哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《3:~哀沢カナト~》
程なくして、哀沢カナトなる人物がやってきた。
校舎の陰で、山田さんの二人の友達に、逃げ出さないよう抱え込まれながら、アスカもその様子を見ていた。
哀沢カナトは、とてもきれいな男の子だった。
銀髪に緑の目。外国人なのだろうか。妖精のようだと思った。
けれど、着ているのはこの学校の制服じゃない。他校生なのだろうか。
緊張に頬を赤くしながら、山田さんが尋ねる。
「あなたが、この手紙をくれたのかしら?」
こくりと哀沢カナトは頷いた。
「で、ご用件は?」
哀沢カナトは、山田さんの顔をじーっと見つめていた。不意に手を伸ばして、山田さんの頬に触れた。山田さんは緊張でかちんこちんになっている。
哀沢カナトが、にっこりと笑った。
「うん。思ったとおりだ」
続けて、言う。
「誰かを攻撃せずにはいられなくて、傷つけていることにも罪悪を感じずに日々を生きている。醜くていびつな人間性が見事に現れているよ。気に入った。きみは食べ応えがありそうだなあ」
「へ?」
素っ頓狂な声を漏らした山田さんが見たのは、ありえないくらい美しい少年の、現実離れした美しさの笑顔。
そして。

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