哀沢カナトがやってくる。 作者/ハネダ

《22:~刃物男のいる風景~》



にちようび。わたしはカガミさんと一緒に、としょかんにいったかえりだった。

「人食いのバケモノが出てくる本は……これぐらいしかなかった」
それでも十分たくさんの本が詰め込まれた紙袋を眺め、カガミさんが言う。
「でも、これってカナトくんと関係あるのかな?」
素朴な疑問をアスカがこぼす。
本に出てくるのは、どれも異形の怪物ばかりで、哀沢カナトのような、人型のものは居なかった。
図書館からカガミさんの家まで歩く。商店街は日曜日だから何処も閉まっていて、静かだった。
ふと、カガミさんが顔を上げる。
「誰だろう?」
商店街のシャッターの横に、うずくまっている男のひとが居た。季節的に合わないよれたジャンパーを着ていて、ホームレスなのだろうか。
「ここら辺には、ホームレスは居ないと思っていたんだけどなあ」
声を押さえてカガミさんが囁いた直後、そのひとが跳ね起きた。
思わず、アスカとカガミさんは一歩後ろに引いた。

「……こう」
「え?」
男のひとが何か言ったけど、聞こえなくて、アスカは聞き返した。
「いっしょにいこう……」
男のひとの手の中に握られていたのは、布切り用の大きな、錆びたハサミだ。

……いこう?
一緒にいこう?
……一緒に、逝こう?

「……!!」