二次創作小説(新・総合)

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繋がる世界と未来の物語【Ep.04-2完結】
日時: 2025/10/03 21:52
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 ―――これは、"全てを元に戻す"物語。
 それが例え、紡いできた絆が離れる結果となったとしても……。


 どうもです、灯焔です。
 新シリーズ発足です。大変お待たせいたしました。プロットの詳細を決めている間に相当時間がかかってしまいました。
 サクヤ達がどういう運命を辿るのか。この終末の物語を、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
 この作品は版権作品同士の『クロスオーバー』を前提としております。
 また、オリジナルキャラクターも登場します。
 苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。


※物語を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】 >>1
【取り扱いジャンル】 >>2


<目次>

Ep.00【舞い戻れ、新たな異世界】 完結
>>3-7 >>11 >>12-17

Ep.01-1【繋がりの王国】 完結
>>21-25 >>28-33 >>36-37

Ep.01-2【宇宙からの来訪者】 完結
>>39 >>40-48 >>49-53

Ep.02-1【強者どもの邂逅】 完結
>>55-56 >>57-59 >>60-63 >>66-67

Ep.02-2【黒と白と翡翠の車掌】 完結
>>70-73 >>74-76 >>77-78 >>79-81
>>82-85 >>86-89

Ep.03-1【ドルピックタウンにて最高のバカンスを!】 完結
>>112-113 >>114-119 >>122-126 >>127-130

Ep.03-2 【音の街と秘密の音楽祭】 完結
>>137-138 >>139-144 >>145-148

ep.04-1 【天下五剣が集うとき】 完結
>>166 >>167-171 >>172-176

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 完結
>>178 >>179-180 >>181-185 >>186-188


※サブエピソード※
Ep.01
【新たな世の初日の出】 >>38
【商人の魂百まで】 >>54

Ep.02
【夢の邪神の幸せなお店】 >>68
【襲来!エール団】 >>69
【線路はつづくよどこまでも】 >>90
【記憶はたゆたい 時をいざなう】 >>109-111

Ep.03
【合流!若きポケモン博士】 >>131
【六つの色が揃う時】 >>132
【狭間の世界での出来事】 >>133-134
【翡翠の地からの贈り物】 >>135-136
【繋がりの温泉街】 >>151

Ep.04
【月と超高校級の来訪】 >>177


※エクストラエピソード※
Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 完結
>>91-95 >>96-101 >>102-104 >>107-108

Ep.03-ex【とある本丸の審神者会議】 完結
>>152-154 >>155-160 >>161-163


<コメント返信>
>>8-10 >>18-20 >>26-27 >>34-35
>>64-65
>>105-106
>>120-121
>>149-150
>>164-165


最終更新日 2025/10/03

以上、よろしくお願いいたします。

Ep.01-s2【商人の魂百まで】 ( No.54 )
日時: 2022/03/17 22:05
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

「ふぅ…。ここが"リレイン王国"かい。あの人達の姿をちっと見かけたから、ここら辺の人達に話を聞いててよかったぜ」



 リレイン城下町の入口である大きな門。その真ん前に、キノコ族の商人が立っていた。










 オービュロンが大典太達の協力をすることを決意してから2週間が経過した。
 ワリオも無事に回復し、現在ではマリオ達と以前のように宴やカートの大会に勤しんだり、新しい金儲けを企んだりと通常運転に戻った。
 その報告を仲間からの通話で聞いたオービュロンは、安堵のため息をついた。約1ヵ月程の失踪ではあったが、"いなくなった" "正気ではなかった" ことは事実である。無事に平穏が戻ったことに、ただただ彼は嬉しさを感じていた。


 そんなオービュロンだが、現在はラルゴの手伝いで"西の大陸の文化について調査をしてほしい"と頼まれていた。今後の町同士の連携を行う上で、地球の文化に非常に詳しいオービュロンの知恵が必要不可欠だと彼が判断した上での頼みだった。
 彼は今日もエントランスで書物を漁る。リレイン城下町には大きな図書館のような施設は存在しない為、今は城内に存在する文献を借りて"終末の世界の文化"を勉強していた。



「フムフム…。少し離れてイマスガ、北ニどるぴっくたうんガアルノデスネ。アソコハ港町デスシ、交渉次第デハ東ノ大陸ヘ航路モ出来そうデス。
 シカシ…。ヤハリ地上ノ移動手段ヲモット増やさネバナリマセン。だいやもんどしてぃニハ駅ガアリマスガ、流石ニソコマデ徒歩デ行くトナルト時間ガカカッテシマイマスネ。空ノ便モアッタ方ガ便利デスヨネ…」
「……今日も勉強か?精が出るな」
「みつよサン!ハイ、ワタシニ期待クダサッタカラニハキチント応えマセント!」



 文献の束と格闘を続けているオービュロンの元に、大典太が現れた。どうやら今まで街の見回りを行っていたらしく、戻ってきたところでオービュロンを見つけ、話しかけたのだった。
 オービュロンがラルゴの頼みを真摯に受けていることを聞き、内心大典太はホッとした。初日の彼の緊張ぶりからは想像できない程リラックスしていたからだった。
 何について調べているのか尋ねると、彼は"西の大陸の交通網"について調べていると答えた。中身を詳しく聞いた大典太は、ラルゴの"秘密の案"についてもバレるのは時間の問題だと目を伏せた。


 談笑を続けていた最中、彼らの背後に大きな威勢の良い声が聞こえてきた。その声色に、大典太はどこか懐かしさを覚える。
 思わず声の方向に振り向いてみると、こちらの顔を見た"影"が笑顔でこちらに駆け寄ってきた。



「大典太さん!久しぶりじゃねえか!」
「……あんた。生きていたのか…!」
「オイラを勝手に殺すんじゃねえ!あの邪神に店を潰されてどうしようかって時にお前さん達らしき影を見つけてな。旅人に声かけながら追っかけてたらこの城下町に辿り着いたんだよ。いやー、会えてよかったよかった」
「みつよサン、コチラノ方ハ?きのぴおノヨウニ見えマスガ」
「……キノコ族なことは間違いない。名前を"ジンベエ"と言って…。俺がコネクトワールドにいた時に、主共々色々世話になってたんだ。光に呑まれた後心配していたが…生きててよかった」
「紹介に預かった"ジンベエ"だ。見りゃ分かるがれっきとしたキノコ族だな!がっはっはっは!」
「ヨロシクオ願いシマス!きのぴおハ色々見たコトガアリマスガ、ココマデ威勢ガ良い方ハ初めてデス」
「基本キノコ族は怖がりだったり、気性が穏やかだったりするからなあ。オイラが珍しいってイメージには納得だな!」
「……それで、あんた何をしに来たんだ?店が潰されたとかなんとか言っていたが…」
「あぁ…お前さんに会えたのが嬉しくて本題を忘れかけてたぜ」



 影の正体は"ジンベエ"というキノピオだった。水色の法被を着ており、頭に鉢巻を撒いた江戸っ子風情の商人である。実は彼、コネクトワールドにて大典太達を陰からサポートした存在でもある。サクヤと大典太がひょんなことから一時的に仲違いをした時も、仲直りのきっかけをくれたのが彼である。それもあり、大典太は彼に恩を感じ、信頼をしていた。
 そんな彼が議事堂を訪ねてきたのである。先に発した言葉の真意も気になり、大典太は深堀してみることにしてみた。すると、ジンベエはしゅんとした表情を浮かべながら口を開いた。



「実は……。オオエドストリートも白い光に呑まれてよ。気がついたら…村ごと跡形もなく潰されちまったんだ」
「ナ、ナンデスッテ?!」
「……俺達のせいだ…」
「違う!大典太さん達は関係ねえよ!邪神がオイラ達の事を邪魔に思って、村ごと消そうとしただけだろ!その後は…村も、建物も、商売もままならねえ。商会は解散、各々路頭に迷うことになったのさ。
 それでも……オイラは商人だ。この国は"繋がりの国"って言われてんだろ?だから、街の責任者に何とか土地を提供してくれねえかと思ってよ。後……個人的な用事で、大典太さんに頼みてえことがある」
「……俺に?」



 ジンベエから切り出されたのはとんでもない真実だった。そして、アンラの悪事についてまた新たなことが判明した。
 邪神はオオエドストリートにまで手を出し、徹底的にサクヤが関わった痕跡を消そうとしていたのだ。オオエドストリートに住んでいた住民は皆無事だそうだが、建物が全壊してしまったことから商売は続けていけない、と会長から解散を切り出されたのだという。
 罪のない一般人を巻き込んでしまったことに罪悪感を覚え、大典太は思わず"俺達のせいだ"と口にする。しかし、ジンベエはそんなことを微塵にも思っていなかった。悪いのは全て、破壊しやがったあの悪の神だと。しっかりと告げた。
 そして、彼は倒れてもただでは起き上がらない男だった。壊されたのならまた新天地で商売をすればいい。商人の魂が燃え尽きることは無かった。そこで、繋がりの国だというリレイン王国に商売の手立てを相談に来たのだった。

 ジンベエが語り終えると共に、町長室からすすり泣きをしながら出てくる人影があった。十中八九ラルゴである。彼はジンベエの話を部屋から聞いており、その境遇に号泣していた。



「ジンベエちゃんっ…!アタシ…アタシ…アナタの悲しみが凄く分かるわっ…!お店が潰される気持ち、とても分かるもの…!」
「ええと、このお方は…?」
「……あんたの探してる町長だ。今呼びに行こうとしたが、手間が省けたな…」
「らるごサンは"伝説ノまま"ト呼ばレテイタラシイデス。みつよサンニ教えてイタダキマシタ」
「―――"伝説のママ"だってえ?!なんでそんな高名な奴が城下町の町長なんてしてんだい…」
「色々あるのよ…グスッ…。それよりもジンベエちゃん。この城下町でお店を開きたいのよね?」
「……切り替わりが早い」
「流石町長、デスネ…」



 ラルゴはごしごしと腕で自分の顔を拭いた後、ジンベエに向き直った。彼が城下町に店を構えたいというのならば、援助は必要だ。そもそも、再起が順調に進んでいるとはいえ、まだまだ街は発展途上だと彼は考えていた。そこに新たな風を取り入れられるのなら、積極的に取り入れていきたい。ラルゴは頭の中でそう模索していた。
 ジンベエの話を聞いたうえで、城下町の商店街で空いている土地を探す。人は戻って来ているが、まだまだ懐疑心にまみれた住民がいるのは事実。街を信頼してくれるのならば、その声に応えたかった。



「ジンベエちゃん。アナタ、お店を開きたいと言っていたわね。どんなお店なの?」
「オイラの店は雑貨屋だ。色んなところから仕入れた品を売ってる。それに……最近、装飾品作りを続けてんだ。そろそろ売りに出せるくらいにはクオリティが上がって来たから、アクセサリー屋さんも兼ねようと思ってな」
「ふむ…。雑貨屋さん、兼アクセサリーショップね…。これは中々にユニークな組み合わせね。アタシとしても是非、アナタに街で商売をしてもらいたいと思っているわ。
 そうなれば、商店街に空いている土地があるか探してこなきゃ…」
「おう。ありがとうな町長。本当に助かるぜ…!」
「お互い助け合いの精神が大事なのよ、人間ってのは!なるはやで調べてくるから座って待ってて~!」



 ラルゴが快く商店街に店を出すことを許可した。ジンベエはその答えに思わず顔が明るくなる。やはり彼も上人なのだ。人に物を売って、笑顔にする。それが彼の"生きがい"というものなのだと大典太は感じていた。
 早速土地の確認をせねばならない、とラルゴは先程出てきた部屋に猛スピードで戻る。そんな彼のてきぱきとした動きを見つつ、ジンベエは大典太に向き直った。
 頼みたい"もう一つの要件"を彼に話す為に。



「……良かったな」
「らるごサンヲ見習わナケレバ、デスネ」
「おう!何とか店も構えられそうで良かったぜ!……で、大典太さん。もう1つの要件、今聞いちゃくれねえかい」
「……あぁ。俺に出来ることならば。何だ?」
「―――これ。見覚えあんだろう?世間では"短刀"っていうらしいな」
「な……!」



 ジンベエが取り出した"それ"に大典太は言葉を失った。邪気を纏った短刀を持っていたからだ。霊力と邪気が混じっている為、短刀が何かまでは判別が出来ない。
 しかし、それよりも大典太が驚いたことがあった。ジンベエはその邪気を纏った短刀を"直接"握って大典太に見せている。直近にワリオの事件を経験している為、邪神による悪影響が人間にも及びやすいことは心に刻まれていた。
 ジンベエは精神力の強い人物であることは分かっていた。しかし、それを抜きにしてもこんなに平常心を"普通の人間が"保っていられるとは思えない。思わずそのことをポロっと口にすると、ジンベエはかっかっかと大笑いをした。



「何言ってんだい大典太さん!商人あきんどの魂百までって言うだろ!きっと汚染されないのはそのせいだぜ!」
「……ことわざが違う。それにそんな言葉で片づけるな。直近で、人間が邪気に侵されて暴走した事件を経験したことがある。……正直、あんたがそんなに平気で会話を出来ていることにも驚いているよ」
「エッ。マサカコノ刀、わりおサント同じヨウナ感じナノデスカ?!」
「……あぁ。長い間天界の蔵に仕舞われていたものだ。邪気は相当内に込められているだろう。だから不思議なんだよ…。あんた、なんかしたのか?」
「何もしてねえよ!だが…オオエドストリートにいた時、壊れたオイラの店の残骸に触れて具合が悪かったことがあったんだ。一時は立てなくなるほどだったが、偶然白い制服を来た男の子と、青い着物を来た優美な男がやって来てな!オイラの看病をしてくれたんだよ!
 具合が悪かったのも綺麗さっぱり無くなって。いや~、あいつらが通りかからなかったらオイラ今生きてるか分かんなかったかもな」
「(石丸に、三日月…。そうか、あいつらもあいつらで行動していたのか…)」



 大典太は明るい口調で経緯を説明するジンベエに、変に納得をしていた。以前邪気をその身に受けたのならば。影響が薄くなるという仮説を建てられる。だからこそ、邪気を纏った短刀に触れても平気なのだと。
 そして、石丸と三日月が無事だということも彼の口から語られた。名前は出なかったが、外見的特徴を組み合わせると、確実にあの1人と一振なのだと確信することが出来た。その事実を知ることが出来、彼はほっと胸を撫でおろす。

 しかし、本題はそこではない。大典太に頼みたいこと、というのは―――"短刀を何とかしてほしい"ということだろう。三日月が邪気を祓ったのだから、自分にも出来る筈。ジンベエはそう確信して、短刀を見せてくれたのだと。
 大典太はジンベエの手にある短刀に静かに触れ、自分の霊力を込める。すると……。想定通り、紫色の靄が短刀から出ていくのが分かった。ワリオの状況と同じだとオービュロンも理解し、その現象をじっと見る。
 しばらくすると、紫色の靄は見えなくなる。刀から邪気が消えたと同義と判断し、大典太はそっと刀から手を離した。



「これで…大丈夫なはずだ。顕現してやるといい」
「えっ?オイラが?」
「……事前に邪気に襲われていたとはいえ、あんたなら出来ると思って言ってみただけだ。やって駄目なら俺がやる」
「刀剣男士サンノ"顕現"ヲコノ目デ見れる、トイウコトナノデスネ…!コレモ"かるちゃー"ノ勉強ノ1ツデス」
「ど、どうすりゃいいんだよ?」
「……刀に向かって、心の中で声をかけてやればいい。あんたの声に気付けば、きっと起きて顕現してくれるだろうさ」



 大典太に急にそんなことを言われ、しどろもどろになってしまうジンベエ。しかし、大典太はジンベエなら出来ると確信していた。だからこそ提言をしたのだと。彼はそう判断し、大典太に言われたように心の中で刀に呼びかけ続ける。
 すると。―――不意に、刀が光ったのを感じた。目の前に光で人型が形成され、姿がはっきりと写る。……影がはっきりと見えたその正体は、金髪に赤い眼鏡をかけた少年だった。



「……うう……。頭がぼんやりする……」
「……その服。"藤四郎兄弟"か。後で前田に確認しないとな…」
「―――は?前田、と言ったばい?!ってことは、俺はもうあの悪い気に悩まなくてよかと?!」
「えいてぃーんぼるとサンニ似た言葉ヲオ話シテイマス!」
「お、おい。お前さんが…。この刀の"付喪神"ってやつかい?」
「そう。博多の商人が得た藤四郎が、俺! "博多藤四郎"たい!」
「……あっ。思い出した。前に前田くんが言ってた刀……」



 金髪の少年は"博多藤四郎"と名乗った。そして、邪気を祓ってくれたことと顕現してくれたことの礼を言った。
 蔵でずっと苦しんでおり、いつ解放されるのだろうと悲しい気持ちを抱いていたと知り、大典太は再び胸を撫でおろす。偶然が重なった結果ではあったが、また一振助けたことが出来たことに安堵を感じていた。
 そしてジンベエは以前、花火大会の日に前田に言われたことを思い出した。"商売の才に長けた短刀がいる"と。それが、目の前にいる博多藤四郎なのだと確信を持った。



「そうか…。お前さんが…」
「ああ、もしかして……俺んこと起こしてくれた人?なら、"主"って呼ばないかんね!」
「あ、主だってえ?!オイラそんな大したことはしてねえよ!それに、お前さんの邪気を祓ってくれたのは大典太さんだい!」
「確かに悪か気ば祓うてくれたんな大典太しゃんだばってん、連れて来てくれたんな君なんな間違いなか。それに、君ん商売魂は俺にも伝わった。仕える理由はそれで十分ばい!」
「……だ、そうだ。商売に詳しい刀なら、あんたの助けになってくれるんじゃないか?」
「それなら…。主って言われるのはむず痒いけどよ。これからよろしく頼むぜ、博多くん!」
「呼び捨てでよか!商売んことならこん博多藤四郎に任せとき!これから、よろしゅうね!主!」



 博多は邪気に侵されていた中でも、彼の商売魂を感じ取っていた。前の主を思い出せない今、やれることと言ったら救ってくれたこの主に仕えること。それが自分の最善の選択だと博多は考えていた。
 大典太にも背中を押され、ジンベエは遂に博多の主になることを決めた。答えを聞き、ぱぁっと博多の笑顔が花開いた。そんな彼らの様子を見て、大典太は"気の合う関係になりそうだ"と静かに頷いた。
 それと同時に、町長室のドアが開いた。大方土地の件が纏まったのだろう。博多のこともすぐに理解し、笑顔でジンベエに話しかけてきた。



「あら!アタシの知らないうちに元気っ子がもう1人増えてるわ!でね、ジンベエちゃん。商店街の中に空き家が何件かあるんだけど…。それを改築する形でなら、お店を開く許可をアタシが出してあげる」
「ほ、本当かい…!?建物を一から建てなくてもいいのは助かるな!是非、それでお願いするぜ!」
「なら、善は急げ!早う空き家ば実際に見に行こう、主!」
「あらあら。いつの間に仲良くなっちゃったのかしら?さ~さ、じゃあリクエストに素早くお答えする為に空き家を見て回りましょうか!それじゃ光世ちゃん、オービュロンちゃん、また後でね!」
「ハイ!イッテラッシャイ!」
「……賑やかになりそうだな」




 意気揚々と議事堂を後にする2人と一振に小さく手を振りつつも、大典太は小さくそう零した。
 拾っていたのか、オービュロンはその言葉に"賑やかナノハイイコトデス!"と返した。あながち間違っていない、と大典太は彼らの背中を見ながら、再び微笑みを浮かべたのだった。

次回予告 ( No.55 )
日時: 2022/03/19 22:29
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 ―――ここは、人とポケモンが共存する現代。
 世界のうちの1つ"ガラル地方"にて、ガラルの強者が集うポケモンバトルが開かれようとしていた。
 ガラルの北にそびえる巨大な人工都市、シュートシティ。かつてはマクロコスモス元代表取締役社長兼元ガラルリーグ委員長、ローズが開発を進めた街だ。
 ここでは毎年、"ジムチャレンジ"のファイナルであるチャンピオンを決めるトーナメントが開かれている。しかし、今回トレーナー達が集まっているのはそのような用事ではなかった。

 ローズ失脚後、新たにリーグ委員長に就任したダンデにより、シュートシティでは新たな催しが施されていた。
 名付けて"ガラルスタートーナメント"。ガラル中の強豪トレーナーで2人1組のタッグを組み、チャンピオンを目指してお互いに勝負を繰り広げるという大きな大会だった。


 そんなシューシティにそびえ立つシュートスタジアムの中にて、少女―――ユウリは今回も優勝するぞ、と意気込んでいた。
 傍らにはバウタウンジムリーダーである"ルリナ"と、エンジンシティジムリーダーである"カブ"が立っており、皆で楽しく談話をしていた。



「ルリナさん!カブさん!今日のスタートーナメント、絶対に負けませんからね!」
「ふふ、それはこっちの台詞よ!私も負けっぱなしじゃいられない。ポケモン達と沢山特訓を重ねてきたんだもの。必ず勝利を掴んでみせるわ。ユウリも油断しないでね?」
「ユウリくんもルリナくんも気合十分だね!今日のガラルスタートーナメントに向けて張り切っているじゃないか」
「勿論ですよ!カブさんも気合十分ですね!」
「ああ、当たり前だとも。ぼくとポケモンくん達の更なる絆、このスタートーナメントで全部ぶつけるつもりだからね!」



 ルリナもカブも気合十分だと答える。ユウリは彼らの気迫に押し負けそうになるが、それくらい熱意が高いのだと高まる気持ちが止まらなかった。
 彼女は単なるバトル好きのポケモントレーナーではない。今ではガラルの新たなチャンピオンなのだ。皆の期待を背負っている以上、負けるわけにはいかなかった。
 更に、彼女にはもう1つ気分が高揚する理由があった。興奮したまま、ユウリは2人に口を開いた。



「やっと!やっとです!ネズさんにタッグパートナーの承諾を受けてもらったんですよー!」
「あら、そうなの?良かったじゃない!今までずっと断られ続けてきたんでしょ?」
「はい…。ネズさん、私のこと面倒臭いと思っているみたいで…。今大会の前なんて、話しかける前にお札みたいに顔にタオルをかけられてしまったんですよー!酷くないですか!」
「ははは、ネズくんも君のことが大事なんだよ。あの時は酷く暑かったからね。熱中症になりそうだったのに気付いていたんだろう」
「それでもです!でも、やっとパートナーになる許可を貰えたので…嬉しいんです。そんな初陣なので、絶対に負けられないんですよ!」



 そう。ユウリは、スパイクタウンの元ジムリーダーであるネズとずっとタッグを組みたかったのだ。本当は初回からそうしたかったのだが、"きみと組むとトラブルが起きそうなので"と開口一番に断られてしまっていた。
 そもそもの話、ダイマックスの暴走事件を一緒に鎮めた後からだった。彼の態度がぎこちなくなったのは。彼は"ユウリは面倒ごとを引き起こす"として遠ざけていたが、マリィと一緒に遊んでいる時に鉢合わせたり、マリィの家にお邪魔する時は言葉とは裏腹に甲斐甲斐しく彼は世話を焼いてくれるのだ。
 そんな態度を取り続けていた彼が、遂にユウリからの誘いを受けた。彼女のしつこさに折れたのか、何か別の思惑があったのかは分からない。だが、ユウリにとっては"タッグパートナーになれる"その事実だけで嬉しさが何倍にも膨れ上がっていた。



「気合を入れなきゃネズさんに失礼ってもんです!今まで散々ネズさんに迷惑かけてきて、やっと承諾してもらえた試合だから…私、負けるわけにはいかないんですよ」
「あらあら。試合前に美味しい話をいただいちゃったかしら?」
「えっ?」
「ユウリくん。青春もいいものだが、試合の時はのろけるんじゃないよ。しっかり試合に集中するんだ」
「えっ?!」



 ユウリがネズの話をし始めてから、明らかにルリナとカブの様子がおかしい。ルリナはまるで恋する乙女を見守る様に。カブは若人の背中を叩くように。ユウリに対して言葉を返したのだった。
 彼女はネズに恋心を抱いているのだ。しかも、周りにはしっかりとバレている程だった。ユウリには周りに知られている自覚が無い為、彼女達の反応にきょとんと返すことしか出来なかった。
 そんなユウリをよそに、右側の控室からふくよかな青年が現れる。キルクスタウンのジムリーダー、マクワだった。



「お取込み中すみません。ジムリーダー会議の時間なので、あちらの控室に…」
「あら。もうそんな時間?みんなを待たせたら悪いわね。行きましょう、カブさん」
「そうだね。それじゃ、開始までゆっくり心を落ち着けると良いよユウリくん。緊張したままでは何事も上手くいかないものだからね!」



 マクワに連れられ、ルリナとカブはエントランスホールを去った。
 そんな彼らの背中が小さくなるのを見届けていたユウリは。ふと自分の放った言葉を思い返していた。何故ルリナとカブがあんな話を切り出したのかが気になったからだ。
 ……しばらく頭を悩ませている内に、彼女は1つの結論に辿り着く。自分はとんでもないことを2人に暴露してしまったのではないかと。
 自覚した途端、かっと顔が赤くなる。このままでは恥ずかしくて試合に出る前に何か言われそうだ。









『な、何やってるの私~~~~~~~~~~!!!!!』









 ユウリの叫び声は、誰もいないエントランスホールにただ響くだけだった。
 はっとして我に返りきょろきょろと辺りを見回す。運よくエントランスホールは無人である。ジムリーダー以外の参加者もどこかの部屋にいるのだろう。この建物は防音がしっかりしていることに感謝したユウリだった。
 時計を見てみる。ルリナ達と別れた時間から随分と時が経っていた。このままでは準備がままならなくなってしまう。そう判断したユウリは、急いで自分の控室へと移動しようと、足を左側に向けた。その、矢先だった。



「(あれ…?あんな人、スタッフにいたっけ…?)」



 ふと、目線の先に怪しい人影が見えた。まるで陰の気を纏っているようにユウリには感じられた。ユウリが今まで接してきたスタッフは、皆明るくていい人達ばかりだった。
 不審に思った彼女は、控室の方向ではなく怪しいスタッフが歩いて行った方向へと舵を向く。



「(まだ準備の時間はあるし…。そもそも全員到着してないし。見たら戻ればいいよね)」



 見たら戻ればいい。そんな気持ちを抱き、ユウリは人気のない場所に歩いていく社員を追って行ったのだった。


































 ―――ユウリがリーグスタッフの影を追ってから30分後。エントランスホールに現れる2つの影があった。
 それと同時に、右の控室からも2つ、人影が現れた。彼らは鉢合わせになり、引き摺っていた人物を見てため息をつく。



「わりぃなネズ。ダンデ、またシュートシティで迷子になってたんだってな?」
「まだ街の中でうろうろしていたからいいようなもんです。いつもなら最悪ブラッシータウン辺りまで向かって見つかってますからね」
「アニキ。ジムリーダー会議は終わったよ。準備が終わり次第いつでも開会式出来るから、時間あるうちに着替えてきた方がいいよ」
「そうさせてもらいます。……ダンデ。いくら気持ちのいい温度だからっていつまで寝てるんですか。起きやがれ」
「ふわ……あ?あ、あぁ、すまない。あまりに太陽が心地よくて眠ってしまっていたな!」
「引きずられながら眠るって随分と器用じゃん。オレさまにできるかな…」
「そんなところまで張り合おうとすんな」



 迷子のダンデを引き連れて入口からネズが現れた。丁度鉢合わせになったのはキバナとマリィだった。
 気持ちよさそうに寝ているダンデに喝を入れ起こす。彼の準備が出来なければ、スタートーナメントは開始できないも同然だった。
 頬を強く叩き、しっかりと脳を叩き起こすダンデ。そして、皆が思った通り控室とは逆の方向に歩いて行こうとした。当然キバナに止められる。



「言わんこっちゃねぇ」
「ダンデさんはあたしが送ってくるよ。アニキとキバナさんは話でもしてて」
「わりぃな~」



 逆の方向に歩き出したダンデをマリィが道案内する形で彼女達とは一旦別れることにした。
 ネズはマリィが自分からしっかり行動できたことに感銘を受けている。妹の成長が身に染みていた。



「妹も成長してんじゃん」
「感慨深いです。けど、少し寂しくもありますね」



 そう言いながらキバナはちらりと時計を見る。後10分くらいは話が出来る余裕があった。そうなれば、と彼はネズに最近気になっていた話題を切り出した。
 ネズがスタートーナメントを終えた後にしようとしていることだった。



「なぁネズ。この試合終わったら、イッシュ地方に行くんだろ?」
「はい。音楽の分野をガラル以外でも広めたいですし…。それに、他の地方で得た刺激は何よりの作曲のスパイスになります。ま、場所が場所なんで遠征になりそうですがね」
「バトルできなくなるのはオレさま悲しい…」
「おまえとは前に散々バトルしてやったんだからいいでしょうが。今回は、タチワキシティとライモンシティ。2つの街を回る予定です」
「へぇ。タチワキにライモン…。どっちも娯楽に富んだ街じゃねぇの。ほら、ライモンにあるバトルサブウェイ!あれ、オレさま一回挑戦してみたいんだよな~」
「列車に乗りながら戦うっていうユニークなバトル施設ですよね。キバナ、ポケモンに指示する前にすっ転んでたら恰好悪いですよ。きっと」
「キバナさまはそんな恰好悪いことしません!」



 ネズはこの大会が終わった後、イッシュ地方への遠征を考えていた。ジムリーダーを引退した今、ガラルだけではなく他の地方の音色も取り入れようという思惑からの行動だった。
 丁度、タチワキシティにはバンドをやりながらジムリーダーをしている人物がいる。またルリナからの紹介でライモンのジムリーダーとも謁見の許可を貰っていたのだった。
 タチワキには"ポケウッド"、ライモンには"バトルサブウェイ"というポケモンが活躍できる施設がある。特に、キバナは力を発揮したいとバトルサブウェイに参加したいとネズに吐露していた。



「ネズはいかねーの?バトルサブウェイ」
「はぁ…。だから、おれはポケモン勝負をやりに行くんじゃないんです。そこんとこ分かってます?」
「でも、今回の遠征は別にツアーに行くとかじゃねーんだろ?だったら行ってきてオレさまにどんなところだったか感想聞かせてくれよ」
「なんで根っからのバトルジャンキーの為に動かなきゃなんねぇんですか、全く…。でも、確か…噂では、そこを取り仕切っている双子の車掌が地方のチャンピオンと肩を並べるくらい強いって話ですよね」
「そうそう、そうなんだよ!オレさまダブルバトルが得意だからさ、スーパーダブルトレインに一回乗ってみたいんだよな~。で、車掌と戦うんだよ!で、オレさまが勝つ!車掌と一緒に写メ撮ってSNSに流す!ファン増える!オレさま大勝利!」
「で、車掌のファンに炎上させられる、と。というか、そもそもその前に48連勝出来るんです?お前」
「ネズ~~~~!!!!このガラル最強のジムリーダー、キバナさまにかかれば48連勝なんて楽勝よ!……イッシュ地方にはダイマックスないんだし、ネズの方が戦いやすくないか?」
「まぁね。スーパーシングルトレインであれば、シンプルな勝負を楽しめそうだとは思ってます。ダブルは専門外ですし、おれ。
 ―――ま、暇が出来たら行ってみますよ。おれも丁度腕試ししたいと思っていたところでしたし。……あの双子には少し、借りもありますんでね」
「……???」



 他愛のない話を続けつつも、キバナは再びちらりと時計を見やる。予定の10分を過ぎようとしていた。
 ネズに準備した方がいいということを伝え、彼らも一旦別れることにしたのだった。
 ―――お互い反対方向に足を向けた、その時だった。



























「……ん?」



 ネズの目線の先に、見覚えのあるベレー帽が目に入って来た。そのままじっと凝らしてよく見てみると、ベレー帽の先には茶髪が見える。十中八九ユウリだった。
 既に彼女は会場入りして、控室にいてもおかしくないはずだ。しかし、人気のない場所で何をやっているのだろう。
 ユウリのことは、マリィと仲良くしてくれているのもあり、もう1人の妹のような存在だと思っていた。しかし、ダイマックス事件の際にあんなことを言ってしまいぎこちない関係になってしまったことを後悔していた。
 それは誤解だと説明したかったのだが、彼女といるとトラブルが舞い降りてくることも事実。うまく言えない日々が続き、今日やっと彼女の誘いを素直に受ける決心をした矢先の出来事だったのだ。
 ユウリがあんな人気のない場所にいるのがおかしい。ネズはそう判断し、まだ背後にいたキバナに小さく耳打ちする。



「キバナ。すみません。もしかしたら開会式に出席できないかもしれません。ダンデに伝えておいてください」
「んん。お、おう…?」




 振り向かずにそのことだけを伝え、ネズはユウリの後を追って行ったのだった。

次回予告 ( No.56 )
日時: 2022/03/19 22:32
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 ネズは人気のない通路を歩いていた。
 ここは、普段ジムチャレンジでの決勝戦でも使わない場所だ。そんな場所にユウリが自分から向かっていたのだ。何か面倒ごとに巻き込まれたと考えた方が早かった。



「ジムチャレンジでも滅多にここは使わねぇのに…なんだってあんな場所に。またトラブルに巻き込まれてんじゃないでしょうね…」



 一抹の不安を抱えながら歩いていると、行き止まりが遠目に見えてくる。
 そこで、ネズは目を見開き歩みを止めた。そして、モンスターボールに手をかける。
 理由は簡単だった。行き止まりでユウリが倒れていたからだ。どうやら意識を失っているようで、起き上がる様子は見受けられない。更には、倒れている彼女の傍にリーグスタッフらしき人間の姿がいた。
 倒れている彼女を助けようともせず、寧ろ何か怪しい動きをしているのにネズは気付いた。ユウリが危険な目に遭っていることを確信した彼は、ユウリを助ける為手に掛けたモンスターボールからポケモンを出そうとした。


 しかし。



「―――っ?!」



 ネズが動き出す寸前、スタッフはボールに向かって"何か"を放った。ネズの手から放たれたそれに直撃し、そのまま床に落ちる。出る筈のタチフサグマが出なかったことにネズは焦りを見せた。
 ポケモンを封じられた。そして、リーグスタッフが偽物の可能性が高いことも彼は見抜いた。



「(リーグスタッフじゃない…?)」



 そう判断し隠れようと動いたのも束の間だった。








「ぁッ……うぅ……?!」




 唐突に腹部に強烈な痛みが襲う。まるで、槍を貫かれたような激しい痛みだった。
 恐る恐る腹部を見てみるが、物理的に刺された形跡はない。腹を貫かれた跡もなかった。では何故激しい痛みが襲っているのか。目の前のリーグスタッフをぼやける視界で捉える。目線の先に、五本の指が見えた。あいつに何かされたのだ。ネズはそう悟った。
 壁に手をついて追いかけようとするも、痛みと同時に息苦しさも彼を襲う。精神が持たず、そのままネズは床に倒れ意識を失ってしまった。



「何か大きな音しなかった?」
「ユウリもネズもどこいったんだよ…。もう開会式はじまっちま―――!!」



 近くにマリィとキバナが来ていた。ネズが倒れた音に気付き、様子を見に来たのだ。
 そして、倒れているネズを発見するなり慌てた表情でマリィが兄の身体に触れた。



「アニキ!!しっかりして、アニ―――」
「マリィ…。どうした?」



 ネズの腕に触れた瞬間、マリィは思わずそこから手を離してしまう。キバナも気になってネズの様子を見る。彼は既に意識を失っており、身体が徐々に冷たくなっていた。人肌以下に―――氷に近い冷たさに、思わずマリィは手を離してしまっていたのだ。
 そして、キバナも気付く。ネズの頬に、黒いツタのような模様が浮かんでいることに。普段、濃いメイクをすることが多い彼だが、こんなメイクは見たことが無い。寧ろ、こんな模様は彼が歌の邪魔になると嫌うものだろうとキバナは推測していた。



「これ…ヤバいやつじゃねーの…?」
「どうして…アニキ……アニキ……!!しんじゃ、やだっ……!!」



 ネズが倒れていた進行方向である行き止まりを見ても、もぬけの殻。ネズはどうしてここまで来たのだろうか。考えようとするも、マリィの一声がキバナを我に帰す。"アニキの身体がどんどん冷たくなってる"と。
 とにかく、ダンデに報告せねばならない。ユウリも姿を現さない。もしかしたら今日のガラルスタートーナメントは中止になるかもしれない。様々な可能性を頭の中に浮かべながらも、まずは目の前のネズを助けることに意識を集中させた。
 ネズを背負う為、キバナは一旦マリィに離れるように指示した。そして、彼の細い身体を持ち上げる。……想像以上の冷たさだった。普通なら凍え死んでいてもおかしくない。しかし、ネズの心臓はしっかりと鼓動を刻んでいる。
 何が起こっているか分からない。しかし、動かなければ何も判明しない。マリィに急いでダンデを呼んでくるように頼み、ネズをしょったキバナが動こうとした。
 その矢先だった。

















「―――マリィ、伏せろ!!!」
「えっ……?」



 叫んだが、その声は一瞬で白い光に覆われた。次第にその姿も、立っていた場所も、呑み込まれる。



 光が。会場を呑み込んでいく。
 まるで全てを浄化するように。まるで、全てを消し去る様に。



 白い光は範囲を広げ、巨大な街をいとも簡単に呑み込んでいく。そのままポケモン達と手を取り合っていた一つの地方が。また。1つの歴史から姿を消した。
 この先に何があるのか。自分が生きているのか、死んでいるのか。
 何も分からないまま。全てが真っ白に染まった。




NEXT⇒ Ep.02-1 【強者どもの邂逅】

Ep.02-1【強者どもの邂逅】 ( No.57 )
日時: 2022/03/21 22:07
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 リレイン城下町は春の陽気に包まれていた。
 冬特有の肌寒さは何処へ行ったのか。近くにベンチでもあれば座って昼寝をしてしまいそうな心地よさ。暖かな要項が街を照らす。季節がまた城下町の"彩"を変える。
 オービュロンはそんなぽかぽかとした季節の城下町を、散歩がてら歩いていた。ワリオが暴走した事件から2週間、ダイヤモンドシティとリレイン城下町の住民は少しずつ歩み寄っていた。流石は"繋がりの国"と呼ばれる王国。自分の姿を見ても、何か言ってくる人間は誰一人いなかった。寧ろ、自分の宇宙や文化の話に興味を持って聞いてくれることを嬉しく思っていた。



「だいやもんどしてぃの皆サンと城下町の皆サン、チョットずつ仲良くナッテテワタシも嬉しいデス!」



 心なしか気分が良かったオービュロンは、通りかかった商店街に足を運ぶ。
 この商店街は城下町の西側を占拠する程の広さを誇る、商人の街。最近ジンベエと博多が新たに店を構えたということも町全体に既に伝わっていた。
 オービュロンは広い道路を歩き、とある1件の店に立ち寄る。立ち止まった先には"なのはな青果店"と書かれた看板がかけられている。彼は表で野菜を出し入れしている、年配の女性に声をかけた。



「八百屋サンの奥サン!オハヨウゴザイマス!お元気デスカ?」
「おや?そのユニークな声はもしかしてオービュロンちゃんかい?おはよう!今日も元気がいいねえ!町長さんは元気かい?」
「町長サン…らるごサンナラ元気デスヨ!最近チョット忙しそうナノデ、チョットお疲れではアリソウデスケド…」
「あら、そうなの?ならおすそ分けにいかないとねえ。この王国が少しずつ前に進めるのも、王様や町長が率先して動いてくれているお陰だからね!」



 この年配の女性は、青果店の店主である男性の妻だった。なのはな青果店は、年配の夫婦2人で切り盛りしている小さな八百屋だ。店は小さいが、品質は世界一だと城下町の住民に好評の店の1つである。
 現在店主の男性は品物の仕入れに行っており、その間この女性が店主代理として店を切り盛りしていた。二人共威勢のいい豪快な性格であり、その肝っ玉の強さにはオービュロンも感心したものである。
 彼女と他愛ない話を続けていた最中、女性が思い出したようにこんなことを切り出した。



「あ。そういえばオービュロンちゃん知ってる?今朝、ダイヤモンドシティの北方面に巨大な街が現れたんだって」
「巨大な街、デスカ?」
「ええそうよ。昨日の晩まではそこには大きな森があってね。森とはいえ、整備されてない状態だからどんな野生動物に襲われるか分からない。ほら、城下町は"繋がりの街"ではあるけれど、森に潜む魔物に太刀打ち出来る人間なんてたかが知れてるだろう?
 だから、住民は絶対に近付くなってお触れが立っていたんだ」
「ソウダッタンデスネ…。知らなかったデス」
「そりゃオービュロンちゃんはここに来たばかりだから当り前さ。落ち込むことはない」



 女性の話によると、今朝唐突にダイヤモンドシティの北方面に"巨大な街"が現れたのだという。
 昨晩までは森が生い茂っていた場所に、唐突に現れた街。しかも、その大きさは森一帯を全て一瞬で消し去ってしまう程の広さだった。女性は街の造りから、"あれは人工都市ではないか"と持論を立てていた。
 彼女の話を聞いて、オービュロンはふと大典太に言われたことを思い出していた。



「(ソウイエバ…コノ世界に"何か"が混ぜられるコトニヨッテ、昨日無かった物が急に現れる現象は普通に起こりえる、トカ言ってましたネみつよサン。みつよサン達が以前お世話にナッテイタ世界での"自然現象"ラシイデスケド…)」
「人工都市とはいえ、人がいるかは分からない。近日中に様子を見に行くって専らの噂だよ」
「フム…ワタシトシテモ興味がアリマス。ソノ"人工都市"」



 人工都市、と聞かれれば、近未来的な技術も使われているかもしれない。宇宙のことを知っているオービュロンにとって、興味を引くには充分な出来事だった。
 どうやら近日中に街ぐるみで様子を見に行くと噂が出ているが、そうであれば王かラルゴが既に声出しをする筈。噂は噂だと気持ちを切り替え、オービュロンは単身その"人工都市"を見に行ってみることにした。
 決めたならば散歩をしている暇はない、と彼は女性に深々と頭を下げ、商店街を去った。そして、ダイヤモンドシティの方向を見やる。



「ソノ"街"トヤラの下見をシニ行っても良さそうデスヨネ。……流石にコノ姿ダト怪しまれるカナ?」



 オービュロンは現在白いもちもちとした宇宙人の姿だった。見慣れているダイヤモンドシティや、彼がこの姿で堂々と歩いても問題がないリレイン王国の敷地内であれば話は別だが、今から行く街は"未知なる町"。
 もしかしたら自分の姿を見て襲われる可能性もある。大典太は"困ったら自分を呼べ"と出かける前に話してくれたが、いつも彼に助けられるのには申し訳が立たなかった。それに、自分で決めたことは自分でやり遂げたかった。
 少し悩んだ末、オービュロンは人気のない行き止まりに姿を消す。そして、人間の姿に擬態した。行き止まりから再び姿を現したオービュロンの姿は、金髪のショートヘアにサングラスをかけた、清楚な白いワンピースを身に纏った少女だった。
 余談だが、オービュロンは何故か人間に擬態する時は女性の姿である。だからといって、オービュロンの性別が"女性"である訳ではない。本人ですらもそれに普及する素振りを見せないので、宇宙人にとって性別はないものに等しいのだろう。



「ヨーシ。コレナラ大丈夫。かんぱにーの人に見つからなければバレマセン」



 自分の頬にペタペタと触れつつも、気合を入れて新たな街に乗り出すことを決めたオービュロン。そんな彼の決意を後押しするように、陽光は柔らかく街を照らしていたのだった。












 しばらく歩みを進めていると、城下町が少し遠くなってきた。どちらにしろ、ダイヤモンドシティを経由せねば新たな街へと足を運ぶことは出来ない。
 道中カンパニーの連中と顔を合わせないようにと祈りながら、オービュロンは街と街を繋ぐ橋まで移動を始めた……の、だったが。



「(……ン?)」



 ―――ふと、彼の目線に違和感を感じた。視界の右端。そこに、普通ではあり得ない"色"が見えた。
 白と黒。彼が感じた色はそれだった。オービュロンは自分が街に来てから2週間の思い出を頭の中に掘り起こしてみるも、橋の付近にそんな目立つ色がある記憶は無かった。
 ならば。見えたものは一体何なのだろうか。もしかしたら、自分と同じようにどこかから落下してきた宇宙人かもしれない。
 一瞬恐怖は勝ったものの、元々倒れている存在を放置できない程にはお人好しなのがこの宇宙人、オービュロンなのである。とりあえず様子を見るだけ、とその"白と黒"に近付いてみることにしたのだった。



「(関係無ければスグ立ち去ればイイダケの話デス)」



 自分にそう言い聞かせ、恐る恐るその色に近付いてみる。そこに倒れていたのは―――"人"だった。



「!!!」



 見えたものは髪の毛だったのだ。派手なメイクをした、派手な髪型の青年。そして、彼の傍に落ちている白と緑の柄の卵。オービュロンに目に入って来たものはそれだった。
 青年は気絶をしているのか、こちらに気付く気配はない。更に、オービュロンは更に違和感を感じた。青年から生気を感じないのである。もしかしたら死んでいるのかもしれない、そう思い慌てて近付き彼の身体に触れてみる。触覚で目覚めてくれることを信じて。
 しかし……。



「ツメタイッ!!!」



 青年の身体は、まるで氷のように冷たかった。いや、氷以下だった。こんな体温だが、脈を測ってみると弱々しいがしっかりと鼓動を刻んでいた。頬にも、足にも、ジャケットで隠れているが白い腕にも。不気味な蔦のような黒い文様が広がっていることからも、倒れている"彼"が異常だということはすぐに理解が出来た。



「(ソレニ…。わりおサンと同じヨウナ気持ち悪さを感じマス。モシカシタラ…急がなければ手遅れにナッテシマウかもシレマセン)」



 オービュロンはもう1つ、青年に違和感を覚えていた。ワリオが暴走していた時に感じた気持ち悪さと同じものを彼から感じたのだ。
 ワリオの気持ち悪さの正体は"邪神の邪気"だった。もしそれと同じものが彼の身体を蝕んでいるのならば……。最悪の想像をしてしまい、オービュロンはぶるぶると首を横に振った。
 その不穏を確信に変える為、オービュロンは震えつつも青年の頬に広がっている蔦のような文様に触れてみる。その瞬間、彼の身体をぞわりとした悪寒が駆け巡った。
 急がなければ間に合わない。彼が死んでしまう。オービュロンは即座に結論を出した。



「(マズイ…!早く議事堂に連れて帰らネバ!)」



 氷のような冷たさを我慢し、オービュロンは青年を背負った。女性の身体の為体格はそこそこあるが、寒い、冷たいのがそこそこ強い宇宙人なことが幸いしたのだろう。1人でも何とか移動することは出来そうだった。
 移動しようとした最中、ふと彼の傍に落ちていた卵に彼は目を向けた。一応持って行った方が良いだろうか。しかし、彼は今青年を背負っている為抱えて走ることが出来ない。ならば、どうすべきか。



「(……だいやもんどしてぃに入ってナイデスシ、ダ、大丈夫デスヨネ…)」




 オービュロンは念力で卵を浮かせ、青年を背負い直し議事堂まで急いで戻ったのだった。

Ep.02-1【強者どもの邂逅】 ( No.58 )
日時: 2022/03/22 22:05
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 まだ午前中という時間も幸いしてか、運よくオービュロンが知り合いに見つかるということは無かった。
 出来るだけ人気の少ないところを通り、やっとの思いで議事堂に辿り着く。彼が走っている間にも、背負っている青年の身体はどんどん冷たくなっていた。
 まるで飛び込むかのように議事堂に駆けこむと、偶然エントランスに求めていた人物がいた。大典太と数珠丸が何か紙のようなものを持って話をしていたのだった。
 オービュロンは急いで二振の元へ駆け寄り、彼らに話を求めた。



「みつよサン!じゅずまるサン!」
「ん?どちら様でしょう…。大典太殿、彼女とお知り合いですか?」
「……いや、こんな奴とは話したことが無い…」
「(アアッ!コレハワタシダト気付かれてイマセン…!)」



 しまった、とオービュロンは思った。この擬態した姿は今まで誰にも見せていないのだ。声はオービュロンと同じなのだが、容姿が全然違う為彼だと気付く者はこの中にはいない。大典太も数珠丸も気付けなくて当然なのだ。
 しかし、ここで無駄話を続けていると、背負っている青年の命が危ない。ならばどうすればいいのか。自分のことはいい。とにかく彼のことを話さねば、事は進まない。
 オービュロンはとりあえず後ろの青年に気付いてもらうよう言葉を続けた。



「ワタシのコトは後でイイデス!トニカクコノ人を助けてクダサイ!」
「……後ろ。―――ッ?!」
「邪神の邪気…。ワリオ殿と同じようなものですか?!」
「……いいや。邪気に蝕まれているのは同じだが……こんな状況は初めてだ。だが、話している場合ではなさそうだな。あんた、その男をソファに寝かせてもらえるか」
「承知シマシタ!」
「(この声…。もしかしてオービュロン殿なのですか?)」
「数珠丸。あんたは毛布を借りてきてくれ。体温が下がっているんでな…。生きているのが不思議なくらいだ」
「すぐに取ってまいります」



 青年からワリオと同じ邪気を感じた者の、青年の意識があるようには見えなかった。更に、顔や腕、足に黒い蔦のような文様が浮かび上がっているのは初めての光景だった。
 彼の生気があまりないことから、猶予は残されていないと判断した大典太はすぐに青年をソファに横たわらせることをオービュロンに指示した。その間に、数珠丸に毛布など暖かいものを持ってくるように頼む。
 オービュロンが静かに青年を横たわらせる。白と黒が目立つ不思議な髪型をしており、元々色白なのだろう。しかし、今はそれが生気を感じられない程に青白くなっていた。
 恐らく、彼を蝕んでいるのは全身に広がる黒い蔦が原因だと大典太は結論を付けた。それが悪の神"アンラ・マンユ"の仕業によるものだとも。試しに彼の手に触れてみると、その身体は驚くほどに冷たくなっていた。本当に、心臓の鼓動が続いていることが奇跡に思えた。


 急がなければ青年の命はない。そう判断し、自分の霊力を手に集中させ、青年の心臓部分にかざす。そして、彼の身体に自身の霊力を送り込んだ。
 すると―――。青年の身体が淡く光り出し、ぱきりという音と共に黒い蔦が粉々に砕け始めた。大典太の霊力で、青年の身体を蝕んでいる呪詛を1つずつ丁寧に砕いているのだろう。
 粉々になった黒い蔦は、重力に従い床に落ちて消滅していく。オービュロンは黙って見ていることしか出来なかった。



「アノ、みつよサン。コレハ…」
「……あぁ。あんた、オービュロンか。気付けなくてすまんな…」
「ア、イエ。今はイイノデス!コノ方カラ出ているソレ…。わりおサンを暴走サセテイタものと一緒デスカ?」
「……そうだな。ワリオを蝕んでいた邪気と同じものだ。何故こんな文様として現れたのかは分からんが…。あいつらとは違って、こいつの精神ではなく身体そのものを蝕んでいたように思える。
 あんたが連れ帰るのがもう少し遅ければ、死んでいたかもしれんな」
「シ……ヒッ…!」



 大典太が淡々と推測を口にする間にも、青年にまとわりついた文様は少しずつガラスのように砕け散っていく。彼が発した"連れ帰るのがもう少し遅れていれば、彼は死んでいた可能性がある"。その事実を改めて言葉として受け取ったオービュロンは、思わずひゅ、と喉を鳴らした。
 本当に間に合ってよかった。あの判断は間違ってなかったのだと、必死に自分に言い聞かせた。


 また、しばらく彼らの様子を見る。青年の顔色も少しずつ良くなっているように思えた。ぱきり、ぱきりという不気味な砕ける音も少しずつ小さくなっている。呪詛の解呪がもう少しで終わりそうだと誰もが思った。
 後ろから静かに歩いて来る足音が4つ聞こえた。後ろを振り向いてみると、毛布をかかえた数珠丸と、バケツを持った前田がそこにいた。数珠丸は道中前田と鉢合い、事情を話し蒸しタオルを準備していたのだった。
 前田は生気を失った青年の姿を見て、その顔を歪ませる。彼にも悪の神の邪気が感じ取れたからだった。



「大典太殿。お持ちしました。念のために前田殿にご協力いただき、蒸し布もご用意いたしました」
「……ありがとう。そこに置いといてくれるか」
「大典太さん。彼は……あの神の呪いを直に受けてしまったのですか」
「……そうだろうな。誰かを庇ったか、誰かを助けようとしたか…。詳細は分からんが、あの神がなにもないのに不要に術をかけるとは思えない」
「モウ少し遅れていたら、手遅れにナッテイタ…ソウデス」
「成程…そうなのですか。ファインプレーですね、オービュロン殿!」
「ファ?!気付いてイタノデスカ?!」
「えっ。声で気付きますよ。まさかお二人共、気付かなかったのですか?」
「…………」



 その場を取り繕うように沈黙が流れる。一瞬気付かなかったのは事実だが、刀種が違うせいだということにしておこう。彼らはそう結論付けた。前田は不思議そうに首を傾げていた。
 その間に、青年を蝕んでいた最後の蔦のひとかけらが床に落ちて割れる。それを確認した後、大典太は彼から手を離した。既に彼の命を削る呪いは取り去った。大典太はそう判断した。



「……身体を纏っていた呪詛は全部取り除いた。後はこいつの体力が回復するのを待つだけだな…」
「ふむ…。ですが、ソファで休んでいては回復するものも回復しないのでは?―――先程ラルゴ殿に事情を話し、医務室の使用許可を得てきました。そこのベッドに寝かせましょう」
「……確かに。言われてみればそうだな…。こいつは俺が背負っていく。医務室の鍵は」
「既に借りております。準備万端です!」
「早く行きまショウ!」




 大典太が青年を背負う。男性にしてはあまりにも細く、軽いその身体。もしかしたらきちんと食事が出来ていないのかと心配になるが、体温は少しずつ戻って来ていた。オービュロンがソファに寝かせた時とは比べ物にならない程だった。これならば、彼の意識が戻るのもそう遠くはないだろう。
 一同は青年に衝撃を出来るだけ与えないように気を付けながら、医務室への道を急いだのだった。


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