二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入
日時: 2012/01/24 13:15
名前: 黒猫参謀 ◆1rAeLb3yOw (ID: Y8BZzrzX)

どうも、皆様初めして!黒猫参謀っつーもんでございます。
昨日、友達からここのサイト教えてもらってきたら何か一杯小説あるぜ!ということで、俺も一筆書かせてもらおうかな、なんて思っちゃったりしちゃいました。
二次創作OK!?ならば大好きなインデックスを書くのもありなんでねえか!?と友達に言ったらいいんじゃねえの?といわれたので作ることに。
えーと、完全オリジナルです。原作の登場人物の日常系に登場するキャラは友達として登場します。上条くんとかインデックスとか御坂さんとか。
んで、オリジナルならとことんやってしまえ!ということでオリジナル主人公まさかのレベル5!(原作でも序列6位いまだに不明なのでそこに入ります)
ああ、あとついでに主人公は一切闇の機関等には関係ありません。たんなる一般人です。魔術sideもあまり関係ありません。いいのかそんなんで…。でもよく事件には巻き込まれる…。更に黒猫、実は原作をあまり読んでない!アニメだけ!しかも中途半端!それでも読んでくれる方、貴方は神様です。
沢山のオリジナル、ありがとうございました!
おかげで何とか戦えます!コメントは引き続き募集中。




ようやく戻ってこれました。作者、実は夏から病気して今年頭まで入院しておりました。長い間更新できず申し訳ございません。まだ全快ではないのでゆっくり更新になりますが、引き続き書いていきたいと思います。

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Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.172 )
日時: 2012/02/08 15:25
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)






23話 帰らない



「あー……ここどうすればいいんだ?」
「ん?ここ?あ、この方程式な、展開はこうすんの」

一週間後の現在。
悠一は参考書を抱えて頭を悩ませる少年に丁寧にやり方を教えていた。
上条当麻。
彼が逃げ込んだのは何と自宅から遠く離れた上条の家だった。
以前、悠一は当麻と共に色々と仕出かしたこともあったため(というか上条が巻き込まれた)当麻の家を知っていたのだ。
事前に連絡し、助けてくれと言ったら一言でいいと言ってくれた。
そして彼の家に居候させてもらっているのだ。
事情はこう説明した。
俺にはどうしてもやらなきゃいけないことがある、だけど周囲は反対されまくり、家出してきたと。
あながち間違ってはいないし、うまく言えたと思う。案の定当麻はほとぼりが冷めるまで匿うことを約束してくれた。
せめてものお礼、とのことで当麻の勉強を見てあげること(悠一は仮にも年上、そしてエリート高に通う秀才)と、もう一人の居候の面倒をみること(彼女は異常なほどよく食べるので大変)と、あとは食費などを払い、更には全部の家事をこなしていた。元々悠一は家族の中で一番家事が上手かったこともあり、当麻は大助かりだといっている。
問題はもう一人の居候。
家の中なのに司祭服を安全ピンで留めている蒼髪の少女。
インデックスと名乗った女の子だ。

「とうまー!ゆういちー!わたしはお腹がすいたんだよ!」
「インデックス、レンジの上に大きめのおにぎり作ったからそれ食べて少し待ってて。空腹は紛れると思うから」
「わーいっ!ゆういちありがとう!」

彼女は肩に猫のスフィンクス(三毛猫)を乗っけたままとてとてとキッチンに向かった。当麻は溜め息。

「悪いな芙蓉。インデックスの世話まで任せちまって」
「居候だしな。それくらいいいって。インデックスも色々あんだろ?俺もそうだし、何か問題あったら言えよ?力貸すからさ」
「何か前の序列1位とは大違いだな……」
「あぁ、そういえばお前一方通行と喧嘩したことあったんだっけ?しっかしよくまぁ死ななかったな」
「……まぁなぁ」

苦い顔で笑う当麻。当麻のこと深くは悠一は知らないし、彼の取り巻く状況も知らない。魔術側と呼ばれる人間にインデックスが狙われていることも知らない。茜が科学側に狙われていることを当麻に言ってないように。だが悠一は当麻にとても感謝している。何も聞かずにここにおいてくれている彼に。せめての恩返しがこの勉強会だ。

「しかし芙蓉って本当頭いいよな。さすが」
「んー……俺ってさ、元々勉強とか覚えることは出来るんだよね。開発の副作用で」
「副作用?」
「そうそう。ほら、俺多重異能だろ?つまり大量の知識をぶち込まないといけないわけで。だから勉強もそれと同じでぶち込んだだけ。努力はしてない」
「いいよなー。赤点ラインの俺からすれば羨ましい限りだよ」
「ただ俺の場合、色々絡まれるじゃん?お前と別の連中で」
「うっ……」

当麻は幻想殺しのせいで不幸に見舞われ、悠一は実力ゆえ素行の悪い連中に絡まれる。悠一は狭いワンルームを見回して笑った。

「上条もあれだよ、その右手のせいで不幸って言うけどな、俺も俺で結構不幸なんだよね。だからお互い様」
「……芙蓉」
「っていうか、インデックスー?もう喰いおわったのか?早いな……」
「ゆういち!今日もお腹一杯に食べさせてくれるんだよね?」
「まぁな。今日は巨大炒飯でございます、インデックス様」
「とうま?ゆういちはこんなに優しいよ?とうまも少しは見習ったら?」
「インデックスの食費が馬鹿にならないなら考えるけどな……」

部屋の片隅には悠一の持ってきたジェラルミンケースが4つ、おいてある。中身は大量の現金。それが札束になって入っている。悠一が家出の際、自分の講座から全額引きおろして持ってきたのだ。延べ、1兆円ほど。当麻は最初その額に腰を抜かしていた。
序列1位ともなれば、支給されたり稼いだりする額も桁が違う。それが今は全てを放棄して逃げているのだ。
悠一の覚悟は凄まじいものだった。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.173 )
日時: 2012/02/10 12:36
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)





24話 完璧な変装



「……」
「なぁ姉ちゃん。俺と遊ばねえ?」
「申し訳ないですわ。生憎、わたくしは弱そうな男興味ありません」

次の日の夜、当麻の家の近くのコンビニで。
一人の少女がスキルアウトにナンパされていた。
長い鮮やかな紅の髪、長身の見た目に男物の服。
服装か見れば分かるが、かなりスタイルのよさそうな女の子だ。
手にはコンビニのビニール袋。傍らには呆れ顔の当麻。

「というか、わたしく彼に夢中ですの」

と当麻の左腕にくっ付いた。右手で頭をかく当麻。
スキルアウトの顔がこわばる。こいつは当麻の顔見知りである。
やがて青筋を浮かべて怒鳴った。

「誰が弱そうな男だ!」
「あなた以外いない——ですわっ」

手を出した男の手を掌で弾き、手首を掴む。ふわりと舞う鮮やかな紅。
そのままくるりと体を回し。

「へっ——へぶっ」

男の体を回転させて仰向けに地面にたたきつけた。そして止めの一撃。喉元を足で踏みつけた。割と容赦ない一連の動作。当麻は呆れて彼女に言った。

「……『芙蓉』。お前、やりすぎ」
「そうですの?」
「ていうか何時までそのキャラしてんの?」
「外にいる限りこの状態ですわ」

そう。彼女の名前は芙蓉悠一。間違いなく学園都市最強の『少女』である。実は変装しないと居場所がばれてしまうということで、渦化の能力を使用して外にいるときは常時この姿を保つようにしているのだ。
その姿は全くの別人。渦化は兎も角悠一が使えば極端な身長さ以外なら性別、年齢を超えて変身できる。更にはDNA、声質、悠一ならではだが能力まで、つまりは記憶やら以外全てコピーできるのだ。
今は悠一がもし女の子だったら、というイメージを当麻に出してもらって、その姿をそのまま具現化、使用している。つまりは架空の人物の外見を使った隠れ蓑。

「……」
「右手でわたくしを触ったら殺しますわ」
「分かってる。消しちまうんだろ、能力だから」

当然、当麻の幻想殺しに反応、打ち消されれば悠一の姿に戻るし、服はどうしようもないのでそのまま男物を着ている。
そしていつも当麻と共に行動。当麻に不意に襲い来る不幸を悠一が対処するため、そして悠一がばれそうになった当麻に時フォローしてもらうため。

「上条さん。じゃあ、帰りましょうか」
「……見えなくなったら戻れよ?」
「了解ですわ」

何処かの良家のお嬢様のような柔らかい口調、そして声質。
声質だけはどうしても思い浮かばなかったので、インデックスの声を少し高めにしたものを設定、固定化している。
悠一のハイレベル猫かぶりも合わせて完全な変装と言うか女装だ。(本当に女の子になってるが)
そのまま彼女と当麻は家路についた。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.174 )
日時: 2012/02/10 16:14
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)





25話 当麻と悠一の不幸



しばらくして。
当麻と悠一は昼間に今度は遠目のスーパーを訪れていた。悠一が安売りしてるといい、当麻がそれに食いついたのだ。悠一は変身し、当麻の隣を静々と歩く。優雅さが滲み出ており、品のよさが伺えた。当麻は両手を組んで頭の後ろに引っ掛けてやる気の無さそうな顔で、悠一(女)は何処か嬉しそうな顔で彼の傍を歩く。まるでデートだ。中身は男同士ですが。

「なぁ、ゆうほ」
「何ですか、上条さん?」

ゆうほ。それが外での悠一の偽名だ。名前を呼べないと不便だと当麻に言われてその場でつけた名前。名乗るとき、「苗字で呼ばれるのは嫌いなので」と言い訳して名前しか言わない。そのせいで色々当麻の女性関係でヤバいことになってることを二人は知らない。その一人で、悠一にとっては都合の悪い相手が現れた。

「ちょっとあんたたちっ!!」
「え?」
「はい?」

二人が振り返ると。最強3番目がいた。御坂美琴。悠一の失踪を知っていて尚且つ当麻に惚れている一人。惚れている相手が、何処の誰か分からない奴と一緒に街を歩いていれば誰だって心中穏やかに過ぎる筈がない。御坂は赤い顔で二人に怒鳴る。

「あんたね、一体何してんのよっ!!」
「ゲッ……御坂」

と露骨に嫌そうな顔をする当麻。悠一はキョトンとしていたが、いいことを思いついたのか、ふっと柔らかい微笑を浮かべる。そして口を開いた。

「あら、どちら様?」
「そういうあんたこそ何処の誰よっ」
「あらあら、年上に対する礼儀というのがなってませんわ。その制服……常盤台中学でしょう?」

御坂は常盤台の制服を着たままビシッと悠一を指して言った。

「そういうあんただって随分そいつと馴れ馴れしいじゃない!腕なんて組んじゃってっ!!」
「あら、わたくしは上条さんに許可をされているのですわ。あなたのように、無粋に割り込んでいちゃもんをつけられる理由がわたくしには御座いません」
「ぐっ……」
「それに、何故常盤台に貴方のような野放図な方がいらっしゃいますの?品のいい方しか、あそこには入学できないと聞いておりますが」
「……」
「わたくし、信じられませんわ。常盤台のお方が、空気も読まずにデートの邪魔をなさるなんて。さて、では名乗ってもらいましょうか。名前を聞くなら己から名乗る。貴方のお名前は?」
「ぐぅぅぅぅ……」

妙な唸り声を上げて口を閉ざす御坂。当麻は「デートじゃないっ」と否定したが聞こえてないらしい。俯いて黙ってしまった。まぁ、悠一の言った正論に歯向かう程の屁理屈をこの純情お嬢様は持ってないだけなんですが。やがて明らかに自棄になった声で叫ぶ。

「……わたしは、御坂美琴!!この名前くらい聞いたことあるでしょ!」
「まぁ……常盤台のエース。まさかこんな器の小さいことをなさるなんて……意外すぎますわ」
「うるさいうるさいっ!!で、あんたは誰よっ!!」
「わたくしは、芙蓉ゆうほ」
「芙蓉……?」

その名前の聞いた途端、怪訝な顔をする御坂。悠一は続けた。

「ええ。序列1位と同じ苗字ですわ。ですが、わたくしはそれが嫌でいつも名前だけ言うのですが……序列3位たる貴方の礼儀正しさに免じて、全てお教えしたまで。御坂さん。もし、まだわたくしに何か文句があるのならば……お相手いたしますわ。上条さんが」
「お、俺!?」

突如当麻の名前を出す。一気に機嫌の悪い顔になった御坂。そろそろ毛細血管がぶち切れてもいいと思う。さすがフラグクラッシャー上条。無意識で女性関係最悪である。

「フーン……あんたがその人を庇うんだ……へぇー」
「み、御坂さん?何か目茶目茶怖いんですけど……」
「あらあら?上条さんは彼女に勝った事があるのでしょう?じゃあわたくしをお守りくださいまし」

ぎゅぅ、と彼の左腕を絡めて自分の胸に押し付ける。(女の状態で)
忽ちうろたえる当麻。ぶち、と何かが切れる音が聞こえた。御坂のほうで。目元に闇が広がる御坂。全身に殺意を纏い、懐からコインを取り出す。



この後の結果はいうまでもない。死なないだけマシである。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.175 )
日時: 2012/02/11 14:24
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)







26話 消えてしまった信頼




「……」

悠一は考える。
今、目の前で行われている行為に、どう対処するべきか。
先ほど、能力者(強能力者)と風紀委員の腕章をつけた中学生の女の子が揉めていた。そして能力者がその女の子に能力を差し向けた。どうってことのない、火炎系能力者。精々炎の玉を作り出して投げつける、その程度。
だが相手は逃げ惑った。慌てるように、すぐさま。相手は無能力者であると悠一は見抜いた。だって傍で巻き込まれた小さい子供を庇って炎が髪の毛に掠ったとき、悲鳴を上げたから。あれは能力の扱いに慣れていない時の反応。つまり、無能力者。
能力者同士の戦いはいつも非常識だ。良くて大怪我、下手したら死ぬ。それが相手が無能力者ならなおさらだ。殺し合いにすらならない、虐殺。それだけに、周りの人間は関わろうとしない。
自分が死にたくないから。そんな他人の態度に悠一は憤りを感じていた。こいつら、見て見ぬふりしてやがる。
だけど仕方ないのかもしれない。誰だって傷つくのは嫌だ。
悲鳴を上げ続ける一団を見て見ぬふりは仕方ない。相手は風紀委員。こういうことのプロということがみんなの足を止める。
その中に、悠一の知り合いの顔を見かけた。
金色の尻尾、金色の双眸。スカートから見える細い足には鎧のような機械。眼帯はしておらず何処か無気力な顔をした白鳳院綾野がいた。ふらりふらりと歩き、時々ぼぅ……と空を見上げ溜め息をついた。前の無駄な元気さが消えていた。

(綾野……)

悠一は女の子の外見をしているため綾野に気付いている様子はない。尤も、今の綾野にそんな余裕はないが。
彼女は騒ぎを無気力な顔をしてみつめ、興味ないと言わんばかりにスルーして歩き出す。
その時、悲鳴が大きくなった。見ると、男が近くにあった道路標識を引っこ抜き、女の子たちに叩きつけようとしていた。綾野、悠一は同時に反応した。綾野は逃げ出すように人ごみを掻き分け走る。悠一は助けるために走り出す。二人は交差する。交差するとき、悠一は自分の声に戻して綾野に囁いた。

「見損なったぞ、綾野」
「え?」

綾野が振り返ったときには、鮮やかな紅の髪が僅かに人混みから見えただけ。綾野は戻ろうとして、一番会いたかった人の叫び声を聞いた。




「何してんだテメエッ!!!!」

人混みを掻き分ける頃には悠一の姿がぼやけて、元の男の悠一に戻った。そのまま走り、振り下ろそうとされている道路標識向かってチカラを使う。

「『貪れ、黒き泥濘(アプリストス)』!!」

突如、男の足元に泥濘が出現する。その泥は靴を伝ってすぐさま男の体の体細胞に侵入。体の内部から臓器を破壊、血液を辿って毒のように全身を回った。

「ぎゃあああああああ!!!!」

汚い悲鳴を上げてもがき、道路標識を落とす。その先にはあの子達が。
悠一は更に叫ぶ。己の力を呼ぶために。

「『留めろ、黒き終焉(ジエンド)!!』」

女の子たちを守るように、黒き分厚い氷が阻むように壁を生成。結果、50キロはあろう道路標識をひびすら入れず受け止め、違う場所にヘと運ぶ。
悠一は歩を進める。もがく男に一撃を食らわせるために。許せない。チカラをチカラ無い者に振るうことが。
チカラを持っていいのは誤ったチカラを使わない奴だけ。自分より下しか見ないで、そいつ等に向かって身勝手な都合でチカラを使い、あまつさえ調子に乗って猿山のボスのようにしている奴が、悠一は許せない。誰よりも自分を無力と罵った悠一だから。チカラを力としかみない奴には、悠一は敵対し、圧倒的なチカラで思い知らせる。蹂躙される痛みを。抗えない理不尽さを。そして、無意味なことに使われるチカラの嘆きを。
当麻のするように、己の右拳を握り締める。やってしまえ。アンナ奴。
殺してしまえ。爪、牙、なんでもいい。奴を八つ裂きに出来るなら。
怒りと憎しみと爆発する本能に従い、悠一は思い切り言った。

「『焼き尽くせ、黒き審判(ミョルミル)』!!」

右に宿る黒い雷。その拳で、のた打ち回る男に向かって叩き付けた!

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.176 )
日時: 2012/02/11 15:01
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)






27話 無価値な場所



「……テメエのやってることは単なる自己満足だ。それすらわかんねえならいっそ死んじまえ、クソ野郎」

仰向けになっている男はもう瀕死だ。そいつに吐き捨てた。
臓器は軒並み壊され、顔面が崩壊したように形になり、挙句焦げている。顔から黒煙を上げているのはグロテスクだ。悠一の右手には返り血がこびり付いて、滴り落ちている。久し振りに本気で頭に来た。視界の傍で怯えている女の子に、振り返らず言う。

「勇気のあることはいいことだよ。だけどね、勇気と無謀は混合すると、自分を殺してしまうんだ。
今、お前がやったのは勇気半分、無謀半分。風紀委員だってことも分かる。でも、それ以前に自分は子供だってこと、忘れないで。
無力でも、強い奴には立ち向かうコトだって出来る。お前だって、分かってるだろ?能力だけが学園都市では優先されるけど、でも。
……努力すれば、敵うコトだってあるんだ。俺は……もうだめだけど」

最後は自嘲気味に言う。笑ってしまう。これが学園都市最強?
誰一人笑顔に出来ないような役立たずが、泣かせてばかり、怯えさせてばかりの化け物が、序列1位?
ふざけるな、こんなものか。俺の欲しかった力はこんなものか。強さの果ては孤独だけ。一方通行のようにはいかない。彼の近くには打ち止めがいる。当麻の近くにはインデックスがいる。悠一には、茜がいた。
そう。過去形。いた。それは悠一が自ら捨てた。
もう、悠一には誰もいない。かつての大切な人は今、金色の瞳に涙を一杯溜めて悠一を睨み、足から湯気を噴かせて悠一と対峙していた。

「悠一、二週間も何処にいたの?」
「……」

その声には、ようやく逢えた喜びと、何でいなくなったのかと言う棘が混じり、混濁していた。悠一は無言。答える必要なんて無い。

「答えてっ!!」
「……」
「私達、心配したんだよ!!いきなりいなくなるからっ。悠一酷いよ。なんで何も言わずに出ていったの?ねえ、答えてよっ!!」
「……」
「何で黙ってるのさ!?喋れるんでしょ!!答えてっ!!」

突如乱入してきた高レベルの能力者に、見物客は戸惑っているようだった。先ほどの女の子も、そそくさと立ち去る。風紀委員だろうが、二人の間には入れない。危なすぎる。
悠一は、何の感情も無い顔で綾野を一瞥すると、踵を帰した。
その態度に綾野は混乱する。

「悠一……逃げるのっ?何も言いたくないから。何も言えないからって逃げるの!?卑怯者っ!!いつもそう!!悠一は大切なことは私に何も言ってくれない!!私だったら力になれるのに!!頼ってくれないっ!!頼って欲しいのに、どうしていつも一人で背負い込むのっ!?」
「……」
「逃げるな悠一!!訳ぐらい説明しろばかっ!!」

背中に受ける罵倒を無視。こんなことくらい分かってる。だけど言わない。何もいう必要なんて無い。言っちゃいけない。遂に綾野が動いた。

「逃げるなって……言ってんでしょ!!」

地面を蹴る。瞬間移動のように高速で動き、後ろから悠一を殺すような勢いでとび蹴りを浴びせようとして。振り返らずに消えた悠一のせいで足は空を切る。風切り音だけが鳴り、着地した。
キョロキョロと探し、すぐ後ろ、先ほどのいた場所に悠一はポケットに手を突っ込んで立っていた。その時間、一秒足らず。常人のできる業じゃなく、見物人には悠一が消えて綾野が消えて互いの位置を一瞬で変えたようにしか見えない。

「悠一……っ」
「雑魚が。学園都市最強に勝てると思ってんのか」
「……」

口を開けば見下すような言葉。悠一はもう決めていた。
信頼は、憎悪に塗り替える。居場所を壊すには一番それが早い。だから罵り、怒りを加速させる。

「綾野、誰に喧嘩売ってんだお前。俺の行動に一々文句言うな。俺の勝手だ。俺は俺で動く。一々相談するほどの意味もねえ。俺は一人で行動した方が早いんだ。俺は一番、強いんだから」
「……傲慢だね。随分墜ちたもんだね。いつから見下すようになったわけ?見損なったのはこっちだよ」
「はっ。うるせえよ三下。テメエの思い上がりに比べればマシだよ。何が力になるだ。何で最強の天辺が弱い奴を頼んなきゃいけねえ?舐めんなよ綾野。……本気で殺すぞ」
「……そう。殺せるんなら、殺して見せてよ、最強っ!!」

激昂した綾野が悠一に襲い掛かる。


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