哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《28:~再会~》
「そう言えば、今年の文化祭は西中と合同でやるらしい」
昼休みの教室の席で、ぽつりとカガミさんが言った。
「合同? どっちの学校で?」
「こっちの。今日にも向こうの生徒会長が来て、いろいろ決めるらしい」
と、急に窓際の女子たちが騒がしくなった。
「何だろう?」
アスカは窓から校庭を見下ろした。
数人の、別の学校の制服を着た人たちが校庭を歩いていた。
「あの真ん中の人が生徒会長なんだよね? ものすごくカッコイイ……っていうか、綺麗……」
「今年に入って転校してきたばかりらしいんだけど、頭がいいからって全員一致で生徒会長に当選したんだって」
ぼんやりと夢を見るような目の女子たちの中、アスカは、あっ、と声を上げた。
「カガミさん、こっち!」
「ん? どうしたの」
校庭を歩く西中の生徒会長は、黒い髪に茶色い目の、普通の少年だった。
けれど、その顔には見覚えがある。
「……カナトくん?」
小さな声でアスカは呟いた。
と、不意に彼は顔を上げた。
まるで、アスカの呟きが聞こえたように、真っ直ぐアスカの方を見て――笑った。

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