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提督「艦娘達との日常」【艦これSS】
日時: 2018/07/26 17:13
名前: エボルト (ID: x40/.lqv)

某年某月某日。
『今日の日記は特に何も書くことはないのだが……些か困っている。
というのも、こうして何もない日常にありがたみを感じるのもまた人の性なのだが、むしろ自分は非日常の権化のような存在に囲まれ生活している。こんなにのほほんとしていていいのだろうか。
深海との戦いも終わりは見えないが、少し艦娘との暮らしにも目を向けていきたいと思う。』

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Re: 提督「艦娘達との日常」【艦これSS】 ( No.119 )
日時: 2018/12/16 23:33
名前: エボルト (ID: s9PJfNZh)

【突然の襲撃】

天龍「ふー……今日も今日とて遠征か」
龍田「まあまあ、もうすぐ鎮守府近海に入るし〜」
天龍「だな。お前ら、気ぃ抜くんじゃねえぞ」
雷「はーい!」
電「なのです!」
暁「早く帰りましょ?」
響「今日はちょっと長引いたからね。少し疲れたかな」
天龍「そうか、ならさっさと……ん?」
天龍「な……」ゾッ
龍田「……天龍ちゃん?」
天龍「何だ、ありゃあ……」
龍田「あれ、って……?」チラ
龍田「ひっ……」ゾクッ
天龍「だ、ダメだ……あんな奴の相手は俺たちじゃできねえ……チビ共連れて撤退するぞ!」
龍田「そ、そうね……」クルッ
暁「ひっ……」ガクガク
雷「あ……あ……?」
電「……! ……!?」ポロポロ
響「何だ、あれ……」フルフル
天龍「おいっ、撤退すんぞ! 早く!!」
龍田「急いで……掴まって!!」

————

大淀「提督!」ガチャ
提督「どうした、血相を変えて……何かあったのか?」
大淀「遠征部隊が帰投したのですが……天龍さんと龍田さんが急ぎの話があると」
提督「急ぎの話? 同行させていた六駆は?」
大淀「それが、酷く怯えているようで……原因はその話で分かるかと」
提督「分かった。すぐ連れてこい」

————

提督「話を聞かせてくれ。何があった」
天龍「ああ……上手くは言えねえが……」
天龍「遠征の帰りだ。もう少しで鎮守府近海ってとこで、敵艦らしいものを発見したんだ」
龍田「遠目に確認しただけだけど、明らかに深海棲艦よ。何故か単艦だったけど……」
提督「単艦? 周辺に艦隊らしきものは?」
天龍「生憎俺も龍田も偵察機は使えねえからな……いないとは言えねえ」
龍田「でも何より……相手の、威圧感よ」
提督「威圧感? 暁達が怯えていたというのは」
天龍「もしかしなくてもそれだ。俺達だってあいつを視界に入れた瞬間、ビビっちまった……」
龍田「思い出すと寒気がするわ……」
提督「ふむ……それほどに強大な深海棲艦、か……心当たりが無い訳でもない。至急会議を開いてみる」
提督「それと、暁達は?」
天龍「悪い、帰ってすぐ鳳翔さんに預けてきた」
提督「謝るな。英断だ」
龍田「それじゃあ、私達は補給してくるわ。何か必要だったら、また呼んで」

————

提督「……以上が天龍達の話の概要だ」
長門「それ程の威圧感……まあ、覇気と言ってもいいが……そんなものを纏っている奴と言えば、一人しかいまい」
大淀「提督も気付いてらっしゃるようなので、このようなメンバーになったのかと」
古鷹「心当たりなら、一つしか」
神通「ええ、嫌な思い出ですが」
赤城「こんな近くに出ましたか……早めに仕留めたいですね」
提督「一筋縄では行かんだろう。何せ相手は……」
提督「レ級だからな」

————

長門「すぐにでも全体を臨戦体制に置いて、討伐作戦を発令するべきだろう。いつ鎮守府が襲撃されるとも分からん」
神通「大淀さん、資源の程は?」
大淀「長門さんが言うような作戦を敷くのに何も困らない程度にはあります」
古鷹「となると、駆逐艦の娘からも戦力が出ますよね。どうするんですか?」
提督「ここに呼んだのはレ級を知ってる中でも少数だ。いらぬ混乱を避けるためだったが、いずれは全員にしっかり伝えるつもりだ」
赤城「しかし、周囲に艦隊が控えているかも分かりませんし、それが複数ともなればひとたまりもありません。充分に準備を整えた後、全力出撃するべきです」
長門「そんな悠長なことをして、鎮守府が襲撃されれば全てが水の泡だ。今仕留められなくても、遠ざけることくらいは出来るだろう?」
赤城「それで被害が出ては元も子もありません。先程も言いましたが、一度の全力出撃で被害を最小限に抑えるのが最善です。何も遅くするとは言っていません……一度の出撃で済めば、ですが」
提督「……ちょっといいか?」
提督「確かにレ級は危険だ。放置する訳にはいかない。しかし生半可な戦力で挑んでも、返り討ちにされるのは火を見るより明らかだ」
提督「だが長門の言うように、あまり手をこまねいていると先手を打たれかねん」
提督「明日、空母群で周辺海域を念入りに偵察しよう。その上で戦力を整え、明後日に出撃だ」
古鷹「レ級は航空戦力も持っているのではないですか?」
提督「ああ、そうだ。多少は被害が出る……が、あいつと戦うのに被害を意識しては始まらん。もちろん、最小限に抑えるつもりではある」
神通「では、本格的な作戦は明後日、ということでよろしいのですね?」
提督「そうなる。大淀、しばらく手伝ってもらえるか」
大淀「ええ。何なりと」

————

提督「奴を撃ち漏らしては困るからな。念のため、三艦隊を編成しておく。さらに露払いも考えて遊撃部隊も多めに編成する」
大淀「その間の鎮守府の防御は?」
提督「金剛型と少数の随伴で固める。最後の砦に大和も置いておく」
大淀「大和さん? 大和さんは戦力に入れておいた方がいいのでは?」
提督「まあ、少しだけ考えがあってな。代わりと言ってはなんだが、戦力の方には武蔵を入れておく」
ココヲ……コウシテ……ソウダナ……

————

『レ級及び海域周辺の掃討作戦
第一艦隊:長門 武蔵 加賀 古鷹 北上 大井
第二艦隊:扶桑 山城 赤城 神通 時雨 夕立
第三艦隊:伊勢 摩耶 鳥海 川内 木曾 江風
第一遊撃艦隊:天龍 龍田 陽炎 不知火
第二遊撃艦隊:大鳳 阿武隈 磯風 浜風
第三遊撃艦隊:由良 龍驤 白露 秋月
鎮守府防御隊:金剛 浦風
      :比叡 雪風
      :榛名 谷風
      :霧島 綾波
      :大和
本作戦の目的は、鎮守府近海以遠もしくは境界に存在すると考えられる戦艦レ級及び周囲に潜むと推測される敵艦隊の殲滅である。
第一から第三艦隊は主な戦闘を担当、各遊撃艦隊は周辺の艦隊を相手取り、必要に応じて主艦隊の支援を担当する。
鎮守府防御隊は戦線を突破された場合、鎮守府への襲撃を防ぎ、撃退するものである。
ここに載っていない者も出撃の可能性がある。各員しっかりと準備を整え、作戦に臨め。』

————

提督「……明石」
明石「はい。準備出来てますよ」
提督「出せるか?」
明石「出せますけど……本当に使うんですか?」
提督「切羽詰まったらな。その時のここは大淀に任せる」
明石「……あんまり無茶しないでくださいね」

————

瑞鶴「……どう、翔鶴姉?」
翔鶴「まだ何も……あっ、これは……」
瑞鶴「私も何か……え?」
翔鶴「この数は……提督の見込みでギリギリかしら?」
瑞鶴「ちょっと多いね……いや、ちょっとじゃないかも……」
翔鶴「とりあえず、提督に報告しましょう?」

————

提督「まず艦載機被害は少数だ。レ級が気付いていなかったのかもしれないが……」
提督「そしてやはり敵艦隊が潜んでいたらしい。多少、多めだが先の作戦で対応できない数ではない。その上、本命はレ級だ。あいつさえ倒せれば、何とかなるかもしれない」
大淀「作戦の周知は既に終わっています。後は提督、あなたにかかっています」
提督「分かってる。分かってるさ……」
大淀「……心配ですか?」
提督「そうじゃないと言えば嘘になるな」
提督「だが、きっとやり遂げると信じてるさ。手塩にかけた家族みたいなもんだよ」
大淀「……そうですか」
提督「よし……」
提督「各艦隊、抜錨!!」

————

レ級「……」
レ級「楽シソウダナァ……」ニヤニヤ

————

Re: 提督「艦娘達との日常」【艦これSS】 ( No.120 )
日時: 2018/12/17 19:58
名前: エボルト (ID: s9PJfNZh)

【動乱の緒】

提督『長門』ザザッ
長門「提督か。通信良好だ」
提督『らしいな。今の所どうだ?』
長門「敵影は確認できないが、もうすぐ報告のあった場所だ。本格的な戦闘になるのもそう遠くはないだろう」
提督『その口ぶりだと、士気は充分みたいだな』
長門「士気などというものではないさ。武者震いがするよ」
武蔵「そうそう、私も昂っているんだぜ」
提督『武蔵』
武蔵「できれば姉貴と出てすぐに片を付けてやりたかったが……相棒も考え無しの男じゃないのは知ってる。あとは私達に任せてくれよ」
提督『頼りにしている。それと』
長門「まだ何か?」
提督『各遊撃艦隊も抜錨して追従している。彼女らには周辺の露払いと適宜で支援を任せている。上手く連携を取ってくれ』
長門「了解だ……そろそろ当該海域だ。切るぞ」

————

提督「ふう……」ギシッ
大淀「……これだけ艦隊を分けて、更に用意のある方は全員改二艤装を装備しています。ご心配には及ばないかと」
提督「ああ……まあ、そうだな」
大淀「今は、雑務は大淀に万事お任せいただいて構いませんので」
提督「……すまないな」

————

長門「……全体止まれ」
古鷹「いましたか……?」
加賀「……あれね」

レ級「……」

大井「単艦……?」
北上「や、他にも隠れてるらしいからねー……まあ、うちらはあいつに集中しろってさ」
武蔵「……待っていても始まらないぞ」スウウ
武蔵「おいっ! 戦艦レ級よ! その面見せて、私達と戦え!!」

レ級「……!」クルッ
レ級「来タァ……」ヘラッ

長門「ッ!」ゾクッ
武蔵「むう……凄まじい覇気だぜ、これは」ビリビリ
長門「提督、提督」
提督『いたか』ザザッ
長門「ああ、相手もこちらに気が付いている。まもなく戦闘に突入する」

レ級「出テオイデ」パチンッ
ワラワラ

長門「……敵艦隊もお出ましだ」
提督『遊撃艦隊! 配置につけ!』
天龍「あいつをこの手で叩き斬ってやりたいとこだが……適材適所ってやつだな」ザッ
大鳳「精一杯、守り抜くわ」ザッ
由良「決して手出しはさせません!」ザッ
長門「うむ……用意は充分だな」
長門「各艦隊、戦闘始め!!」

————

北上「大井っち、まず開幕雷撃行っとくよ」バシュッ
大井「はいっ!」バシュッ
レ級「アハハ……」フラフラ
大井「避けない……?」
ドゴォォォン
古鷹「決ま……って、ませんでしたか」
レ級「ヤット遊ブ気ニナッタンダァ……」ヌッ
大井「な……ほぼ無傷……?」
北上「大井っち、切り替えて! 次発装填して次に備えるよ!」
大井「は、はい!」
加賀「避ければ良かったものを、わざわざ受けたのね」
加賀「足を止めてたら、爆撃のいい的よ」
ヒュルルルル……
ドゴォォォン
レ級「小賢シイネエッ!」ドォンッ
加賀「ぐっ!?」
古鷹「加賀さん!」
加賀「大丈夫、小破!」
レ級「全ク、痒イナア……」ポリポリ
長門「いつまでもそんな顔が出来ると思うな」
武蔵「今に沈めてやるぜ!」
古鷹「皆のためにも!」
長門「一斉射、始めッ!」ドォォォォン

————

龍田「天龍ちゃん、改二様になってるわね」ヒュンッ
天龍「ああ、刀は少し慣れねえが……前より強くなった気がするぜ」ギィンッ
龍田「私達の奥の手だものね」ヒュンヒュンヒュン
陽炎「不知火! カバー!」
不知火「了解です」サッ
バゴォォンッ

————

大鳳「まだ……戦線を維持して! レ級の戦場に近付けないように!」
阿武隈「うう……数が多いですっ!」ドォンッ
磯風「相手空母も相当の数だな。全て墜とすのは骨が折れるぞ」
浜風「ええ、でも、二人ならきっとできますよ」

————

由良「負ける訳にはいかない! しっかり戦って!」
白露「妹の上司の前で、恥ずかしいとこは見せらんないよね!」
秋月「秋月が全て墜としてみせます!」
龍驤「そろそろレ級の方に支援を……んお、しばらく見なかったら……あれ、ちょっちやばいんとちゃう?」

————

長門「はあ……はあ……」ボロッ
武蔵「ふふ……長門よ、まだまだこんなものではないだろう?」ボロッ
長門「ああ、こんな所で膝をついてはビッグセブンの名折れだからな」
古鷹「もうダメです! お二人共大破してるじゃないですか!」
武蔵「お前も中破してるじゃないか。冗談が効いてるな」
古鷹「私は本気で……ああもう!」
古鷹「あの人達は……?」チラ
レ級「楽シイナア! ホラ、楽シイデショ?」ドォンドォン
北上「ふー……ふー……ずっと付け狙ってきちゃって……疲れるじゃん」
北上「あっ……」ガクンッ
レ級「ソコダッ!」ドォンッ
北上「嘘、やば……」
大井「北上さぁぁぁぁぁん!!」サッ
北上「……え?」
ドゴォォォン
北上「大井っち!!」
大井「北上さん……ああ、無事ですね……良かったです」
加賀「まずいわね。本格的に退がるわよ」
加賀「提督」
提督『加賀か。撤退か?』
加賀「ええ。大破艦多数で、これ以上の戦闘は危険。第二艦隊と交代するわ」
提督『了解した。第二艦隊はそちらに向かっている』
加賀「助かるわ……撤退!」
古鷹「行きますよ、二人共!」
武蔵「仕方無いか……」
長門「沈んでしまっては元も子も無いからな」
北上「大井っち……行くよ」
大井「すいません、ご迷惑を……」
レ級「行カセルカアッ!」
龍驤「させへんで! 艦載機の皆、お仕事お仕事!」

————

提督「……予想より保ったと言ったら、不謹慎だろうか」
大淀「いえ、彼女らの奮戦は時間に関わらず称えられるべきかと」
提督「ああ、そうだな……お陰で勝利に近付いた」
提督「早ければ次で決着が着くかもしれない」

————

Re: 提督「艦娘達との日常」【艦これSS】 ( No.121 )
日時: 2018/12/18 22:15
名前: エボルト (ID: s9PJfNZh)

【刈り取るもの】

大淀「……今の所、どちらが優勢でしょう?」
提督「一概には言えん。しかし」
提督「奴は最初に北上と大井の魚雷を避けずに受け止めた。自分の力を誇示するためか……理由は分からんが、奴は北上と大井を甘く見過ぎだ。一見ヘラヘラしているが、ダメージは確実に入っている」
提督「その貯金をどう活かすかが、次の鍵だ」

————

山城「もうそろそろ奴のいる海域よ。気を引き締めて」
時雨「うん……大丈夫さ。行くよ、夕立」
夕立「気を付けるっぽい」
神通「どれだけ気を付けていても足りないくらいです。まずは生き残ることを先決に行動しましょう」
赤城「油断も慢心も、しませんよ」
扶桑「提督」
提督『聞こえるか。先の戦闘の結果は知っていると思うが、決して奴は無傷な訳ではない。大なり小なり手傷は負っているはずだ』
扶桑「ええ、気が楽になります」
提督『周辺の艦隊も遊撃艦隊が抑えている。余裕があれば支援もしてくれると思うが、あまりあてにしない方がいい。なるべく自分達で完結してくれ。撤退も逐一俺の指示を仰がなくていい』
扶桑「……聞こえた? 危なくなったら、逐一撤退しましょうね」
神通「そうならないのが理想ですが……そうも行きませんね」
山城「見えてきた……あいつよ」
時雨「……!」

————

夕立「見た感じ、傷は負ってないっぽい……」
時雨「北上さんと大井さんの魚雷を喰らったんだ。目には見えなくても、きっとダメージは入ってる」

レ級「オカワリ、カァ……」クルッ

山城「来る!」
赤城「あいつは規格外です! ゆめゆめ気を付けて!」パシュッ
ヒュルルルル
神通「時雨さん! 夕立さん! 爆撃が終わったら肉薄して三方から攻撃を加えます!」
時雨「うん!」
夕立「ぽい!」
ドゴォォォン
レ級「痛ッタ」
神通「今です!」
扶桑「山城……大丈夫?」
山城「はい……大丈夫です、ここで仕留める勢いで」
山城「てーっ!!」ドォォォォン

————

提督「それぞれが役目を果たし効果的に攻めているな……まさに戦闘のお手本、レ級に通用すればいいが」
大淀「少し様子を聞いてみましょう」
提督「扶桑」
扶桑『はい』ザザッ
提督「レ級の様子は今の所どうだ?」
扶桑『攻撃は当たっています。後隙を狙われることもたまにありますがさしたる被害ではなく……拍子抜け、と言ってもいいのでしょうか』
提督「舐められてるだけかもしれん。再三になると思うが油断だけはするな。奴相手は何が起こるか分からない」
扶桑『はい、気を付けます』

————

由良「夕立ちゃん……大丈夫かしら」チラ
白露「大丈夫、そんな柔な妹じゃないって!」
龍驤「秋月、赤城だけじゃあれはちとキツい! レ級の艦載機ちょっち墜としてや!」
秋月「はいっ! 墜とします!」バババ
由良「……あっ!?」

————

夕立「喰らうっぽい!」バゴォォンッ
レ級「オット」ヒョイ
夕立「避けられた……」
レ級「チョットサァ、足下見タ方ガ良インジャナイノ? 金髪チャンヨ」
夕立「足下……?」
ザザザザ
夕立「……魚雷!? いつの間に!?」バッ
夕立「間に合わないっぽい……!?」サアッ
時雨「夕立ッ!!」
ドンッ

夕立「……え?」
ドォォォォン
夕立「し、時雨!? 時雨!!」モクモク
夕立「大丈……夫……」

時雨「」グッタリ
夕立「時雨!!」
夕立「やだ……やだやだ、起きて! 時雨!! 時雨!!」ユサユサ
夕立「あ、ああ……ゆ、夕立が……夕立が避けてれば……」
夕立「やだぁ……こんなのやだよ……時雨ぇ……」ポロポロ

————

由良「……!?」
白露「えぇっ、ちょっとヤバいよ……」
龍驤「ここは大丈夫や、心配すんな! 行ったれ!」
由良「ありがとうございます!」
白露「待ってて、二人共……」

————

山城「……!」
扶桑「山し……」
山城「何してくれてんだてめえええええ!!」ドゴォォォン
レ級「ハア!?」
ドォォォォン
山城「よくも時雨を……」
モクモク
レ級「イヤイヤ、アノ娘ガ勝手ニ割リ込ンダンデショウガ……」ヌッ
山城「関係ないわね。ええ、私は今ちょっと怒ってるのよ」
レ級「フウン……ソレハソウト、今ノハ結構痛カッタヨ」
レ級「ヤットココカラガ本番サ、楽シマセテクレルヨネエ?」
山城「ええ、たっぷりとお楽しみいただくわ……!!」ギリッ

————

由良「夕立ちゃん!」ザッ
夕立「う……ひっく……由良?」
由良「落ち着いて……大丈夫よ」ナデナデ
夕立「でも……でも、時雨が……!」
由良「大丈夫、きっと大丈夫よ」
神通「すいません、由良さん……」ザッ
由良「神通さん……撤退ですか?」
神通「はい、この二人を連れて」
白露「そういうことなら、いっちばん上のお姉ちゃんにたまに頼ってもいいんじゃない?」ザッ
夕立「白露……」
白露「夕立」
夕立「な、何?」
白露「時雨のこと、頼んだよ」
夕立「……! ……う、うん……!」ブワッ
神通「提督。時雨さんと夕立さんを連れて撤退します」
提督『了解だ。こちらには明石をスタンバイさせておく』
神通「助かります。では後程」
神通「……さあ、行きますよ」
由良「後のことはご心配無く。それでは」

————

提督「時雨……重傷でないことを祈るばかりだ」
大淀「レ級の魚雷をもろに喰らってしまいましたから……心配ですね」
提督「明石は?」
大淀「すでに準備できているとのことです」
提督「そうか……了解だ」
山城『……提督』ザザッ
提督「! 山城か、どうした?」
山城『そろそろ……限界。時雨は……はあ……もう、行った?』
提督「ああ、速度からして恐らく既に安全圏だ。そっちの被害は?」
山城『私と……扶桑姉様。それに……はあ……赤城が……全員、大破ね』
大淀「! 第三艦隊! すぐに!」
提督「……レ級は?」
山城『見た感じ……中破相当、かしら……。あのまま殴り合ってたら、死んでたわ……』
提督「無理をするな、退がれ」
山城『ええ……そうするわ。まだまだ、ほっとけない人がいるもの……』プツッ
大淀「第三艦隊は、向かわせました」
提督「……陽が傾き始めている。半夜戦で開始することになるだろう」
大淀「倒しきれることを……祈るしかありませんね」

————

レ級「ハハ、ハハハ……! 痛イナア、アノ艦娘……!」
レ級「イイ……楽シイ……楽シイ! モット! モットアタシヲ楽シマセテクレヨォ!」

————

Re: 提督「艦娘達との日常」【艦これSS】 ( No.122 )
日時: 2018/12/19 22:18
名前: エボルト (ID: s9PJfNZh)

【破戒】

伊勢「私達が最後……これで決着を着けなきゃ」
江風「時雨の姉貴の仇……ぜってー倒してやンよ」
川内「だんだんと暗くなってきてるね……最終決戦が夜かあ、いいね」
木曾「姉さん達の雪辱もいっぺんに晴らしてやるまでさ」
摩耶「ふうん、夜戦になるかあ。鳥海、具合はどうだ?」
鳥海「上々よ。本当の力で存分に戦うまでね」
伊勢「……士気は充分、って感じかな」
提督『伊勢。どうだ、艤装の調子は』ザザッ
伊勢「あ、提督。まだちょっと違和感あるけど、だいぶ慣れた。今まで以上に働けると思う」
提督『そいつはいいな。重圧をかける訳ではないが、お前達がやられてしまうともう後が無い。気を引き締めて臨んでくれ』
伊勢「うん……分かってる」

————

鳥海「……いました! あれです!」
摩耶「あいつか、あの野郎……」

レ級「フフ……アハハハ! 懲リナイネ、ソンナニアタシト遊ビタイノカナア?」

江風「ッ!」ダッ
川内「まぁ落ち着きなって江風」ガシッ
江風「川内さん! でも、あいつが目の前に!」
川内「いい? さっき提督も言ってたけど、私達がここで倒れたらもう後が無いの。そして江風はその私達の戦力の一人。特攻させる訳にはいかないんだ」
江風「……でも……」
川内「……そりゃ、私だって神通が世話になってるからね。一緒にたっぷりお返ししてやろ?」ニコッ
江風「……! 分かりました!」
木曾「流石だな、川内。普段からそうなら文句無しなんだがなあ」
川内「そういうのは神通の仕事だって。私は夜戦のことだけ考えてたいの」
木曾「ハハ、お前らしい……さて、敵さんは準備万端のようだな」
伊勢「来るよ!」

————

伊勢「まず……艦載機発艦! 飛ばせる内に!」パシュッ
ヒュルルルル
レ級「流石ニモウ、当タッテヤンナイヨ」ヒョイ
レ級「ソシテコイツハ……オ返シサ!」ドドドド
伊勢「艦載機……! あんなに大量に……」
摩耶「あたしらの出番みたいだな!」
鳥海「間もなく日が暮れます。伊勢さんと同じく、飛ばせる内に飛ばすという魂胆でしょう」
摩耶「つまりだ! ここを凌げば、余計な邪魔は入らねえ! 行くぜ!」バゴォォンッ
ドォォォォン
レ級「……アッレー、結構墜トサレチャッタ。チェッ」
木曾「余所見とは余裕だな」ザッ
レ級「……! 囲マレタカ」
川内「ま、囲んでるのは私達だけじゃないんだけどね」
レ級「何ヲ……マサカ!」
江風「喰らえ! 三人分の魚雷だぜ!」
ドゴォォォン
鳥海「凄い……!」
摩耶「ありゃやったか?」

レ級「ゲホッ、ゴホッ、ハア……痛ッタイナア、モウ……」

伊勢「……! あれは……大破してる!?」
提督『何、大破だと!?』ザザッ
伊勢「そう、レ級が!」
提督『よくやった! ここからはもう夜戦になる、アドバンテージはあるが油断するなよ』

レ級「ハハァ……チョ〜ット、怒ッチャッタカモヨ?」

————

江風「はあ……はあ……」ボロッ
川内「夜戦だってのに……ここまで追い込まれるとはね……」ボロッ
木曾「まだこんな力があるとは……敵ながら天晴れだ」ボロッ
江風「う……」フラッ
川内「江風!」ガシッ
江風「あ……すいません、川内さん……」
川内「いや……大丈夫、だけど……」チラ

レ級「ハハハハハハ!! 沈メ! 沈メ艦娘!」ドドドド
摩耶「うぐぅ……」ボロッ
鳥海「限界、しかし撤退する訳には……」ボロッ
伊勢「当たれっ!」ドォォォォン
レ級「当タルカヨォ、五月蝿イナア!」ドォォォォン
伊勢「がはっ!?」

木曾「まずい……このままでは……」
川内「全滅……?」ボソッ
江風「川内……さん」
川内「江風、どうかした?」
江風「味方が……」

————

ゴーヤ「効果的にブチ込むでち!」バシュッ
イムヤ「お願い、当たって!」バシュッ
イク「沈めたらお手柄なのね!」バシュッ
ハチ「Feuer!」バシュッ
しおい「行っけー!」バシュッ
ろー「お役に立てたら、嬉しいですって……!」バシュッ

レ級「潜水艦!? 小賢シイ……」
レ級「コノ程度ノ魚雷、アタシガ全テ撃チ落トシテ……」
ドゴォォォン
レ級「グワァッ!?」

ゴーヤ「この数の魚雷、全部捌ける奴なんてこの世にいないでち」

レ級「ケッ! アタシハ爆雷モ使エルッテ知ラナイノカナア!?」ドドドド

ゴーヤ「て、撤収! 撤収でち!」
ろー「ここは逃げますって!」

————

伊勢「くそ……あと、あと一発でもいい、入れば……」
川内「倒せる気がするのに……!」
木曾「我々もとうの昔に限界……江風に至っては動けるかも怪しい」
江風「はは……すいません……」
鳥海「謝らなくていいの……でも実際問題、とどめを刺せないわね……」
摩耶「機銃弾なんかじゃねえ……魚雷か、砲弾か……でも、もう体が動かねえ……疲れたぁ」
伊勢「……! あれって」

提督「……!」ブロロロ

木曾「あいつ、何で!?」
川内「何そのボート!? 何で指揮官が前線に出てるのさ!?」
江風「提……督……?」
鳥海「し……司令官さん! どういうつもりですか……!?」

提督「このままじゃあお前達が危ない。後はとどめだけだろう? ……お前達の命の方が、よっぽど重いさ」

摩耶「馬鹿野郎! だからってこんなとこ来んじゃねえ……っ!」
伊勢「提督……!」

提督「……終わりだ、レ級」ガチャン
レ級「ハア……ソンナオモチャデ、アタシハ倒セナイヨ」
提督「こいつは深海棲艦にも効く。普段なら豆鉄砲だが、今のお前には充分だ」
レ級「ジャアサ……サッサトトドメ刺シタラ? アンマリ駄弁ッテルモンダカラ、退屈デ撃ッチャッタヨ」
提督「……撃った、だと?」
レ級「アンタガ死ンダラ、艦娘ハドンナ反応スルノカネエ……ネエ、『提督』サンヨ」
レ級「ア、シ、モ、ト」
提督「なっ……」
ドゴォォォン

————

天龍「!? やばい、あいつが!」
龍田「ああ、提督……生きててね……!」

————

大鳳「そんな……こんなことが」
磯風「誰か救助に向かっている者はいないのか!?」

————

龍驤「あの阿呆……! 命張るタイミング間違えてるっちゅーの!」
白露「提督……嘘……」

————

川内「お前!! よくも!!」ドゴォッ
木曾「不思議だなぁ、今だけはよく体が動くんだ……なぁ!? おい!!」ザクッ
鳥海「司令官さんの仇!! ここで!!」
摩耶「お、おい、こいつ……」
レ級「ヘヘ……」ドドドド
木曾「艦載機……? 最期の悪あがきか」
伊勢「違う……あれ、夜間攻撃機だ!」
摩耶「やっぱりそうだ……おい、飛んでったの鎮守府の方向だぞ!」
レ級「アハハ……ハ……マサカ殴ラレルトハ思ッテナカッタヨ……イヤイヤ、結構楽シカッタヨ……」ズブズブ

————

金剛「来ましたネ……全砲門、fire!!」ドォォォォン
比叡「気合い! 入れて! 守ります!」ドォォォォン
榛名「榛名、全力で参ります!」ドォォォォン
霧島「距離、速度、よし! 全門斉射!」ドォォォォン

大和「提督の言った通りになりましたね……やっぱり、私が控えていて正解でした」ガチャン
大和「三式弾装填! 照準よし!」
大和「全主砲、薙ぎ払えッ!!」ドゴォォォン

————

天龍「おい……おい……提督!」
龍田「大丈夫……船は炎上してたけど、命に関わる傷はないみたい」
天龍「ったく、気い失いやがって……おい、誰が号令かけんだよ」
大淀『こちら大淀です。皆さん、聞こえますか』
大淀『ただいま鎮守府に夜間攻撃機の襲撃がありましたが、大和さんらの奮戦により全機撃墜、鎮守府への被害はありません』
大淀『また、周囲に敵影は確認されていませんが、最後まで気を引き締めて鎮守府まで帰ってきてください。特に提督は大事に守りながら帰投してください』
大淀『以上です。皆さん、お疲れ様でした』

————

『レ級及び海域周辺の掃討作戦 作戦結果
レ級:討伐 周辺海域殲滅率:98%

被害(被害を受けた者のみ記載)
第一艦隊:長門[大破] 武蔵[大破] 加賀[小破] 古鷹[中破] 北上[小破未満] 大井[大破]
第二艦隊:扶桑[大破] 山城[大破] 赤城[大破] 神通[小破未満] 時雨[大破意識不明] 夕立[中破]
第三艦隊:伊勢[大破] 摩耶[中破] 鳥海[中破] 川内[中破] 木曾[大破] 江風[大破]

この報告書への提督の押印を以て、本作戦を完全に終結する。
作成者:大淀』

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Re: 提督「艦娘達との日常」【艦これSS】 ( No.123 )
日時: 2018/12/20 21:18
名前: エボルト (ID: s9PJfNZh)

【慈雨】

時雨「夕立ッ!!」
間に合わない。ほとんど無我夢中だった。
夕立を突き飛ばして射線から逃がし、代わりに僕の体は硬直する。
怖い、だなんて思ったのも一瞬。その時、僕の瞳に映っていたほんの僅かな恐怖を、夕立は感じ取ってしまったかな。
強気な紅い眼を珍しく揺らしながら、呆気に取られて僕を見つめる様子をよく覚えている。
いずれにせよ、その感情はすぐに痛みと苦しみに塗り替えられて、僕は思わず意識を手放してしまったわけなんだけど。

————

時雨「う……ん……」
ここはどこだろう。
眼に映ったのは見覚えのある天井。
レ級の魚雷から夕立を庇った所までは覚えてる。嫌に鮮明に思い出してしまって、体の端々が痛み始める。
時雨「全部……終わった、のかな」
ズキズキと這いずり回る痛みと、自分の置かれた環境が僕の考えを補強する。
夕立は無事だろうか? どれほど眠っていたんだろうか? 他の皆は……?
言いようもない不安に駆られて辺りを見回しても、僕以外に誰もいない空間しか眼には入らない。
動き出そうにも、未だに体の痛みが抜けない。僕は毛布を握り締めて、束の間の孤独と痛みに耐えることしかできなかった。

————

山城「時雨……」
それからどれくらい経った頃だろう、山城が入ってきたのは。
俯き加減に入室した山城は、僕の姿を見てしばし言葉を失った後、ようやく僕の名前を発した。
時雨「うん」
気の利いた言葉なんて、僕にも出せるはずがない。
だから僕は、山城に対して頷き返すことしかできなかった。
変な受け答えだとは思う。でも、それで僕が思ってることが少しでも山城に伝わってくれたら、なんて思ってたかもしれない。
山城「時雨……っ!」
駆け寄ってきた山城にいきなり抱き締められた。
山城は立っていて、僕はベッドの上だから、結構無理な姿勢での抱擁だった。でも山城の抱き締め方は、それを感じさせないような優しいものだった。
近くでよく見ると、山城も所々怪我をしていた。
山城は気にする様子も無く、ただ僕を抱き締めながら、安堵感に浸っているようだった。

————

夕立「時雨ぇっ!!」
山城に呼ばれて入ってきた夕立は既に顔をくしゃくしゃにしていた。
そして躊躇わず僕の胸に飛び込むと、一層激しく泣き出した。
夕立「時雨……ごめん……ごめん、ひっく、夕立のせいで……おっ、起きたら、謝るって、その」
呂律が回らず、つっかかりながら喋る夕立の頭に僕はそっと手を置き、
時雨「いいんだよ、僕がやりたくてやったことなんだから。夕立が無事で良かった」
最後の言葉をしっかり言い終える前に、山城が割り込んできた。
山城「ああ……あんたは知らないだろうけど、帰投してからずっと気に病んでたのよ。由良が宥めても梨のつぶてだったから、相当みたいね」
時雨「由良さんが……」
由良さんといえば、夕立が姉妹の他に最も信頼している一人だ。
その由良さんの言葉でも届かないなんて……少し悪いことをしたかなと思ってしまう。
山城「勇気ある行動ともとれるし、無謀な行動ともとれるわね。妹の為に命を張るのは構わないけれど、それで哀しむ人がいるってことも忘れないで頂戴」
分かっている。言い訳をするつもりも無い。
そう言おうとして口を開きかけた所に、山城がもう一言付け加えた。
山城「でもね。あなたは必死で妹を助けようとした。誰でもできることじゃない……よくやったわ。あなたは私の誇りよ」
心のどこかで、こんな言葉をかけられるのを望んでいた気がする。
そんなことを自覚した途端、僕が必死に抑えていたものが溢れてくる。
時雨「……怖かった」
山城「ええ」
時雨「でも、助けたかった……」
山城「……頑張ったわね」
時雨「……うん……!」
ああ、こんな風に泣いたのなんていつぶりかな。

————

ふと髪に触れて、結んでいたのがほどけていることに気がついた。
たぶん、魚雷を喰らったときに千切れたのかな。
そして、そのまま側頭部を探る。
あった。
大丈夫。僕は何も失ってない。

————


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