複雑・ファジー小説

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Quiet Down!!
日時: 2011/06/25 15:16
名前: 水瀬 うらら (ID: 5iKNjYYF)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=form

皆さん、こんにちは。私、水瀬うらら(みなせうらら)と申します。
本日から不定期に小説を書かせて頂こうと思います。
この物語を書くきっかけになったのは、ずばり、小説を書くことを趣味の一環としていた私に、友人がリクエストをしてくれたからです。
いつかこの小説が、彼女に届く日が来ることを願います。
また、読者様からの感想やアドバイスなど、心よりお待ちにしております!

はちゃめちゃだったり、ぶっとんだ面も多々あるかと存じますが、
何卒、宜しくお願い致します!

第二十七話『その柚子は、気味が悪く、変色する』 ( No.115 )
日時: 2011/07/29 22:45
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

「……」
「ねぇ」
「……」
「ねぇ!」
「っ!なに?」
 憂鬱に浸っていたあたしは、突如、現実世界に引き戻された。現在、教室は熱気が籠っていて、自然と喉が渇く。
「柚子さん、聞いてる?」
 小顔で、大きな焦げ茶色の瞳。肩までの黒髪に、黒のパーカー。黒のスカート。黒のハイソックス。こんな格好をしてくる女の子は一人しかいない。
 あたしは眉をひそめた。
緋由ひより、なんであんたが、ここにいるんだ」
「もう!そんな酷いこと言わなくったって、良いじゃない!」
 緋由は大袈裟に、頬に手を当て、軽く嘆いた。
「で?要件は?」
「あー……柚子さん、最近、自殺がどこの学校でも流行っているらしいわね」
 緋由は、溜め息をついた。
「……以上?」
「そうよ!悪くて、ごめんなさい!」
「悪いな、確かに」
「…………うー。今日の柚子さんは、ご機嫌ナナメすぎて、手におえなくて、困るわ。私的には燈兎さんの方が断然、好みね」
 いつも思うが、緋由の発言は時々、どこか上から目線で、どこか客観的な、見下している感がある。
あたしの場合、自分で言うのもなんだが、直そうと努力している。だが、この女は改善の兆しをまったく見せない。否、見せる気すらないのか、と思わせるほどだ。

「どうしたの、緋由ちゃん?」
 気が付くと、燈兎が近くに寄ってきていた。途端、緋由のイントネーションが変わった。
「燈兎さん!丁度、良いところにいらっしゃいましたね!実は先程、二年三組の吾妻さんたちが、貴女のことを探していて」
「え、そうなんですか?ごめんね、ありひゃ噛みました有難うございます!」
 燈兎は慌てて、教室を飛び出した。

「そういえば……燈兎さんって、虐められてるって、話よ。」
 小さくクスりと手を添え笑う緋由に、あたしは気付かない。
「まぁ、アイツのことだから、なんとかなるだろう」
 あたしは怠そうに背中を椅子に預けた。
 信頼、している。というよりも、別のことが原因だ。
 何故なら、燈兎は隣のクラス。まぁ、それは緋由も同様で、隣のクラス。だが、理由はわからないが、同じクラスになってからというもの、背後霊の如く、付き纏われている。
 話は戻るが、いくら燈兎が虐められていることについて、だったな。
 あたしがどれだけ、手を尽くしたとしても、限度がある。
誰かを、守ることなんて、出来やしないのだ。
 この腐った世の中に、『正義』も『悪』もない。
 区別できないほどに、混ぜられている。
 ドラマ的なポジションのヒーローなんてものが、いたとしたら、あたしはそいつに言うだろう。
人という『悪』を犠牲にした、ハッピーエンド。お前は嬉しいの?
とね。

「虐めねえ……今日は七夕だっていうのに。不吉よ」
「七夕か。そんな行事もあったな。」
 受験のことで、頭が一杯で、忘れていた。昇降口に短冊の束が置かれているが、面倒だ。書こうとは思わない。
「七夕って、面白いと思わない?」
「別に」
「だって……ふふふ。」
 緋由は、笑いながら、あたしの目を覗き込んだ。
 気味が悪いと思ったのは、言うまでもない。

第二十八話『その柚子は、カレーライスの香りを纏う』 ( No.116 )
日時: 2011/08/13 18:08
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

 七夕の夜。母さんこと水野凌は、笑っていた。
「ゆずりん!今日は、どーだったかね!」
 好奇心旺盛なその瞳。別に染めたわけではない、赤みを帯びた髪。黒と白のコントラストがカッコいい、エプロン。今にも折れそうな古い蒼の眼鏡を軽くかけた母さんに、帰宅直後、思いっきり、ハグされた。
「うーん!いつ嗅いでも良い香りだぁ!」
 至福とでも言わんばかりに、目がとろんとしている。あたしは、麻薬じゃないぞ。
「……特になにもないけど、ていうか、それ、あたしのエプロン……」
「お母さんは、ただただ、心配なだけなんだよぉ?」
 純粋に見つめられ、思わず、目を逸らした。くっ、視線に弱い性格は、まだ治らないの?
「カレーライス、作ったお!ゆずりん!」
「えー」
「だったら食わせねえ」
「是非、いただきます」
 あたしは土下座する。額に触れるフローリングが、やけに冷たい。毎日思うが、このコントみたいな会話は一体、何なのだろう?心底、呆れた。
「さささ、じゃあ、食べよー!」
「はいはい」
 学校の鞄を置きに、自室の部屋に向かう、あたしの足取りは軽かった。


「美味しい!母さんにしては!」
「なによ、その言い方は!まるで私の料理が普段、不味いみたいじゃない!」
 あたしは、頬を膨らませる、母さんを横目にカレーを頬張った。
「普段、『勘』で料理しているから、時々、とんでもない味を作り出すじゃないか」
「確かに私は『勘』を頼りにしすぎて、先週、唐辛子を一瓶まるごと入れたわ!だけど美味しかった!凄いと思わない?」
 その自信に満ち溢れた眼差しに、半目になる。それは、単に手を滑らせただけとは言わないのだろうか?言い訳……。
 母さんは、テーブルに置かれた、ポットに手を伸ばした。傾け、水をコップに注ぐ。
「だからね、私の料理は……」

「うるせえ」

 母さんの言葉は、『侵略者』に阻まれた。あたしの前に座っている、『侵略者』は、母さんの手に持っているコップを奪い取り、ごくごくと飲み干した。
「ほら、水、入れろ」
 空になったコップを無理やり、渡される。あたしは、コップを見つめていた。
「早く入れろよ」
「……」
 命令される、毎日。脅される、毎日。
「……ふざけんな」
「あん?」
 あたしの手が震えた。歯を食いしばる。そして、叫んだ。

「黙ってりゃあ、好い気になりやがって!ふざけんじゃねえよ!」

 何かが叩かれる音が響く。見ると、『侵略者』が大きく拳を作って、テーブルを叩いていた。目が血走っている。床には、割れたコップの破片が散らばっていた。『侵略者』は立ち上がり、近付いてきた。あたしは、いつになく興奮状態で、普段は視線を合わせようとも思わない『侵略者』を睨みあげた。『侵略者』の左手が上がる。
 覚悟は、出来ていた。
 首の右辺りに、激しい痛みが走り、思わず、目を瞑った。
「ちょっと!柚子になにすんのよ!謝んなさい!」
 傍で母さんが激怒する。顔は真っ赤だ。
「俺、悪くねえもん!謝らねえよ、ぜってぇ」
 あたしを指さし、子供のように言う『侵略者』に、あたしは不快感を覚えた。首の痛みが消えることはない。
「コイツまで刃向ってきやがったよ!」
 俯いていると、『侵略者』は憎悪を燃やしながら、吐き捨てる。
「お前なんか、薬で死ね!カス!」
 気が付くと、あたしは、自分の部屋のドアノブを握っていた。わざと大きな音を立て、ドアを閉める。
 入った途端、辺りが真っ暗になる。さっきまで、明るかったのに。
きっと、『侵略者』に電気を消されたのだろう。
 ドアに背中を預け、しゃがみこむ。頭を膝につけた。
 ————『薬で死ね!カス』だって。
 あたしの頬を涙が伝う。どうしてなのかな……。瞬きをしてないのに、涙が止まらないや。
 本当に、『あの人』は……あたしの兄貴なんだよ?しゃくり上げそうになるが、あたしは口を手で押さえた。兄貴に聞こえたら……、駄目だ。聞こえちゃ、駄目だ。駄目なんだ。
 あたしは涙がこれ以上、溢れないよう、顔を上げた。
 見えるのは、闇だったが、やがて、ぼんやりと確認することが出来る、目の前に積み重なる、布団一式。ふと、そこに女の子が見えたような気がした。小さな……小さな……女の子の影。
 それにあたしは、語りかけた。

「……大好き大好き大好き。なぁ……あたしを、受け入れて、くれるかな?」

 理由は分からない。自分でも。今、思えば、もしかしかすると、このとき、既にあたしの心は壊れていたのかもしれない。
 女の子は、言葉の真意を掴めず、首を傾げたようだった。

「————謝って。」
「いやだ」
「あんたは知らないと思うけど、あの子、陰で、泣いてるのよ」

 母さんの声がする。
 その声は、あたしを守ってくれているようだった。 あたしのことを、理解してくれた、ただ一人。
 自然とあたしの顔がぐしゃぐしゃに歪む。

「は?あいつが泣く?なんで?意味わかんねえ」

 何気ない『侵略者』の一言が、深く心に突き刺さる。俯いた。
 そうだよな……。泣くとか、意味が分からないよな……。
 ぽたぽたと涙が落ち、やがてズボンはびしょ濡れになった。
 声を上げてはいけない。泣いていることが、バレてはならない。
 その志が、曲がることはなかった。

 数時間後、あたしはとうとう、自身の部屋の扉を開けた。重い足取りで、リビングに顔を出す。
「柚子!」
 そこには、目を見開いた、母さんの姿があった。肩を揺さぶられる。
「大丈夫?」
「……一応」
 嗚咽をこらえ、平静を装った。辺りを見回すが、『侵略者』の姿はない。あるのは、『侵略者』が投げたと思われる、物の残骸と、割れたコップの破片だけだった。
「!」
 突然、母さんに抱きしめられた。
 驚いて、母さんの顔を見ると、柔らかな表情を浮かべている。髪を優しく、撫でられた。

「…………泣くなよー」

 あたしは、声が出なかった。明るく、慰めようとする、母さんの姿。瞳の奥は、戸惑っているようだった。
 ……泣くな?意味が、分からない。
 でも、涙は止まらなかった。抑えようと必死に頑張っても、どうしても、泣いていることがバレてしまう。
 母さんの言った言葉の真意が掴めないまま、夜は更けていく。
臨夢のぞむはね、今日は機嫌が悪いんだよー」
 カレーライスは、既に冷め切っていた。
 七夕のカレーライスを思い出すことほど、嫌なことはない。
 だって、あたしにとって、一番情けなくて、一番辛かった。一日だから。

お知らせ ( No.117 )
日時: 2011/07/31 17:28
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

こんにちは、読者の皆様。
突然ですが、諸事情により、八月五日から八月十一日まで、更新が出来なくなりました。
はい、すみません。もう少し、早く言え、って話ですよね。
誠に申し訳ないです。
ということで、ご了承ください。

Re: Quiet Down!! ( No.118 )
日時: 2011/08/01 02:48
名前: 鹿瀬 (ID: t7y4Iwob)


水瀬うららs
投票させていただきます
 ——————記入用紙——————
   一番好きな登場人物の名前【霧島燈兎】
   その登場人物を好きになった理由【下の台詞がツボでした(笑)】
   好きなセリフ【「私、霧島燈兎と申します。どうぞよろひく噛みましたよろしくお願いいたします」と「そこの宮城君が学級委員になりゅ噛みましたなるのは心底嫌なので、私も立候補します!」です



   その登場人物に、一言!【私もよく噛みます】
   ☆本編の感想【さすがですっ 凄くおもしろいです】
  ———————————————

お返事、書きました!→鹿瀬様 ( No.119 )
日時: 2011/08/01 13:59
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

こんにちは!投票してくださり、誠に有り難うございます!

燈兎の噛んでしまう所が、人気ですね……!
鹿瀬様もよく噛むんですか!なるほど。
『さすが』ですか?……(語句の真意を理解)……っ!
きゃあああああああああああああ!
有難うございます!嬉しいです!

良ければ、鹿瀬様の、お時間の空いていらっしゃるときに、また読みにいらしてください!


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