哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《11:~クラウドさん~》
メガネをかけた男の人の名前は、空野クモオさん。
「出来たらクラウドって呼んでくれると、舞い上がるくらい嬉しいなー」
ヘラッと笑う彼に、カガミさんが言う。
「それで、空野クモオさんが何の用ですか?」
ガクッと落ち込んでから、彼は話し始めた。
「僕は、都市伝説チャンネル……略してとしネルっていうんだけど、そのラジオ番組の中で哀沢カナトのことをリスナーたちと一緒に話し合っているんだ。彼がやっていることは正しいのか、ってね……」
「正しいに決まっている。彼がいなかったら、私は今、生きていない」
強い口調でカガミさんが言った。それはもう、ほとんど怒鳴っているのに近い。
その声に、ビクッとして、彼は話すのをやめてしまう。
アスカは慌てた。
「カガミさん、落ち着いて……クラウドさん、続きをどうぞ」
クラウドと呼ばれて、彼は舞い上がった。
「やった! また呼んでもらえた! んでね、やっぱり正しいかどうか議論するなら、哀沢カナト本人に会ってみたほうがいいって思って。そしたらきみたち、会ったことがあるって言うじゃないか」
「と言っても、会う方法があるわけじゃないですよ」
それを言うと、クラウドさんはまたがっくり。
「あー、また振り出しかー」

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