哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《21:~変化~》



あの放送から、二週間が経とうとしていた。

メガネのパーソナリティーは、ファストフード店の片隅で所在無さ気に立ち尽くしていた。いつも昼食は蕎麦だのうどんだの、和風なものが多いために、こういうところには慣れていない。
「待たせたね」
銀髪に緑の目の人食いのバケモノが来たのを見つけて、彼は心底ほっとした。

二階の窓際の席。
テーブルの上に置かれたハンバーガーとポテト二人前を眺めて、彼は少しびっくりする。
「人間以外も、食べるんだ」
「まーね。美味しいとは思わないけど」
哀沢カナトは無感動にポテトを食べながら言う。
「で、肝心の本題って言うのは……」
彼は言いかけ、そしてやめた。
「って、この状況じゃ言わなくても分かるか……」

「食べられなくなったんだね? 人間を」

哀沢カナトは無言で頷く。それからコーラを飲み、話し始めた。
「別に、罪悪感があるわけでもないんだよ。ただ、なんとなく食べられなくなった……ミステリーだよ」
「これからきみ、どうなるのかな?」
「まあ人間じゃないし、当分は平気だと思うけど」

ふと、哀沢カナトは視線を奥にやった。
つられて彼も振り返る。
店内に置かれた薄型テレビで、逃走を続ける刃物男のニュースが繰り返し繰り返し流されていた。
「……近いね」
哀沢カナトは席を立った。
「何だか心配だから、少し行って来るよ」