二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入
日時: 2012/01/24 13:15
名前: 黒猫参謀 ◆1rAeLb3yOw (ID: Y8BZzrzX)

どうも、皆様初めして!黒猫参謀っつーもんでございます。
昨日、友達からここのサイト教えてもらってきたら何か一杯小説あるぜ!ということで、俺も一筆書かせてもらおうかな、なんて思っちゃったりしちゃいました。
二次創作OK!?ならば大好きなインデックスを書くのもありなんでねえか!?と友達に言ったらいいんじゃねえの?といわれたので作ることに。
えーと、完全オリジナルです。原作の登場人物の日常系に登場するキャラは友達として登場します。上条くんとかインデックスとか御坂さんとか。
んで、オリジナルならとことんやってしまえ!ということでオリジナル主人公まさかのレベル5!(原作でも序列6位いまだに不明なのでそこに入ります)
ああ、あとついでに主人公は一切闇の機関等には関係ありません。たんなる一般人です。魔術sideもあまり関係ありません。いいのかそんなんで…。でもよく事件には巻き込まれる…。更に黒猫、実は原作をあまり読んでない!アニメだけ!しかも中途半端!それでも読んでくれる方、貴方は神様です。
沢山のオリジナル、ありがとうございました!
おかげで何とか戦えます!コメントは引き続き募集中。




ようやく戻ってこれました。作者、実は夏から病気して今年頭まで入院しておりました。長い間更新できず申し訳ございません。まだ全快ではないのでゆっくり更新になりますが、引き続き書いていきたいと思います。

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Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.142 )
日時: 2012/01/27 11:12
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)




6話 もう、隠さないでおきたい




「みんな、今日は私たちの我が侭に付き合ってくれてありがとう」

そう茜が切り出したのは、悠一が目を覚まし、日にち的に色々検査やら手続きやらが落ち着いた頃だった。夜の晩飯の時間帯に、仲間達を芙蓉家に招待したのだ。

「私と悠一から、大切な話がある。心して聞いて欲しい」
「ああ。俺の話は特に西園寺、雪、龍神。お前等に関係ある話だ」

今いるのは、雅、黒影、雪、紅波、静香、神音、綾野、茜、悠一だ。茜の要望でこの面子以外は呼んでいない。

「まず、俺からの話だ。みんな知ってのとおり、今学園都市では異常なことが続いてる」

悠一は深刻な顔で言う。例えば、超能力者の総入れ替えとか。
例えば、超能力者以上の化け物をカテゴリーするものが出来ていたりとか。それを言うと雅の顔が青ざめる。

「話は、本当だったんだ……」
「雅先輩?」

雪が怪訝そうな顔で隣の雅の顔をうかがう。明らかに震えていた。雅は震える唇で何とかみんなに説明を始める。
自分が序列2位に昇格したとき、それ以上の化け物をカテゴリーできたから、もう超能力者の枠付けは必要ない、という話を立ち聞きしてしまったらしい。それがつまり。

「それが、埒外……?」
「そう。一般的な埒外の意味は、いなくなった超能力者。でも裏の意味は違う。レベル5の枠付けを超えてしまった、正真正銘の化け物に与えられるカテゴリー。つまり、学園都市という場所に関してだけ言えば、あの黒い獣と同じぐらいの能力を個人で所有している連中のこと」

茜が淡々と説明する。そして、と区切る。

「今日、身体検査(システムスキャン)の結果が出た。結果、悠一は非公式に埒外に認定された。そして同時に悠一がこの学園都市最強である序列1位になった」
「!?」

一同の顔が驚きに染まる。何故か茜は誇るように、悠一は溜め息を付いた。

「っていっても、俺の序列1位はあくまで表の顔であって、本当は埒外のまま。ちょうど一歩通行っていたろ。ほら、前の序列1位。あいつも埒外判定もらったって言ってた」

何だか疲れた顔で悠一は言う。茜がなんでか反論。

「悠一、それは誇っていいこと。悠一は、裏でも表でも最強になった。嬉しくないの?」
「嬉しいっつか、だってさ。俺のあの能力判定もらってもそう言えるか?」
「能力判定?兄さんのは感応異能(デットコピー)じゃ」
「変わってたみたいなんだ、俺の能力」

それが一番思い出したくないと、悠一はぼやく。茜が怒ったような顔になった。

「……不可能を可能にしちまったんだよ、俺。無意識のうちに」
「私が手助けしたのもあるけれど、結局は悠一の地力のおかげ」
「悠一君。まさか、悠一君本当に、なっちゃったの?」
「……さすが西園寺。早いな」
「だって、前からそういう感じはあったけど……でも」
「なっちまったもんは仕方ないだろ。当分は人体実験(モルモット)かな」
「悠一君、ダメだよそういうことに首突っ込んじゃ。なんなら私が直談判するよ?」
「やめとけ。ここ屈指の研究施設だぞ?お前だって何されるかわかんねえって」
茜、雅、悠一は暗い顔でうつむいていしまう。そこでようやく静香や紅波、神音が口を開いた。

「お兄ちゃん、何がどうしたの?」
「嫌な予感しかしないですけど、教えてください」
「そうですよ先輩。んなフラグチラつけて置いて教えないのは無しっすよ」

大勢が頷く中、茜が言った。

「悠一は多重異能(マルチスキル)と正式に認定された。つまり悠一は常識を覆したことになる。今の悠一なら、一方通行だって一時的になら使えるくらいの実力がある」
「やめろよ茜。威張ることじゃねえし、自慢できることでもねえ。そもそも、基盤は分かってない。みんなの力が、俺のものになっちまった。そんだけだ」
「悠一、もう少し自身を信じるべき。もう、悠一は猿真似なんかじゃない。自分の核たる力を得た。最強の能力者なんだから」
「……兄さんが、多重異能。じゃあ、まさか」
「これで最後のレベル5も決まった。新しい序列はこんな感じだろ」

悠一は懐からメモ帳を取り出し、スラスラと書いた。
1位、多重異能、自分。2位、超過純水、西園寺。3位、超電磁砲、御坂。4位、無限重力、龍神。5位、心理掌握、食蜂。6位、絶対零度、雪。7位は悠一は知らないやつと答えた。何でも原石の中でもかなり強い部類の分類不明な奴らしい。
さて、と悠一は努めて明るく言った。

「俺の話はこれくらいだ。あと、茜から話があるらしいからそれはあとでいいって。じゃあ、晩飯にするか」

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.143 )
日時: 2012/01/27 12:35
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)






7話 はっきりさせておきたい




「……私が話があるのは、この面子だけ。悠一に聞かれたくない」

といい、茜は悠一の部屋の一角にみんなを招く。
雪、雅、綾野、紅波の4人。隣の部屋で悠一達がゲームして遊んでいる。
茜は彼女等だけを呼び、そして座ってと促した。

「……なに、茜。兄さんの部屋に連れ込んで?」
「私から、みんなに聞きたいことがある。先に言っておくと、嘘を言っても私には通用しない。私は精神系の能力者でもある。嘘を見抜くのは簡単。だから、正直に答えて」
「……茜ちゃん?」

紅波が心配そうな顔で見る。茜の顔は真剣だ。これは宣戦布告。負けちゃダメだ、と自分を奮い立てる。

「私の能力の一部には人と人との感情を見ることが出来る。
例えば、静香の悠一に対する感情は家族愛。そして悠一もまた静香を大切に思っている。これを絆と言うなら、間違いなくそう」
「……何が言いたいの?」
「雅。雅がこの面子の中で一番鈍い。未だに自分の感情に気付いていない。分かる、紅波も、綾野も、雪だって。気付いているのに、雅だけが、今でも気付かないふりをしている。無意識に自分の本当の気持ちから逃げている。私はそれが気に入らない」
「……っ」

茜が見える左目で雅を睨んだ。
雪が遂に切れる。

「茜。用件だけ言って。私も、綾野も、紅波さんも、暇じゃない」
「雪、雪は悠一のこと、好きなんでしょ?異性として」
「!?」

全くの不意打ちにうろたえる雪。紅波も綾野も驚く。

「言った筈。私には気持ちが見える。雪は、悠一に対する強い恋慕がある。つまりは好きと言う事。違う?」
「な、なにを、何を言い出すかと思えば」

噛みまくる雪。顔はどんどん温度計のように赤くなる。今まで必死に隠してきた気持ちを言い当てられ、困惑しながら反論。

「何を、根拠にそんなことを」
「隠さなくても平気。全部見えている。雪は一番悠一の近くにいたから、一番勝てると思ってることも見えている。あの時必死になって止めたのも、悠一に傷ついて欲しくなかったのと、自分の知らない悠一になるのが怖かったから。違う?」
「……」
「雪ちゃん?本当?」
「そうなの雪っ?」

紅波と、何でか語尾が強くなっている綾野に追い詰められ、黙る。

「それだけじゃない。紅波、紅波もそうでしょう」
「え」
「最初は純粋な憧れだったのかもしれない。強さに憧れる、そんな感じ。頼れる背中。目標になってる背中。だけどいつかあの背中に追いつきたい。追い抜いて、悠一に認めてもらいたい。後輩の一人じゃなくて、一人の女の子として、見てもらいたい。そう思ってる。違う?」
「うぐぅ」

ピタリと言い当てられた。つい、と茜の左目が細くなる。次の獲物は綾野だ。

「綾野、他人ずらしてるけど綾野だってそうでしょう?普段から冗談めかして好きだとかなんだとか言ってるけど、あれは全部本気。本気の気持ちを冗談に混ぜて悠一にぶつけてる。ずっとずっと好きだったんでしょ。違う?」
「……」

激しく目が泳ぎ始めた。気まずい。みな、顔が真紅に染まってもじもじしたり指先で遊んでみたり明後日のほうをみてみたり。
ぽかん、としているのは雅だけ。

「あの、茜ちゃん。私は別に」
「そう。その言葉」
「え?」

茜は左手で雅を指差していった。

「雅は上条当麻にも似たような感情を抱いている。それは慕っている訳じゃなくて、アイドルに憧れるような感情。それを雅は恋と勘違いしている。最近、気付いてきてるでしょ?そういった思いを抱いている本当の人物は、誰なのか。なのにいまだに上条当麻のことを思い続けている。雅、そんなに自分の気持ちを認めるのが嫌なの?」
「……そんなこと、ないけど」

怖い。茜の指摘が。何だか、胸の中がモヤモヤする。何でこんなに怖いんだろう。

「雅。雅はまだ舞台にすら立ってない。優位な場所にいるにも関わらず。悠一は雅に対して、強い感謝の気持ちと信頼を置いている。自分のいなかった間、私達の世話を焼いてくれた貴方に。それが私は悔しい」

茜ははぁ……と溜め息。そして言った。

「私だって、雄一のことは好き。でも、悠一に対する私の負い目は計り知れないくらい大きい。悠一の傍にいれば、私が彼自身に強大な不幸を舞い込む。でも、傍にいたい。前悠一のいった、ヤマアラシのジレンマみたい」
「茜ちゃん?」
「だけど、やっぱり悠一の一番傍に私は居たい。だから、こうしてみんなを呼んだ。宣戦布告するために。能力を使ったりは、しない。私は、私の力だけで悠一を振り向かせる。ここにいるみんなはライバルだから。悠一に好かれるような人間になったら、私の本当の姿をみんなに見せる……話はそれだけ。悠一!ちょっと来て!!」
「どうかしたか?」
「「「「!?」」」」

いきなり悠一を部屋に招きこもうとする茜。茜なりの照れ隠しだがそれがとんでもないことを呼ぶ。

「悠一君入っちゃダメ!!」
「悠一先輩やめてください!!」
「来るな悠一!!」
「兄さん帰って!!」

あまりの剣幕に自室前の悠一は。

「何だってんだよ……」

呆然としていた。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.144 )
日時: 2012/01/27 14:51
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)





8話 茜、決心する




(参った)

正直な感想、茜はそう思った。あれから数日、特に変わったことは茜の身の回りではおきてない。しいて言えば、雅の態度がおかしいくらいだ、と悠一は言っていた。まぁそれは仕方ない。自分が火種になったんだ、それくらいしてもらわないと困る。
それはさておき。
今、茜は一人で買い物に来ていた。静香も雪も悠一も学校。自分は居候ゆえ、家の家事を全て引き受けるくらいしか出来なかったので、今はそれを仕事にしている。左腕だけでは当初は大変だったが、今では能力も使って普通に切り盛りしている。こういうときだけは能力に感謝している。まぁそれはいいとして。
んでもって買い物に来て、左腕に買い物籠だけを下げて帰ろうとして、迷子に捕まってしまった。んで泣かれた。

(私にどうしろと)

相手は多分小学生。話によると母親と逸れて迷子になってしまったらしい。茜は見た目が中学生より下、つまり雪より幼く見えるため何とか同世代に声をかけた、と言っている。本当は19歳であり、立派な思考もしているが。
狙われている手前、あまり表に出たくないのだが、だがしかし悠一のようになりたいのもまた事実。だから仕方ない。

「分かった。貴方のお母さん、探してあげる」
「……ほんと?」
「私は嘘はつかない。安心していい」
「……ありがとうお姉ちゃん!」

小学生低学年らしき少女はそういってようやく泣き止んだ。茜は溜め息をついて歩き出したのだった。






(まずい……このままじゃ、あの化け物に見つかる!!)

茜と迷子は建物の影に隠れていた。
あの後、すぐに茜は妙な気配に気付いた。
地面の下で、何かが動いているような感覚がしたのだ。
気にしながらも捜索を続けるうち、まずいことになった。
どこかの風紀委員が怪しい外見の女をひっ捕らえるシーンをみた。
怪しいも何も、ゴスロリ顔負けの黒人女が、風紀委員と戦い始めたのだ。白昼堂々。歩道の真ん中で。
幸い、茜は反対車線の歩道にいたので、直撃は免れた。だが。

(なに?あれは……?)

女がチョークらしきもので地面に魔方陣のようなものを描き、そこに向かってチョークをたたきつけ、英語と数字の混じった言葉を叫んだ瞬間、異変は起きてしまった。
そこから現れた岩石巨人。腕も体も顔も全て石と土とコンクリートで出来上がり、顔には何もなく、ただ暴れている。
轟音と地響きが鳴る中、茜は警戒しながらも女の子を励ます。

「大丈夫、ここにいればみつからない」
「……うぐっ……ふええええん……」

泣きじゃくる女の子の声に反応したのか、遂に。
————!!!!
岩石の巨人はこちらを向いた。ずしん、ずしんとこちらに向かって歩き出す。見つかった!!

「!!」

茜の反応はさすがに早かった。買い物籠を首に引っ掛け、左手で女の子の手を引き、物陰から飛び出す。女の子を引き摺るように目茶目茶な速度で走る。

「ふええええええ!?」
「喋んないで!舌を噛むよ!」

叫び声に変わった女の子に叱咤し、只管走る。目指すは風紀委員のところ!遠目で警戒していた風紀委員とアンチスキルの車に到着。手が塞がってるので蹴り飛ばして中の人間に知らせた。

「!?」
「民間人!!連れて来たから早く保護して!!逃げる時間は私が稼ぐ!!だから早く逃げて!!」

アンチスキルに女の子を押し付ける。
一方的にそれだけ言うと彼女は今来た方向に向かって走り出す。
目指す先にはコンクリートの巨人。今の自分なら勝てる見込みはないけれど、時間を稼ぐことだけは出来る。
大丈夫、戦える!戦わないと、あの女の子が!!今、私しかこいつの相手は出来ない!!だから!!

「こっちにおいで化け物!!遊んであげる!!」

挑発するようにそいつに向かって叫んだ。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.145 )
日時: 2012/01/27 15:19
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)






9話 茜、戦う




————!!
豪腕が風を切る音が頭上で聞こえる。
茜は真横に大きく避けた。
手刀のような形で、道路に叩き付けられる腕。
振り返る後ろには、ビル4階程の背丈のある巨人。
あれが先ほどから茜について来ている。
何とかあそこから移動させることは出来た。だけどこちらには攻撃手段がない。逃げる一方。

「はぁ……はぁ……」

息が切れる。肺が痛い。足が痛い。頬の傷跡が痛い。見えない右目が痛い。失ったはずの右腕が痛い。戦え、と言っている。能力が。あの程度、考えるだけで消し去ることが出来る。なかったことに『書き換え』てしまえばいい。それだけだ。それだけで私は助かる。

(……冗談じゃない)

茜は半年前から決めていた。悠一を守れなかったあのときから。
もう、弱い自分に泣き縋るのはやめよう、と。
確かに私の能力は強力だし都合もいい。使いやすい。
だけど何時までも頼ってたら私自身が強くなれない。
いざというときに、自分の身が可愛くて悠一を見捨ててしまった自分が憎かった。恩を仇で返してしまった。結果、悠一は半年間も眠るハメになってしまった。あれは私のせいだ。どうだろうが、私のせい。
だから。

「安全になるまで、人のいない場所まで——」

そう思っていた茜の願いは、直後に響く咆哮によって打ち砕かれた。





『ヴァォォォォォォォォォォ————』




「!」

半年前の記憶が蘇る。この咆哮は……
奴だ。奴が、私を狙っている。来る。絶対にここに来る。
奴は狩りに出る前にこうして咆哮するのだ。俺が今からそこに行く、首を洗って待っていろ、と言うように。
後ろで鳴り響く轟音。だがそこに更なる咆哮が重なる。



『ゴァァァァァァァァァ!!!!』



なるほど、これは絶対悠一じゃない。悠一はもう啼かない。人語を喋る。奴はどうやらあの巨人を威嚇しているようだ。全く、真昼間から……最終決戦のようなレパートリーになっている。
巨人の歩みが止まる。
振り返る。



いた。




黒い獣が。




逞しい尻尾で、地面を抉り、死の匂いを撒き散らしながら、巨人を睨んで吼えた。




「ヴァォォォォォォォォ」



こちらには目もくれず、巨人に襲い掛かる。
……あいつ、何を?
私を狙ったわけじゃない?


「いーやちげえよガキ。あいつはあの化けモンの相手させてるだけだ。お前の相手は俺だ、俺」
「……」
「おんやぁ、だんまりか?別にいいけどよぉ、お前なんでそんな姿してるんだ?あぁ?」
「お前には言われたくない。木原」

真正面に、刺青をいれた白衣の男が立っていた。茜の敵、悠一の敵が。ニヤニヤと笑いながら。
木原、数多。
茜を付けねらう科学者にして、一方通行を開発した科学者。打ち止めと同時に茜を狙う変態。

「今更何のよう?私にはお前の言うような能力はない。打ち止めを捕まえてそれでいいしょ?」
「そーもいかねんだよなぁ……」

首をこきこき動かしながら悪魔は言う。
どうやらかなり機嫌が悪いらしい。だが話をすると切り出した。

「あの化けモンは化けモンに相手させてるし、まぁ少しくらい話してやるか」
「……何を?」
「あんガキは一方通行の奴が隠しやがったせいでな、かれこれもう半年くらいみつかんねえんだよ。おかげでこっちの計画はパーだ」
「……」
「で、ぶっちゃけお前さえいれば計画の進行は問題ねえんだよこれが。分かるか、あぁ?」
「で?」
「だから大人しく捕まっとけ。んでもって頭解剖されろ」
「こっちの質問に答えたら前向きに検討する」
「質問?」
「あの化け物はお前が作ったの?」
「化けモン……ああ、あの犬のことか。そうだぜぇ、魔術とか言うオカルト科学の集合体!AIM拡散力場で体を保って、俺の命令一つでどんな奴でも八つ裂きにする犬だな」
「じゃああれを学園都市に放ったのもお前か」
「んにゃ、あれは勝手に脱走して勝手に能力者食ってるだけだ。あんの化け犬はなぁ、能力者を殺して自分の能力にしてるんだよ」
「……そう」

茜は俯いた。やはり、この男が元凶か。
こころのなかで、何かが壊れた。許せない。
感情が昂る。怒りで目の前が赤く染まる錯覚を覚えた。

「ってなわけで質問には答えたぜ。じゃあ大人しく」
「……『私は私を』」
「あぁ?」

茜は決めた。こいつ、殺す。と
その為なら、今のこの状況はチャンス。無防備な木原が目の前にいる。
今が、因縁を払う、チャンス。

「『書き換える』!!』

高らかにそう叫んだ。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.146 )
日時: 2012/01/27 16:02
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)





10話 茜、戦う 2




「なっ……」
「木原、この姿で会うのは初めてでしたね。いいでしょう、私も全力で貴方の相手をしましょう」

降り立った茜。それは19歳、本来の茜。
右目もしっかり木原を捉え、右手の戻る感触。
身長も伸びて、木原より少し小さい程度まで大きくなった。

「……ほぉ。こりゃぁ驚いた。そっちがほんとの姿ってか」
「残念ながら、貴方に捕まっていた頃に比べて、今の私は6割強、己の能力を使えます。脱走当時と同じように思わないことですね」

茜の姿に大して驚かず、木原は嬉しそうに笑う。
茜は嫌そうにしながら言う。

「このロリコン野郎が。くたばればいいんですよ」
「……おもしれえこと言うなガキ。どんなトリック使ったか知らんが、その程度で俺が驚くとでも思ったか?」
「これがトリックに見えるのなら、貴方に私の能力を使いこなせるはずがありません。なぜなら、『私は私を書き換え』今に至るからです。そこに方式も理論もありません。私はそういう能力なの、忘れましたか?」
「……ぶっとびすぎてるが、おおよそ予想通りか。おい!戻って来い啼け犬!!」

彼は背後で巨人と戦っている獣を呼び戻した。
だが茜は微笑むだけ。身動きすらしない。

「木原、あの獣は私の応用も少し混じってますね」
「この女を噛み殺せぇぇぇぇぇぇ!!!!」

苦笑混じりの茜の言葉を絶叫で掻き消す。
はぁ……という溜め息。
背後の吼え声。

「ゴァァァァァ!」
「『天使、舞え』」

飛び掛る刹那、茜の背中には骨の翼が出現する。
羽もない、肉もない、骨だけの翼。それを広げる。
飛翔。獣の爪と牙は空を切り、地面を抉る。

「!?」
「ゴァァァァ!!」

見上げる空。太陽を背に骨の翼を広げ、クスクスと笑う茜が告げた。

「余計な苦労でしたね。私の能力は『概念と言うものを自分の好むものに変更する』というもの。忘れたわけじゃないですよね?」
「こんのガキがぁ……」
「貴方が与えた執行猶予はあまりに長すぎた。私は覚醒め(めざめ)、半分程度でももう使うことが出来るんです。全く、お笑い種ですよ。あはははははは!!!!」

悔しそうに睨む木原相手に、茜は笑ってしまう。この程度なんだ。木原なんて。所詮、相手は人間だ。

「じゃあ行きますよ。躾(しつけ)の悪い犬も一緒に調教してあげます」
「言ってろこのガキがぁぁぁぁ!!」
「ヴァオォォォォ!!」

獣と木原が吼える。
茜は笑う。





「あはははははははははははは!!!!『灰は灰に!!屑は屑に!!』」
「ゴァァァァァ!!」

獣に降りかかる炎の渦。鞭のようにしなり、逃げた先で獣を薙ぎ払う。
獣に触れる前に獣は炎を喰らう。そして喰らった炎を焔に強化、茜に向かって吐き出す。

「『乙女の涙は曇らぬ夜にて!』」

飛来した焔に、氷の壁を作り出し、それで防ぐ。常に空を飛ぶ彼女に、獣の爪も牙も届かない。飛び上がっても簡単に避ける。
彼女の言葉は、現実を書き換えるために必要な言葉。言霊とでもいえばいいか。茜自身、分からない。勝手に口から飛び出してくる。
獣に右手で指差し、宣言。

「『疾走る(はしる)者には喰いつく泥濘を!!』」
「ゴァァァァァ!!」

獣の足元が一気に泥沼に変化する。それは太い四肢も、逞しい尻尾も喰らいつくかの如く、侵食する。獣は自身を闇と化す。ヤミには泥も喰いつけない。闇は獣の形を生成、白い穴で茜を見上げ吼えた。
茜はくるくると人差し指を躍らせ謳う。

「『吼える愚者に空無き罰を』」
「————!?」

獣の咆哮が止まった。空無き罰、つまり奴の周りを真空で包み込んだ。
まだまだ謳は止まらない。

「『野生を迸る者に枷を』」
「——!!」

声無き声をあげて、潰れるように倒れ付す獣。
局地的重力強化。今は100倍程度に。普通なら圧壊して終了だが獣は耐えている。うふふ、と茜は微笑む。さんざん苦しめてくれたんだ、今までのツケは全部払え。苦しめ、もがけ、足掻け、後悔しろ。
お前にころされたひとたちに詫びをいれるまで苦しめてやる。

『悔やまぬ莫迦に神の鉄槌を』
『裁きの刃は主すら貫く』
『贖罪の炎よ、浄化せん』
『蒼穹にて、磔刑は執行される』
『四肢を投げ出せ、罪なる大地に』
次々命令を出していく茜。いつしか目的を忘れてしまうのはもうあと少しの後だった。


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