哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《12:~みんなのおもい~》



「振り出しって? すごろくでもしてるの?」
不意に後ろから声がした。
振り返ると、其処には銀髪に緑の瞳の少年が。

「あ……哀沢カナトーっ!?」
クラウドさんは驚いてしりもちをついてしまった。
それをしげしげと眺めながら、哀沢カナトは「ああ!」と合点した様子で手をポンと叩いた。
「その声は、としネルの空野クモオさんだね? 毎週聴かせてもらってるよ。何か、ぼくに対して手厳しい発言ばかりだよね」
「…………」
「安心して。ぼくは気に食わないひとを食べるわけじゃないからね」
にっこり笑う顔は、やはりとても綺麗だった。
「それからきみは……この間の中学校の、食べ応えがなさそうな子か!」
「佐々木アスカです……」
「それから……ん? 忘れちゃってたらゴメンね。どこかで会ったかな?」
カガミさんの顔を見ながら、哀沢カナトは首を傾げる。
アスカはカガミさんの顔を盗み見た。
頬が少し赤くなっている。目も少し潤んでいるような気がする。
「ずっと前に……でも、いいよ。忘れちゃってても。私は会えれば、それで十分」
「そう。それならよかった」
不思議なことに、カガミさんが、綺麗というよりも可愛く見えてくる。