分かった。例えば、カステルソンヌ駅からボーバトン校への馬車を引いていく動物達の大半は、校内の森(ホグワーツの「禁じられた森」とは違い、人狼やアクロマンチュラのような危険生物はいないらしい)に棲息しているものだが、一部は寮ごとに生徒達が飼育している個体であるということだ。世話をするのは基本的に1年生の役割で、そのためボーバトンでは1年次から「魔法生物飼育学」が必修科目になっていた(その代わり「天文学」が3年次以降の選択科目の扱いを受けている)。スコープは、基本的に教科書はホグワーツで使っていたものを使用する予定だったが、飼育学の教科書だけはパリで新品を購入するよう言われていた。
 アイサムは、夕食の間中ほとんどしゃべらなかった。また、カトリーヌ以外は誰も彼に話しかけなかった。スコープには、バロンデュール生達がアイサムを避けているように思えた。彼らはディオールシアン生とは違い、アイサムに対する差別意識は抱いていないはずだが・・・



 夕食が済むと、スコープは寮の談話室で手紙を書いた。宛名は、ローズとアルバスの連名にした。早速新しい友達と宿敵が出来たことや、バロンデュールに配属されたこと、ボーバトンについて分かった諸々のことを書き、合わせてホグワーツの現状を知らせてくれるよう書いておいた。ケンタウルスが禁じられた森を離れてから、また何か異変があったならば、知っておきたかった。
 

 スコープは、他の生徒達より一足早く寝室に向かった。室内には既にアイサムがいて、ベッドに腰掛けてクィディッチの本を読んでいた。
「そういえば、君はクィディッチチームに入ってるのかい?」
 スコープはアイサムに尋ねた。夕食の際、カトリーヌがバロンデュール・クィディッチチームのシーカーであることが分かっていたが、アイサムとはほとんど会話していなかったので訊きそびれていた。
「いや。」
 アイサムは辛そうに否定した。
「自分で言うのもどうかと思うけど、僕は箒で飛ぶのは結構得意なんだ。1年生の時、飛行訓練の時間に先生に褒められたこともあったな。
 だけど、僕の両親には競技用箒を買うだけの余裕が無いんだ・・」
 そこまで言って、アイサムは突然自分の身の上話を始めた。
「僕の祖父母は、タンザニアの出身だった。当時のタンザニアの、特にマグル界は、今以上に酷い状態だったそうだよ。低迷する経済、うち続く旱魃、深刻化する貧困・・・。祖父母は、まだしも経済の状況がよかった近国のマダガスカルに移住した。タンザニアで地獄の苦しみを味わった祖父母にとって、マダガスカルは快適だったんだろう。以後は2人とも他国に移ろうとはしなかった。
 だけど、父は違った。タンザニアに比べれば豊かだろうけど、マダガスカルとて貧しい国であることに変わりはない。父は同じくタンザニアからの移民2世である母と結婚すると、マダガスカルの旧宗主国ということで最も身近な先進国だった−−実際、フランス語はマダガスカルの公用語の1つだからね−−フランスに移住した。
 もっとも、フランスに移住したところで両親の暮らしぶりがよくなることはなかったけどね。先進国において移民がありつけるのは、低賃金労働だけだから。傲慢なフランス人による差別がないだけ、マダガスカルに留まっていた方がましだったんじゃないかな・・」

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.88 )
日時: 2013/02/17 17:05
名前: ウルワルス (ID: JnbcEu1t)

「君は、両親がフランスに移住しなかった方がよかったと思ってるんだね?」
 スコープは言った。
「その場合、君はマダガスカルの魔法学校に通っていたわけだけど・・」
「『フランスに移住しなかった方がよかった』っていうのは、両親にとってのことさ。僕自身は、フランスで生きることを嫌だと思ってるわけじゃない。両親が移住していなければ、僕がボーバトンに入学し、カトリーヌと出会うこともなかっただろうから・・・
 ああ、もちろん、君に会うこともなかっただろうし・・」
 アイサムは、慌ててスコープのことを付け加えた。

「あの、アイサム・・」
 暫くして、スコープは遠慮がちに尋ねた。
「夕食の時、どうして君は会話に加わらなかったんだい? それから、どうしてカトリーヌ以外は誰も、君に・・・」
「『何故誰も僕に話しかけようとしなかったのか』と、質問したいんだろ?」
 アイサムは自嘲的に言った。
「みんなは、僕のことを『罪人』だと思ってる。」
 アイサムは続けた。
「1年生が馬車を引く動物達を日替わりで世話することは、君も もう知ってるね? 僕も昨年度ヒッポグリフの世話をした。
 3月のある日、僕は、今日僕達が乗った馬車を引いたあのヒッポグリフの子供である、白い雛の世話に当たった。あの白ヒッポグリフの先祖は、コランタン・バロンデュールが飼っていた個体だそうで、飼育されているヒッポグリフの中でも特別な存在なんだ。もちろん、その雛も特別だった。僕は教わった通りにきちんと世話をした。
 だけど、翌朝に次の飼育担当の生徒が見に行った時、雛は死んでいた。先生方が検屍したけど、死体のどこにも損傷は無く、病気に罹っていた形跡も見当たらなかったそうだ。
 バロンデュールのみんなは僕を疑った。ドランペルージを始めとするディオールシアン生達が、その疑念を煽った。やつらは最初、僕が『死の呪文』を使ったに違いないと主張した。
 僕は疑いを晴らすため寮監のダンドリュー先生に頼んで、全校生徒の前で僕の杖の『直前呪文』を次々と調べてもらった。それで、僕が『死の呪文』を使ったのではないことが証明された。
 するとドランペルージ達は、僕がイスラーム教徒であることを理由に、僕がジンを呼び出してヒッポグリフを殺させたんだと言い出した。」
 ジンとは、かつて主にイスラーム圏の魔法使いが時折召還していた異世界の生き物で、大抵 人のような姿をしている。召還すれば、一度に3つまで願いを叶えてくれる。
 だが、ジンを召還して自身の命令に従わせるには複雑な魔法陣を正確に描き、これまた複雑な呪文を正確に唱えなければならない。魔法陣の線が少しでもずれていたり、呪文の発音を少しでも間違えたりすると、召還したジンの性格にもよるが、異世界に連れ去られたり、取り憑かれたり、殺されたりする恐れがある。そのため今では、イスラーム圏の魔法使いもジンを召還することは絶えて無かった。
「ドランペルージがヒッポグリフの雛を殺したに違いない! あいつが、君を退学にするためにやったんだろう。」
 スコープは言った。
「そうかもしれない。だけど証拠はない。」
 アイサムは悲観的な口調で言った。
 その時、同室のセザール・デーツ達が入ってきた。彼らは、恐怖と非難が入り交じった表情を浮かべてアイサムを見やった。スコープが闘蛇(とうだ)のジェレイントにセオドール・ノットを攻撃させた直後に、彼を見ていたグリフィンドール生達と同じ表情だった。
「アイサム、談話室で話そう。」
 スコープはセザール達を睨み付けると、アイサムと共に談話室に戻った。


 談話室から人の姿は消えていた。
「どうしてバロンデュール生達は、ドランペルージではなく君を疑っているんだ!?」
 スコープは、バロンデュール生達のアイサムに対する態度に憤慨していた。
「同じ寮の仲間なら、真犯人を見つけて君の無実を証明するのが道理のはずだ!」
「みんな最初から僕のことを快く思っていなかったんじゃないかな?」
 アイサムは寂しそうに言った。
「気付いているかも知れないけど、ボーバトンに非白人の生徒は僕しかいない。ディオールシアン生達みたいにあからさまに侮蔑することは無けれど、バロンデュールのみんなも心の中では非白人への偏見・差別意識を抱いているんだよ、きっと。
 だから、ドランペルージが『ムウィレレはジンを召還した』と言った時も、あっさり信じたんだろうね。今時ジンの召還なんて、本場イスラーム圏の魔法使いでさえ行わないのに・・」

 スコープは、何が何でもアイサムの無実を証明し、合わせてバロンデュール生の心に巣くう差別意識をも取り除いてやろうと、心に誓った。寝室に戻ると、ローズとアルバスへの手紙にこれらのことを書き加えた。

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.89 )
日時: 2013/04/14 15:23
名前: ウルワルス (ID: f3VBH/TD)

 翌日は、1時限目から魔法薬の授業があった。魔法薬学教授は、ディオールシアン寮監のアマリエ・グローメルという女性教師だった。雅な雰囲気の名前とは裏腹に、グローメル先生はずんぐりとして背が低く、意地悪そうな顔付きをしていた。


 スコープは、アイサム、カトリーヌと同じテーブルで作業をした。作業をしながら、スコープはアイサムの無実を証明する方法を考えていた。皆の前で真実薬(ヴェリタセラム)をアイサムに飲ませ、「自分はやっていない」と言わせるのはどうだろうか・・
「スコープ。」
 カトリーヌに話しかけられ、思考が中断した。
「グローメルに関する面白い話を教えてあげるわ。」
 カトリーヌは悪戯っぽい笑みを浮かべ、小声で言った。スコープは大して興味が無かったが、とりあえず先を促した。
「グローメルは学生時代、ジュール・ドランペルージの父親と同学年だったらしいの。」
 カトリーヌは続けた。
「ここからが面白いんだけど、グローメルは学生時代からドランペルージの父親に首っ丈なんですって。彼が結婚してからも、ずっと。」
 スコープは、ドランペルージの父親が自分の父を良く思っていないことを思い出した。
「ドランペルージの父親は、息子と同じようにろくでもない人物なんだろうね?」
 スコープはグローメルに聞こえないよう小声で尋ねた。
「ええ。シャルル・ドランペルージといって、純血主義の塊みたいな男よ。トランシルヴァニアを本拠地とする純血主義組織GPの指導者・ヴラドミール・シェノマフスクとも交流があるみたいだし、若い頃はブリテンの『例のあの人』の支持を受け、フランス魔法省を乗っ取るクーデターを計画していたこともあったそうよ。」
「どうして君はそんなに詳しいんだ?」
 スコープは尋ねた。その時、教室内を回っているグローメルが近付いてきたので、カトリーヌは答えなかった。
 グローメルは、スコープ達のテーブルのところで立ち止まった。
「マドゥムアゼル・デラクール。」
 グローメルは、やけに明るい口調で言った。
「昨日あなたは、ディオールシアンのシンボルであるウィングドボアをけなしたばかりか、恐れ多くもディオールシアンその人の悪口を言ったそうじゃない。ジュールが教えてくれたわ。」
「ドランペルージが、私達の寮のシンボルであるヒッポグリフを『醜い怪鳥』だと言ってけなしたからです。」
 カトリーヌは毅然として美しい顔を上げ、反抗的な口調で言った。ふとスコープは、カトリーヌのような美少女に反抗的な態度を取られることは、不細工なグローメルにとって面白くなかろうと思った。
「だとしても、ジュールはコランタン・バロンデュールの悪口を言ったわけではないでしょ?」
 グローメルの口調には、次第に苛立ちが表れてきていた。教室内の生徒達は、不安そうな表情を浮かべて成り行きを見守っていた。
「偉大なる創設者を虚仮にするような発言は、許し難い行為です。バロンデュール、50点減点。
 それから、ムシュー・マルフォイ。」
 グローメルは、室内のあちこちから上がる不満の声を無視して言葉を続けた。
「あなたは、ジュールが何も危害を加えていないにも関わらず、1時間にも満たない時間の中で2度も彼を攻撃したそうね。しかも、最初のコブラを使った攻撃は彼をもう少しで死に至らしめる程だったとか。
 ムシュー・マルフォイの野蛮で凶暴な行為により、さらに100点をバロンデュールから減点します。退学にしないだけ有り難いと思いなさい。
 まったく、こんな問題児を受け入れるなんて校長は何をお考えなんでしょう? 御自身が巨人の血を引いているものだから、凶暴なお仲間が増えることをお望みになったのかもしれませんわね。既に、獰猛な半鳥人のお孫さんもいることですし・・」
 グローメルは再びカトリーヌに目をやった。
「先生は、本当はヴィーラのことをそんな風には思ってないはずよ。」
 カトリーヌが言った。スコープは、やめた方がいいと思った。これ以上減点されたら・・
「先生は、ヴィーラの美が羨ましいんでしょう? ヴィーラのように美しければ、シャルル・ドランペルージの気を引くことができたでしょうし、」
 グローメルの顔が赤黒く変色した。
「そもそも半鳥人の姿になったヴィーラの方が、先生よりはまだ美しいと思うわ。」

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.90 )
日時: 2013/02/24 15:48
名前: ウルワルス (ID: MDrIaVE2)

バーン!


 大きな炸裂音と共にカトリーヌの体が宙を飛び、教室の壁に叩き付けられた。グローメルが杖を抜いてカトリーヌを攻撃したのだ。スコープの隣にいたアイサムが、グローメルに仕返しするため杖を抜こうとしたが、スコープは辛うじて彼を抑えた。

「教授に対する無礼な発言により、バロンデュールから さらに50点減点します。」
 グローメルが怒りに声を震わせながら言った。
「加えて、罰則を科します。
 デラクール。来月の第三土曜日に、トロフィールームに来なさい。」






「あのババア、やってくれたわね・・」
 魔法薬の授業が終わり、次の授業場所に移動している時、カトリーヌが言った。
「2月の第三土曜日は、ディオールシアン戦があるのに・・」
 カトリーヌは、バロンデュール・クィディッチチームのシーカーだった。
「君と対戦するはずだった、ディオールシアンのシーカーは誰なんだ?」
 スコープは気になって尋ねた。
「まさかドランペルージとか?」
「そのまさかだよ。」
 アイサムが言った。
「カトリーヌ程ではないだろうけど、あいつはかなり上手いんだ。11月のディオールシアン対シャルパンサーニュ戦では、5分かそこいらでスニッチをとった。まあ、あいつにはクィディッチ専門の家庭教師がついていたらしいから、上手いのは当然かもしれないけど。箒も最新型の『レクレア3000』だそうだよ。
 それにしても、金持ちっていいよな・・」





     *





 その夜、スコープは談話室でアイサムと共に宿題に取り組んでいた。
「アイサム。みんなの前で真実薬を飲んでみる気はないかい?」
 宿題が一段落ついたところで、スコープは尋ねた。
「君がみんなの前で真実薬を飲めば、僕がその場で『ヒッポグリフの雛を殺したのか?』と質問する。真実薬を飲んだら嘘をつくことは出来ないから、みんな君の『殺していない』という答えを信じるはずだ。」
「僕が飲んだ薬が真実薬かどうか、みんなには分からないんじゃないかな? 僕達が芝居を打っているんだと思われるかもしれない。僕の無実を証明する方法を考えてくれたのは嬉しいけど・・」
「薬が真実薬かどうかは、誰かを実験台にすればみんなにも分かるさ。例えば、セザールに飲ませて『今日の下着は何色?』とでも質問すればいい。問題は、どうやって真実薬を手に入れるかだけど・・」
「真実薬は、グローメルの部屋にあるはずよ。」
 少し前まで同性の友人達と話していたカトリーヌが、2人のいるテーブルにやって来ていた。
「ところで、何のために真実薬を手に入れたいの?」
 スコープが計画を話すと、カトリーヌは乗り気になったようだった。
「みんなのアイサムに対する態度は、前から気になってた。私も協力するわ。」
 カトリーヌが言うと、アイサムの顔は感謝と喜びでいっぱいになった。
「まずは、どうやって真実薬をグローメルの部屋から盗み出すかを考えないと・・」
 カトリーヌが声を潜めて言った。
「やっぱり、駄目だ。」
 アイサムが言った。
「もしグローメルに見つかったら、ただじゃ済まない。特にカトリーヌは、ただでさえあいつに憎まれているんだから・・」
 アイサムの言葉を聞きながら、確かにこれは危険な試みだとスコープも思った。見つかったら、退学になってもおかしくない。それに自分は、既に一度退学に処された身だ。ボーバトンまで退学になったら、両親は・・
 だが、とスコープは思い直した。ホグワーツを退学になった時、両親は事情を知って納得してくれた。不条理な扱いを受けている友人を救おうとしてボーバトンを退学になっても、分かってくれるはずだ。
 それに、祖父は自分がダームストラング専門学校に行くべきだと考えていた。いざという時はダームストラングに途中編入すればいい。
「グローメルの怒りなんて、恐くもなんともないわ。」
 カトリーヌがアイサムに言った。

 
 その後カトリーヌは、真実薬があるであろうグローメルの部屋について説明した。その部屋には、グローメルがシャルル・ドランペルージから預かったという何か重要な物が保管されており、そのため厳重な防御網が施されているとのことだった。
「グローメルは、学生時代からの想い人の頼みを断れなかったんでしょうね。」
 カトリーヌは言った。
「魔法薬の授業の時にも訊いたけど、どうして君はそんなによく知ってるんだ?」
 スコープは尋ねた。
「私の父はフランス魔法省に勤める闇祓いで、シャルル・ドランペルージのことを密かに捜査してるの。
 近頃トランシルヴァニアでGPの活動が活発化しているということは、知ってるわね?」
「ああ。」
 トランシルヴァニアはヨーロッパの中でも純血主義が盛んな国(マグル界では、ルーマニアの一部とされている)だが、4年前に法改正が行われ、純血支持諸法は撤廃された。ちなみにスコープの父ドラコは、国際魔法使い連盟特使として この法改正に大きく関わっていた。
 

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.91 )
日時: 2013/04/14 15:12
名前: ウルワルス (ID: f3VBH/TD)

 しかし、ヴラドミール・シェノマフスク率いる純血主義組織「Glorios Pursange(栄光ある純血。略称GP)」はかえって先鋭化し、テロ行為も頻繁になっていた。
「父の知り合いであるトランシルヴァニアの闇祓いによると、GPはあちらの魔法省の乗っ取りを計画しているみたいなの。ドランペルージには過去にクーデターを計画したという前科があるから、GPを密かに援助しているとしてもおかしくないし、或いはトランシルヴァニアでのクーデターと同時にこちらでも事を起こそうと計画しているかも知れない。そういう訳で、魔法省は父にドランペルージの捜査を命じたの。
 もっとも父は、以前からドランペルージの動きには目を光らせてたみたいよ。父は、ドランペルージとはボーバトンの同級生で、彼がどういう人物かはよく知っているから。」
「それで君の父上は、ドランペルージがグローメルに何か大切な物を預けたことを突き止めたんだね?」
 スコープは言った。
「まず父は、クーデターの際に武器となるような物を持っているかを調べるため、ドランペルージに対して家宅捜査を行うと通告したの。」
「わざわざ通告したのかい? 抜き打ちじゃなくて?」
「父には、ドランペルージがどこに物品を隠し持っているのか分かっていなかった。ドランペルージが不安になって隠し場所を変えた時に、その場所が明らかになることを期待して、予め通告したんだそうよ。
 案の定、ドランペルージは見つかったら都合の悪い物品を持っていて、それを別の場所に隠したみたい。」
「その隠し場所が、ボーバトン城内のグローメルの部屋なんだね。 どうやって突き止めたんだ?」
 スコープは尋ねた。
「あなたのお国に、『ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ』っていう悪戯用品専門店があるでしょう? その商品を使ったのよ。『盗聴虫』だったかしら?」
「わざわざブリテンまで出向いて購入したのかい?」
「その必要はなかったわ。父の従姉がWWWのオーナーのお兄さんと結婚してるんだけど、その関係で手に入ったの。」
「じゃあ君は、ウィーズリー家と親戚なんだね!?」
 スコープは驚いて言った。
「親戚とはいっても随分と遠縁になるから、面識があるのは父の従姉の一家だけだけど。」
「ホグワーツで学んでいたから、僕もウィーズリー家の子達とは面識がある。そのうちの1人とは、親友だった・・」
 そう言いながら、スコープはローズのことを思い出していた。とりわけ、共に過ごした最後の夜のことを・・。
 今頃彼女は何をしているだろう? 勉強? それとも、自分への手紙をしたためてくれているのだろうか?
「『盗聴虫』には、ドランペルージがグローメルに物品を預けた時の会話が記録されてるんだよね?」
 スコープが黙りこくってしまったため、アイサムがカトリーヌに尋ねた。
「その記録を証拠にドランペルージを告発できるんじゃないかな?」
「残念ながら、ドランペルージは決定的なことは何も言ってなかったわ。
 『これは大切な物だから、誰にも盗まれないよう、厳重な防御を施して保管しておいてくれ。』
 これじゃ、証拠不十分ね。それにドランペルージはしょっちゅう魔法省に出入りして金貨をばらまいてるから、裁判官達がドランペルージに取り込まれている可能性も否定できないわ。
 私達が真実薬を盗むついでに、その物品を回収できればいいけど・・」
「君の父上は、グローメルの部屋を調査しようとはしていないのか?」
 物思いから覚めたスコープが尋ねた。
「それが出来ればいいんだけど、グローメルは『プライヴァシーの侵害だ』と言って調査を拒否してるの。」
「ドランペルージの家宅を捜索することは出来たのに、どうしてグローメルの部屋は駄目なんだ?」
 スコープは尋ねた。
「ドランペルージと違って、グローメルには本人のプライヴァシーを二の次にしても構わないだけの前科が無いの。」

 その後も3人は暫くの間、いかにしてグローメルの部屋に入り込むかを小声で話し合った。結論は出なかったが。
「ところで、スコープ。」
 最後にカトリーヌが言った。
「あなたはオ(ホ)グワーツでクィディッチをしていたのよね?」
「ああ。君と違ってポジションはチェイサーだったけど。」
「私の代わりに、シーカーとしてディオールシアン戦に出場する気はない? そもそも、あなた達のところに来たのはこのことを言うためだったの。
 選抜の時に思ったんだけど、今年度のバロンデュールには飛ぶのが上手い人があまりいないから・・・。どうかしら?」
 スコープは元々、学生時代の父と同じくシーカーとしてプレイしたいと思っていた。グリフィンドール・クィディッチチームには既にジェームズ・ポッターという天才シーカーがいたから、ホグワーツにおいてその夢は叶わなかったのだ。

 
 


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