二次創作小説(新・総合)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

繋がる世界と未来の物語
日時: 2025/09/28 21:33
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 ―――これは、"全てを元に戻す"物語。
 それが例え、紡いできた絆が離れる結果となったとしても……。


 どうもです、灯焔です。
 新シリーズ発足です。大変お待たせいたしました。プロットの詳細を決めている間に相当時間がかかってしまいました。
 サクヤ達がどういう運命を辿るのか。この終末の物語を、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
 この作品は版権作品同士の『クロスオーバー』を前提としております。
 また、オリジナルキャラクターも登場します。
 苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。


※物語を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】 >>1
【取り扱いジャンル】 >>2


<目次>

Ep.00【舞い戻れ、新たな異世界】 完結
>>3-7 >>11 >>12-17

Ep.01-1【繋がりの王国】 完結
>>21-25 >>28-33 >>36-37

Ep.01-2【宇宙からの来訪者】 完結
>>39 >>40-48 >>49-53

Ep.02-1【強者どもの邂逅】 完結
>>55-56 >>57-59 >>60-63 >>66-67

Ep.02-2【黒と白と翡翠の車掌】 完結
>>70-73 >>74-76 >>77-78 >>79-81
>>82-85 >>86-89

Ep.03-1【ドルピックタウンにて最高のバカンスを!】 完結
>>112-113 >>114-119 >>122-126 >>127-130

Ep.03-2 【音の街と秘密の音楽祭】 完結
>>137-138 >>139-144 >>145-148

ep.04-1 【天下五剣が集うとき】 完結
>>166 >>167-171 >>172-176

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】
>>178 >>179-180 >>181-183


※サブエピソード※
Ep.01
【新たな世の初日の出】 >>38
【商人の魂百まで】 >>54

Ep.02
【夢の邪神の幸せなお店】 >>68
【襲来!エール団】 >>69
【線路はつづくよどこまでも】 >>90
【記憶はたゆたい 時をいざなう】 >>109-111

Ep.03
【合流!若きポケモン博士】 >>131
【六つの色が揃う時】 >>132
【狭間の世界での出来事】 >>133-134
【翡翠の地からの贈り物】 >>135-136
【繋がりの温泉街】 >>151

Ep.04
【月と超高校級の来訪】 >>177


※エクストラエピソード※
Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 完結
>>91-95 >>96-101 >>102-104 >>107-108

Ep.03-ex【とある本丸の審神者会議】 完結
>>152-154 >>155-160 >>161-163


<コメント返信>
>>8-10 >>18-20 >>26-27 >>34-35
>>64-65
>>105-106
>>120-121
>>149-150
>>164-165


最終更新日 2025/09/28

以上、よろしくお願いいたします。

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.179 )
日時: 2025/09/23 21:59
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 議事堂にも、秋の香りが舞い降りてきた。城下町の木々は色めき、過ごしやすい季節がやってくる。心地よい風が吹き抜ける中で、今日も議事堂ではせかせかと働くラルゴの姿があった。
 彼を取り囲むように小狐丸が何か手伝いはないかと話しており、それを見ている影が2つあった。今剣と厚だった。彼らは以前審神者会合の時にジェシカに邪気により精神汚染を施されており、つい先日まで時の政府による検査を受けていたのである。結果、異常がないと判断され、無事リレイン王国へやってくることができたのであった。


 リレイン王国にやってきた彼らはまず大典太達にお礼と挨拶をしようと町人に彼らがどこにいるか聞いた結果、この議事堂にいると聞きつけ二振一緒にやってきたというわけである。
 ラルゴと小狐丸に"少し待っていればすぐ来てくれる"と言われ、大人しくエントランスにある椅子に座って待っていると、目的の人物が右の通路を通ってやってくるのがわかった。
 彼らは二振に気付いたのち、驚いたように顔を見合わせ二振の元へ近づく。二振も嬉しそうに彼らの元へ駆け寄ったのだった。



「……あんた達、来ていたのか」
「はい。このまちのひとにきいたけっか、ここにおおでんたさんたちがいるときいたのでやってきました!」
「改めて、オレ達を助けてくれてありがとな!」
「礼を言われるようなことは何もしていない。が、無事に助かってよかったな」



 二振――今剣と厚は改めて大典太達に礼を言う。彼らが誰なのかと童子切に問われたため、前田が彼らの紹介を簡単に行った。
 向かって左側にいる天狗のような少年の名は"今剣"。南北朝時代から室町時代に成立した軍記物語"義経記"に登場する伝説の短刀に宿る付喪神である。
 反対に、右側にいる前田、信濃と同じような服を着た黒い髪の少年の名は"厚藤四郎"。短刀の中では鎧通しに分類される短刀であり、彼もまた藤四郎兄弟の一振である。
 前田の紹介と共に、彼らも童子切を見て自己紹介を行った。童子切もそれに合わせ自分の名を告げる。その名を聞いて、二振は首を傾げたのち何かを理解したように大典太に進言した。



「ぼくたちがいなかったあいだにいろいろとあったみたいですね?」
「オレ達が助かってからずいぶん時間が経ってるんだ。色々あってもおかしくないだろ!」
「……間違ってはいない。童子切もあんた達と一緒で、つい最近まで悪神の邪気に襲われていた被害者だ」
「なるほどー。ぼくたちといっしょだったというわけですね!」
「そう、なのかもしれない」
「で、だ。おまえ達はこれからこの国でどうするつもりなんだ」



 童子切の境遇に納得した二振に、鬼丸は"これからどうするつもりなんだ"と彼らに問いかける。鬼丸には、彼らがただ礼を言いに来たのではないと見抜いていたのだ。そんな彼らは彼の問いかけに対し、お互いに顔を見合わせたのち"町長の手伝いをしていこうかと思っている"と言ったのだった。これもラルゴからの提案だったらしく、国に来たはいいがどうするか迷っていた際に小狐丸に声をかけられ、事情を聞いたラルゴに"自分の手伝いをしてほしい"と言われたというのだ。彼のフットワークの軽さにも驚いた彼らだったが、手を差し伸べられたのであれば握らないわけにはいかない、と二つ返事で了承したという。
 その話を聞いた三振は各々反応を見せていた。



「オレ達が手伝うって返したら、町長さんすっごく喜んでくれてたんだぜ!」
「……そうか。町長も助かるだろう。万年"人手不足"と言っていたからな」
「お人好し共め……」



 二振の境遇も決まったということで、穏やかに会話を繰り広げる一同。そんな彼らの元に、ぽよぽよと歩いてくる2つの影を見つけた。
 思わずその方向を見てみると、そこに現れたのはカービィとバンダナワドルディだった。普段はワープスターにて色々な場所に冒険に出かけている彼らがどうしてこんなところに現れたのだろうか。
 珍しい客人だなと思い、思わず声をかける。すると、彼は元気いっぱいに挨拶をしてきたのだった。



「あ~!大包平さんのお友達がいるって本当だったんだね~!こんにちは!」
「こんにちは!お元気そうで何よりですよ!」
「……あぁ。こんにちは。――で、俺達に何か用なのか」



 大包平の名前を聞き、鬼丸はむっとした表情になった。そういえば、彼はごくそつくん繋がりで面白いものが大好きだという困った趣味嗜好をもっていたということを過去に聞いたことがある。そんな彼らのストッパーを務めているのが大包平で、彼のおかげで最近の彼らの活動はなりを潜めているのだという。
 何か用なのか、と声をかけると、カービィはニマっと笑ったのちに"これから一緒に冒険に出かけよう"と誘ってきた。突然の冒険の誘いに、思わず言葉を失う一同。そんな彼らにカービィは不思議そうに首を傾げていた。



「冒険、ですか?」
「うん!ボク達、これから"砂漠の華"を探しに行くんだ!"砂漠の華"はね、砂漠にしか咲かない幻の花と噂されてるんだ~!ボク、その噂がすっごく気になってて、ずっとバンワドと一緒に行きたいって思ってたんだよね!で、咲いてる場所が最近やっと判明してさ!
 どうせならキミ達とも一緒に冒険したいなって思ってここまで来たんだよ!」
「へぇ。"さばくのはな"ですか!おもしろいはなですね!」
「砂漠にしか咲かない花って珍しいよな。気になるぜ!」



 どうやら、カービィは"砂漠の華"という花を見る誘いをしにバンダナワドルディと共にここまでやってきたのだという。突然の申し出に短刀達はその"砂漠の華"が気になっているようで、わくわくした気持ちがあふれ出ているのがわかった。
 ならば、太刀である自分達はどうすればいいのか。今日のラルゴの手伝いは小狐丸や石丸、三日月だけで十分だということはラルゴから聞いている。今日であれば彼らの冒険に付き合うことは可能だった。
 しかし、それを問うてみると鬼丸は首を横に振った。流石目的以外の出来事に首を突っ込みたがらない刀である。



「おまえ達だけで行ってくればいい。おれは興味がない」
「……あんたなぁ。だが、短刀達は行きたがっているぞ」
「ならおまえがついていけばいいだろう。最も、あいつらだけでも大丈夫な気もするがな」
「"砂漠の華"……。僕はどんなものか気になるので行ってみたいです!今剣と厚も一緒に行きませんか?」
「もちろん!ひさしぶりのおでかけです。わくわくしますね~!」
「幻の花、絶対に見つけ出してやるぜ!見つけたら、記念に他の兄弟にも教えてやらねぇとな!」
「とはいっても、この国に他には信濃と博多しかまだいないんですけどね……」
「わたしも、世界がどのようなものになっているか気になる。同行を申し出たい」



 どうやら、カービィの誘いに鬼丸以外には乗り気のようだった。大典太は短刀達が心配なこともあるが、行きたいと言っている童子切が気がかりなのもあった。記憶を失っている以上、フラフラと一振でどこかに行かせるわけにはまだ、いかなかったのである。
 それでも鬼丸は首を縦に振らなかった。目的外への介入を避けているのもそうだが、自分がついていったことが原因で何かトラブルが起きてしまうのを防ぐためでもあった。彼は、自分が"不幸な刀"だと言われているのを気にしていた。
 そんな様子を見守っていたカービィだったが、ふと思い出したように大典太に進言する。それは、鬼丸の"行かない"という心を動かす理由ともなりえるものだった。



「いいのかなぁ?その"砂漠の華"がある場所の近くで刀剣を見かけたって噂を最近聞いたんだけど」
「なぜそれを早く言わない」
「だって!ボクはごくそつくんじゃないし、刀剣に興味はないからね~。そういうのはメタナイトの専門だよ!」
「か、カービィ……。メタナイトは刀じゃなくて剣を使うんだよ~!」
「……まるでおまえは三日月のようだな」
「……だが、これであんたが行く理由もできたな」



 なんと、"砂漠の華"がある場所の近くで刀剣を見かけたのだという。その言葉に、鬼丸は刀剣が絡むのであれば自分の目的のため、行かざるをえなくなると考えたのである。相変わらずな鬼丸の様子に大典太は呆れつつも、この場にいる皆で行けることに喜びを感じていた。
 既に短刀達は行く気満々のようで、"砂漠の華"がどんなものかお互いに予想を立てあっている。



「"さばくのはな"……。すなのおはななんでしょうかね?さわったらすぐにくずれてしまいそうです」
「砂漠に咲く植物ってのは聞いたことあるし、それと似たようなものなんじゃねぇか? 久しぶりに前田と行動できるし、連携していこうな!」
「はい!頑張って"砂漠の華"を見つけましょうね!」



 彼らの和気藹々とした様子を見守りながら、大典太はバンダナワドルディに改めて刀剣の噂について聞いていた。何故カービィではないのかというと、既に彼は全員いくものだと考えを切り替えてワープスターの準備をしに行き、既にこの場にいなかったからである。
 バンダナワドルディはその言葉に少し考えるそぶりを見せ、こう答えた。



「風の噂で聞いたくらいなんですけど……。"砂漠の華"がある場所の付近に、ショッピングモールがあるんです。その地下で夜な夜な実験が行われていて、その中で刀剣を見かけたらしいんですよ」
「……随分とざっくばらんだな。だが、刀剣を見た、か……。もし噂が本当なのであれば回収せねばならんな。刀剣に入り込んだ邪気が悪用されている可能性も無きにしも非ずだからな」
「ボクも刀剣探し、一緒に頑張りますね!」



 バンダナワドルディはその噂も本当のことだと思っているらしく、自分も刀剣探しを頑張ると彼らに言ってのけた。大典太は以前彼の怪力を見ているため、頼もしい助っ人が現れたなと目じりを下げて思ったのだった。
 そんな彼らの様子を見ていた童子切が、ぽつりとこう零す。



「刀剣探しも大事だとは思うが。あの小さいのは"砂漠の華"とやらを探さなくていいのか?」
「も、もちろん"砂漠の華"探しも頑張りますよ!カービィとの約束だもん!」
「餅は餅屋だ。覚えておけ、小さいの」
「……誰かバンダナワドルディと言ってやってくれよ」



 そんなやり取りを続けている中、ワープスターの準備が終わったのかカービィがぽよぽよと音を立てて走ってきた。
 "それじゃ早速出発しよう!"と意気込んだ彼の後ろを短刀達が追いかける。そんな彼らを後ろから三振と1体はゆっくり追いかけるのであった。

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.180 )
日時: 2025/09/25 22:04
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

「それで、どうやってその砂漠まで行くんだ?」



 ふと、厚がそんなことを言った。てっきりワープスターで向かうと思っていた大典太は、カービィが何も準備していないことに驚く。それを聞いた当の本人は、"ちゃんと準備してあるよ!ついてきて"と、一同を街の郊外まで案内するのだった。
 目的の場所まで移動すると、そこにあったのは初めて見る羽のついた船のような物体だった。その前に、カービィより少し大き目の生命体がこちらを見て手を振っている。大典太と鬼丸にはその人物が誰か見当がついているようで、彼の姿をはっきりと捉えた瞬間ため息をついた。



「……あんた」
「チョットチョット!出会い頭にため息ナンテ失礼シチャウナァ!折角ボクのローアに乗せて目的の場所マデ連れて行ってアゲヨウってノニサ!」
「カービィ殿。ワープスターでは向かわないのですか?」
「うん!こんな大人数ワープスターに乗せられないし。だったら、マホロアに頼んでローアに乗せてもらえばいいやって思ってさっき連絡してたんだよ!」



 どうやら、カービィはこの目の前にいる卵のような生命体――"マホロア"に、協力を取り付けていたようである。最初は渋っていた彼だったが、カービィの伝家の宝刀"友達だよね?お願い!"という言葉に負けてしまい、ついつい承諾してしまったのだという。
 つくづくカービィだけには甘い奴だ、とバンダナワドルディも呆れを通り越して真顔になることしかできなかった。



「デ。コレカラ"砂漠の華"ッテ奴を探しに行くんダロ? ボクは忙しいから花探しには一緒に行ってアゲラレナイケド、カービィのオネガイはトモダチとして聞かなくちゃネェ~。仕方ないカラローアで連れてってヤルヨォ!」
「相変わらず上から目線な人ですね……」
「カービィ以外には大体こんな感じなんです、この人。あんまり気にしちゃ駄目ですよ」



 カービィに頼まれたという割にはあまりにも上から目線な彼の言動に、普段穏やかな口調を心掛けている前田も言葉が荒れる。そんな彼をバンダナワドルディが"これが彼の普通だから気にしないで"と宥めていた。
 真顔で見つめられるのに耐えかねたのか、マホロアは"ツベコベ言わずに乗るんダヨォ!"と、ローアの入口を開けて中に入るように催促した。
 素早く全員乗り込むと、ローアはそのまま空中に浮かび、目的地に向かって出発し始めたのだった。



















「マホロア、念のために聞いておくけどどこかから隕石が落ちてきたりとかしないよね?」
「マッサカァ~!ハルバードじゃあるまいし、そんなツマンナイコトが原因でボクのローアが落ちたりシナイヨォ!」
「マホロアのローアじゃないけどね……」



 ローアの中は見た目とは裏腹にかなり広く、大の大人が寝転んでもかなり余裕がある程のスペースがあった。かつてカービィ達と共に冒険していた頃の名残であるチャレンジステージやミニゲーム部屋、コピーお試し部屋も残っている。
 現在ローアを運転しているこの部屋も、マホロアがかなりの魔改造をしたお陰である程度の人数が座って休むことが出来るようになっている。
 "好きなトコで休んでて良いよォ"とマホロアが気だるそうに言ったので、その言葉に甘え一同も到着まではしばしの休憩を貰うことにしたのだった。
 そんな中、今剣がローアの窓から見える景色に大はしゃぎしていた。普段飛び跳ねている印象の彼だが、そんなに空が気に入ったのだろうかとマホロアは運転をしながらじっと見つめていた。



「うわあ。ぼくたちいまそらをとんでいるんですね!すごいすごい!」
「今剣は普段から空を飛んでいそうなものですが……。でも、ここから見る景色も素晴らしいものですね!」



 キラキラとした目でマホロアを見やる今剣の視線に、マホロアは耐えられなくなっていた。カービィのような純粋で光り輝く瞳が彼は大の苦手なのである。しかし、ローアを褒められたことは嬉しかったようで、"当然ダヨネェ"と彼に返しローアの素晴らしいところをぺちゃくちゃといらないことまで話していた。今剣はその話にも興味を示し、マホロアの話を楽しそうに聞いていたのであった。
 そんな彼らの様子を見て、バンダナワドルディがまたジト目でマホロアを見やる。"お調子者だなぁ"と呆れていると、カービィはカラッとした笑顔で"そんなところもマホロアらしいよね!"と言ってのけたのだった。


 ローアが浮かび上がってしばらく経った頃。現在、ローアは海の上を浮かんでいた。太陽に照り付けられて光り輝く海に短刀達が目を輝かせていると、ふと前田は思い出したようにカービィにこう問いかける。



「"砂漠の華"がある砂漠とは、随分と遠い場所にあるのですね」
「うん。だって東の大陸の端っこにあるんだもん!」
「えぇ?!東の大陸?!オレ達そんなところに今向かってんのか?!」



 カービィがさらっと言ってのけたその事実に、短刀達はただ驚いていた。まさか、自分達が東の大陸に向かっているだなんて。しかし、大典太は懐から世界地図のポケット版を取り出し、静かに砂漠の場所を確認する。童子切もどこに向かっているのかを知りたがっていたため、大典太は砂漠方面の場所を指さしながら口を開いた。



「……まぁ、地図上では砂漠方面は東の大陸にしか存在しないからな……」
「そんな離れた場所にまで、刀剣が落ちてしまっている可能性があるのだな」
「あの悪神の元から一気に落ちたんだ。西の大陸だけにあるとは限らないのは当然だろ」
「噂程度だけど、見つかると良いね!キミ達が探している刀剣ってのを、さ」



 自分達を抜いても、100振程度はあの蔵に仕舞ってあった。それが一気に地上へと降り注いだのだ。自分達が普段いる西の大陸だけではなく、東の大陸にもばらまかれている可能性は充分あると鬼丸は推測していた。
 そんな中、カービィは深刻そうな表情を浮かべる彼らに、"刀剣が見つかると良いね"と元気づけたのだった。
 彼らの会話を背景に、ローアは砂漠方面まで飛んで行ったのであった。

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.181 )
日時: 2025/09/26 22:01
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 窓から砂漠が見えてくる。目的地が近づいてきたのだ。短刀達はそのまま窓に張り付いて様子を伺っていると、ふとガタンと機体が揺れる音がした。どうやら目的地に到着したらしい。
 マホロアは休んでいる一同に降りるように告げ、自分もエンジンの確認をした後にローアを後にした。



「ほんとうにさばくですね~。ぼく、さばくなんてはじめてみました!」
「どこに行っても砂ばっかりだなー。本当に"砂漠の華"なんてあるのか?」
「マァ、ココからはミンナが頑張るんダネ!カービィ、また呼んでくれたらボク迎えに来るヨォ!ボクってホラ、忙しいカラネ!」
「うん、ありがとうマホロア!また必要になったら呼ぶねー!」



 そう言ってマホロアはローアの中へと消え、そのまま機体を浮かび上がらせてその場を後にしてしまった。ばいばーい、と笑顔で見送るカービィと短刀達と共に、残りの面子もローアに向かって小さく手を振ったり、各々反応を見せた。
 ローアが見えなくなったと同時に、カービィが全員に向き直る。ここからが今回の本題なのだ。早速"砂漠の華"を探しに行こう、と先導して砂漠の中をひたすら進んでいくのだった。



「ここからちょっと行った先にショッピングモールがあるんだ。刀剣探しも兼ねるならそこから探すのが一番いいよね!」
「……いいのか? あんた達は砂漠に咲いている花を探しに来たんだろう?」
「いーのいーの!屋上とかから砂漠を見渡せば"砂漠の華"も見つかるかもしれないからね!」



 まず、カービィはこの先にあるショッピングモールで探索をしようと皆に提案をした。確かに、刀剣の噂にもある"夜な夜な地下で実験を行っている"という部分は、ショッピングモールの地下で行っている可能性もあると考えれば行く価値もあるだろう。しかし、今回カービィとバンダナワドルディが本来の目的としているのは"砂漠の華"探しである。ショッピングモールに現を抜かしていていいのか、と大典太が問いかけると、彼は"別にいーよ!"とさらっと言ってのけた。
 そのまま砂漠を歩いていると、確かに目の前に寂れたショッピングモールが見える。砂を被っており、遠目からは見えなかったのだ。
 本当に砂に埋もれているのだな、と童子切が真っすぐな感想を漏らす。それに対して、バンダナワドルディは"元々都市があった場所が廃れてしまい、そこと砂漠が混ざり合ってこうなってしまった"と説明をした。


 ショッピングモールに辿り着いた一行は、早速各々の目的を達成するために探索をすることにした。"砂漠の華"に、実験に使われている刀剣――。どちらも見つかることを大典太は切に願った。



「この中に刀剣があるかもしれないのか。さっさと探すぞ」
「おにまるさん、とうけんだけじゃないです。"さばくのはな"さがしもですよ!」
「おれには興味がない。おまえ達だけで探せばいいだろ」
「……そこまでにしておけ。しかし、廃れているとはいえ広いな……」



 かつて都市だった場所に建っていたショッピングモールだったからなのか、かなりの広さを誇っていた。寂れたことによる経年劣化により、所々錆び付いている箇所は見受けられるものの、建物が壊れていないのは流石の技術である。
 この広さを全員で探すとなると、相当時間がかかる。手分けして探した方がいいと大典太が皆に提案すると、それに否を唱える者はいなかった。考えていることは同じだったようである。
 手分けをすると理解したのか、鬼丸はそのままスタスタとひとりで奥に歩き始めてしまった。



「……おい、鬼丸」
「手分けするんだろ。おれはひとりでいい」



 大典太が止めるも、鬼丸はその静止を振り切りひとりでショッピングモールの奥まで消えてしまった。



「い、行っちゃいましたね」
「……仕方のない奴だ。しかし、ここで話していても時間の無駄なのは事実だ。俺達も手分けをして探索に当たろう」
「じゃあボクこっち~!」
「ま、待ってよカービィ~!!」



 鬼丸が進んだ場所とは反対方向を、カービィとバンダナワドルディがぽよぽよと駆けて行った。
 "では僕達は上の階を探索してみますね"と、前田は今剣と厚を引き連れ階段へ向かって歩いて行った。残された大典太と童子切は、まだ誰も探索していない場所を探すかという話しになり、童子切がそれと同時に口を開いた。



「わたし達は、地下を見てみよう。刀剣の噂があったのはそこだろう」
「……そうだな。行ってみよう」



 大典太と童子切は地下を探索することを決め、地下への階段を探すためまた別方向へと歩いて行った。


 ――地下に繋がる階段は思いのほか簡単に見つかり、そこを通り目的の場所へと向かう。大典太も童子切もどちらも口が達者なタイプではないため、当然会話が弾むわけもなく、ただ無言で歩いていく。
 そんな中、童子切がはっとした表情で大典太に問いかけた。それは、大典太にとってはあまりいい話ではなかった。



「わたしには記憶がない。だから、この際教えてほしい。わたし達が昔、どんな刀剣だと呼ばれていたのかを」
「……忘れていた方がいい気もするがな。あんたも本能で分かっているとは思うが――俺達は、霊力が強すぎるがゆえに、時の政府に捨てられた刀だ」
「捨てられた」



 自分のことが分からないからこそ童子切はこのことを聞いたのだろうが、大典太としては童子切にこのことは言いたくなかった。自分達が時の政府に何をされたのか。それが原因で、数珠丸以外の刀剣には人間に対する"負の感情"が生まれてしまったということ。そして――記憶を失う前の童子切は、負の感情が一番影響していたのだろうということ。
 あまりにも童子切が真っすぐ目を向いて聞いてくるので、思わず大典太もぽろりと零してしまう。言ってしまってから、ああしまったと思ってももう遅い。
 大典太から天下五剣の真実を聞いた彼は、少し悲しそうな表情をしながら黙って話を伺っていた。



「……前も言った通り、俺達はクトゥルフによって鍛刀された刀剣だ。それが原因で、ひとりひとりが世界を滅ぼす程の霊力を持っている。それが故に――時の政府は俺達を扱いきれず、政府の動力源とした。
 来る日も来る日も、刀剣男士としての活動はなされないまま。所属が"時の政府"ってだけの強固な檻だ。それだけならまだ良かった。あろうことか、あいつらは俺達を"失敗作"とみなした。制御しきれなくなって、俺達を"時の狭間"に捨てたんだ」
「そんな、ことが」
「……あったんだ。ああ、話すんじゃなかった。今のあんたはまっさらになっている状態なんだ。外の光だけを見て、悪いものには目を伏せた方が心も痛まない気がするがな」
「…………」



 大典太の話したことに心当たりはなかった。それもそのはず、その記憶すら邪気に呑まれ、あのカンテラに吸い込まれ消えていったのだから。童子切は大典太の口から零れる事実を、どんな顔をして受け止めればいいのか分からなかった。
 しかし、過去の自分に起きたことであるのは事実である。そこから目を背けてはいけないというのは、記憶がなくとも本能で分かった。



「……それでも。目を塞ぎたくなるような事実でも。わたしは、今おまえからそれを聞けて良かったと思っている。本能でおまえ達を仲間だと思えているのなら、楽しい気持ちだけではない。悲しい気持ちや、つらい気持ちも分け合ってきたはずなのだろう。
 記憶が無くなったからと、それを忘れて良い、背を向けて良い理由にはならないと、わたしは思う」
「……そうか。あんたがそう思うのであれば、それでいいよ」



 その後会話は一区切りし、コツコツとした靴音の感触が変わったような気がした頃だった。
 目の前に、鬼丸がいるのが分かった。自分達とは別行動を取っていたはずだが、何故地下にいるのだろう。話しかけようとすると、"進むな"と彼に静止を求められた。



「……何かあったのか」
「この先。何者かの気配がする。それに――向こうで何かやっているようだな」
「隠れて様子を伺った方がいい気がする」



 鬼丸が言うに、この先で何かやっている気配がするとのことだった。もしかしたら、噂は本当で、このショッピングモールの地下で何かをしているのかもしれないという思いが三振の脳内を巡る。
 確かめるべく、陰になりそうな場所に移動し、身を潜めて何が起きているかの様子を見ることにしたのだった。

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.182 )
日時: 2025/09/27 21:53
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 そのまま隠れて様子を伺っていると、奥から誰かが引きずられている音が聞こえてきた。思わず身を乗り出すと、そこにいたのは見覚えのある顔ぶれだった。
 研究員のような人物が縄を持って、縛っている3人の男性を引きずっているのが見て取れた。大典太と鬼丸には、その人物が何者なのかが見当がついていた。3人の男性は、全員似たような顔つきで、青、緑、黄色のカーディガンを身に着けている。
 男性は口々に研究員に向かって何かを喋っているが、研究員はそれを聞き入れることはなく無言で彼らを引きずっている。



「待ってくれ!待ってくれ!オレ達何か悪いことしたか?!」
「僕達砂漠の中を彷徨っていただけだよね? なんでこんなことに?!こんなことってないよぉ~~~~~!!!」
「ぼく達これからどうなるのかな!あはは~!」



 引きずられている面々を見て、大典太は焦った表情を見せた。その人物の兄弟を、更には本人のことすら知っていたからである。何故彼らがこんなところに、という思いと共に、早く助けなければと鞘に手が伸びる。しかし、鬼丸に止められた。今ここで刀を抜いてしまえば、隠れている意味がない、と。
 焦る気持ちが強まる大典太に、童子切も鬼丸と考えは一緒だということを伝える。その声を聞き我に返った大典太は、一度気持ちを落ち着けることに集中した。



「……すまん。まさかこんなところにいるとは思わなくてな」
「助けたい気持ちはわかるが、おれ達が隠れているのがバレたら意味がないだろ。今は我慢しろ、大典太」
「知り合い、なのか」
「あぁ。知り合いどころか……俺はあいつらと一緒に働いていたことがあるんでな」



 童子切が不思議そうに首を傾げているため、大典太は3人が何者なのかを童子切に説明をした。
 青いカーディガンを着ているのが"松野カラ松"、緑のカーディガンを着ているのが"松野チョロ松"、そして黄色いカーディガンを着ているのが"松野十四松"。全員、松野家の六つ子だった。
 六つ子と聞き、童子切はカフェで働いている紫と桃色の双子を思い出していた。彼らのことを話すと、大典太は静かに頷き、彼らと引きずられている3人は兄弟、あともう1人も合わせて6人兄弟だということを答えた。



「藤四郎兄弟、のようなものか」
「……いや、違う……のか?」
「何故そこで悩む。そんなことはどうでもいい、このままだと見失うぞ」



 鬼丸の言葉で再び我に返った大典太と童子切は、引きずられている3人と前にいる研究員の姿を引き続き見守ることにした。研究員に見つからないように、柱を利用しながら隠れつつ進む。そんなことを数回繰り返していると、縄を持った人物は扉の前に辿り着き、カードキーのようなものを扉にかざし、向こうへ消えていった。
 目的の人物を入れて役目を終えたのか、扉はピピッ、という音を最後に閉まってしまった。



「ここから先は行けないらしいな」
「……だが。あいつらが引きずられていった以上、この先に何かがあるのは間違いないな」
「壊すか?」
「いや、壊さない方がいい。まずは……他の奴らとの合流を急いだほうがいいと思う」



 扉を壊すか、という鬼丸の言葉に一旦納得しかけるも、童子切がそれに待ったをかけた。まずは一緒に来た全員を集め直してから、改めてここに来た方がいいと提案したのだ。
 急いで彼らを救わねば何かに巻き込まれるのは承知の上だったが、太刀である以上偵察は得意な者に任せた方がいいと彼は判断したのだ。大典太も鬼丸もそれに静かに頷き、まずはカービィ達、前田達との合流を急ぐことにしたのだった。



「……太刀のおれ達ではどうしようもないこともあるからな。あいつらの手を借りるしかないか」
「だったらさっさと行くぞ。時間が惜しい」



 そう言って、その場を後にする三振。
 そんな彼らの姿を、監視カメラで捉えていた者がいた。



















『まさかこんなところで"あの"天下五剣を見つけることができるとはのう。ワシが全部捕まえて、全部ワシのものにしてしまえばアンラ様の手を煩わせなくても魔物が造り出せるぞ……!
 ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!!!』



 監視カメラから彼らの姿を見ていた"彼"は、不敵に笑みを浮かべるのだった。

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.183 )
日時: 2025/09/28 21:32
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 一方。3階で探索を続けていた前田、厚、今剣だったが、目ぼしい手がかりも見つからず途方に暮れていた。そもそもが噂程度のものを探している以上簡単に見つからないことは分かっていたが、こんなに探しても見つからないものかと肩をがっくりと落とす。やはり建物の中には存在せず、外にしか咲かない花なのだろうか。"砂漠の華"というものは。
 カービィやバンダナワドルディとも連絡を取り合いつつお互いに怪しい場所を捜索するも、植物らしきものは1つも見つけられなかった。



「うーん。"さばくのはな"、みつかりませんねぇ」
「"砂漠の華"というくらいなのです。やはり外にしか咲いていない花なのでしょうか? それともやはり、噂程度の話なので幻の花、というのもあり得ますよね」
「幻を見つけるのがいいんじゃねぇか!さ、弱音吐いてないで頑張って探そうぜ!」



 厚の鼓舞を受け、前田と今剣も今一度"砂漠の華"探しを頑張ろうとお互いに頷いた。
 気を取り直して探索を再開した矢先、今剣が遠くで咆哮のようなものが耳に入ったとふたりに言う。ショッピングモールの中には自分達しかいないはずだが、どうして咆哮のようなものが響いてくるのだろう。
 どんな咆哮だったか今剣に問いかけると、かれは"うーん"と唸りつつもこう答えた。



「いま、"がおー"というこえがむこうからきこえたきがしました」
「がおー? 僕達の他に誰かいるということでしょうか?」
「いやいや!そんなまさか」



 しかし、今剣曰くその"がおー"という咆哮は近付いているとのこと。前田と厚も耳を凝らしショッピングモールの音を集中して聞いてみる。すると、確かに奥まったところから熊のような咆哮がこちらに近付いてきているのが分かった。
 音の方向を見てみると――。














『グオォオォオォオォ!!!!!』
「――えいやっ!!」
「とぉー!!」



 カービィとバンダナワドルディが、四足歩行の魔物と戦っている姿が見えた。カービィはどこかからソードをコピーしており、バンダナワドルディは自前の槍で応戦している。
 彼らの連携のおかげで魔物の身体には所々に傷がついている。しかし、自分達も加勢せねばならないと本能で察した。なぜなら、彼らは"刀"だからである。


 短刀達がカービィとバンダナワドルディの元へ辿り着くと、彼は後ろにやってきた三振に気付き、攻撃を弾き飛ばしながら"子供達は下がってて!"と言った。どうやら、彼は短刀達のことを自分より年下だと思っているらしい。
 それに納得いかなかったのか、厚が"自分達は子供ではない"と反論をする。そんな彼を前田が宥めつつ、三振も戦闘態勢へと入る。この調子であれば、2人と三振で協力すればこの魔物を倒すことが出来そうだ。



「カービィ殿!バンダナ殿!僕達も加勢します!」
「う、うん。分かった!でも怪我しないでくださいねーっ!」



 その間にもカービィとバンダナワドルディの猛攻は続き、魔物の体力もかなり消耗していた。このまま三振が加勢すれば、倒しきることが出来ると判断した前田は、今剣と厚に合図で一斉にとびかかることを提案した。
 カービィもその声を聞いたのか、ソードを振り回しながらうんうんと頷いている。
 タイミングを見計らい、2人の攻撃で相手が怯んだ隙を前田は見逃さなかった。ありったけの声で、突撃することを叫ぶ。



「行きますよ!!突撃ーー!!」



 前田の合図を皮切りに、三振が魔物を倒しきらんと飛び掛かる。短刀の一撃は深く刺さり、魔物はまた咆哮を上げた。そのまま2人も総攻撃を畳みかける。すると、魔物の体力が底を尽きたのかうめき声を上げて倒れてしまった。
 一同はそれを確認した後、各々武器を仕舞い倒れた魔物の近くまで移動した。それと同時に、魔物から紫色の靄が出始め、そこから人が現れ出でたのだった。



「これって……!」
「心当たりあんのか?」
「はい。以前人が魔物に変化するのを見たことがあります!」



 そう。前田は魔物が人に変わる現象に心当たりがあった。審神者会合に参加した際、ジェシカと衝突した審神者の男性が魔物に変えられてしまったことと事象があまりにも似すぎていたのである。もしかしたら、この魔物も審神者の男性と同じように、魔物に変えられてしまった一般人なのではないかという可能性が前田の脳内を巡った。
 そんな矢先、別の方向から走ってくる足音が聞こえてきた。地下から移動してきた大典太達のものだった。
 大典太は倒れている人を発見するなり"何があった"と焦った表情で聞いてくる。前田がこれまでに起こったことを事細かに説明すると、大典太と鬼丸は顔を見合わせて、しかめた。やはり、彼らも前田と同じように普通の人間が魔物に変えられてしまったのだと推測したのだろう。



「……噂で聞いていた"夜な夜な怪しい実験をしている"というのは、邪気で人間を魔物にする実験だった、ということだな」
「――チッ。胸糞悪いことをしやがって……!」
「ところで、その戻った人間は大丈夫なのだろうか」



 ふと、童子切がそんなことを呟く。確かに魔物にされて今まで戦っていたというのであれば、魂が削られてしまった可能性も無きにしも非ずだ。大典太は素早く倒れている人間の元に近づき、胸元に霊力をあててみる。トクン、トクン、と小さくではあるが、鼓動が聞こえてくるのが分かった。どうやら気絶しているだけらしい。
 そのことを童子切に伝えると、彼は安心したとでもいうように眉尻を下げた。ということは、である。魔物にされてしまった人間は、彼だけに留まらないのではないかという嫌な予感が一同の頭の中を駆け巡る。



「……まずいな。扉の向こうで何をされているのか、大体推測がついたぞ」
「あいつらもさっさと助けねば、魔物にされてしまうかもな」
「とびら? なんですかそれ?」



 状況を理解できていない、と今剣が問うたため、大典太は先程自分達が見てきたものを説明した。その話を聞いた前田は、焦ったように"早く助けに行きませんと!"と慌て始めた。彼もカラ松達のことを知っていたため、魔物にされてしまう想像ができなかったようである。
 その話を聞いたカービィはうんうんと頷き、こう一同に提言し始めた。



「よーし。だとしたら"砂漠の華"探しは一旦後回しにして、その地下の扉まで行ってみようよ!扉は壊しちゃえばいいし」
「こ、壊すの?!」
「え? だって最終的に全部ぶっ壊すんだから、扉の1つや2つ壊してもよくない?」



 カービィは、これから実力行使で扉を破壊し魔物にされた人間を助けに行こうと提案してきたのである。あまりにも物騒な提案にバンダナワドルディは一瞬萎縮するも、それに対して鬼丸は"一理あるな"と静かに頷いた。流石は最初に見つけたときに"扉を破壊する"という行為に走りかけた刀剣男士である。
 大典太は自分も同意しかけたことを後悔し、鬼丸のことをただジト目で見やることしかできなかった。



「なんだその目は」
「……いや。あんた達が意外と似た者同士だと思……いひゃいぞおにまゆ」
「おれとあいつのどこが似ているというんだ」
「面白いのか、それは」
「……まにうへゆんじゃない、どうじひり」



 またもや頬をつねられてしまった大典太は、鬼丸に好きにさせつつため息をつくことしかできなかった。その様子を見ていた一同だったが、はっと前田が我に返り"地下へ行くなら早く行きましょう"と催促してきた。
 その言葉を聞いて大典太は鬼丸の手を握り返しやめさせ、気絶している人を背負ったのち地下に戻るのであった。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。