二次創作小説(新・総合)

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繋がる世界と未来の物語【Ep.04-2完結】
日時: 2025/10/03 21:52
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 ―――これは、"全てを元に戻す"物語。
 それが例え、紡いできた絆が離れる結果となったとしても……。


 どうもです、灯焔です。
 新シリーズ発足です。大変お待たせいたしました。プロットの詳細を決めている間に相当時間がかかってしまいました。
 サクヤ達がどういう運命を辿るのか。この終末の物語を、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
 この作品は版権作品同士の『クロスオーバー』を前提としております。
 また、オリジナルキャラクターも登場します。
 苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。


※物語を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】 >>1
【取り扱いジャンル】 >>2


<目次>

Ep.00【舞い戻れ、新たな異世界】 完結
>>3-7 >>11 >>12-17

Ep.01-1【繋がりの王国】 完結
>>21-25 >>28-33 >>36-37

Ep.01-2【宇宙からの来訪者】 完結
>>39 >>40-48 >>49-53

Ep.02-1【強者どもの邂逅】 完結
>>55-56 >>57-59 >>60-63 >>66-67

Ep.02-2【黒と白と翡翠の車掌】 完結
>>70-73 >>74-76 >>77-78 >>79-81
>>82-85 >>86-89

Ep.03-1【ドルピックタウンにて最高のバカンスを!】 完結
>>112-113 >>114-119 >>122-126 >>127-130

Ep.03-2 【音の街と秘密の音楽祭】 完結
>>137-138 >>139-144 >>145-148

ep.04-1 【天下五剣が集うとき】 完結
>>166 >>167-171 >>172-176

Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 完結
>>178 >>179-180 >>181-185 >>186-188


※サブエピソード※
Ep.01
【新たな世の初日の出】 >>38
【商人の魂百まで】 >>54

Ep.02
【夢の邪神の幸せなお店】 >>68
【襲来!エール団】 >>69
【線路はつづくよどこまでも】 >>90
【記憶はたゆたい 時をいざなう】 >>109-111

Ep.03
【合流!若きポケモン博士】 >>131
【六つの色が揃う時】 >>132
【狭間の世界での出来事】 >>133-134
【翡翠の地からの贈り物】 >>135-136
【繋がりの温泉街】 >>151

Ep.04
【月と超高校級の来訪】 >>177


※エクストラエピソード※
Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 完結
>>91-95 >>96-101 >>102-104 >>107-108

Ep.03-ex【とある本丸の審神者会議】 完結
>>152-154 >>155-160 >>161-163


<コメント返信>
>>8-10 >>18-20 >>26-27 >>34-35
>>64-65
>>105-106
>>120-121
>>149-150
>>164-165


最終更新日 2025/10/03

以上、よろしくお願いいたします。

Ep.01-1【舞い戻れ、新たな異世界】 ( No.24 )
日時: 2021/12/13 22:43
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 ヘリコプターはぐんぐんと加速し、すぐに窓の外には海の景色が広がった。
 サクヤ達がこの世界に移動してからどれくらいの時間が経っただろうか。太陽は傾きかけ、海を静かに照らしている。いつの間にか日没の時間になっていたようだ。
 ヘリコプターの中では、各々クッパ帝国までの時間を潰していた。窓から景色を眺める者、この世界の地理を改めて考える者、物思いにふける者―――。


 そんな中、ルークはちらりと隣に座っているアーロンの様子を見る。アーロンは空を飛ぶ乗り物が苦手であった。そんな彼のことだ。今暴れられたらひとたまりもないことをルークは理解していた。
 当のアーロンは―――。気絶するように眠っていた。いつもの4人であればいざ知らず、今は部外者も一緒に乗り込んでいる。自分がヘリコプターに乗るのが苦手なのを悟られたくないのだろう。
 目的の人物が大人しくしているのを確認したルークは、ほっと一息をついた。彼が様子を見ている間にも、ヘリコプターは空路を進んでいく。この調子であれば、日没までにはクッパ帝国に到着できるであろう。
 ルークはそう判断し、彼に習い少し仮眠を取ることにしたのだった。










「おーい。ルーク、ルークったら」



 モクマの声が聞こえる。ぱっと目を見開くと、目の前で手を振っている声の主がいた。
 どうやら仮眠をするつもりが深く寝こけていたらしい。思わずすみません、と謝罪の言葉が口から飛び出る。周りを見渡してみると、既にヘリコプターは陸地へと降り立っていた。
 ルークは慌ててよれていた服を整え、ヘリコプターから降りた。既に彼以外のメンバーは降りていたようだった。



「色々あったから当たり前だけどよ、よくヘリコプターの中で寝れるよなオメー…」
「すみません…。飛空船の中でも、気持ちよくなると寝ちゃうタイプでして…」
「本来ならば敷地の中で下ろせればいいのですが、急を要したのでここまでが限界でして…。歩いてすぐのところに城門が見えますので、そちらからクッパ城へお入りください」



 操縦士に見送られ、早速クッパ城への道のりを進んでいくことにした。
 先程まで青々としていた景色は真逆になり、至る所に溶岩やマグマが立ち込めている。間違って触れれば火傷では済まない。クッパ城までの道のりは幸い整備されているが、仮に落石などがあってもおかしくはないような場所だった。
 早く城門を潜った方がいいだろう。そう判断した一同は、教えられた道を真っすぐ進むのだった。










「暑いですね…」



 サクヤがぽつりと呟いた。
 大典太は横目で彼女の体調を見やるが、確かに熱気でいつもの元気を失っているように見えた。しかし、そういうものに弱いのであれば予め喋っておくはずだ。環境の変化についていけなかったのだろうか。仮にも『四神』と呼ばれた存在が。
 ぐるぐると頭の中で考えを巡らせている彼の耳に、アクラルが呆れたような声が入る。



「そりゃ溶岩とマグマに囲まれた中歩いてっからなー。サクヤ、暑さにめっぽう弱いから守ってやれよオメー等」
「えっ…?!」



 彼の言葉を耳にした瞬間、サクヤに仕える刀剣男士が一斉に目を丸くして驚いた。
 その反応に、アクラルも思わずぎょっとする。今の今まで誰も知らなかったのだ。当然の反応だが、一斉にやられた為アクラルも思わず同じ表情をしてしまっていた。



「まさか…聞いていなかったのか…?俺も暑さは苦手だが…サクヤの方がもっと苦手な筈だぞ…」
「そんなこと、主君は一言も仰っていませんでした!てっきり苦手なものはお酒だけかと…」
「神だからって何でも得意なワケじゃねーかんな。俺だって甘い物は苦手だし、ニアにだって嫌なものの1つや2つ当たり前にあると思うぜ」
「……主。大丈夫か」
「もう少しですし…大丈夫です。私のことは心配いりません…」
「……足元がおぼつかなくなっているぞ。俺に掴まれ、主…」



 サクヤは心配させまいと気丈に返すが、足取りが既にふらついていた。咄嗟に大典太が手を差し伸べ、サクヤに捕まる様に促す。
 彼が主を支える形で何とか姿勢を正したが、サクヤの握った手の汗が物凄い量になっていた。これは急いで建物の中へ避難せねば不味いことになる、と大典太が判断するのは難しいことではなかった。



「ほら、城門が見えてきましたよ!入ったら少し休ませてもらいましょう」
「いくらおじさんでも…この暑さは堪えるわぁ。寄る年波には勝てないのよ…」
「まだ40超えてねーのに何言ってんだおっさん」
「30後半も40前半もそう変わんないの!あー、建物着いたら水風呂入りたい…」
「サクヤ嬢が極端に暑さに弱いのは分かりましたが、我々が長居して良い場所でもなさそうですからねェ。早いところ門を潜ってしまいましょう」



 視界に城門が見え、歩く速度を速める一同。数刻もしないうちに目的の場所へと辿り着いたのだった。
 門の前にはヘルメットとコウラを装備した亀らしき人物と、のんびりした印象の生物がおり話をしている。恐らく彼らが門を守るいわば"門番"の役割をしているのだろう。
 早速彼らに話しかけようと近づくと、気配に気づいたのか2匹の生物はこちらに顔を向けてきた。



「な、なんだぁ?!ぞろぞろと軍隊みたいなのが来たぞ?!どうする?クッパ様にご報告するか?」
「うーん…。待って。クッパ様 何か言ってなかったか?」
「何か? ……もしかして、今日来る客人のことか?」
「うん。"黒い髪に青いメッシュの髪"のニンゲンが現れたら 客人だから 城の中に入れるようにって クッパ様が仰っていたはず…」
「おお…?おお!あの支えられてる奴か!なら門を開けないとな!」



 2匹は一同の姿を見て、城門を開ける為動いた。行動が伝わったようで、向かってくる人影の警戒する雰囲気もすぐに解けた。
 一番前を歩いていたアシッドが門の前に辿り着き、ヘルメットを被っている亀に話しかけた。



「クッパ大魔王の部下とお見受けする。先程謁見の依頼をした者だが…」
「亀と……何て言ったらいいのかな、わけのわからない生物がいる」
「分からないなら黙っていた方がいいですよ、モクマさん」



 アシッドが会話をしている間、一同は言葉を発さず黙って待った。それが一番早く城の中に入れてもらえると誰もが判断したからだ。
 クッパの部下は、その言葉に2回頷いてこう返してきた。



「クッパ様は玉座の間にいらっしゃる。この門を通ったら城の中に入るから、真っすぐ進めば謁見が出来るぞ」
「分かった。暑さでやられた輩もいるのでね。少し休ませたいのだよ」
「ならばそのことも伝えておこう。ガボン、他の部下に冷たいタオルを用意するよう伝えてくれ」
「分かった!ハンマーブロス!」



 ガボン、と呼ばれた緑色の生物はすぐに門の向こうへと走り去っていった。
 その後を追うように、アシッドは門の向こうへと消えていく。後ろを歩いていたルーク達もそれに続き歩いて行った。
 しんがりを歩いていた大典太とサクヤが城の中に入ったと同時に、ハンマーブロスは外に誰もいないことを確認する。そして、内側から門を閉めたのだった。
 外からの熱気が封じられたのか、サクヤが大典太を掴んでいる手を離した。大丈夫かと問われたが、その顔は溶岩地帯で見た時より多少良くなっているように大典太には感じられた。



「……無理するなよ」
「お気遣い感謝いたします。ですが…へたってはいられないのでね」



 相変わらず気丈に振る舞う彼女に、少し眉を潜める大典太なのであった。










「おお!懐かしい面々なのだ!久しぶりだな!」
「そういうオメーも元気そうだな!」
「ガッハッハ、元気満々だぞ!それに、最近はマリオパーティの邪魔を直々にしてやったところだ!悔しがるマリオの顔が忘れられないなぁ~!その時のマリオの顔、オマエ達に見せてやりたかったなぁ~!」
「楽しそうならそれでいいよ…」



 サクヤと大典太が一同に追いつくと、既にアクラル、アカギと玉座に座るクッパが楽しそうに会話をしていた。マリオパーティの宴でマリオを直々に痛めつけてやった、と豪語している。何があったかはご想像にお任せする。
 傍らではノコノコのノルン、そしてカロンのカノンが氷入りのバケツを持って立っていた。ガボンに言われた通り、中にタオルがあるのだろう。
 ノルンはサクヤの姿を見かけ、笑顔で手を振ってきた。



「サクヤさん!お久しぶりです!元気…ではなさそうですね」
「熱気でバテてしまいまして…。申し訳ありません、みっともない姿を見せてしまいました」
「仕方ない…。クッパ城があるのは…火山地帯の頂上…。暑さに弱い奴は…バテるのも…仕方ない…」
「ガボンさんに言われて氷タオルを持ってきました!使ってくださいね」
「ありがとうございます」



 ノルンから氷タオルを受け取り、首元に軽く押しあてる。ひんやりとした冷気が身体に伝わり、先程まで火照っていた身体が静まっていくのをサクヤは感じていた。
 その様子を見ていたクッパは窓から外の様子を見る。溶岩地帯ではあるが、空は他の地域と変わらなかった。既に日は落ちており、暗闇が空を覆っていた。



「うむ。折角来たのだから2、3日休んでいくと良い!客人用の部屋はたーっぷりあるのでな!ガッハッハ!」
「それはありがたい話だね。今晩どうしようか考えていたところだから」
「客人用の部屋って…檻の中、とかじゃないですよね…?」
「客人にそんな失礼な真似をするわけないじゃないですかーっ!大丈夫です、普通のお部屋です!」
「なら安心したよ。だが…部屋を使わせてもらう前に本題を片付けてからにしたいんだが…いいだろうか」
「本題…。あぁ、リレイン王国の王族についてだな」



 どうやらクッパの計らいで当分の宿には困らなさそうだ。彼の気遣いには感謝するとして、ナデシコは素早く本題に切り込んだ。休ませてもらう前に片づけておかねばならない問題があったからだ。
 クッパは思い出したようにそう言葉にするが、表情は明るいものではなかった。



「えーっと…。確かお話では、リレイン王国の王族のみなさんを王国に連れ戻したい…。そういうことでしたよね?」
「そうだ。それが我々の今回の目的だからな」
「むむ…。確かにあいつらは今、ワガハイの城の地下牢に閉じ込めてある。しかし勘違いするんじゃないぞ!これは不可抗力なのだ」
「不可抗力、だぁ?」
「あぁ…。悔しいことに…クッパ軍団も…今のヴォイド大帝国の軍事力には敵わない…。だから…表向きにでも従う振りをしなければ…クッパ帝国が滅びてしまうと…クッパ様はお考えになったのだ…」
「唐突だったのだ。ヴォイド大帝国のヤツらが急にワガハイの城に現れてな。縄でグルグル巻きにしたリレイン王国の王族を地下牢に閉じ込めろ、と。そう言ってきたのだ。
 ワガハイとて逆らいたかったが、従わなければ部下が痛い目に遭うとそうハッキリ告げられて…。つい、承諾してしまったのだ!苦渋の決断だったのだー!」
「……唐突にこの城に捕らえるよう命令が来たのか?妙だな」



 クッパは悔しがるように吐き捨てた。本来であれば総力を持って立ち向かったのであろうが、自分の軍とは桁違いに軍事力が違う。個々の能力が高くても、数で押し切られては意味がない。
 部下を失う訳にはいかない、と渋々大帝国の命を承諾し、リレイン王国の王族は現在地下牢に捕らえてあると言ったのだった。

 大帝国にとって脅威になる存在ならば、なぜ他の帝国の地下牢に閉じ込める必要があるのだろうか。相手の出方が分からず、頭の中は混乱を極めていた。
 沈黙が続く中、ふと小狐丸が口を開いた。



「口ぶりからして…彼らに手荒な真似はしていないという解釈でよろしいでしょうか?」
「はい。従わないと何をされるか分かりませんので、地下牢に閉じ込めてはいますが…。それ以上のことは何も。拷問などもってのほかです!食事も…その時だけ折から出してこっそり一緒に食べてます…」
「そうか…。でも、クッパさんの一存では王族の皆さんの解放は難しそうですね。ヴォイド大帝国、という国のトップに話をしないといけないわけか…」
「そのようです。とりあえず…王族の皆様のいらっしゃる場所は分かりましたし、謁見を試みては如何でしょうか。面会は大丈夫なのですよね?
 大帝国に向かうかは彼らと話をしてからでもよいかと私は考えております」
「あぁ…。会いたいのなら…地下牢の場所まで案内する…」



 捕らえはしたが、手荒な真似はしていない。クッパ軍団は全員そう答えた。
 ならば、普通に話が出来るのではないか。小狐丸の言葉に続き、数珠丸も自分の考えを一同に告げる。反対する者は特におらず、まずは彼らに会って話をする。それから大帝国へ向かうかどうかを決めることになった。
 クッパはノルンとカノンに案内を任せ、他の部下たちに客人用の部屋の準備をするように命令をした。2匹は早速地下牢へ案内する為、玉座の間にある西側の廊下に一同を案内した。

 冷やしタオルをしばらく当て続け、ふわふわとしていた頭からサクヤはやっと解放された。しかし、ぼーっとする感覚は収まらない。棒立ちになっていた彼女に大典太が声をかけた。



「……おい、主。皆はもう行ってしまったぞ」
「申し訳ありません。暑さで頭が想像していたよりもやられていたようです…」
「主君…。お部屋で休んでいた方がよろしいのでは?お話は僕達が聞いてきます」
「いいえ。今後に関わる大切なお話ですし、直接謁見がしたいのです。ノルンさん達の機転のお陰でだいぶ頭も冷えて参りましたし…もう大丈夫ですよ」
「ならばいいが。倒れるなよ、主」
「……あんたはいつでもストレートな物言いだな」
「回りくどく言うよりもいいだろ。ほら、見失うぞ」




 鬼丸が指さした先には、小さくなったノルン達の姿が見えた。確かにこのままでは見失ってしまう。
 サクヤ達は急いで彼らの後を追って走って行ったのだった。

Ep.01-1【舞い戻れ、新たな異世界】 ( No.25 )
日時: 2021/12/15 22:55
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 2匹の案内に従い、地下の階段を下っていく。
 その先に広がっていたのは、殺風景な檻が立ち並ぶ景色だった。重々しいコンクリートの壁と、そこに掛けられている飾りが目に入って来た。
 檻は殆どが使われておらず、中には誰もいない。しかし、一番手前の2つの檻の中に高貴な雰囲気を醸し出す人物が座っていた。

 最も手前にある檻に入っているのは、王冠を被った威厳のある男性と、ライトブラウンの美しい長髪をなびかせる、ティアラをつけた少女だった。
 その1つ奥にある檻に入っているのは、黒い短髪の爽やかな雰囲気の男性と、金髪をポニーテールに纏めた凛々しい表情の少女だった。
 確認をしなくとも、クッパの言っていたリレイン王国の関係者であろう。檻に近付こうとすると、ノルンが一旦その足を止めた。



「ご想像には容易いと思いますが…。一番手前の牢に入ってらっしゃるのがリレイン王国の王様とお姫様です。その隣の牢にいらっしゃるが、彼らに仕える兵士さんです」
「王族だけじゃないんですね」
「ボクは彼らを捕えた場に同席していないので詳しいことは分かりませんが…その場に残っていたのがこの4名だったそうなんです。
 王族だけを捕えるならば彼らも、と兵士さん達も一緒に連れてきたと聞いています」
「成程…。お話をしたいのですがよろしいでしょうか?」
「あぁ…。ここから出たいなら…またオレ達に話しかけてくれ…」
「ありがとうございます」



 そう伝えると、ノルンとカノンは地下牢の出入口まで駆けていった。
 サクヤはそれを確認した後、国王であろう男性が座っている檻の前まで歩いて行った。



「リレイン王国の王とお見受けいたします。どうかお話をさせてはいただけませんでしょうか」
「……ぬ?お主は…」
「私は "サクヤ" と申します。ある事情から、リレイン王国の再起を図ろうと思っています。その為に……リレイン王国の関係者を探していたのです」
「どういうことです?いきなりそう言われても分かりませんわ」
「申し訳ありません。かいつまんでお話しすると、ですね…」



 サクヤの声に気付いたのか、王と姫は彼女の方を向いた。ストレートに"王族を助けに来た"と話したが、王と姫は何のことやら分からず首を傾げている。
 姫の言う通り、まずは何故ここに来たのかを説明しなければならない。しかし、異世界のことを話してしまっては更に不信感を募らせるかもしれない。サクヤは少し考えた後、異世界のことを黙ったまま事の顛末を王族に説明した。
 "自分達を助けに来た"。言葉だけで言えば聞こえがいいものだ。しかし、いくらなんでも唐突に訪れたその声に、王と姫は戸惑いを隠せないでいた。



「お話は分かりました。しかし…何故貴方達が私達を助けに来るのです?見たところ、リレイン王国の住人ではないとお見受けしますが。正直…唐突過ぎますし、信じられないという気持ちが強いです」
「それも無理はない。唐突なのだからな」



 サクヤが返答に困っていると、隣にアシッドが立った。どうやら助け舟を出してくれるらしい。
 王と姫も、流石の世界的に有名な社長の顔が分からない訳ではなかった。アシッドの顔を見た瞬間、驚きの声を上げる。



「な…!ネクストコーポレーションの社長がここに来るとはな…」
「存じ上げてくれていたか。それは嬉しいな。まぁ、彼女は私の友だ。今回は私の用事に付き合ってもらう形でここに来てもらっている。
 ……さて、本題に戻ろう。我々はこれから貴方達の解放の交渉をしに、大帝国まで直接向かう予定だ。君達を救いたい、という気持ちはこの場にいる皆が同じ思いを抱いているぞ。それだけの話だ」
「なんの疑いもせず、我々を助けに来たのですか?とんだお人好しですわね…」
「噂によると、リレイン王国は積極的に他の種族と関わる国だと聞いている。貴方達も似たようなものではないか?」
「そう言われると…返す言葉が見つからんな」



 続けてアシッドは"自分達のことは信用してくれなくていい。だが、必ず救う術を見つける"と伝えた。王も姫も自分達と同じようなお人好しなのは、彼らの瞳を見てすぐに分かった。
 自分達のことを見定めるような目ではない。しっかりと顔を見て、信用できるかどうかを判断しようとしているのだ。
 サクヤもアシッドの言葉に続け、自分の気持ちを伝える。



「私もアシッドさんと同じく、貴方達を助ける手立てを考えたい。それだけでも分かってほしいのです」
「ま、唐突に目の前に現れて『お前を助けに来た』って言われても…普通は信じられねぇよな。ドギー」
「あはは…そうだね…」



 ルークも似たような経験があるらしい。アーロンの皮肉に近い言葉に苦笑していた。
 王は彼らの話を聞いている間、顔を真っすぐ見ていた。そして―――納得したような表情でサクヤ達にこう返してきた。



「お主らの気持ちはよく分かった。だが…もし交渉が決裂した場合はどうする?儂等はおろか、儂等を捕らえているクッパ帝国…そして、お主等の命も危険に晒されることになる。
 ヴォイド大帝国とは、そういう危険な国なのだ」
「まぁねぇ。"王様達を解放してください!"って直接交渉しに行ったとて、素直に返してくれるとはおじさんも思えないよ」
「ここにいる奴の命が1つ、2つ消えてもおかしくはないな」
「……縁起でもないことを言うな」
「想定される可能性を言っただけだ。王の瞳がそう言っているぞ」
「ですが…。帝国の動きも妙だと私は感じています。もしお二人を脅威に感じていたら、わざわざ別の帝国に監禁を命じたりする、なんて回りくどいことをするでしょうか?
 これは帝国側がまだ温情を持っているという可能性に他ならないと考えています。だから…多分、交渉自体は出来ると私は踏んでいます」
「……今でさえ生け捕り状態みたいなものだからな。本気で潰す気なら、既にあんた達の命はないと考える方が普通だ」
「それも、そうだな…」



 王は次々と流れてくる言葉1つ1つを噛みしめ、そして彼らの顔を真っすぐ見て"お主らを信じよう。もし交渉が成立したら、出来るだけの援助を約束する"と告げたのだった。
 驚いて隣で確認を繰り返す姫を王は宥める。隣で檻を揺らす音が鳴り響いている為、兵士達も王の返答に驚いたのだろう。
 だが、王の決意は揺るがなかった。彼らの真っすぐな瞳を、一度信じてみようと思ったのだ。



「お主らの健闘を祈っているぞ。儂等もリレイン王国をあるべき姿に戻したい。その気持ちは同じだ」
「あぁ。確かに受け取った。私達が必ずその檻から出してみせるさ。信じて待っていてほしい」



 アシッドがそう言った矢先、カノンがこちらにトコトコと歩いてきた。
 クッパから連絡が来たことを告げ、そろそろ面会時間が終わりに差し迫っていることを彼らに告げた。



「クッパ様が…そろそろ戻って来いと仰っている…。だから…面会は…ここまでだ…」
「あの気まぐれ大魔王に左右されるのかよ!まぁこっちはいさせてもらう側なんだし文句は言わねーけどよ」
「すみません…。では、直ぐに客室に案内しますね。別のクッパ軍団が玉座の間で待っていると思いますので、そこまでは案内いたします!」



 そう言って、カノンは地下牢の扉を開いて階段を昇って行った。それに続くように、ぞろぞろと1人、また1人と地下牢から姿を消していく。
 サクヤは部屋から出る前、ちらりと王家のいる檻の中を見やる。王は―――こちらを真っすぐ見据えていた。



「(……これは 失敗できませんね。彼らの為にも…)」



 彼らの信用を失墜させない為にも。必ず交渉を成功させると心に決めてサクヤは部屋を後にした。










 別のクッパ軍団に案内され、サクヤ達は客室で休ませてもらうことにした。流石に続けざまに帝国に交渉しに行くのは死活問題だと考えたからだった。
 客室の扉の前でナデシコは皆に向き直り、告げた。



「さて。これからの行動は…今日はもう遅い。今から移動して向こうからの襲撃を受けても、逃げ帰る体力もなければ困るだろう。明日の朝、大帝国に発つということでいいのだな?」
「それで大丈夫です。ナデシコさんはクッパ城に残って、連携を取るということでいいんですよね?」
「あぁ、そうだ。勿論歌姫もここに残ってもらうからな。全員で行って全滅しても意味がない。ある程度は戦力を分散させねばな」
「だったら…交渉に向かうべき人員を今のうちに決めてしまいましょう」



 仮に帝国への交渉が失敗した場合、危害がクッパ帝国にまで及ぶ可能性も示唆していた。王族への攻撃から守る為、ある程度の人員は残した方がいいとナデシコは続けて言った。
 話し合いの結果、ヴォイド帝国に向かうのはサクヤと大典太、ルーク、チェズレイ、アシッド、小狐丸というメンバーになった。

 刀を振るうつもりでいた鬼丸は不服そうだが、大典太が諭した。



「……鬼丸。ここへの襲撃の可能性も考えねばならん。そうならないのが一番だが…。万が一、ということもある。あんたは残ってくれ」
「―――ちっ。普段であれば嫌なんだがな」
「鬼丸殿。大典太さんの強さは貴方が一番よく知っていらっしゃる筈です!だから…大丈夫ですよ。僕達は僕達の主命を果たしましょう!」
「防衛も立派な任務ですよ、鬼丸殿」
「私も警戒はしておきます。必ず交渉を成功させましょうぞ」


「おじさんとアーロンは交渉事苦手だし、ここはそういうのに長けてる2人に任せた方がいいよね。最悪戦闘沙汰になる可能性は否めないけど…」
「メインが交渉な以上、僕とチェズレイが行った方がいい。アーロンとモクマさんはここに残って、クッパ軍団の人達と一緒に襲撃に備えてくれ」
「暴れられるならそれに越したことはねぇがな」
「相変わらず野蛮ですねェ。そうならないように頑張るのが我々の役目なのに。戦闘前提で話をされても困ります」
「喧嘩売ってんのかクソ詐欺師」
「いいえ?私は思ったことを正直に言ったまでですよ」
「アーロン!チェズレイ!明日早いんだしそこまでにしてくれ…」



 明日に向けての話を各々続けている最中、サクヤは部屋の前で待っているテレサと話をしていた。
 どうやらクッパがヴォイド帝国にアポを取ってくれるらしいが、すんなりと通してくれる可能性はあまりないと思った方がいいらしい、との答えが返って来た。



「それは…そうですよね。相手は巨大な軍事国家。出会い頭に剣先を向けられる可能性も視野に入れなければなりません」
「とにかく…気を付けてほしいんだゾ!クッパ様がこんなに手厚い援助をするなんて珍しいんだからナ!無事に戻ってこいヨ!」
「ありがとうございます。ノルンさんとカノンさんにもお礼を伝えておいていただけませんでしょうか?」
「そのくらいお安い御用だゾ!そんじゃーナ、ゆっくり休むんだゾ!」



 テレサを見送り、後ろから声をかけてきた大典太の方向を向きなおす。
 先程まで聞こえてきていた賑やかな声は既に静まり返っている。全員就寝の為に各々客室へと入って行ったのだろう。
 サクヤも早く休もうと、近侍と共に自分達に宛がわれた客室に入って行ったのだった。









「……主も前田も寝てしまったか」
「おまえも早く寝ろ。寝ずの番はおれがしてやる」
「別に野営ではないのだから…見張りはいらなくないか?あんたも寝た方がいい…」



 部屋に入って30分が経った。サクヤと前田は疲れからか用意されたベッドに潜りすやすやと寝息を立てている。
 大典太はその様子を優しく見守りながら、鬼丸に声をかける。見張りはいらないから寝た方がいい、と。
 鬼丸は肯定も否定もせず、眉間にしわを寄せたまま大典太をガン見している。やはり交渉に行けなかったことが気に障っているのだろう。
 これはもう彼は放置して自分も寝た方がいい。そう判断した大典太は電気のスイッチを落としに扉の方向へ向かうか、鬼丸の小さな声が大典太の足を止めた。



「……気配がする。邪神の気配だ」
「……?」
「大帝国の方角。もしかしたら…誰かに化けて機を熟している可能性がある。だからおれも行くと言ったんだがな」
「そうだったのか。なら主が起きた時にでも…」
「もう遅い。それに、おれが無理やり行くことを通したらおまえの強さを否定することになるだろ」
「……別に俺は強さなんて求めてない。……鬼丸。邪神の気配を感じるということは…あんた、まだ邪気が…」
「違うな。完全に取り込まれている時の後遺症がまだ少し残っているようだ。―――忌々しいものを残していきやがって」
「…………」



 鬼丸は"邪神の気配がする"と小さな声で言った。一度破壊をして祓った筈だが、まだ残っているのかと不安げな表情をして大典太は彼に問う。どうやらそうではなく、長年侵されてきた後遺症のようなものらしい。
 忌々しい、と不満気に漏らす鬼丸に大典太はサクヤに鬼丸も連れていくよう交渉しようとしていた気が完全に薄れてしまった。こんな状態では、邪神を見つけたら真っ先に斬りかかりそうだったからだ。



「くれぐれも気を付けろ。おれはおまえが折れた姿など見たくない」
「……せいぜい注意するさ。無事に交渉が成立したら一杯くらいは付き合ってほしいものだ…」
「一杯でも二杯でも付き合ってやる。だから…主と共に無事に戻ってこい」



 いつにも増して真面目な表情でそう訴える鬼丸の姿に、大典太はそれ以上は何も言わず静かに頷いた。
 途端、訪れる無言。お互いに会話のネタが尽きてしまったのだろう。このままぼーっとしていても時間が過ぎ去っていくだけだ。大典太は最初にやろうとしていた目的を果たす為、電気のスイッチがある場所にのそのそと歩いていく。
 鬼丸は無言で空いているベッドの上で布団を被ってしまった。



「(……邪神の気配、か。何事も無ければいいがな…)」




 そんな思いを胸に秘めたまま、大典太は電気を消し床につくのだった。

Re: 繋がる世界と未来の物語 ( No.26 )
日時: 2021/12/16 13:18
名前: おろさん ◆cSJ90ZEm0g (ID: C6aJsCIT)

どうも。お久しぶり(?)のこのタイミングでコメントさせてもらいますおろさんです。


・・・ついに新たなエピソードが始まりましたか。
刀剣男士や、他にも様々な方々と再開出来たのですか。
(但し『無事に』とは言いがたいのもいるようですけども・・・)

クッパ軍団とも再開したものの、よりにもよって敵陣に脅され、一国の王家の人達を閉じ込めるていたとは・・・


クッパ「むぅぅ・・・そっちの連中もタチの悪いことをしおって・・・」

うた「そういえば、こっちではアウトローに操られ「それは言うな!!」何で」



まだまだ嫌な予感もしますが、これから一体どうなるのか、無事も祈ってます。


今回はこれで失礼します。それでは。

Re: 繋がる世界と未来の物語 ( No.27 )
日時: 2021/12/17 22:15
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

どうもです。灯焔です。
寒くなる季節の中、皆様からいただけるコメントが暖かいです。ありがとうございます。
早速コメ返と参りたいと思います。



>>おろさん 様

どうもです。コメントありがとうございます。
ゆっくりではありますが、物語が進んでまいりました。訪れるごとに明らかになっていく、かつて絆を紡いだ人物達の現状……。無事だったり、無事ではなかったり。新たに邂逅した人物もいるようですね。

クッパ軍団も部下と仲間を守る為、渋々大帝国の命に従っています。何よりも部下を大切にするクッパだからこその苦渋の決断です。
サクヤ達は無事に王族を救うことが出来るのでしょうか。お話を楽しみに待っていてくださいね!

これからも応援よろしくお願いいたします!

Ep.01-1【舞い戻れ、新たな異世界】 ( No.28 )
日時: 2021/12/17 22:18
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 サクヤ達が床についてから一夜が明けた。
 現在彼女達は、ナデシコが宿泊していた部屋を拠点にして作戦会議を開いている。単純に彼女達が使っていた部屋が一番面積が大きかった、というのも集まった理由の1つだった。
 少数人数での交渉の為、素早く行って素早く戻ってこなければならなかった。それを前提に話し合いを続ける最中、客室の扉が勢いよく開いた。
 音の方向を振り向いてみると、そこにはクッパとノルン、カノンが立っていた。



「ガッハッハ!おはようございます!朝の挨拶は大事だからな!」
「おはよう…だけど…。大魔王なのに大魔王らしくないことしてる…」
「キサマらの顔を見ていれば分かるぞ!クッパ城のベッドは皆一流の素材ばかりを使っているからな!よく眠れただろう!」
「そうだな。ぐっすり眠れたよ。感謝せねばな。……して、我々は雑談をしている猶予はあまり残されていないのだが…。本題に移って貰えるかな? 大魔王」
「おっと、ワガハイとしたことが本来の目的を忘れかけていたぞ!オマエ達!ノルンとカノンも連れていけ!ワガハイの遣い、ということで話は通してある!」
「それは有難い話です。関係者がいれば、交渉はスムーズに進みやすいですからね。ありがとうございます」
「オレは話すのが苦手だが…ノルンはそういうことは得意だから…任せると良い…」
「か、カノンくん?!行く前からプレッシャーかけないでよぉ~!」



 昨晩、ヴォイド大帝国にアポを取っている最中にノルンとカノンを自らの遣いとして派遣すると言ってきたのだ。クッパ帝国とヴォイド大帝国は現状繋がりがある。ならば、何の関係もない者達で向かうよりか幾分かは戦闘沙汰を回避できる可能性が上がるとクッパは踏んで、2匹を寄越してきたのだった。
 彼の気遣いに感謝し、礼を言う。クッパは満足げに大笑いすると、"今日もマリオをジャマしに行くぞ~!" と自分の定位置に戻って行った。



「さて。では準備が出来た者からヘリに乗ってくれ。クッパ軍団に頼んで、昨日のうちに敷地内に移動してもらっているから安心してくれ」
「溶岩がひしめく中を歩く必要はないわけか。ひとまず安心した…」
「いつでも出発できるから、さっさと乗ってくれよな!俺だって暇なワケじゃないんだからさ~」



 おそ松がそう一同に伝え、ヘリコプターのある場所まで移動を始めた。
 彼が姿を消したと同時に、大帝国へ向かう面子は持ち物の確認を改めて始める。万が一戦闘沙汰になってしまった時に、武器の調子が悪ければ一気に劣勢になってしまう可能性があるからだ。
 ……大体の動きが止まったと察知したナデシコは、彼らに向き直り告げた。



「…皆、くれぐれも気を付けるように。このミッションは思った以上に厄介な代物になりそうだからな」
「……主君。無事に戻ってきてくださいね!みんなで待ってますから」
「はい。必ず戻ってまいります。王族の解放の言葉と共に」



 ナデシコが放った言葉を胸に刻み、大帝国に向かう面々が客室を後にした。
 彼らの背中を見守りながら、前田は改めて主君が、大典太が無事に戻ってくるように祈るのだった。









 ―――ヘリコプターは再び空を舞い、ヴォイド大帝国に舵を切っていた。
 窓の外から出も分かる。小さな村々の街頭に、不気味な赤黒い目玉がついたデザインの旗が掲げられている。おそらく、ヴォイド帝国内の敷地だということを示すものなのだろう。
 随分と長い距離を飛んでいるが、見える旗は同じものばかり。不思議に思った小狐丸が口を開いた。



「随分と敷地が大きな帝国なのですな」
「『ヴォイド大帝国』…。私も仕事上でしか敷地内に入ったことはないが、大陸の約5割を占有している大帝国だそうだ」
「5割…って、陸の半分近くを同じ国が占めているということですか?!」
「あぁ。かの国は軍事力が特に優れている。武器や魔法の開発にも積極的。技術の発展の為には、自らの技だけではなく他の技も吸収する柔軟な国、なんだが…。そのやり方が少々横暴でな。
 知識だけを吸収するには留まらず、国自体を自らの帝国へと吸収合併することも辞さない。そうして滅びた小国を、私はいくつも知っている」
「そうやって面積を広くしていき、今の大帝国になっている、という訳ですねェ。正に『侵略』という言葉がよくお似合いだ」
「……略奪の為には戦争も積極的に仕掛けていそうだからな、それだと…。兵力は相当に高いと考えた方がいい」
「軍事国家、ですか…。気を引き締めて取り掛からなければ」



 ヴォイド大帝国。
 東の大陸の約5割を占めている巨大な軍事国家である。今も国の面積と技術吸収の為、小さな国を次々と吸収合併して今の形態になっている、正に『侵略国』という異名が似合う国だ。
 そんな帝国と正面から交渉しに向かう。随分と大きな目標を立ててしまったとサクヤは思うが、必ず救出すると誓った王族がいる手前、売った喧嘩から逃げる術は持ち合わせていない。
 
 ルークは改めてナデシコから預かった地図のコピーをタブレットで開き、西の大陸と東の大陸を見比べてみる。確かにアシッドのいう通り、西の大陸には大きな、名のある国が転々と存在している。対照に、東の大陸は中心に『ヴォイド大帝国』と書かれている以外はぽつぽつと建物の名が記されている程度だった。
 クッパ帝国が侵略されなかったのは、火山に囲まれ攻めにくい地形だからというのもあるのかもしれない、と彼は想像した。



「皆さん!そろそろヴォイド大帝国の中核にあります『ヴォイド城』に到着いたします。シートベルトをお閉めください!」



 操縦士の指示に従い、一同は各々取り出していたものをしまい、着陸に備える。
 しばらくすると機体が一瞬揺れ、大人しくなった。窓の外から見えたのは―――。クッパ帝国とは比にならない程に大きい城門だった。
 ヴォイド大帝国の敷地内だ。これから何が起こるか分からない。警戒を怠らぬよう改めて確認した後、ヘリコプターから降りた。


 同時だった。









































『何者だ!!』




 ―――一番最初に降りたアシッドの首元に、槍の矛先が突きつけられていることに気付いたのは。


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