二次創作小説(新・総合)
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- 繋がる世界と未来の物語【Ep.03-ex完結】
- 日時: 2022/10/12 22:13
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
―――これは、"全てを元に戻す"物語。
それが例え、紡いできた絆が離れる結果となったとしても……。
どうもです、灯焔です。
新シリーズ発足です。大変お待たせいたしました。プロットの詳細を決めている間に相当時間がかかってしまいました。
サクヤ達がどういう運命を辿るのか。この終末の物語を、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
この作品は版権作品同士の『クロスオーバー』を前提としております。
また、オリジナルキャラクターも登場します。
苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
※物語を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】 >>1
【取り扱いジャンル】 >>2
<目次>
Ep.00【舞い戻れ、新たな異世界】 完結
>>3-7 >>11 >>12-17
Ep.01-1【繋がりの王国】 完結
>>21-25 >>28-33 >>36-37
Ep.01-2【宇宙からの来訪者】 完結
>>39 >>40-48 >>49-53
Ep.02-1【強者どもの邂逅】 完結
>>55-56 >>57-59 >>60-63 >>66-67
Ep.02-2【黒と白と翡翠の車掌】 完結
>>70-73 >>74-76 >>77-78 >>79-81
>>82-85 >>86-89
Ep.03-1【ドルピックタウンにて最高のバカンスを!】 完結
>>112-113 >>114-119 >>122-126 >>127-130
Ep.03-2 【音の街と秘密の音楽祭】 完結
>>137-138 >>139-144 >>145-148
※サブエピソード※
Ep.01
【新たな世の初日の出】 >>38
【商人の魂百まで】 >>54
Ep.02
【夢の邪神の幸せなお店】 >>68
【襲来!エール団】 >>69
【線路はつづくよどこまでも】 >>90
【記憶はたゆたい 時をいざなう】 >>109-111
Ep.03
【合流!若きポケモン博士】 >>131
【六つの色が揃う時】 >>132
【狭間の世界での出来事】 >>133-134
【翡翠の地からの贈り物】 >>135-136
【繋がりの温泉街】 >>151
※エクストラエピソード※
Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 完結
>>91-95 >>96-101 >>102-104 >>107-108
Ep.03-ex【とある本丸の審神者会議】 完結
>>152-154 >>155-160 >>161-163
<コメント返信>
>>8-10 >>18-20 >>26-27 >>34-35
>>64-65
>>105-106
>>120-121
>>149-150
最終更新日 2022/10/12
以上、よろしくお願いいたします。
- Re: 繋がる世界と未来の物語 ( No.105 )
- 日時: 2022/05/08 08:32
- 名前: おろさん ◆cSJ90ZEm0g (ID: CE4YyNoS)
どうも。久々に失礼しますおろさんです。
・・・一応世界がそれなりに復興したりとか、ダイヤモンドシティで色々騒ぎがあったり、ポケモン世界で誘拐だったりとか死人出かけたりとかタイムスリップとは何か色々ありますねぇ
そして今回はメイドインワリオカップが再び開催ですか。それで優勝賞品がまぁ・・・今までのメイドインワリオシリーズでの話といい今回といいワケアリな物品が多いですなぁ;
ソニックが初登場したり、マリオが再登場(で良いんですよね・・・?)したりして、優勝はマリィですか。凄いなぁ(?)
・・・そしてまた出てきたアンラの分身。計算外の事とかが起きたお陰か無事に自体を解決できたようですね。
ウィッチ「ところで、あの短剣はどうするつもりでしょうかね。」
むらびと「さぁ?」
・・・それでは、今回はこれで失礼します。
- Re: 繋がる世界と未来の物語 ( No.106 )
- 日時: 2022/05/08 22:20
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
どうもです。灯焔です。
欲求に走る前に"これは自己満足"と自分を暗示して平静を保っています。恐ろしいですね。
>>おろさん 様
どうもです。コメントありがとうございます。
今までに様々な事件やら起きました。1つ1つを乗り越えていく中で協力者が現れたり、支えてくれそうな人間が出てきたりと悪いことばかりでもなさそうなのが現状です。
今回の話、何故"2回目"なのか。初回はゴージャスのあれだからです。ワリオが見つけてくるものは大体が碌なものではないですが、今回も例に漏れず…という訳ですね。
実はこちらの"ソニックさん"、実在しておられます作者さんにオファーをして出ていただいた形となっておりますので、某ハリネズミではないのです。一応それを表す台詞はあるのですが、見ていただけましたかね?
この作品では何気に初登場のマリオとマリィが最終的に争い、マリィが優勝をかっさらいました。媒体が違うとはいえスターに勝った。本人も満足気なので良しとしましょう。
ただでことが終わるわけではなく、別の目的を持って参加していたアンラの分身が本性を現し襲ってきました。ですが、見事な連係プレイで犠牲を出さずに分身を撃破。ブラボーですね。
さて。解呪された信濃の行方はどうなるのでしょうか?今回の話は残り2話程となっております為最後までどうぞお楽しみください。
お忙しい中コメントありがとうございます。筆者のモチベアップにも繋がる為、お気軽にいただけるととても嬉しいです。
- Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 ( No.107 )
- 日時: 2022/05/08 22:35
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
会話も一通り落ち着いた後、オービュロンはマリィに信濃を返そうと動いた。元々は優勝賞品としてワリオが用意したものだ。安全になったのなら、彼女に渡すのが筋というものだろう。
しかし、その手をマリィは拒否した。呪いは既にないと説明を受けても、彼女は首を横に振った。
「うーん。あたしが貰っても…って感じ。なんか、オービュロンさんと一緒にいたがってる気がする」
「―――何?」
「あたしにはみんなが何言っとるか理解は出来ない。けど、何となくわかる。だから、あたしはいいよ。マリオさんに勝てたっていう実績だけで充分嬉しいから」
「まりぃサン…」
マリィのその言葉を聞いた大典太は、確信を持った。"オービュロンならば信濃を顕現出来るだろう"と。ならば行動は早い方がいい。そう判断し、彼はオービュロンに向かって信濃を顕現するように言った。
唐突な言葉に、オービュロンはぎょっとする。自分なんかが出来るわけない、と。
「エッ?ワタシナンカが顕現出来る訳がアリマセン!モット、心の強い人の方が適任デス!」
「……俺からしてみれば、邪気を纏った短刀を危険も顧みらず俺のところまで持っていく奴に"心が弱い"なんて言われたくないんだがな」
「ウゥ…。ソウ言われてシマウト反論が出来まセン」
「……ほら、ジンベエが前にやっただろう。あれと同じようにすればいいんだよ。信濃に向かって声をかけてあげてやればいい」
「ワタシニ出来るデショウカ」
「……出来る。信濃の声が聞こえたんだろう?だったら大丈夫だ」
不安がるオービュロンに大典太は優しく背中をさする。信濃の声が聞こえたのなら大丈夫だと。だから、優しく彼に向かって呼びかけてあげてほしいと。そっと彼の背中を押した。
オービュロンは大典太の言葉を受け、遂に覚悟を決める。信濃の本体を両手でそっと握り、宿っている付喪神に向かって心の中で語りかけた。
自分はここにいる。もう大丈夫だ、安心して出てきてもいい、と。
オービュロンが意識を集中させた刹那。信濃の本体が淡い光を放つ。その様子を初めて見るポケモントレーナーは目を見開くことしか出来なかった。
「不思議な光…。でも、何だか心が安らぐ気がする」
「もしかして、これが本来の"付喪神の霊力"というものなのでしょうか?心が洗われるようでございます」
「分かりません。でも…不思議と心が落ち着きます」
淡い、白い光は徐々に人の姿へと変貌した。そして―――その中から現れたのは、赤髪が特徴的な少年だった。彼が"信濃藤四郎"。信濃の本体に宿っている付喪神。刀剣男士の一振である。
少年はぱちぱちと瞬きをした後、視界が開けていることに驚く。しかし、今まで味わってきた苦しみからやっと解放されたことの方が強かったのか、へなへなと座り込んでしまった。
「だ、大丈夫デスカ?!」
「あれ…?目が…視界が…光…なんで…?」
「……落ち着け信濃。あんたは顕現されたんだよ。あんたに燻る邪気はもう存在しない」
「そ、そっか…。俺、助かったんだ…?」
大典太の言葉を聞いて安心したのだろう。こわばっていた表情がいくらか和らいだような気がした。そして、信濃は一同に頭を下げ、自己紹介を始めたのだった。
「俺、信濃藤四郎。うちは兄弟多いし、俺、秘蔵っ子だから…。あんまし知らないかも。でも仲良くしてね!」
「しなのサン。トテモ可愛らしい刀剣男士サンデスネ!」
「藤四郎…前田さまのご兄弟なのでございますか?」
「えっ?前田がいるの?」
「はい。今ここに戻って来ている筈ですよ。確かによく見れば…前田と軍服のデザインが似ていますね」
「そっか…。みんな、みんな一気に苦しみだして。俺も次第に苦しくなって。今まで酷い悪夢を見てきたような気がする。でも…優しい声に導かれて、俺は起きることが出来たんだ」
「……今まで、辛かったな。あんたは…よく頑張ったよ。踏ん張ってくれたお陰で助けることが出来た。ありがとう、信濃」
「大典太さん…言い過ぎだよ!いつの間にそんなにネガティブ克服しちゃったの?」
「……主の、影響だろうか。それとも…」
「???」
「……お人好しの元ジムリーダーのせいもあるかもしれない」
信濃は今まで邪気で苦しんでいた。でも、彼が諦めずに踏ん張ってくれていたからこそ助けることが出来た。大典太はそのことに感謝し、信濃の頭を撫でた。無骨だが優しい大きな手に嬉しそうに反応を返す信濃だったが、常にネガティブ全開な大典太にしては珍しいその行動が気になっていた。
実際に口にされると、返す言葉が見つからない。サクヤの影響はもろに受けているのは自覚はしていたが…。直近でお人好しが増えているのだ。もしかしたらその影響もあるかもしれない、と大典太はネズの方をそっと見やった。
その反応が不思議だったのか、ネズはきょとんとした顔で首を傾げていた。
数刻後、会場にノボリを呼ぶ声が聞こえてくる。その方向を向いてみると、クダリが手を振ってこちらに近付いてきているのが分かった。観客の無事も確認できたため、戻ってくることにしたのだそうだ。
ワリオカンパニーの面々はすぐに表彰式を仕切り直すと準備を始めた。優勝者であるマリィを除く一同も元居た席の椅子を直し、再び腰掛ける。
「もう!ノボリが暴走特急になるからこっち大変だった!」
「それに関しては本当に申し訳ございません…。ですが、あの場で燻っているよりも動いた方が先決だとわたくしふと思った次第でございます。許してくださいまし」
「目的が定まったらすぐ行動に移せる判断力は評価しますが、あんたそれで一度命落としかけてるのそろそろ自覚してくださいよノボリ」
「わたくしが暴走特急なのは自覚しております故!何事もお客様の安全が第一でございます!それに命を落としかけているのはネズさまも同様!同じお考えをお持ちのはず!」
「割とブーメラン発言してたのを今自覚しました」
「うんうん。ノボリもネズさんももっと自分を大切にしてほしい。いくら他人を守れたとしても、いつも怪我してちゃ意味がない」
クダリの愚痴を2人で受け止めている隣で、前田と信濃も再会を果たしていた。兄弟刀が無事に顕現出来たと聞き、居ても立っても居られなかったのだろう。前田の顔には笑顔が花開いていた。
「信濃!お久しぶりです!」
「本当に久しぶりだよ…。俺達元々いた本丸は全然違うけど、兄弟刀に会えて凄く嬉しい!んもう!会える距離にいるなら早く言ってよ大典太さん!」
「……そういう話の流れじゃなかったもんでな…うぅ…」
「光世には話を受け流す方法を今後レクチャーしなきゃなりませんね」
まさか前田と一緒に行動していたとは思っていなかったようで、"近くにいたなら早く言ってほしかった"と信濃は悪態をついた。そんな彼の突拍子もない言葉の攻撃に、思わず大典太はたじろいでしまう。
返す言葉が思いつかずおろおろとしている大典太を横目で見つつ、ネズは上手く話を受け流す方法を教えてやらねばと心に誓ったのだった。
談笑が続く中、表彰式の準備が終わったらしい。ペニーがマイクを持ったのを皮切りに、ざわついていた空気も一気に静まり返る。
そして、改めて表彰式が始まった。ワリオの代わりにモナがステージに上がり、マリィに頭を下げたのだった。
「マリィちゃん。あの刀、あんなに危険な物だとは思わなくて…。ワリオおじさまが大丈夫っていうから、みんな止められなかったの。おじさまが優勝賞品にするって言った時は"変だな"とは一瞬思ったんだけど…。まさかこんなことになるとは思わなくて。
結果的にみんな無事だったから良かったけど、本当にごめんなさい!」
「ううん。あたしも気付けなかったのが悪い。オービュロンさんが叫んでくれたから。アニキや鬼丸さん達が勇気を出して悪い奴に立ち向かってくれたから。ノボリさんやクダリさんが率先してお客さんを安全な場所まで動かしてくれたから。大典太さんが怪我人をすぐに治療してくれたから。こうしてみんな無事なんだよ。
みんな悪くない。やれることをやって、みんな無事ならそれであたしはいいよ。謝らないで」
マリィのその言葉に、思わずネズは再び涙する。兄として妹の成長に感動できない訳がない。顔を覆って泣く彼に、ノボリとクダリはいたわるように優しくよしよしと頭を撫でたのだった。
彼女には信濃の代わりとして、後日ダイヤモンドシティにある高級レストランのタダ券が贈られることになった。
こうして、波乱を巻き起こした第2回目のメイドインワリオカップは無事に幕を下ろしたのだった。
- Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 ( No.108 )
- 日時: 2022/05/09 22:00
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
表彰式も無事に終わり、観客が次々とダイヤモンドシティから去っていく。湧いていた余興も落ち着き、街は元の静けさを取り戻した。そんな中、会場を荒らしたからと大典太達は社員に混じり、会場の片付けを手伝っていた。
それを聞いたオービュロンは最初、"客なんだからそんなことをしなくてもいい"と言ったのだが、ほぼ全員がやりたいとその場を動かなかった。後ろで様子を見ていたネズも、言葉には出さずとも手伝う気満々だった。彼らの好意を無下にする訳にも行かず、ワリオに話した結果あっさり了承。こうして手伝っている訳である。ちなみに、当のワリオは人数が増えた為しっかりとさぼっている。
人数が増えたおかげで、予定よりもずっと早く片付けが終わった為撤収することとなった。社員は解散し、各々の帰路へ着く。オービュロンも手伝ってくれたお礼を言いに、大典太達がたむろしているところまで歩いて行ったのだった。
オービュロンが戻ってきたところで、信濃の今後の処遇を決める話し合いを行うこととなった。本来ならばサクヤの元で行うべきなのだが、ある程度話を纏めておいた方がいいとのノボリの提案で、こうして意見を交わすことになったのだ。
「……とはいうものの。もう信濃はオービュロンの刀だ。どうするかは信濃とオービュロンが決めるべきだと俺は思うがな…」
「まぁ、そうだよね?でも、俺最初から答えは決めてるよ。大将と一緒にいる!」
「"たいしょう"ッテ…ワタシ?!」
「あなたさまでございますね」
「つまり、この宇宙人と一緒にいる……議事堂に来るということだな」
「そういうこと!前田もいるし、身内がいた方が俺も安心できるからね」
「信濃さんの言うこと分かるよ。あたしもアニキが議事堂に行くって言ったから、シュートシティじゃなくて城下町に行くって決めたもん」
「……確かにそれはそうだ。ここには前田もいる。安心できるのは事実、なんだが…」
「引っかかることでもあるんですか?大典太さん」
「……まぁ、な」
信濃は刀剣男士の為、当然神域が"見える"存在である。入出できるかどうかについては大典太はあまり心配をしていなかった。しかし、問題は別にある。自分達の本来の目的を話しても、信濃は納得してくれるかどうかだった。オービュロンには既に全て話してしまっている為、彼に仕えている状態である信濃にも伝わるのは時間の問題。それを聞いて、彼が理解し、受け入れてくれるかどうか。大典太は内心不安だったのだ。
しかし、信濃は大典太が表情を曇らせたことも関係ないかのように言い放った。
「助けてもらった恩は返さなきゃ。どんな事情だって、俺はみんなについていく。それは変わらないよ」
はっきり言い切ったその言葉に、大典太は少しだけ心が晴れやかになった気がしたのだった。
―――話し合いも終わり、一同はリレイン王国への帰路についていた。各々今日の成果などを楽しそうに話している。
ネズとノボリは大典太と共に、一番最後尾で皆がそうしているのを見守っている。そんな折、気になることを質問したかったのかネズが大典太に首を向ける。
「光世。さっきから気になっていたんですが…。"大将"ってどういうことなんですか?」
「……あんたも知っているとは思うが、あいつらは"契約した仲"だ。だから、オービュロンが主で信濃が仕える者。令嬢と執事…王と配下…審神者と刀剣男士。
まぁ、厳密にはオービュロンは審神者ではないんだが…。それを"大将"と呼んでいるに過ぎないだけだ…」
「へぇ」
「大典太さまがサクヤさまに"主"と呼びかけるようなものと同じなのでございますね。刀剣男士さまごとに、呼び名は異なる…わたくしはそう解釈いたしました」
「……それで合っているさ。呼び名は違おうとも、主に仕えていることは変わらないんだからな」
感心そうに相槌を打つネズの隣で、ノボリも納得したように言葉を返す。今はまだ彼らも主ではないが、いつかオービュロンのように仕えられる側に回るのかもしれない。そう思ったら、興味が湧いたのだそうだ。
しかし、ネズはともかくノボリには『仕えられる』とう感覚があまりなさそうだった。そもそもサブウェイマスターとして客を日々もてなしている立場である以上、根付いてしまっているのだろう。そういう考えが。
「いつか、おれ達もこうなる日が来るんでしょうかね」
「感覚は分かりませんが…。未来など、誰にも予想は出来ないのです。可能性を見据えることは大事でございますよ」
「……あんた達ならいい主になると思うがな…」
「いつものように陰気な考え方をしないんですね。珍しい」
「……茶化すな。どこかの誰かのお陰でネガティブになってられないだけだ…」
「ですが、後ろ向きよりは前向きの方がずっとよろしいとわたくし思うのです。後ろを向いても過去しか見えませんが、未来は前を見据えないと分からないのですから。電車の進行方向と同じでございます」
ふと目の前を向いてみると、大典太の名前を呼びながら信濃が大きく手を振っている。早く城下町に行きたいという興味がその仕草から伝わった。
それに反応するように、2人と一振は人影を追いかけたのだった。
―――無事に城下町に到着し、一同は解散をした。信濃は大典太に案内され、神域へと通される。しんがりを務めていた鬼丸がそっと襖を閉め前を向くと、そこには静かに座っているサクヤがいた。
大典太のスマホロトム越しで大体の事の顛末は知っているが、大典太は改めてサクヤに今日起きたことの報告をした。無事信濃の邪気が祓われ、オービュロンの刀になったことも。
その報告を聞いたサクヤは安心したように微笑む。やはり、長年邪気を纏っていたことで心配が拭えなかったのだろう。
「本当に良かった…。町で戦闘が起きたと聞いた時は気が気でならなかったのです。分身だとはいえ、相手は強大な力を持つ神。よく皆様無事に戻って来てくださいました」
「今回ばかりはそこの悪使いの男とその妹に感謝せねばならんな。思った以上に分身の力が強かった」
「……だから、名前で言えよ。失礼だろう」
「知らん」
「いいですよ別に。トゲ頭から呼び名を変えてくれたことに関しては見直しましたんで、今」
「オービュロンさんも信濃さんのこと、本当にありがとうございました。これから大切にしてあげてください」
「イエイエ!今回はワタシ何もシテマセンシ…。しなのサンと契約デキタノダッテ、皆さんのお力添えがアッタカラデスヨ」
サクヤが感謝を告げると、オービュロンはいえいえと首を横に振った。自分だけの力ではない。今回は特にそう思っていたが、信濃が自分を信じてくれると真っすぐな目を向けている為それにはしっかり応えるつもりだと答えた。
粗方報告も終わり、信濃もこの神域を使っても良いことになった。オービュロンの刀なのだから許可するのは当然だろうとサクヤがあっけらかんとした表情で答えると、前田が嬉しそうに笑顔を綻ばせた。
「これから賑やかになりますね!信濃、沢山お話しましょうね!」
「うん!俺、この世界の事いっぱい知りたい。だから沢山教えてね!大将、前田。みんな!」
前田も兄弟刀が祓われ、無事に顕現がされたことを自分のことのように喜んでいた。
そんな彼らの微笑ましい光景を見守りながら、大変な一日は幕を下ろすのだった。
―――神域にも夜が訪れる。皆が寝静まった深夜。オービュロンは中々寝付くことが出来ず、こっそりと縁側で粗茶を嗜んでいた。
そんな彼の隣に、信濃がやってくる。やはり興奮で眠れていないようだった。彼は主に気付いた後、ぴったりとくっつくように座る。
「しなのサン。眠れないノデスカ?」
「うん。なんだか目が冴えちゃって。こっそりこっちまで来ちゃった」
「ワタシと同じデスネ!デモ、皆寝静まってイマス。お話をスルナラコッソリシマショウネ」
「そうだね。起こしちゃったら忍びないもんね」
お互いを見やり、くすくすと笑う。そして、信濃は改めてオービュロンにお礼の言葉を述べたのだった。
「大将。助けてくれて本当にありがとう。大将の声で俺は怖い夢から目覚められたんだよ」
「改めて言われると照れてシマイマスネ。デスガ…しなのサンが無事で本当に良かったと思ってイマス。……しなのサン。ツカヌコトヲお伺いシテモイイデスカ?」
「いいよ。なーに?」
「しなのサンの見ていた"夢"のお話デス。ソノ…実は、のぼりサンも不思議な"夢"を見たとワタシ達に話してクレタコトガアッタノデス。デスカラ、興味が出てきてシマイマシテ。
しなのサンが嫌ナラバイイデスガ、モシ良ければ…しなのサンガ見ていた"夢"を教えてはクレマセンカ?」
ふと、オービュロンにそう問われ信濃はきょとんと表情を崩すも、彼に隠す必要もないと素直に言った。
―――真っ暗闇の中に沈んでいく夢。いくらもがいても浮上することはない、ずっと息苦しい思いをする夢。右も左も分からず、自分がどこにいるのかも分からず、ただただ苦しみながら沈むことしかできない…。そんな夢を見ていたと、信濃は答えた。
ノボリが話していた鮮明な夢とは反対に、信濃の話してくれたことはあまりにも抽象的で具体性がなかった。だが、信濃の表情から"苦しい気持ちだった"ことは本当なのだと理解する。
「苦しい思いをシテキタノデスネ」
「そうだね…。でも、この夢を見ているのは俺だけじゃない。今邪気に囚われてる刀剣男士みんなが同じ思いをしている筈だよ。だから…俺も、大典太さん達の力になりたいんだ。兄弟を、同じ同胞を、助けてあげたいんだ」
「ハイ。絶対に皆さんを助けてアゲマショウ!ソレニ、しなのサンはコレカラ沢山"楽しいコト"を体験スルンデスカラネ!」
「………!」
オービュロンは決めていた。信濃に、これから沢山の楽しいことを教えてあげようと。主としてではなく、一人の友として。一緒に経験して、楽しい思い出をこれから沢山作っていこうと、彼はそうはっきりと言った。
その言葉を受けた信濃は嬉しくなり、思わずオービュロンを膝の上に乗せ抱っこをした。ぎゅう、と抱きしめられオービュロンは思わず照れてしまう。
「ワタシ、子供デハナイノデスケレド…」
「俺も子供じゃないよ?だからいいじゃん。ね、大将!これから沢山一緒に楽しいことを探していこうね!」
「……ハイ。ソウデスネ!」
オービュロンと信濃を優しく照らす月は、1人と一振を優しく見守る様に輝いていたのだった。
Ep.02-ex 【再度開催!メイドインワリオカップ】 END.
to be continued…
- Ep.02-s4【記憶はたゆたい 時をいざなう】 ( No.109 )
- 日時: 2022/05/11 22:03
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
現代のノボリとクダリを巻き込んだ一つの事件がとりあえずの終焉を迎えた頃―――。過去へと時を遡っていた2人の"迷い人"も、2人が戻りたいと願った時代への帰還を果たしていた。
後ろを歩いていたノボリが門を潜り抜けた直後、それは美しく輝く白い光になって飛散し、消えた。"片道切符"なのだと改めて2人は感じたが、それでいいのだ。今の2人が帰るべき場所はここ、ヒスイ地方なのだから。
早速コトブキムラに帰還したことを伝える為、ムラの門まで足を進める。すると、2人が現れたことに門番のデンスケは随分と驚いた表情を取った。
「デンスケさん、只今戻りました!門を開けてくださーい!」
「お、お……ん?ショウ?!それにノボリさん?!」
「はて?どうかなさいましたか?我々を見て随分と驚いている様子ですが」
「い、いや…えっと…」
当のデンスケは2人が現れたことに相当驚愕しているようで、まるで腰を抜かしたかのように言葉を失っている。その様子を不思議に思ったのだろう、後ろから"テル"と"ラベン博士"が顔を見せた。
テルもショウと同じく調査隊に所属する、ショウの先輩にあたる少年だ。ラベン博士もまた、ギンガ団に所属しポケモンの生体について調査を続ける博士だった。
テルもラベン博士も2人の顔を見た途端、デンスケと同じ表情を取った。
「2人までどうして驚くの?!私、別に幽霊になったつもりないんだけど!」
「そうじゃない!ショウ、お前今までどこに行ってたんだよ!一週間も連絡なかったから心配したんだぞ!」
「えっ…?」
一週間。テルから告げられた期間を自覚し、何故彼らが驚いていたのかをショウはやっと理解した。ショウとノボリはこの世界から一週間も姿を消して、あの世界にいたことが分かったのだから。ノボリもやっと理解したようで、珍しく目を見開いている。恐らく驚いているのだろう。
それだけの期間自分達がいないのだと分かったら、それは心配もするだろう。
「ごめん…。まさかこんな時間が経ってるとは思わなくて」
「ノボリさんも、突然一週間も姿が見えないとシンジュ団の皆さんが心配していました。もしかしたら元の世界に戻れたのではないか、との推測もありましたが…。どうやらそうではなかったようで」
「そうでしたか…。里の皆様には心配をかけさせてしまいましたね。後でお詫びに向かいます」
「誤魔化すわけにもいかないか…。テル先輩、ラベン博士。あの…突拍子もない話ですが、信じてくれますか?私とノボリさんが、今まで何処にいたのかを」
「突拍子も無いのはショウくんが空から落ちてきたことで証明済みです。どんな事実でも、しっかりと受け止めますよ」
「あはは…そうだった…。実はですね…」
2人に誤魔化せることも無いと、ショウは自分の身に起きたことを正直に話した。朝から時空の歪みにポケモン調査に向かっていたところ、ノボリ共々異世界へと転移してしまったこと。現地の人々の協力で、ヒスイ地方に戻ってこれたこと。そして、向こうの世界で目覚めてから一週間も時間が経っていたとは思わなかったことを。
彼女の話を聞いた2人は、最初は流石に開いた口が塞がらないような表情をしていた。しかし、ショウの話を疑うことはしなかった。隣にいたノボリも同じようにショウの話に頷いていたのと、彼女の話が到底嘘には思えなかったからだ。
ショウが粗方話し終えたのを皮切りに、テルが推論を口にする。
「時空の歪みのせいなのかな?」
「現状は分かりません。ですが、異世界の力が働いているとなれば…可能性もあり得るでしょうね。ですが!今は隊長に早く帰還を報告してあげてください。お陰様でまたイモモチの食べる量が減ったとムベさんが嘆いておられましたから」
「そうだったんですね…。じゃあ、私本部に報告してきますねノボリさん!」
「いってらっしゃいませ。わたくしも里に帰還したことをお伝えして参ります。終了次第、コトブキムラにて合流いたします故」
「気を付けてくださいねー!」
ノボリも一旦シンジュ団の里―――恐らく一番心配しているのは長であるカイであろう。彼女に無事を報告する為、ショウと別れ里までの道を去っていった。
彼の背中が見えなくなったのを確認した後、3人もコトブキムラの中に入っていったのだった。
―――コトブキムラの中央に位置する洋風な建物。それがショウが世話になっている"ギンガ団本部"であった。
ショウはテルとラベン博士に隊長に報告してくると伝え、彼らとも一旦別れ隊長が待っている執務室へと足を踏み入れた。
久しぶりの顔に、隊長―――"シマボシ"は表情1つ変えず、何故戻ってこなかったのを問うた。信じてくれるのかは危うかったが、ショウは正直に自分に起きたことの顛末を話す。彼女は少し考える素振りを見せた後、ショウにこう返してきた。
「時空の歪みに巻き込まれていたのだな」
「はい…。知らないうちに知らない世界に飛ばされていたみたいです。でも、現地の方々の協力のお陰でヒスイ地方に戻ってこれました」
「そうか。色々あったのだろうから暫く休め。これは命令だ」
「あの…。疑わないんですか?」
「疑う?君が時空の歪みに、ノボリ殿と共に一週間前の朝に突入したことは警備隊が見ている。事実が残っているのに何故疑えと?時空の歪みは分かっていないことも多々ある。ヒスイ地方には本来生息していないポケモンも現れる。
謎が多すぎる場所で、君達2人が別の時代に飛ばされる可能性が"ない"とは言えないだろう」
「そ…そうですね…。それと、休暇に関してなんですが『取れ。隊長命令だ』 は、はい…」
ショウに伝えるだけ伝えると、シマボシは再び山積みになった報告書に目を向けた。突拍子もない離しだったが、今は皆が自分の話を信じてくれている。ショウがヒスイ地方に落ちてきた当初は、こんなことは絶対に無かったし逆に疑われていただろう。
そんなことを思いつつも、彼女は休暇をくれた、迎え入れてくれた隊長に改めてお礼を言って、本部を後にしたのだった。
本部から出てきたショウを、テルとラベン博士が迎え入れる。どうやら彼女の報告が終わるまで待ってくれていたらしい。強制的に休暇を取らされたとやや愚痴るように伝えた彼女を、ラベン博士はぽんぽんと肩を叩いて労った。
「ショウくんが頑張っていたのを見抜かれていたんでしょう。羽を伸ばすいい機会ですよ」
「まだ図鑑完成してないのに~」
「ははっ。随分と図鑑完成にこだわってるんだな!やっぱり…元の世界に帰りたいとか思ってるのか?」
「私が何者なのか…ちゃんと知ってからだけどね。ここに来て、改めて思ったんだ。その土地に暮らす人には大切な家族がいて、友達がいる。それは…私だって変わらない。もしかしたら、急に消えた私を今日も両親が探しているのかもしれない。
私はまだここでやることがあるから帰らない。でも……いずれは、帰る選択肢を取るんだと思う」
「そっか…。ショウが帰ったら寂しくなるな」
「あ。それと、私が帰るのはノボリさんの記憶が全部戻ってから、だから…。もうちょっとかかるかな?私よりノボリさんの方が記憶失ってる量多いし…」
「ははは。それは大変な道のりですねぇ。もし取り戻せなかったら、ここを故郷にしてもいいんですからね?」
「もう!ラベン博士ったらすぐそういうこと言う!だから帰りにくくなるんじゃないですか!」
「そうだよ!せっかくショウが分かんない自分を探そうとしてるんだから、それを否定すること言うなよな!」
2人でラベン博士に言い寄っていると、ふとテルがショウの持っているバスケットに気付いた。ヴィルヘルムから貰った"お菓子"が入っているバスケット。
興味が湧いた彼は、ショウにその"籠"について追及してみることにした。
「なぁショウ。お前の持ってる籠、なんだよ?」
「籠?あぁ、これ?私を助けてくれた人が"お土産に"ってくれたの。現地のお菓子が入ってるんだって。私も中は開けてないからまだ分からないんだけどね」
「随分と不思議な形状のバスケットですねぇ。ガラルでも見たことありませんよ」
「そうだ!折角だし、これから一緒にこれ食べない?勿論ノボリさんが帰って来てからだけど…」
ショウ曰く、中に何が入っているかは彼女も分からないらしいが、"お菓子"と言っていたので食べ物だということは理解した。そう確信したテルの行動は早かった。
テルはそのお菓子の正体を知る為に、イモヅル亭へと駆け足で急いだ。勿論、席を予約する為だった。小さくなっていく彼の背中を目で追いながら、ラベン博士はショウに語りかける。
「しかし、2人共本当に時空を旅してしまったんですねぇ」
「まさか2回目になるとは思ってませんでしたけどね…。現地の人、いい人達ばかりで。だからこそ帰ってこれたんです」
「そうでしたか。ん?ならば…ショウくんの元居た世界に返してもらう、という選択肢もあったのでは?異界には何があるのか分からないので、どうとも予測がつきませんが…」
「私にもノボリさんにも"元々いた世界の記憶"が無いから、その時代に送ることは出来ないってハッキリ言われました。だから…ここに戻ってくることを選んだんですけどね。ここなら、迎え入れてくれる人達がいるって分かってるので。
でも…仮に、私が元いた場所に戻してもらえたとしても…首を縦には振らなかったと思います」
「どうして?」
ラベン博士は不思議に思っていた。ショウが元の世界に戻りたがっていたのは知っていた為、ここに来ずに元居た時代に帰れるならば帰った方が良かったのではないかと。しかし、彼女はそれには首を横に振る。
ショウにはまだこのヒスイ地方でやるべきことがある。だから帰ることは出来ない、と。図鑑完成もその1つだったが―――。彼女は、単身現代に帰ることを望んでいなかった。
その理由を問うてみると、ショウは真っすぐラベン博士を見つめてこう言い切った。
「私、ノボリさんと一緒に帰ると約束しましたから。私にも待っている家族がいると思うし…ノボリさんにも、彼を必死に探している大切な家族がいます。だから、彼を1人ヒスイ地方に置いてけぼりにするなんてこと絶対に出来ません。
だって、辛いじゃないですか。仲の良い家族が自分の意思関係なく引き裂かれちゃうんですよ?私だったら…そんなの、耐えられない。泣いちゃいますよ。
記憶がないからだろうけど…でも、ノボリさんはそれでも立ち止まらずにヒスイの人達の為に頑張ってる。もうあの人をひとりぼっちにしたくないんです、私」
「そう、なんですか…。ショウくん。きっと君は…僕の知らない向こうの世界で、大切なことを知って来たんでしょうね。その優しい心…どうか大切にしてください」
「……はいっ!」
そう言い切ったショウの瞳は、まっすぐ前を向いていた。だからこそ、今頑張れるのだと。彼女は未来を見据えていたのだ。
そんな彼女の姿を見たラベン博士は、また感慨深い気持ちになったのだった。
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