哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《17:~都市伝説チャンネル:スタジオ内~》



あっという間に時は過ぎて、今日は例のとしネルの放送日。
アスカとカガミさんは、電車で一時間半のところにあるスカイウォークラジオ放送局までやってきた。ここが、としネルを放送しているラジオ局なのだ。大きなビルだった。
玄関口のところで、クラウドさんが待っていてくれた。
「来てくれたね。哀沢カナトはもうスタジオ入りしているよ」
通行証を渡してもらって、三人は玄関に入った。

防音ガラスの向こう側に、スタジオがある。天井から二本のマイクが釣り下がっていて、テーブルの上にヘッドホンとFAX機が置かれている。
現場の雰囲気に、アスカは気圧されそうになった。
スタジオ内の哀沢カナトは、そんな様子はみじんも感じさせない。余裕すら垣間見せる笑顔で、こちらに手を振った。カガミさんの頬がまた一段と赤くなる。
スタッフたちに挨拶をして、クラウドさんがガラスの向こうに移動する。
マイクを通して、会話が聞こえてくる。
「待たせちゃったかな? もう始まるよ。準備はいい?」
「いつでもオッケーだよ」

現場の空気がピンと張り詰める。
スタッフがいくつかの機材をいじると、軽快なメロディーが響き渡った。
クラウドさんが楽しげな声で。
「こんばんはーっ、今日も都市伝説チャンネルが始まるよーっ!」