哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《2:~ラブレター~》
五時限目の後、アスカは山田さんの二人の友達と一緒に、正しくは連行される形で、「いつものところ」にやってきた。
ジメジメとした校舎裏は、絶好の場所だった。
「ね、ね、今日はどんな風にする?」
アスカの存在を無視して、二人は話し始めた。
「これ持ってきた。カミソリ」
どうやら、今日は頬を切り刻むつもりらしい。
と、遅ればせながら其処に山田さんが到着した。
「ああ、アンタ達、今日はちょっと先にやることがあるんだけど」
「え? なにそれ」
首を傾げる二人に向かって、山田さんは誇らしげに一枚の封筒を掲げ見せる。シンプルなブルーの封筒だった。
「山田セリカさんへ……ずっと前からあなたを見ていました。どうしても会いたいので、今日の放課後校舎裏に来てください。哀沢カナトより。だって!」
興奮した様子で、山田さんと二人の友達はまくしたてている。
「すごい、すごいよセリカ! 告白されるなんて!」
自慢気に胸を反らさせる山田さんは、いつもより一割増し美人に見えた。
「まあね。だから、コイツをやるのは後よ、後」

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