..盆踊り。 作者/桃花

-第8話- 希望―



【難妙法連解経・・・・】
「なんみょうほうれんげきょう・・・・・」
今、お母さんのお葬式の最中。
「みなも・・・・」
葵はひそひそ声でミナモを呼んだ。
「なんですか?お嬢様。」
ミナモもそれに応えて、ひそひそと話す。
「もう帰ってもいい?」
「えっ・・・お葬式の真っ最中ですよ?」
皆、下を向いて、ハンカチで目を押さえている人も
いる。
「いいの。」
「そうですか・・・では、気をつけてお帰りください。」
ブロロロと大きな音を立て、車が走り出した。
私は葬式の最中、決めたことがある。
     
         死のう。
どうせ、この世にいても、私の大切な人はいなくなっ
た。でも、大宙に逝けば、また香奈枝にだって、
会えるんじゃないの・・・・?
お母さんとまた、一緒にくらせるんじゃないの?
「じぃや、ここでとめて。」
「かしこまりました。」


葵がとめたところ。そこは、学校だった。
「皆・・・大好きだよ・・・・」
そう、一言運動場で言い終わると、じわじわと
最後の学校を味わいながら、屋上へ向かった。

屋上のドアを開けた。
屋上についた。
学校の裏側には坂崎山[ハンザキザン]がある。
そこの景色は、葵が大好きな場所だ。
香奈枝とここでお弁当だって食べた、思い出の
場所でもある。
「香奈枝・・・お母さん・・・待ってて。すぐ行くよ」
そういい終わると、屋上の端に立った。
「バイバイ........」
「ここは??」
そう、葵は落ちたはずだ。なのに・・・地面に立って
いる。真っ暗なのに、自分はひかっている・・・
「葵・・・」
その懐かしい声。ふりかえると、そこには、
2年前に宙に逝った香奈枝がいた。
「香奈枝っ!!!」
香奈枝はニッコリと笑って、消えてしまった。
そうしたら・・・遠くのほうで、ボォッと
光っているものが見える。青い光・・・葵がひかって
いるその色と同じだ。
「・・・誰。」
走っても走っても前に進まない。
それどころか、後ろに下がっていく。
よくみると香奈枝とお母さん・・・だ・・・・
「 シ ン ジャ ダ メ ・・・・・・・・ 」
「んっ・・・・・」
葵は目が覚めた。
「ここは・・・・!!」
そこはお葬式の会場。まだ終わってない。お葬式の
真っ最中。
「あれっ?」
「どうしました?お嬢様。」
「私・・・学校にいってたはずなのに・・・?」
それを聞いて、ミナモはくすくす笑いだした。
「お嬢様はずっとここで、寝ていらしてました。
学校の夢を見ていたのでは?よほど学校がお好きで
らっしゃるんですね。」
じゃぁあれは・・・夢・・・・?
いや・・・違う・・・・
夢なんかじゃない。
私ははっきりと覚えてる。
香奈枝が私に、死なないでといってくれたことを。
香奈枝・・・・・・・
大好きだよ―――――――
そして・・・・・


       “ありがとう”