哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《24:~ソルト~》
白い粉は布一枚隔てて、哀沢カナトの脚に当たっただけのはずだった。
それなのに、彼の足の肌は火傷でもしたかのように、痛々しく、赤く爛れてしまっている。しかも、いつものように治る気配がまったくない。
「あー、これ『清めの塩』だ」
やっちゃった風に彼は言うと、出来るだけ慎重に、かかった塩を払い落とした。
「カナトくん、塩に弱いの?」
カガミさんが慌てて脚にハンカチやらを当てながら尋ねる。
「ただの塩なら平気だよ。でも、清められた奴はちょっとなあ……アイツ、なんでこんなの持ってたんだろう?」
「それは」
振り返ると、息を切らしながらクラウドさんが走ってきた。
「それは、アイツが麻薬中毒者でバケモノに襲われる幻覚を見ているからだよ……他にも、お守りとか破魔矢とか持っているらしい」
「ますます面倒だなあ……」
「食べちゃえばいいんじゃないの?」
カガミさんが言うと、哀沢カナトはしばらく黙った。どうしたんだろう?
「とりあえず、追わないと」
哀沢カナトが立ち上がる。怪我した脚をかばいかばい走る姿を見ていると、どうして彼がバケモノで、あの刃物男が人間なのか、不思議でたまらなかった。

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