..盆踊り。 作者/桃花

【2】二話



There is an answer in one's heart
 ( 自分の心に答えがあるけど )

 I did not want to notice it
 ( 気付きたくなかっただけなんだ )


 The sky where two people lead to
 ( 二人がつながっている空 )
 
 The magnificent blue sky which I looked up at now……
 ( 今見上げた壮大な青空...... )

〆 二話

 「もしかしたらもう……手遅れかもしれません」

 (なんだよ、それ……)

 「わ、笑えない冗談ですね。俺を騙そうとしているのですか?
  止めてくださいよ――ねえ、お願いしますから」
 
 啓は吹っ飛んだ理性のまま、看護婦にやつあたりをする。

 「……」

 啓がなこうがわめこうが、看護婦さんはあふれ出てくる涙を
 ハンカチでずっとおさえているだけ。


 耳元で大音量の目覚まし時計が啓を起こす。

 「ん――…朝?」

 (夢か……。昨日のこと、トラウマになっちゃったか)

 そう。それは昨日のことだった――――……。


 「香奈枝、香奈枝!?」
 「すみませんが、どいてください!! もしかしたら、
 手遅れになるかも知れません!!」

 香奈枝はずっと目を瞑ったまま、ただ看護婦達にベットに乗せられ
 手術室へ運ばれていた。その力なき手には、真紅の血の後々が残っていた。

 「……分かり、ました」

 手術開始のランプが付いた。
 啓は近くにあったソファにどんっと腰をかけると、一つ深くため息をついた。
 香奈枝が真紅の血をはいた後に、香奈枝は意識を失った。
 だからすぐにナースコールを押し、医者をすぐに呼んだ。
 手術をすぐにでもしなければ命の危険があるということだ。


 (――香奈枝、香奈枝、香奈枝……逝かないでくれ――…死ぬな……。死ぬな……。死ぬなぁ――!!)

  
 「すみません。あの……」
 「んー……」
 
 俺はあの後すっかり寝てしまっていた。看護婦のささやかな声で
 目が覚める。

 「え――あ、はい……。川﨑です」
 「あ、川﨑様。よかったですね。赤塚様は、ご無事です」

 そういって、看護師はニコリと笑って行ってしまった。

 (え……香奈枝!)
 啓の願いが通じたのか、香奈枝は無事だった。
 啓はその事実に身を捩じらせ、病院を走りぬけ、外へ繋がるドアとくぐった。

 「香奈枝っ!!」

 
 ちくたくと時計の針の音だけが静かな部屋に木霊する。

 「香奈枝――…」
 
 啓は空を見上げながら香奈枝の名前をつぶやいた。