複雑・ファジー小説

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Quiet Down!!
日時: 2011/06/25 15:16
名前: 水瀬 うらら (ID: 5iKNjYYF)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=form

皆さん、こんにちは。私、水瀬うらら(みなせうらら)と申します。
本日から不定期に小説を書かせて頂こうと思います。
この物語を書くきっかけになったのは、ずばり、小説を書くことを趣味の一環としていた私に、友人がリクエストをしてくれたからです。
いつかこの小説が、彼女に届く日が来ることを願います。
また、読者様からの感想やアドバイスなど、心よりお待ちにしております!

はちゃめちゃだったり、ぶっとんだ面も多々あるかと存じますが、
何卒、宜しくお願い致します!

第二十九話『その柚子は、滑稽な姿をしていた』 ( No.125 )
日時: 2011/08/02 16:28
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

 昼休み。いつみても狭い教室は、人が大勢集うと、さらに窮屈な感じがする。工事でもされないのだろうか。毎日思うが、今日は違った。
クラスメイトの笑う声。誰かの筆箱を漁る物音、追いかけっこする奴の足音。
 音、音、音。
 全てが邪魔だった。
 あたしは静かに席を立つ。
「柚子さん?」
 緋由が素っ頓狂な声を上げたが、この際、無視することに。
 あたしは、足早に教室を後にした。緋由が走って追いかけてくる気配はない。
 擦れ違う人を横目に、ある場所へ向かおうと速度を上げた。すると。
 足が、止まった。
 目線は、とある教室に留まった。中からは、笑い声が絶えず響いている。このことについては、あたしのクラスと一緒だ。
 ただ一つを除いては。
 教室の中心とも言える場所には、人気が全くなかった。そして、そこに座る、一人の少女。彼女は、俯いていた。半径二メートル以内には、彼女以外、誰一人としていない。その一帯だけ、周りから切り離されているようにも感じた。
 彼女の顔は、よく見えない。分かることは。

 橙色のヘアゴムで結われた、ポニーテール。だということ。

 声をかけようとしたが……何を言えばいいのだろう。分からない。こういうとき、緋由なら、どうするのだろうか。
 周りの音が徐々に消えていき、あたしは、時が止まったように思えた。

 虐められている、友達を守れない、自分。そんな……あたしは……。

「!」
 ふと彼女が、こちらを見た。目が合う。
 あたしは、顔を強張らせ、目を合わせないよう、ふたたび足を進めた。
 感情は、殺すんだ。殺す……。


 深く亀裂の入った階段を一段一段、上っていく。足取りは覚束ない。上ろうと、足を上げたが、踏みごたえがなかった。そう、頂上に着いたのだ。
 あたしは苦虫を噛み潰したような顔で、重い鉄の扉を押した。
 途端、涼しい風に包み込まれる。
 目に飛び込んでくるのは、誰もいない、寂れた屋上。そして、世界の果てへと続く、白い雲。
「……なんてね。『果て』なんてもの、ありゃしないのに」
 呆れ混じりの笑みが無意識にこぼれる。
 腰までしかない、錆びたフェンス。どこか色褪せた、街並み。
 あたしは、屋上の扉付近のフェンスに手をかけた。フェンスが軋み、悲鳴を上げるが、気にしない。所詮、物でしかないのだから。あたしは軽く飛び越え、そして直立する。
 眼下には、無邪気にはしゃぎまわる、子供たち。黄色い帽子を被り、尚且つ、ランドセルを背負っていることから、察するに小学生だろう。
 幸せそうな顔。
 あたしは、心からその顔が、その幸せが、憎いと思った。
 兄から暴力を受ける自分とあの小学生を比べると、ますます、腹が立った。
 
 本当に誰もが平等に、不公平なのかな。

 そう呟いて、両手を広げた。
 どこからか聞こえてくる、蝉の声。命懸けで、自身の存在を誇張する、あの声。
 何故か哀れに感じた、あたし。
 一瞬の、同情。
 そして思う。
 命も懸けず、ただ暴力を受ける、『日常』。
 あたしの人生。
 それを耐える、自分。

「滑稽だな」

 そう嘲笑った。
 そうすることで、あたしは……。

 自分自身を、否定した。

 肩に滴が落ちた。見上げると、雨が、あたしの体を濡らし始めた。
 嗚呼、体が冷えていく……。
 否。冷えていくのは……。

 ————————ココロ?

 蝉の声は、いつしか、聞こえなくなった。
 モノクロの世界に塗りつぶされていく。
 あたしは——。あたしは——。

 バン!

「!」
 突如、屋上の扉が勢いよく開かれる。
 あたしは、振り向こうとし、
 足を、滑らせた。

 あ。

 空に身が投げ出される。
 嗚呼、落ちていく。
 冷たい風が吹き荒れる中、あたしは、そう呟いた。

Quiet Down!! ( No.126 )
日時: 2011/08/02 16:34
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

祝!参照五百突破!
読者の皆様、誠に有り難うございます!
……ようやく、ここまで……。
一カ月ちょっとで……五百……嬉しいです!

執筆、頑張りますね!


追記
小説図書館にて、毎日、お知らせなどを更新しているので、時折、ご覧になって、確認なさるのをお勧めします。その方が、恐らく、分かりやすいです。
……スレッド0のパスワードが、認証されれば、このように厄介なことはまず、起こらないのですが……。
誠に申し訳ございません。

Re: Quiet Down!! ( No.127 )
日時: 2011/08/02 18:52
名前: nata ◆xi9CqIOvBg (ID: XK5.a9Bm)
参照: 名前を直しました 旧名:雅 → 新名:nata です

お久しぶりです!
名前を変えたので、「nata」になりました。

それを報告にきました^^

更新頑張ってください!

第三十話『その柚子に、祝福の虹が架かる』 ( No.128 )
日時: 2011/08/04 10:27
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

どれくらいの時間が経ったのだろう。相変わらず、烈風が体を打ち付けている。

「————柚子!」
 どこからか、声が聞こえた。
「——————柚子!」
 あたしだけを、呼ぶ声が。
 朦朧とする中、重たい瞼を開けると……。
 あたしのよく知っている、人だった。
 どうやら、落ちた瞬間、腕を掴まれ、今のところ、助かっているらしい。といっても、今、体を支えているのは、折れそうな細い、アイツの腕、一本なのだが。

「柚、子」
 目を見開く。大量の雨粒に打たれ、目が痛いが、それどころではない。
 ここに、いるはずのない、人だった。
 
————燈兎が、いた。

唇を白くさせるほど、噛みしめながら、右手であたしを掴んでいる、燈兎だった。雨に濡れ、チャームポイントのポニーテールは、ぐっしょりとしていて、力がない。
「な、なんで、お前がここに……」
 あたしは足の感覚が麻痺するのを感じながら、そう口から漏らした。
 虐められているのに。あたしよりも、遥かに辛いはずなのに。
 あたしを、救う余裕なんて、ないはずなのに。
 自分のことなんて、放り出して、誰かを、助けるなんて……。

「——————嫌なの。」

 あたしの頬になにか雨とは違う、温かいものが当たる。
「え……」
「————嫌だよぉ」
 顔を涙で、ぐしゃぐしゃに歪め、泣いていた。
 誰かのために。人のために。
 あたしの、ために。
「お前」

「——死なないで。」

 弱弱しく、絞り出した、燈兎の、想い。
 言葉が、出なかった。
「生きるのを……諦めないで。」
 燈兎の手に力が籠るのを、感じる。
 あたしは……そんなアイツに……。
「——馬鹿だなあ、お前は……」
 笑って見せた。その場の雰囲気にそぐわず。
 自分も泣いてしまいそうになって、必死に堪えた。
 息が、出来ない。苦しい。
 泣くのを堪えるのって、こんなに、辛かったっけ。
 そう思いながら、もう一度、笑う。
 これは、あたしの、精一杯の、強がりだ。
「あたしは、まだ死なないよ」
 雨の冷たさで感覚が失われた片手を、必死に伸ばし、屋上の床に手をかける。手は、ぶるぶると震えていた。
 歯を食いしばる、あたしの意図を察したのか、燈兎も意を決したようだ。全力で引き上げる。
 鈍い音がした後、ようやく、あたしは屋上にまた、戻ることが出来た。
 ほっと安堵する、燈兎。
「良かった……」
 彼女の頬に、また涙が伝う。あたしは申し訳ない気持ちで、一杯だった、
 そして、
「ごめん」
 気持ちを口にした。
 あの時、助けられなくて、ごめん。
「助けてくれて、ありがとな」
 絶望から、救い出してくれて。
 それでも泣き止まない燈兎に戸惑う。どうしたら……。
「……泣くなって」
 あたしは、燈兎の頭を優しく撫でた。
「泣く必要なんて、ないんだぞ?」
 どこか、聞いたことのある言葉を口ずさむ。
「だから、泣くなよ」
 これは……母さんの、言葉だ。
「——うん」
 燈兎が涙を拭うのを見つめながら、あたしは悟る。
 母さん……。なんで、あの言葉を言ってくれたのか、やっと分かったよ。母さんは、あたしのことを、心配、していてくれていたんだな。
 言葉で表せない、感謝の気持ちが、心を満たした。
 いつのまにか、雨は、止んでいた。
「柚子」
「ん?」
 あたしは、笑いかける。助けてくれた、彼女のことを、母さんがあたしにしてくれたように。優しさで、包み込むように。

「私……。何度でも、助けるから。私は、柚子と、一緒にまた、笑い合いたいの」

 彼女の瞳に、迷いはなかった。
 手を差し出される。握手をしよう、と言うのだろう。
 お前……、どれだけ良いヤツなんだよ。
 そう内心、苦笑する。
「あたし、もう、心配かけたりしないから」
 握手する。ほんのりと、温かい、
「約束、な」
 燈兎は、一瞬、驚いたが、その後、「私も、約束だよ?」と微笑んだ。
 二人で空を見上げる。嵐が去って、空は蒼く、澄んでいた。
「あれ、見て!虹!」
 燈兎が目を輝かせて、指さす方向を見ると、色鮮やかな、虹が現れている。

 まるで、あたしたちの進んでいく未来を、祝福するかのように。

Re: Quiet Down!! ( No.129 )
日時: 2011/08/04 13:50
名前: ゆきりん (ID: fTO0suYI)

早速……
——投票——
一番好きな登場人物の名前【水野柚子】
その登場人物を好きになった理由【ポジティブな裏に、深いところが……いい!めちゃいい!さいこうだぁ!】
その登場人物のイメージカラー 【オレンジ!】
好きなセリフ【やっぱ、「あたしはね、ドラマ的、衝撃な展開がリアルで行われているところを、激写せずにはいられないんだよ」】
その登場人物に、一言!【例え、人気投票で、最下位でも、私はファンなのだ!負けるな、柚子、いけいけ、柚子!】
☆本編の感想【柚子ちゃん(いつの間にか、呼び方が変わってる?)に、そんな過去が……。ただ、ポジティブなだけじゃないんだね!水野さん、がんばれ!(なにを?)奥が深くて、すごく、読むのが、どきどき、です。】


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