二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜   
日時: 2016/05/10 22:19
名前: ウルワルス (ID: LF8j4K3p)

〜第一部〜  目次

主要登場人物紹介 >>01

第1章  初めての友達 >>02 >>03 >>04

第2章  組分け >>05 >>06 >>07 >>08 >>09

第3章  魔法史と いも虫 >>10 >>11

第4章  ハグリッドの小屋にて >>12 >>13

第5章  飛翔 >>15 >>16 >>18

第6章  クィディッチ >>19 >>20 >>21

第7章  クリスマス休暇 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29

第8章  蛇と蠍 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34

第9章  禁じられた森 >>35 >>36 >>37

第10章  序曲終了 >>38

あとがき >>39


第二部 >>40


第三部 >>153


訂正>>132 >>135 >>136 >>145

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Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.57 )
日時: 2012/12/29 18:32
名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)

 暗くなるころには、列車はホグズミード駅に到着した。

「イッチ年生はこっち・・イッチ年生はこっちだ・・」
 スコープ、アルバス、ローズがフォームに降り立つと、懐かしい声が聞こえてきた。しかし、その声には元気がなかった。
「ハグリッド、大丈夫?」
 3人は、1年生を集めている声の主、「禁じられた森」の森番兼魔法生物飼育学教授、ルビウス・ハグリッドに近づき、ローズが尋ねた。ハグリッドは巨大なマスクを着用していた。
「久しぶりだな。アル、ローズ、スコープ。
 夏の間に、ちょっと体調を崩しただけだ。なんともねえ・・」
 そう言いつつも、ハグリッドはよろめいた。アルバスとローズが支えようとしたが、2人ともつられてよろけた。
「とても大丈夫とは思えないけど。」
 アルバスがそう言ったが、
「1年生はみんな集まったようだな。俺はもう行かねばならん。お前さん達も、急ぐといい。
 ああ、そうだ。スコープ、ジェレイントは元気か?」
「ええ。
 先生のペットは? バックビークは元気にしてますか?」 
「・・バックビークは、つい1週間前に死んだ。」
「そんな!」
 ローズが悲痛な声を上げた。
「仕方ねえ。年だったからな・・」
「1年前* はあんなに元気だったのに・・」
 ローズは納得できないようだった。
「さあ、もう行くんだ。俺も行かねばならん。1年生がまちくたびれとる・・」
 ハグリッドは1年生達を連れて、行ってしまった。その後ろ姿は、どこかふらついているように見えた。
「きっとハグリッドは、バックビークを亡くした悲しみのあまり体調を崩しちゃったんだよ。可哀そうに・・」
 アルバスが言った。スコープも同感だった。
「僕も、ジェレイントが死んだら、2日間くらい何も食べれないだろうな。」
 2人は、馬車乗り場に向かって歩き出した。
「どうした? ローズ。」
 スコープは振り返って尋ねた。ローズは、立ち止まって何やら考え込んでいるようだった。その視線の先には、遠くに見える「禁じられた森」があった。
「・・なんでもないわ。ちょっとぼうっとしてただけ・・」
「君らしくないね。」
 3人は連れ立って歩き始めた。



            * 



「みなさんにお知らせがあります。」
 新入生の組分け、歓迎会が終わり、みんながお休みムードになっていたところ、フィリウス・フリットウィック校長が深刻な口調で宣言した。
「これまでも学期の最初に言ってきたことではありますが、『禁じられた森』には絶対に入らないように。今年になってからというもの、森では様々な異変が生じています。具体的には、これまでにユニコーンが2頭、アクロマンチュラが14匹殺されており、成獣も含めた72人のケンタウルスが原因不明の病に苦しんでいます。ケンタウルスの子供のうち5人が、既にその病のため亡くなっています。
 ユニコーンは禁じられた森に棲息する他のいかなる生き物よりも動きが素早く、アクロマンチュラを襲うような生き物はいまだ森で発見されておらず、医学に優れるケンタウルスが原因不明の病に苦しめられていることからも、これらがいかに懸念すべきことかということがお分かりいただけるでしょう。」
 生徒達はシーンと静まり返っていた。「お休みムード」はすっかり消え去っていた。1年生達は、入学早々にこのような話を聞かされ、随分と怯えているように見えた。スリザリン・テーブルでは、サウロス・マルフォイらが薄ら笑いを浮かべていた。
「魔法生物飼育学の授業は、これまでは森の近辺で行われており、時には森の中で行われることもありましたが、生徒達の安全を期して、それに代わる授業場所を担当教授と検討中であります。」
 これには、生徒の一部(主にスリザリン生)から控えめな歓声が上がった。ちなみに、当の担当教授のハグリッドは欠席していた。余程体調が悪いのだろう。

「僕達が夏休みを楽しんでいる間、諸々の事件は解決されるどころか、より深刻化してたってわけだね。」
 校長先生の話が終わり、グリフィンドール塔に向かう途中で、アルバスが言った。
「明日、授業が終わったらハグリッドのところに行こうと思うの。」
 ローズが言った。
「生徒と同じようにハグリッドも森に入らないよう、警告しないと。」
「ハグリッド先生は、それくらい分かってると思うよ。」
 スコープは言った。
「だけど確かに、先生の小屋、じゃなくて家を訪れる必要はあるだろうね。先生は大切なペットを亡くしてショックを受けてるから、僕達が力になってあげないと。先生は生き物がお好きだから、久しぶりにジェレイントを見ることで少しは元気になるかもしれない。」
「・・優しいのね、スコープ。」
 ローズはそう言い、アルバスが「ヒュウ」と口笛を吹いた。






* >>13

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.58 )
日時: 2014/05/18 14:52
名前: ウルワルス (ID: O0NjrVt8)

 翌日、放課後になると、スコープは縮小呪文をかけられた闘蛇(とうだ)のジェレイントが入ったケースを持ち、アルバス、ローズと共にハグリッドの小屋に向かった。
「おお。3人とも、よく来てくれた。今からお茶を入れるから、待っててくれ・・」
 明るい口調でそう言いながらも、ハグリッドは相変わらず具合が悪そうだったし、マスクも着けたままだった。
「ハグリッド。上の方に溜まってる紫色の気体は何なの?」
 ローズの言葉に、スコープとアルバスが天井を見上げると、毒々しい紫色の気体が上方に充満していた。
「ああ、換気するのを忘れとった・・」
 ハグリッドはローズの質問に直接答えず、ただ窓を開けた。
「あの気体がなんなのか、知りたいんだけど・・」
 ローズが重ねて尋ねると、ハグリッドは諦めたように答えた。
「俺の呼気だ・・」
「何ですって!?」
「8月になってから、吐く息がだんだん紫色になってきた。最初は薄かったんだが、今じゃ見ての通り、毒々しいまでの紫色だ・・・息が紫色になっていくにつれて、体調の方もだんだんと優れなくなってきちょる・・
 実はバックビークも、死ぬまでの1ヵ月間、紫色の息を吐いとった。フィレンツェによると、原因不明の病に苦しんどるケンタウルス達もそうらしい・・」
「ハグリッド、それってやばいんじゃ・・」
 アルバスが言った。
「すぐに聖マンゴ病院で診てもらうべきだよ。」
「やっぱり、昨日私が思った通りだわ。」
 ローズが言った。
「禁じられた森に住むケンタウルスと同じ症状が出ていることからも、バックビークの死とハグリッドの病気の元凶が森にあることは明らかよ。
 ハグリッド、今後は一切森の中に入らないで。それから、アルの言う通り、明日にでもお休みをとって聖マンゴで診てもらうべきよ。」
「あの、ハグリッド先生。」
 スコープは言った。
「確かにアルとローズの言う通り、病院で診てもらうことも大切だと思います。だけど、精神面でのケアも大切ですよね?
 ジェレイントを連れてきたのですが、久しぶりに一緒に遊んでみませんか? 暗くなるまでには少し時間がありますから。」
「おお、ジェレイントを連れてきてくれたのか!」
 途端にハグリッドは嬉しそうになった。
 それから1時間程、4人は湖とその畔で、縮小呪文を解かれたジェレイントの背に乗って夕暮れ時の湖上遊覧を楽しんだり(ハグリッドは大きすぎて1人でも乗ることができなかった。他の3人は同時に乗ることができたのだが、アルバスは妙に にやにやしながら辞退した)、ジェレイントが捕まえてきたグリンデローの指を折ったり、同じくジェレイントが捕まえてきた小型のケルピーが、その口から逃れようとして様々な姿に変身する様子(最終的に、そのケルピーはどろりとした見苦しい物質に姿を変えて逃げ出した。アルバスによると、どう見てもあれは反吐だったとのこと)を観察したりした。

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.59 )
日時: 2012/12/29 21:24
名前: ウルワルス (ID: fS.QmYjo)

 翌朝、寮の寝室でジェレイントに餌(「防腐呪文」をかけた生の小魚)をやろうとしたスコープは愕然とした。ジェレイントの口と鼻孔から、微かに紫色の気体が漏れ出ていたからだ。

 スコープは朝食の席で、アルバスとローズにこのことを報告した。
「ジェレイントは禁じられた森に入ってないのに、どうしてだろう? 病気の原因は、森とは別にあるのかな?」
 アルバスが言った。
「私は、やはり森が原因だと思うわ。森の中にある病原が、風に吹かれるかしてハグリッドの家まで漏れ出てきたのよ。」
 ローズが言った。
「今後は森に入るだけでなく、森に近づくことさえもしない方がいいでしょうね。ハグリッドには、今の小屋を離れてホグワーツ城内に住居を与えてもらうよう、梟便で知らせるべきだと思うわ。」



            *



 新学期が始まって2週目に、クィディッチ・チーム編成のための選抜があった。その日の朝、2羽のミミズクが細長い包みをスリザリン・テーブルに運んできた。受取人はサウロス・マルフォイだった。
「見ろよ。『メテオライト』だ。」
 サウロスは、包みの中身である新品の箒を見せびらかしていた。
「まだ試作段階で発売すらされていないんだけど、父上が箒会社と話をつけて特別に手に入れてくださったんだ。父上は会社の大株主で、オーナーとも親しいからね。
 3秒間で時速280キロまで加速できる。ポッター兄弟のSFⅡも、これと比べたらポンコツ同然だと思うよ。」
 先程まで自分の箒を3年生の友人達に自慢していたジェームズが、忌々しげにサウロスを睨んで言った。
「せっかくいい箒があっても、乗り手が駄目ではね・・」

「君の兄上の言う通りだよ、アル。」
 すっかり度肝を抜かれた顔つきをしているアルバスに、スコープは言った。
「そもそも、あいつが選ばれるか怪しいもんだ・・」



 グリフィンドール・チームの選抜は、スリザリン・チームの直後だった。スコープとアルバスが選抜を受けるためクィディッチ競技場に到着した時には、まだスリザリンの選抜は終わっておらず、これからサウロスがテスト飛行を行うところだった。
 スコープの目には、サウロスの技能が取り立てて優れているようには見えなかったが、彼の箒「メテオライト」のスピードは驚異的だった。キーパーは、そのスピードについていけず次々とゴールを奪われていた。サウロスがどのゴール(3つある)を狙っているのかが読めたとしても、箒が間に合わないのだった。
「あんなのからクアッフルを奪えるのかな・・」
 アルバスが不安そうに言った。

 その後に行われたグリフィンドールの選抜において、グリフィンドール・チームのキーパーで6年生のヘンリー・ウッドから、与えられた5回のチャンス中アルバスは4回、スコープは5回のゴールを奪い、並み居る上級生達を尻目に抜群の成績で選手に選ばれた。





補足 〜グリフィンドール・クィディッチチーム 2018〜
 ()内は学年

チェイサー
 ドミニク・ウィーズリー(5)
 スコーピウス・マルフォイ(2)
 アルバス・ポッター(2)

ビーター
 ハロルド・アンダーソン(7)
 フレッド・ウィーズリー(4)

キーパー
 ヘンリー・ウッド(6)

シーカー
 ジェームズ・ポッター(3)

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.60 )
日時: 2014/03/30 12:42
名前: ウルワルス (ID: BgA0tTDI)

 スコープはアルバスと共に晴れてクィディッチ・チームの正選手に起用され、7年連続優勝という大目標を目指して充実した日々を送っていけるはずだった。しかし、ジェレイントの呼気の紫色は日増しに濃くなり、その動きも次第に鈍くなってきていた。



            *



「次の授業では、『似愛薬』を調合する。」
 10月第3週の魔法薬の授業の最後に、セオドール・ノットが宣言した。

「『似愛薬』って何?」
 授業が終わり、昼食のため大広間に向かいながら、アルバスがローズに尋ねた。
「名前に『愛』と付いてるけど、恋愛に関係する薬というわけではないの。」
 ローズが答えた。
「飲用すると大抵の病気が治るという効能があるんだけど、調合してから3分以内に飲用しないと効能が失われてしまうのね。つまり、『醒めやすい』ってこと。その点が男女間の愛に似ているからという理由で、名付けられたそうよ。」
「命名した人は、きっと失恋続きだったんだろうね。」
 アルバスが言った。
「レストレンジみたいに、軽薄な女たらしだったのかもしれないわ。」
 ローズが嫌悪感を露わにした口調で言った。ちょうど、ヴァレンティン・レストレンジがサウロス、マヌイルと共に、スコープ、アルバス、ローズを追い越して行ったところだった(魔法薬はスリザリンとの合同授業)。
 スコープは、2人の会話を聞きながらも別のことを考えていた。
「次の魔法薬の授業でその薬を調合したら、ジェレイントに飲ませてみようと思う。」
 スコープは言った。
「さっきも言ったように、調合してから3分以内に服用しないと効能が失われてしまうの。魔法薬の教室からジェレイントのいるあなた達の寝室までは、どんなに急いでも5分以上かかるだろうから、ジェレイントを連れて行って教室で飲ませるしかないわね。
 だけど、もしノットに見つかったらその時は大変なことになるわ。もちろんグリフィンドールから大量に減点してジェレイントを没収するだろうし、ノットのことだから その場でジェレイントを殺して魔法薬の材料にするってのもありえるでしょうね。」
「闘蛇(とうだ)って魔法薬の材料になるの?」
 アルバスが尋ねた。
「『似愛薬』の調合には、闘蛇の表皮が必要なの。」
「・・大きな危険を冒すことになろうと、僕はジェレイントを連れて行って薬を飲ませるよ。どのみちあいつは、近いうちに死んでしまうかもしれないんだ・・」
 スコープは話しながら何気なく首筋に手をやった。すると、小さな虫が彼の首筋から飛び立って目の前を飛んで行き、かなり前方を歩いていたサウロス達の方に向かうのが見えた。サウロスは手を伸ばして何かを掴むような動作をした。
「まずいよ。あれは『盗聴虫』だ。」
 アルバスが言った。
「何、それ?」 ローズが尋ねた。
「マグルの技術を利用したWWWの商品で、付けた人の話を録音して聞くことができるんだ。マルフォイ達がさっきの話を聞いたとしたら、ノットに告げ口するに決まってる・・」
「ジェレイントが入った覆い付きケースを持って行ったら、墓穴を掘るようなものね・・」
 ローズが言った。

「・・そうだ、いい考えがある!」
 大広間に到着したところでアルバスが言った。
「兄さんから『透明マント』を借りて、ジェレイントのケースを包めばいい。」
「ポッター先輩は透明マントを持っているのかい?」
 テーブルに向かいながら、スコープは声を潜めて尋ねた。
「だから、悪戯をしても受けて当然の罰則を免れてきたわけね。」
 ローズが言った。
「授業の最初さえやり過ごしてしまえば問題ない。授業の終わりにノットが他の生徒の薬を採点している隙を見計らって、飲ませればいいわけだからね。」
 スコープは希望を抱き、言った。

Re: 『ハリー・ポッター』二次小説〜騎士王の末裔〜    ( No.61 )
日時: 2016/03/18 22:33
名前: ウルワルス (ID: nLJuTUWz)

 「似愛薬」を調合する日は、魔法薬の直前に魔法史の授業があった。授業内容は、主に「闇の王子」モルドレッドについてだった。

「・・・近親相姦によって生まれたためか、このモルドレッドという人物には異常な性癖がありまして。彼には大蛇を生成・消失するという能力が備わっていたのですが、自分が作り出した大蛇に捕虜や犯罪者を食い殺させることがよくあったそうです。その様子を眺める時、常に彼は狂ったように高笑いをしていたといいます・・・」
 ビンズ先生は、いつもの一本調子で授業を進めていた。スコープ、アルバス、ローズ以外は、クラス全員が眠り込むか放心状態になるかしていた。モルドレッドのような、良くも悪くも歴史の展開に大きな役割を果たした、興味深い人物に関する話も、ビンズ先生にかかると とてつもなく退屈に思えるのだった。
 スコープとアルバスは、ジェームズが貸してくれた透明マントについて小声で話していた。
「この透明マントと、君の屋敷の玄関ホールに飾ってあった『ヌンドゥの毛皮』の色は、よく似ていると思わないかい?」
 アルバスが言った。
「君のお父さんは、イグノートゥ・ペーベールという魔法使いがヌンドゥの毛皮でマントを作ったっておっしゃってたよね? このマントは先祖代々我が家に伝えられてきた物だと僕の父さんは言ってたんだけど、もしかしたらイグノートゥはポッター家の先祖で、これはもともとヌンドゥの毛皮だったのかもしれない。」
「だけど、父上が話してくれたのは所詮伝説に過ぎない。あれがヌンドゥの毛皮だという証拠はどこにもないよ。村長が父上への土産の箔付けのために、あの話をでっちあげた可能性もある。イグノートゥ・ペーベールなんて魔法使いは、今まで読んだどの本にも載っていなかったし。」
「私はスコープが正しいと思うわ。」
 ローズが口をはさんだ。
「それに、『幻の動物とその生息地』に書いてあるように、透明マントは大抵の場合デミガイズの毛皮から作られるのよ。ヌンドゥのような強大な魔力を持つ生き物の毛皮に透明術をかけようとしても、上手くかからないでしょうしね。」
 ローズはそれだけ言うと、魔法史の教科書に目を戻した。

 ローズが見ていたのは、教科書に載っているモルドレッドの肖像画だった。モルドレッドの顔は青白い細面で、髪は色素の薄いブロンド、目は薄い青色だった。ローズは、誰かに似ていると思った。結局魔法史の授業中は誰に似ているのか分からなかったが、その癖、その「誰か」は自分にとって身近な人物だという気がしてならなかった。



            *


 魔法史の授業が終わると、スコープは透明マントで包まれたジェレイントのケースを、怪しく見えないようマントの中でかかえながら、魔法薬の教室に向かった。

「誠に申し訳ないことに、」
 授業が始まると、ノットはいきなりこのように切り出した。
「『似愛薬』の調合に必要な闘蛇(とうだ)の表皮を調達するのを、すっかり失念してしまってね。本来なら、緊急に予定を変更しなければならないところだ。」
 スコープは嫌な予感がした。
「しかし、一部の生徒が教えてくれたのだが、」
 教室の前方の席に座っていたサウロスが、アルバス、ローズと共に最後方のテーブルに着いているスコープの方を振り返り、にやりと笑った。
「この中に、闘蛇を持ち込んでいる者がいると聞いた。」
『大丈夫だ・・ジェレイントは、透明マントで見えなくなっているんだ・・ノットに詰問されても、白を切り続ければいい・・』
 スコープは自分に言い聞かせ、 「一体誰が持ち込んだんだろう?」と思っているような表情を浮かべようと努めた。
「生徒が学校に梟・鼠・猫・ヒキガエル以外の生き物を持ち込むことは、基本的に禁止されている。ましてや、闘蛇のような危険な生き物であればなおさらだ。恐らく縮小呪文でもかけているのだろうが、その闘蛇が誰かを噛み殺さないかは飼い主の意思次第だ。危険であることに変わりはない。学校の規則を歯牙にもかけない悪童の意思など、当てにできるはずもないからだ。」
「まったく、おっしゃる通りです。」
 サウロスが調子に乗って発言した。
「実は、」 ノットが続けた。「このことを教えてくれたのは、今発言したミスター・サウロス・マルフォイ、及びミスター・レストレンジと我が子マヌイルの3名だ。皆の安全を案じての、立派な行為である。よって、1人につき50点をスリザリンに与える。」
 教室の前半分を占めるスリザリン生達が歓声を上げた。
「さて、闘蛇を持ち込んだ生徒についてだが、その者は私がこの場で闘蛇を没収して殺し、その表皮を『似愛薬』の調合のため皆に提供したとしても、文句は言えんぞ。」
 ノットは突然杖を抜いた。
「アクシオ・バトルサーペント(闘蛇よ、来い)!」


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