二次創作小説(新・総合)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 繋がる世界と未来の物語
- 日時: 2025/09/30 22:00
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
―――これは、"全てを元に戻す"物語。
それが例え、紡いできた絆が離れる結果となったとしても……。
どうもです、灯焔です。
新シリーズ発足です。大変お待たせいたしました。プロットの詳細を決めている間に相当時間がかかってしまいました。
サクヤ達がどういう運命を辿るのか。この終末の物語を、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
この作品は版権作品同士の『クロスオーバー』を前提としております。
また、オリジナルキャラクターも登場します。
苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
※物語を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】 >>1
【取り扱いジャンル】 >>2
<目次>
Ep.00【舞い戻れ、新たな異世界】 完結
>>3-7 >>11 >>12-17
Ep.01-1【繋がりの王国】 完結
>>21-25 >>28-33 >>36-37
Ep.01-2【宇宙からの来訪者】 完結
>>39 >>40-48 >>49-53
Ep.02-1【強者どもの邂逅】 完結
>>55-56 >>57-59 >>60-63 >>66-67
Ep.02-2【黒と白と翡翠の車掌】 完結
>>70-73 >>74-76 >>77-78 >>79-81
>>82-85 >>86-89
Ep.03-1【ドルピックタウンにて最高のバカンスを!】 完結
>>112-113 >>114-119 >>122-126 >>127-130
Ep.03-2 【音の街と秘密の音楽祭】 完結
>>137-138 >>139-144 >>145-148
ep.04-1 【天下五剣が集うとき】 完結
>>166 >>167-171 >>172-176
Ep.04-2【新世界の砂漠の華】
>>178 >>179-180 >>181-185
※サブエピソード※
Ep.01
【新たな世の初日の出】 >>38
【商人の魂百まで】 >>54
Ep.02
【夢の邪神の幸せなお店】 >>68
【襲来!エール団】 >>69
【線路はつづくよどこまでも】 >>90
【記憶はたゆたい 時をいざなう】 >>109-111
Ep.03
【合流!若きポケモン博士】 >>131
【六つの色が揃う時】 >>132
【狭間の世界での出来事】 >>133-134
【翡翠の地からの贈り物】 >>135-136
【繋がりの温泉街】 >>151
Ep.04
【月と超高校級の来訪】 >>177
※エクストラエピソード※
Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 完結
>>91-95 >>96-101 >>102-104 >>107-108
Ep.03-ex【とある本丸の審神者会議】 完結
>>152-154 >>155-160 >>161-163
<コメント返信>
>>8-10 >>18-20 >>26-27 >>34-35
>>64-65
>>105-106
>>120-121
>>149-150
>>164-165
最終更新日 2025/09/30
以上、よろしくお願いいたします。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.181 )
- 日時: 2025/09/26 22:01
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
窓から砂漠が見えてくる。目的地が近づいてきたのだ。短刀達はそのまま窓に張り付いて様子を伺っていると、ふとガタンと機体が揺れる音がした。どうやら目的地に到着したらしい。
マホロアは休んでいる一同に降りるように告げ、自分もエンジンの確認をした後にローアを後にした。
「ほんとうにさばくですね~。ぼく、さばくなんてはじめてみました!」
「どこに行っても砂ばっかりだなー。本当に"砂漠の華"なんてあるのか?」
「マァ、ココからはミンナが頑張るんダネ!カービィ、また呼んでくれたらボク迎えに来るヨォ!ボクってホラ、忙しいカラネ!」
「うん、ありがとうマホロア!また必要になったら呼ぶねー!」
そう言ってマホロアはローアの中へと消え、そのまま機体を浮かび上がらせてその場を後にしてしまった。ばいばーい、と笑顔で見送るカービィと短刀達と共に、残りの面子もローアに向かって小さく手を振ったり、各々反応を見せた。
ローアが見えなくなったと同時に、カービィが全員に向き直る。ここからが今回の本題なのだ。早速"砂漠の華"を探しに行こう、と先導して砂漠の中をひたすら進んでいくのだった。
「ここからちょっと行った先にショッピングモールがあるんだ。刀剣探しも兼ねるならそこから探すのが一番いいよね!」
「……いいのか? あんた達は砂漠に咲いている花を探しに来たんだろう?」
「いーのいーの!屋上とかから砂漠を見渡せば"砂漠の華"も見つかるかもしれないからね!」
まず、カービィはこの先にあるショッピングモールで探索をしようと皆に提案をした。確かに、刀剣の噂にもある"夜な夜な地下で実験を行っている"という部分は、ショッピングモールの地下で行っている可能性もあると考えれば行く価値もあるだろう。しかし、今回カービィとバンダナワドルディが本来の目的としているのは"砂漠の華"探しである。ショッピングモールに現を抜かしていていいのか、と大典太が問いかけると、彼は"別にいーよ!"とさらっと言ってのけた。
そのまま砂漠を歩いていると、確かに目の前に寂れたショッピングモールが見える。砂を被っており、遠目からは見えなかったのだ。
本当に砂に埋もれているのだな、と童子切が真っすぐな感想を漏らす。それに対して、バンダナワドルディは"元々都市があった場所が廃れてしまい、そこと砂漠が混ざり合ってこうなってしまった"と説明をした。
ショッピングモールに辿り着いた一行は、早速各々の目的を達成するために探索をすることにした。"砂漠の華"に、実験に使われている刀剣――。どちらも見つかることを大典太は切に願った。
「この中に刀剣があるかもしれないのか。さっさと探すぞ」
「おにまるさん、とうけんだけじゃないです。"さばくのはな"さがしもですよ!」
「おれには興味がない。おまえ達だけで探せばいいだろ」
「……そこまでにしておけ。しかし、廃れているとはいえ広いな……」
かつて都市だった場所に建っていたショッピングモールだったからなのか、かなりの広さを誇っていた。寂れたことによる経年劣化により、所々錆び付いている箇所は見受けられるものの、建物が壊れていないのは流石の技術である。
この広さを全員で探すとなると、相当時間がかかる。手分けして探した方がいいと大典太が皆に提案すると、それに否を唱える者はいなかった。考えていることは同じだったようである。
手分けをすると理解したのか、鬼丸はそのままスタスタとひとりで奥に歩き始めてしまった。
「……おい、鬼丸」
「手分けするんだろ。おれはひとりでいい」
大典太が止めるも、鬼丸はその静止を振り切りひとりでショッピングモールの奥まで消えてしまった。
「い、行っちゃいましたね」
「……仕方のない奴だ。しかし、ここで話していても時間の無駄なのは事実だ。俺達も手分けをして探索に当たろう」
「じゃあボクこっち~!」
「ま、待ってよカービィ~!!」
鬼丸が進んだ場所とは反対方向を、カービィとバンダナワドルディがぽよぽよと駆けて行った。
"では僕達は上の階を探索してみますね"と、前田は今剣と厚を引き連れ階段へ向かって歩いて行った。残された大典太と童子切は、まだ誰も探索していない場所を探すかという話しになり、童子切がそれと同時に口を開いた。
「わたし達は、地下を見てみよう。刀剣の噂があったのはそこだろう」
「……そうだな。行ってみよう」
大典太と童子切は地下を探索することを決め、地下への階段を探すためまた別方向へと歩いて行った。
――地下に繋がる階段は思いのほか簡単に見つかり、そこを通り目的の場所へと向かう。大典太も童子切もどちらも口が達者なタイプではないため、当然会話が弾むわけもなく、ただ無言で歩いていく。
そんな中、童子切がはっとした表情で大典太に問いかけた。それは、大典太にとってはあまりいい話ではなかった。
「わたしには記憶がない。だから、この際教えてほしい。わたし達が昔、どんな刀剣だと呼ばれていたのかを」
「……忘れていた方がいい気もするがな。あんたも本能で分かっているとは思うが――俺達は、霊力が強すぎるがゆえに、時の政府に捨てられた刀だ」
「捨てられた」
自分のことが分からないからこそ童子切はこのことを聞いたのだろうが、大典太としては童子切にこのことは言いたくなかった。自分達が時の政府に何をされたのか。それが原因で、数珠丸以外の刀剣には人間に対する"負の感情"が生まれてしまったということ。そして――記憶を失う前の童子切は、負の感情が一番影響していたのだろうということ。
あまりにも童子切が真っすぐ目を向いて聞いてくるので、思わず大典太もぽろりと零してしまう。言ってしまってから、ああしまったと思ってももう遅い。
大典太から天下五剣の真実を聞いた彼は、少し悲しそうな表情をしながら黙って話を伺っていた。
「……前も言った通り、俺達はクトゥルフによって鍛刀された刀剣だ。それが原因で、ひとりひとりが世界を滅ぼす程の霊力を持っている。それが故に――時の政府は俺達を扱いきれず、政府の動力源とした。
来る日も来る日も、刀剣男士としての活動はなされないまま。所属が"時の政府"ってだけの強固な檻だ。それだけならまだ良かった。あろうことか、あいつらは俺達を"失敗作"とみなした。制御しきれなくなって、俺達を"時の狭間"に捨てたんだ」
「そんな、ことが」
「……あったんだ。ああ、話すんじゃなかった。今のあんたはまっさらになっている状態なんだ。外の光だけを見て、悪いものには目を伏せた方が心も痛まない気がするがな」
「…………」
大典太の話したことに心当たりはなかった。それもそのはず、その記憶すら邪気に呑まれ、あのカンテラに吸い込まれ消えていったのだから。童子切は大典太の口から零れる事実を、どんな顔をして受け止めればいいのか分からなかった。
しかし、過去の自分に起きたことであるのは事実である。そこから目を背けてはいけないというのは、記憶がなくとも本能で分かった。
「……それでも。目を塞ぎたくなるような事実でも。わたしは、今おまえからそれを聞けて良かったと思っている。本能でおまえ達を仲間だと思えているのなら、楽しい気持ちだけではない。悲しい気持ちや、つらい気持ちも分け合ってきたはずなのだろう。
記憶が無くなったからと、それを忘れて良い、背を向けて良い理由にはならないと、わたしは思う」
「……そうか。あんたがそう思うのであれば、それでいいよ」
その後会話は一区切りし、コツコツとした靴音の感触が変わったような気がした頃だった。
目の前に、鬼丸がいるのが分かった。自分達とは別行動を取っていたはずだが、何故地下にいるのだろう。話しかけようとすると、"進むな"と彼に静止を求められた。
「……何かあったのか」
「この先。何者かの気配がする。それに――向こうで何かやっているようだな」
「隠れて様子を伺った方がいい気がする」
鬼丸が言うに、この先で何かやっている気配がするとのことだった。もしかしたら、噂は本当で、このショッピングモールの地下で何かをしているのかもしれないという思いが三振の脳内を巡る。
確かめるべく、陰になりそうな場所に移動し、身を潜めて何が起きているかの様子を見ることにしたのだった。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.182 )
- 日時: 2025/09/27 21:53
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
そのまま隠れて様子を伺っていると、奥から誰かが引きずられている音が聞こえてきた。思わず身を乗り出すと、そこにいたのは見覚えのある顔ぶれだった。
研究員のような人物が縄を持って、縛っている3人の男性を引きずっているのが見て取れた。大典太と鬼丸には、その人物が何者なのかが見当がついていた。3人の男性は、全員似たような顔つきで、青、緑、黄色のカーディガンを身に着けている。
男性は口々に研究員に向かって何かを喋っているが、研究員はそれを聞き入れることはなく無言で彼らを引きずっている。
「待ってくれ!待ってくれ!オレ達何か悪いことしたか?!」
「僕達砂漠の中を彷徨っていただけだよね? なんでこんなことに?!こんなことってないよぉ~~~~~!!!」
「ぼく達これからどうなるのかな!あはは~!」
引きずられている面々を見て、大典太は焦った表情を見せた。その人物の兄弟を、更には本人のことすら知っていたからである。何故彼らがこんなところに、という思いと共に、早く助けなければと鞘に手が伸びる。しかし、鬼丸に止められた。今ここで刀を抜いてしまえば、隠れている意味がない、と。
焦る気持ちが強まる大典太に、童子切も鬼丸と考えは一緒だということを伝える。その声を聞き我に返った大典太は、一度気持ちを落ち着けることに集中した。
「……すまん。まさかこんなところにいるとは思わなくてな」
「助けたい気持ちはわかるが、おれ達が隠れているのがバレたら意味がないだろ。今は我慢しろ、大典太」
「知り合い、なのか」
「あぁ。知り合いどころか……俺はあいつらと一緒に働いていたことがあるんでな」
童子切が不思議そうに首を傾げているため、大典太は3人が何者なのかを童子切に説明をした。
青いカーディガンを着ているのが"松野カラ松"、緑のカーディガンを着ているのが"松野チョロ松"、そして黄色いカーディガンを着ているのが"松野十四松"。全員、松野家の六つ子だった。
六つ子と聞き、童子切はカフェで働いている紫と桃色の双子を思い出していた。彼らのことを話すと、大典太は静かに頷き、彼らと引きずられている3人は兄弟、あともう1人も合わせて6人兄弟だということを答えた。
「藤四郎兄弟、のようなものか」
「……いや、違う……のか?」
「何故そこで悩む。そんなことはどうでもいい、このままだと見失うぞ」
鬼丸の言葉で再び我に返った大典太と童子切は、引きずられている3人と前にいる研究員の姿を引き続き見守ることにした。研究員に見つからないように、柱を利用しながら隠れつつ進む。そんなことを数回繰り返していると、縄を持った人物は扉の前に辿り着き、カードキーのようなものを扉にかざし、向こうへ消えていった。
目的の人物を入れて役目を終えたのか、扉はピピッ、という音を最後に閉まってしまった。
「ここから先は行けないらしいな」
「……だが。あいつらが引きずられていった以上、この先に何かがあるのは間違いないな」
「壊すか?」
「いや、壊さない方がいい。まずは……他の奴らとの合流を急いだほうがいいと思う」
扉を壊すか、という鬼丸の言葉に一旦納得しかけるも、童子切がそれに待ったをかけた。まずは一緒に来た全員を集め直してから、改めてここに来た方がいいと提案したのだ。
急いで彼らを救わねば何かに巻き込まれるのは承知の上だったが、太刀である以上偵察は得意な者に任せた方がいいと彼は判断したのだ。大典太も鬼丸もそれに静かに頷き、まずはカービィ達、前田達との合流を急ぐことにしたのだった。
「……太刀のおれ達ではどうしようもないこともあるからな。あいつらの手を借りるしかないか」
「だったらさっさと行くぞ。時間が惜しい」
そう言って、その場を後にする三振。
そんな彼らの姿を、監視カメラで捉えていた者がいた。
『まさかこんなところで"あの"天下五剣を見つけることができるとはのう。ワシが全部捕まえて、全部ワシのものにしてしまえばアンラ様の手を煩わせなくても魔物が造り出せるぞ……!
ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!!!』
監視カメラから彼らの姿を見ていた"彼"は、不敵に笑みを浮かべるのだった。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.183 )
- 日時: 2025/09/28 21:32
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
一方。3階で探索を続けていた前田、厚、今剣だったが、目ぼしい手がかりも見つからず途方に暮れていた。そもそもが噂程度のものを探している以上簡単に見つからないことは分かっていたが、こんなに探しても見つからないものかと肩をがっくりと落とす。やはり建物の中には存在せず、外にしか咲かない花なのだろうか。"砂漠の華"というものは。
カービィやバンダナワドルディとも連絡を取り合いつつお互いに怪しい場所を捜索するも、植物らしきものは1つも見つけられなかった。
「うーん。"さばくのはな"、みつかりませんねぇ」
「"砂漠の華"というくらいなのです。やはり外にしか咲いていない花なのでしょうか? それともやはり、噂程度の話なので幻の花、というのもあり得ますよね」
「幻を見つけるのがいいんじゃねぇか!さ、弱音吐いてないで頑張って探そうぜ!」
厚の鼓舞を受け、前田と今剣も今一度"砂漠の華"探しを頑張ろうとお互いに頷いた。
気を取り直して探索を再開した矢先、今剣が遠くで咆哮のようなものが耳に入ったとふたりに言う。ショッピングモールの中には自分達しかいないはずだが、どうして咆哮のようなものが響いてくるのだろう。
どんな咆哮だったか今剣に問いかけると、かれは"うーん"と唸りつつもこう答えた。
「いま、"がおー"というこえがむこうからきこえたきがしました」
「がおー? 僕達の他に誰かいるということでしょうか?」
「いやいや!そんなまさか」
しかし、今剣曰くその"がおー"という咆哮は近付いているとのこと。前田と厚も耳を凝らしショッピングモールの音を集中して聞いてみる。すると、確かに奥まったところから熊のような咆哮がこちらに近付いてきているのが分かった。
音の方向を見てみると――。
『グオォオォオォオォ!!!!!』
「――えいやっ!!」
「とぉー!!」
カービィとバンダナワドルディが、四足歩行の魔物と戦っている姿が見えた。カービィはどこかからソードをコピーしており、バンダナワドルディは自前の槍で応戦している。
彼らの連携のおかげで魔物の身体には所々に傷がついている。しかし、自分達も加勢せねばならないと本能で察した。なぜなら、彼らは"刀"だからである。
短刀達がカービィとバンダナワドルディの元へ辿り着くと、彼は後ろにやってきた三振に気付き、攻撃を弾き飛ばしながら"子供達は下がってて!"と言った。どうやら、彼は短刀達のことを自分より年下だと思っているらしい。
それに納得いかなかったのか、厚が"自分達は子供ではない"と反論をする。そんな彼を前田が宥めつつ、三振も戦闘態勢へと入る。この調子であれば、2人と三振で協力すればこの魔物を倒すことが出来そうだ。
「カービィ殿!バンダナ殿!僕達も加勢します!」
「う、うん。分かった!でも怪我しないでくださいねーっ!」
その間にもカービィとバンダナワドルディの猛攻は続き、魔物の体力もかなり消耗していた。このまま三振が加勢すれば、倒しきることが出来ると判断した前田は、今剣と厚に合図で一斉にとびかかることを提案した。
カービィもその声を聞いたのか、ソードを振り回しながらうんうんと頷いている。
タイミングを見計らい、2人の攻撃で相手が怯んだ隙を前田は見逃さなかった。ありったけの声で、突撃することを叫ぶ。
「行きますよ!!突撃ーー!!」
前田の合図を皮切りに、三振が魔物を倒しきらんと飛び掛かる。短刀の一撃は深く刺さり、魔物はまた咆哮を上げた。そのまま2人も総攻撃を畳みかける。すると、魔物の体力が底を尽きたのかうめき声を上げて倒れてしまった。
一同はそれを確認した後、各々武器を仕舞い倒れた魔物の近くまで移動した。それと同時に、魔物から紫色の靄が出始め、そこから人が現れ出でたのだった。
「これって……!」
「心当たりあんのか?」
「はい。以前人が魔物に変化するのを見たことがあります!」
そう。前田は魔物が人に変わる現象に心当たりがあった。審神者会合に参加した際、ジェシカと衝突した審神者の男性が魔物に変えられてしまったことと事象があまりにも似すぎていたのである。もしかしたら、この魔物も審神者の男性と同じように、魔物に変えられてしまった一般人なのではないかという可能性が前田の脳内を巡った。
そんな矢先、別の方向から走ってくる足音が聞こえてきた。地下から移動してきた大典太達のものだった。
大典太は倒れている人を発見するなり"何があった"と焦った表情で聞いてくる。前田がこれまでに起こったことを事細かに説明すると、大典太と鬼丸は顔を見合わせて、しかめた。やはり、彼らも前田と同じように普通の人間が魔物に変えられてしまったのだと推測したのだろう。
「……噂で聞いていた"夜な夜な怪しい実験をしている"というのは、邪気で人間を魔物にする実験だった、ということだな」
「――チッ。胸糞悪いことをしやがって……!」
「ところで、その戻った人間は大丈夫なのだろうか」
ふと、童子切がそんなことを呟く。確かに魔物にされて今まで戦っていたというのであれば、魂が削られてしまった可能性も無きにしも非ずだ。大典太は素早く倒れている人間の元に近づき、胸元に霊力をあててみる。トクン、トクン、と小さくではあるが、鼓動が聞こえてくるのが分かった。どうやら気絶しているだけらしい。
そのことを童子切に伝えると、彼は安心したとでもいうように眉尻を下げた。ということは、である。魔物にされてしまった人間は、彼だけに留まらないのではないかという嫌な予感が一同の頭の中を駆け巡る。
「……まずいな。扉の向こうで何をされているのか、大体推測がついたぞ」
「あいつらもさっさと助けねば、魔物にされてしまうかもな」
「とびら? なんですかそれ?」
状況を理解できていない、と今剣が問うたため、大典太は先程自分達が見てきたものを説明した。その話を聞いた前田は、焦ったように"早く助けに行きませんと!"と慌て始めた。彼もカラ松達のことを知っていたため、魔物にされてしまう想像ができなかったようである。
その話を聞いたカービィはうんうんと頷き、こう一同に提言し始めた。
「よーし。だとしたら"砂漠の華"探しは一旦後回しにして、その地下の扉まで行ってみようよ!扉は壊しちゃえばいいし」
「こ、壊すの?!」
「え? だって最終的に全部ぶっ壊すんだから、扉の1つや2つ壊してもよくない?」
カービィは、これから実力行使で扉を破壊し魔物にされた人間を助けに行こうと提案してきたのである。あまりにも物騒な提案にバンダナワドルディは一瞬萎縮するも、それに対して鬼丸は"一理あるな"と静かに頷いた。流石は最初に見つけたときに"扉を破壊する"という行為に走りかけた刀剣男士である。
大典太は自分も同意しかけたことを後悔し、鬼丸のことをただジト目で見やることしかできなかった。
「なんだその目は」
「……いや。あんた達が意外と似た者同士だと思……いひゃいぞおにまゆ」
「おれとあいつのどこが似ているというんだ」
「面白いのか、それは」
「……まにうへゆんじゃない、どうじひり」
またもや頬をつねられてしまった大典太は、鬼丸に好きにさせつつため息をつくことしかできなかった。その様子を見ていた一同だったが、はっと前田が我に返り"地下へ行くなら早く行きましょう"と催促してきた。
その言葉を聞いて大典太は鬼丸の手を握り返しやめさせ、気絶している人を背負ったのち地下に戻るのであった。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.184 )
- 日時: 2025/09/29 21:51
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
地下へと再びやってきた一同は、周りに誰もいないことを確認した後扉の前まで移動した。しん……と静まり返ったその空間は、人間が実験に使われているとは思えない。カービィは本当にこの奥に誰かがいるのか不思議に思ったが、彼らのいうことも嘘だとは思えなかったため、彼らの言っていることを信じて扉を壊すことに決めた。
「おー、これは頑丈そうな扉だね!」
「それで? どうやって破壊するんだ」
"扉を破壊する"と言ってのけたのはカービィのため、鬼丸がどうやって目的を達成するのかを問うた。すると、彼はにっこりと笑って"そんなのコピー能力を使って壊すんだよ!"と言った。ちなみに、先程までコピーしていたソードは戦闘が終わった際に捨ててしまっており、近くにコピーできるものもないため現在のカービィはすっぴんである。
そして、カービィは皆の方を振り返り、この中で誰が一番力持ちなのかを聞いてきた。どうやら、その人物の持っている持ち物を借りてコピーして、扉を破壊する算段らしい。
であれば、と大典太はバンダナワドルディを指さす。彼の怪力はコネクトワールドで一緒に働いていた時から知っているため、彼であれば問題なく扉を破壊できるのではないかと思っていた。
「……バンダナワドルディじゃないのか?」
「ぼ、ボクは吸い込んでもスカにしかなりません!お恥ずかしい話ですが……。ボク、力があるだけのワドルディなので……」
「うん、バンワドはスカになっちゃうから無理だよ!だから、バンワド以外で一番力持ちな人を教えてほしいな!」
「……で、あれば――」
バンダナワドルディが駄目であれば、こいつしかいないだろう。と、大典太は鬼丸を指さした。極の姿ではそうとも限らないが、初の姿に限っては太刀の中で一番打撃が高いのが鬼丸である。それも加味し、彼は鬼丸を指さしたのである。
しかし、当の指を指された本人はかなり不服そうで、思わず大典太の指を握ってしまう。
「なんでおれが」
「……単純な打撃力ならあんたがこの中で一番高いだろ」
「それはそうだが」
「へー、そうなんだね!じゃあ鬼丸さん、その刀貸して!」
一番の力持ちが鬼丸だと理解したカービィは、早速扉を破壊するため鬼丸に刀を貸すことを要求した。その刀を媒体に、鬼丸の能力をコピーしようという寸断だった。しかし、彼は即座にそれを断った。
鬼丸はこう見えてかなりの潔癖症なのである。自分の身内であっても自分の刀には触れさせないどころか、自分でも戦以外では汚れがつかないように手入れを欠かさないほどである。そんな彼が目の前のピンクだまに刀を貸すわけがない。
彼が断りを入れることを予測していた大典太は、彼が不満気に顔を逸らしている隙を狙って鬼丸の腰にある刀に手をかける。それに気付き、鬼丸も刀を渡さんと大典太の手を放そうとする。いつもならば鬼丸の方が力が強いため、大典太はすぐ諦めるのだが――。今回ばかりはそうも行かないと判断していた彼は、反対の手で鬼丸の両手を掴みとってしまい、その隙に彼の腰にある刀を取り上げたのだった。
「おい、大典太!」
「……話が平行線になるよりはマシだ。――吸い込むんだったな?」
「うん!鬼丸さん本人を吸い込んでもいいんだよ?」
「……刀の方がマシだろ」
「…………」
そのまま大典太は掴んでいた棚をぽい、とカービィの近くへ投げた。カービィはタイミングを合わせ鬼丸の刀を吸い込み、"鬼丸国綱"をコピーした。鬼丸本人のような角を生やした眼帯姿のカービィである。
てっきりソードかニンジャをコピーするものだと考えていた前田は、鬼丸そっくりになったカービィを見て目を輝かせている。
「ソード能力になるわけではないのですね!びっくりです!」
「ふん。さっさと目的を果たすぞ」
「くちょうもかわってますね?」
「カービィはコピーすると口調もその人そっくりになっちゃうんだよ!」
コピーの媒体に使われた鬼丸の刀が宙へ浮く。それを掴みとった大典太は、"手荒な真似をして悪かったな"と鬼丸へと返却した。彼は仕返しにともう一度大典太の頬をぷにっとつねった後、刀に何も汚れがついていないことを確認し腰へと戻したのだった。"頬をつねることはないだろう"と、不満気に大典太が呟く。そんな彼を見て、"仕返しだ"と満足げに口を開いた。
カービィは扉の前に立った後、刀に力を込める。そして、勢いよく刀を振るったのだった。
「――斬る!!」
それと同時に、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる扉。向こうから、先程見た四足歩行の魔物がこちらに気付いているのが分かった。形状から、全員が実験で魔物にされた人間だということを一瞬で理解した。
自分達に向かってくるのに気付き、一同は戦闘態勢を取る。
「これ、全部魔物にされちゃった人ってこと?!」
「そのようだ。わたし達が救わねば」
「行きましょう、皆さん!」
魔物が一斉に襲い掛かったタイミングを皮切りに、一同も武器を構え太刀打ちするのだった。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.185 )
- 日時: 2025/09/30 22:00
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
一体どれだけの人が魔物にされてしまったのだろう。
襲い掛かってくる魔物を各々対処し、実験台にされた人々に戻していく一同だったが、一向に数が減る気がしない。未だに見つかっていない三つ子も、既に魔物にされてしまったのだろうか。そう思いながらも、魔物にされてしまった人々を救うため彼らは剣を奮っていた。
「これで……30体くらいか? あと何体魔物がいるんだ?!」
そう厚が確認するように叫ぶので、大典太は思わず辺りを見渡す。そこには魔物の姿はなく、実験台にされた倒れた人々が横たわっていただけだった。どうやら先程倒した魔物で、全ての魔物を人間に戻すことができたらしい。大典太は倒れている人1人1人に霊力を当て、皆生きていることを確認する。暴れていた影響で疲れてはいるが、どうやら召されてしまった人はいなかったようだ。
そのことを一同に伝えると、各々安堵の表情を浮かべた。良かったと素直に喜びを表現するもの、静かに安心を噛みしめるもの――反応は様々だった。
そんな中、きょろきょろと前田が辺りを見渡した後、こんなことを口にした。
「三つ子の皆さんの姿が見当たりませんね」
「もっと、奥の方にいるのかもしれない」
六つ子のうちの3人が見つからない。更に、噂にあった刀剣の姿も見当たらなかった。
扉の向こうには、道が続いている。この先に何かあるのは確実だろうと一同は確信していたため、奥に何があるのかを確認するため足をそちらの方に向けた、その時だった。
拍手の音と共に、靴音が聞こえてくる。思わず音の方向を向いてみると、そこにいたのは怪しげに笑う邪な気配を纏った老人だった。
その気配に凝視感を覚えた大典太は、無意識に刀の鞘に手を置いていた。その行動を見て、鬼丸、童子切も戦闘の構えを取る。老人はその動きを見て、"野蛮なのは好きではないのだよ"と武器を納めるよう発したのだった。
「何者だ!」
「おっと。名前を聞く際には自分から名乗るのが礼儀ではないのかね? まぁよいわ。
ワシの名前は"ミステリオ"。この施設の地下を借りて、趣味で実験をしておるただの老いぼれ爺だよ」
「"ただの"という割には、随分と悪趣味なことをしていると思うがな。人を魔物にしやがって」
「ふぉっふぉっふぉ。何とでもいうが良い。して――貴様らの目的はこやつらなんだろう?」
"ミステリオ"と名乗った老人は、鬼丸の言葉にも耳を貸さず部下に"とある人物"を連れてくるよう命令した。それと同時に、部下と共に縄に引きずられて現れる3人の影。その正体は、彼らが探していた松野家の三つ子その人だった。
三つ子は大典太の姿を見つけ、ただ驚いている。まさかコネクトワールドが消滅した後、こんなところで出会えるなんて。しかし、喜びを表している状況ではないのは明白だった。
「あ!大典太さん!」
「えっ?!大典太さん?!」
「……あんた達。まだやられてなかったみたいだな、良かった」
「砂漠を当てもなく歩いてたらこいつに捕まってしまったんだ!くっ、兄として何も抵抗出来なかったのが情けない……!」
三つ子は大典太に向かって"助けてー"と、情けない声で助けを求めた。それほどまでに捕まえたであろう老人に恐怖を覚えていたからである。すぐに助けようと大典太は刀を抜き、縄に向かって斬りかかろうとする。しかし、その斬撃は謎の透明な壁によって阻まれてしまった。
これもミステリオが用意したものなのか。そう思い彼の方向を向くと、ミステリオは満足そうに笑っていた。
「全く。取引材料に傷をつけることをするのではないぞ天下五剣よ」
「わたし達のことを、知っているのか?」
「ふぉっふぉっふぉ。知らんわけないだろう。――貴様らは喉から手が出るほど欲しかった"あの"天下五剣なのだからな!」
「大典太さん、気を付けてください!あのご老人、何かに気付いているようです!」
「で、だ。暴力はワシも避けたいのでな。穏便に取引といこうではないか。この三つ子をそちらに渡す条件として、貴様ら"天下五剣を寄越せ"」
なんと、カラ松達3人を渡す条件に今いる大典太、鬼丸、童子切を寄越すようにミステリオは言ってきたのだった。先程言ったことといい、恐らく彼は自分達がどういう刀剣なのかを知っていての発言のように聞こえていた。
であれば、みすみす自分達が犠牲になるわけにはいかない。断りを入れる前に、短刀達が反抗を示していた。"三振とも渡さないぞ"と。
「そんな脅しに乗るような僕ではありません!大典太さん達は僕が必ずお守りいたします!」
「なんだかよくわかりませんが、わたしちゃだめなきがします。ぜったいにわたしません!」
「お前みたいな怪しい奴に、三振渡すわけないだろ!大人しくあの三つ子の人を返せってんだ!」
そう言って戦闘態勢を取る短刀達に、ミステリオは"これだから刀剣男士は野蛮で嫌いなのだ"と肩をすくめた。そして、改めて天下五剣三振に向かって取引を持ちかける。"貴様らが大人しくワシのものになるのであれば、三つ子は無傷で渡すことを約束しよう"と。しかし、ミステリオの手には黒い液体が入った注射がある。断った場合、それを使って3人に良くないことをするということは目に見えていた。
大典太は少し考えた後、ミステリオにこう問いかける。彼の提案に従う気はさらさらないが、何故ここまでして自分達を狙うのか。そこは気になっていた。
「……俺達を使って何を企んでいる?」
「ふぉっふぉっふぉ。簡単な事よ。ワシの目的は1つ――。貴様ら天下五剣を使い、"ルルイエ"を浮上させ我が力にするのだよ。ルルイエの封印を解くには、クトゥルフに縁深い魔力を持つものが必要だ。つまり!貴様らのような刀剣をずっと探し求めていたのだよ!」
「"ルルイエ"……?」
どうやらミステリオは、自分達を使って"ルルイエ"というものを浮上させたいらしい。"ルルイエ"が何なのかは理解できなかったが、この老人が何かよからぬことを企んでいるのだろうというのは理解できた。
そのために自分達を差し出せと言ってきたこの男に従う義理はない。鬼丸は戦闘の構えを解かず、ミステリオに向かって冷静に切り返す。
「断る、といったら?」
「その時は、この三つ子を貴様らが戦った輩と同じように魔物にするまでよ」
そう言い、注射を三つ子の首元まで持っていく。怪しげな黒い液体が入っているそれが、倒れている人達を魔物にした元凶なのだと発覚し、顔をゆがめる一同。そして、首元にそれが向けられたチョロ松は"ヒッ!"と小さな悲鳴を上げた。
三つ子を助けなければならない。しかし、自分達を渡すわけにはいかない。どうすればいいか迷っていると、意を決したのかカラ松が大典太に向かって叫んだ。
「駄目だ大典太さん!こいつはアンラの眷属なんだ!大典太さん達と交換条件だなんて、大典太さん達が碌な目に合わない気しかしない!」
「……邪な気配はやはり悪神のものだったのか」
「なら、力づくでも取り返すまで。おれ達があの眷属に堕ちる必要は無い」
そう。彼はミステリオの言っていた言葉から、この老人がアンラ・マンユの眷属だということを見破っていたのだ。余計な事をばらされたのか、チョロ松に向かっていた注射の針はかラ松の首元へと移動する。しかし、カラ松はひるまなかった。ここで自分達が怖がれば、大典太達に余計な心配をかけてしまうと、彼は判断していたからだった。
――両者が一歩も動けず沈黙が流れる中、戦闘の構えを取りつつも様子を見ていた今剣はふと、目をきょろきょろさせ一同の行方を追っていた。バンダナワドルディは槍を構え戦闘態勢を取っている。しかし、その隣にいるはずの彼がいない。カービィはどこにいったのだろうか。
「そこから一歩でも動いてみろ!この三つ子をすぐに魔物に変えてやるからな!」
そうなりたくなければさっさと三振をよこすのだ、と更に脅しをかけてくるミステリオ。どうすれば彼らを助けられるのか、とぐるぐると頭を回転させて考える大典太だったが、刀を振れない以上出来ることがない。
ただ、時間だけが過ぎていく。その間にも、カラ松の首に注射が迫ってくる。
"もう、だめだ"と、カラ松が目をつぶったその時だった。
ハラリ、と三つ子は縛られる感覚がなくなるのが分かった。思わず手を動かしてみると、さっきまで自分達の自由を奪っていた縄は自分達の足元にバラバラに切られている。何が起きたのだときょろきょろする3人だったが、それはミステリオも同じだったようで、思わずカラ松に向けていた注射を離してしまう程だった。
「部下は何をしておるんだ!」
「部下? 部下って、この人達のこと?」
ふと、三つ子の後ろから声がした。その方向を向いてみると、そこにはきょとんとした表情のカービィがいた。
実は、彼らがにらみ合っている隙に背後に回り込み、部下共々鬼丸のコピーで一掃していたのである。ちなみにその後、鬼丸のコピーはすぐに捨てているため現在の彼はすっぴんである。
カービィが手を伸ばした先には、伸びて倒れている部下の姿があった。
「なッーー!!」
「前が駄目なら背後からってね!後ろががら空きでよかったよ本当!さ、あっちに行こう!」
「た、助かったー!」
そう言うと、カービィは3人を誘導するように大典太達の元まで連れて行き、自分も戦闘態勢を取った。3人は味方の元に辿り着けたのか、安心したのか全員へっぴり腰になっていた。
障害になるものは何もない。取引もこれでチャラである。倒すべき目標が定まったことで、大典太は改めて刀を握り、戦闘の構えを取った。
「これで後はおまえだけだな」
「くっ……こうなったら撤収だ!貴様ら、覚えておれよ!」
「待ちなさい!」
逃がさないという風に鬼丸が素早く斬撃を繰り出したが、それよりも早くミステリオはドロドロの姿になり、そのまま姿を消してしまった。
それと同時に、まとわりついていた重苦しい空気が元に戻るのを感じる。それは、逃げた彼が"アンラの眷属だ"という決定的な証拠になるのだった。戦闘が終わったと判断した一同は各々武器を仕舞い、カラ松達に大丈夫かと問いかけた。
「オレ達は全員無事だ!助けてくれてありがとう!」
「あ!でも倒れてる人たくさんいるね!何とかしなくちゃ!」
「それと、奥に研究室みたいな部屋があったんだ。その中に――前田くんみたいな刀剣が1つ浮かんでたのを見たよ!」
「本当ですか?!」
「じゃあ、てわけしてたいしょしましょう!」
話し合いの結果、大典太、鬼丸、童子切、カービィが奥の研究室へ。その他の面子が倒れている人々と部下の対処に当たることになった。
チョロ松が言っていた"刀剣"。ミステリオの言葉と併せれば、邪気に覆われているはずだ。早く救わねばならないと気持ちを改めた三振とカービィは、奥の通路へと進んでいくのだった。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37