二次創作小説(新・総合)

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繋がる世界と未来の物語【Ep.03-ex完結】
日時: 2022/10/12 22:13
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 ―――これは、"全てを元に戻す"物語。
 それが例え、紡いできた絆が離れる結果となったとしても……。


 どうもです、灯焔です。
 新シリーズ発足です。大変お待たせいたしました。プロットの詳細を決めている間に相当時間がかかってしまいました。
 サクヤ達がどういう運命を辿るのか。この終末の物語を、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
 この作品は版権作品同士の『クロスオーバー』を前提としております。
 また、オリジナルキャラクターも登場します。
 苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。


※物語を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】 >>1
【取り扱いジャンル】 >>2


<目次>

Ep.00【舞い戻れ、新たな異世界】 完結
>>3-7 >>11 >>12-17

Ep.01-1【繋がりの王国】 完結
>>21-25 >>28-33 >>36-37

Ep.01-2【宇宙からの来訪者】 完結
>>39 >>40-48 >>49-53

Ep.02-1【強者どもの邂逅】 完結
>>55-56 >>57-59 >>60-63 >>66-67

Ep.02-2【黒と白と翡翠の車掌】 完結
>>70-73 >>74-76 >>77-78 >>79-81
>>82-85 >>86-89

Ep.03-1【ドルピックタウンにて最高のバカンスを!】 完結
>>112-113 >>114-119 >>122-126 >>127-130

Ep.03-2 【音の街と秘密の音楽祭】 完結
>>137-138 >>139-144 >>145-148


※サブエピソード※
Ep.01
【新たな世の初日の出】 >>38
【商人の魂百まで】 >>54

Ep.02
【夢の邪神の幸せなお店】 >>68
【襲来!エール団】 >>69
【線路はつづくよどこまでも】 >>90
【記憶はたゆたい 時をいざなう】 >>109-111

Ep.03
【合流!若きポケモン博士】 >>131
【六つの色が揃う時】 >>132
【狭間の世界での出来事】 >>133-134
【翡翠の地からの贈り物】 >>135-136
【繋がりの温泉街】 >>151


※エクストラエピソード※
Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 完結
>>91-95 >>96-101 >>102-104 >>107-108

Ep.03-ex【とある本丸の審神者会議】 完結
>>152-154 >>155-160 >>161-163


<コメント返信>
>>8-10 >>18-20 >>26-27 >>34-35
>>64-65
>>105-106
>>120-121
>>149-150


最終更新日 2022/10/12

以上、よろしくお願いいたします。

Ep.01-1【舞い戻れ、新たな異世界】 ( No.25 )
日時: 2021/12/15 22:55
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 2匹の案内に従い、地下の階段を下っていく。
 その先に広がっていたのは、殺風景な檻が立ち並ぶ景色だった。重々しいコンクリートの壁と、そこに掛けられている飾りが目に入って来た。
 檻は殆どが使われておらず、中には誰もいない。しかし、一番手前の2つの檻の中に高貴な雰囲気を醸し出す人物が座っていた。

 最も手前にある檻に入っているのは、王冠を被った威厳のある男性と、ライトブラウンの美しい長髪をなびかせる、ティアラをつけた少女だった。
 その1つ奥にある檻に入っているのは、黒い短髪の爽やかな雰囲気の男性と、金髪をポニーテールに纏めた凛々しい表情の少女だった。
 確認をしなくとも、クッパの言っていたリレイン王国の関係者であろう。檻に近付こうとすると、ノルンが一旦その足を止めた。



「ご想像には容易いと思いますが…。一番手前の牢に入ってらっしゃるのがリレイン王国の王様とお姫様です。その隣の牢にいらっしゃるが、彼らに仕える兵士さんです」
「王族だけじゃないんですね」
「ボクは彼らを捕えた場に同席していないので詳しいことは分かりませんが…その場に残っていたのがこの4名だったそうなんです。
 王族だけを捕えるならば彼らも、と兵士さん達も一緒に連れてきたと聞いています」
「成程…。お話をしたいのですがよろしいでしょうか?」
「あぁ…。ここから出たいなら…またオレ達に話しかけてくれ…」
「ありがとうございます」



 そう伝えると、ノルンとカノンは地下牢の出入口まで駆けていった。
 サクヤはそれを確認した後、国王であろう男性が座っている檻の前まで歩いて行った。



「リレイン王国の王とお見受けいたします。どうかお話をさせてはいただけませんでしょうか」
「……ぬ?お主は…」
「私は "サクヤ" と申します。ある事情から、リレイン王国の再起を図ろうと思っています。その為に……リレイン王国の関係者を探していたのです」
「どういうことです?いきなりそう言われても分かりませんわ」
「申し訳ありません。かいつまんでお話しすると、ですね…」



 サクヤの声に気付いたのか、王と姫は彼女の方を向いた。ストレートに"王族を助けに来た"と話したが、王と姫は何のことやら分からず首を傾げている。
 姫の言う通り、まずは何故ここに来たのかを説明しなければならない。しかし、異世界のことを話してしまっては更に不信感を募らせるかもしれない。サクヤは少し考えた後、異世界のことを黙ったまま事の顛末を王族に説明した。
 "自分達を助けに来た"。言葉だけで言えば聞こえがいいものだ。しかし、いくらなんでも唐突に訪れたその声に、王と姫は戸惑いを隠せないでいた。



「お話は分かりました。しかし…何故貴方達が私達を助けに来るのです?見たところ、リレイン王国の住人ではないとお見受けしますが。正直…唐突過ぎますし、信じられないという気持ちが強いです」
「それも無理はない。唐突なのだからな」



 サクヤが返答に困っていると、隣にアシッドが立った。どうやら助け舟を出してくれるらしい。
 王と姫も、流石の世界的に有名な社長の顔が分からない訳ではなかった。アシッドの顔を見た瞬間、驚きの声を上げる。



「な…!ネクストコーポレーションの社長がここに来るとはな…」
「存じ上げてくれていたか。それは嬉しいな。まぁ、彼女は私の友だ。今回は私の用事に付き合ってもらう形でここに来てもらっている。
 ……さて、本題に戻ろう。我々はこれから貴方達の解放の交渉をしに、大帝国まで直接向かう予定だ。君達を救いたい、という気持ちはこの場にいる皆が同じ思いを抱いているぞ。それだけの話だ」
「なんの疑いもせず、我々を助けに来たのですか?とんだお人好しですわね…」
「噂によると、リレイン王国は積極的に他の種族と関わる国だと聞いている。貴方達も似たようなものではないか?」
「そう言われると…返す言葉が見つからんな」



 続けてアシッドは"自分達のことは信用してくれなくていい。だが、必ず救う術を見つける"と伝えた。王も姫も自分達と同じようなお人好しなのは、彼らの瞳を見てすぐに分かった。
 自分達のことを見定めるような目ではない。しっかりと顔を見て、信用できるかどうかを判断しようとしているのだ。
 サクヤもアシッドの言葉に続け、自分の気持ちを伝える。



「私もアシッドさんと同じく、貴方達を助ける手立てを考えたい。それだけでも分かってほしいのです」
「ま、唐突に目の前に現れて『お前を助けに来た』って言われても…普通は信じられねぇよな。ドギー」
「あはは…そうだね…」



 ルークも似たような経験があるらしい。アーロンの皮肉に近い言葉に苦笑していた。
 王は彼らの話を聞いている間、顔を真っすぐ見ていた。そして―――納得したような表情でサクヤ達にこう返してきた。



「お主らの気持ちはよく分かった。だが…もし交渉が決裂した場合はどうする?儂等はおろか、儂等を捕らえているクッパ帝国…そして、お主等の命も危険に晒されることになる。
 ヴォイド大帝国とは、そういう危険な国なのだ」
「まぁねぇ。"王様達を解放してください!"って直接交渉しに行ったとて、素直に返してくれるとはおじさんも思えないよ」
「ここにいる奴の命が1つ、2つ消えてもおかしくはないな」
「……縁起でもないことを言うな」
「想定される可能性を言っただけだ。王の瞳がそう言っているぞ」
「ですが…。帝国の動きも妙だと私は感じています。もしお二人を脅威に感じていたら、わざわざ別の帝国に監禁を命じたりする、なんて回りくどいことをするでしょうか?
 これは帝国側がまだ温情を持っているという可能性に他ならないと考えています。だから…多分、交渉自体は出来ると私は踏んでいます」
「……今でさえ生け捕り状態みたいなものだからな。本気で潰す気なら、既にあんた達の命はないと考える方が普通だ」
「それも、そうだな…」



 王は次々と流れてくる言葉1つ1つを噛みしめ、そして彼らの顔を真っすぐ見て"お主らを信じよう。もし交渉が成立したら、出来るだけの援助を約束する"と告げたのだった。
 驚いて隣で確認を繰り返す姫を王は宥める。隣で檻を揺らす音が鳴り響いている為、兵士達も王の返答に驚いたのだろう。
 だが、王の決意は揺るがなかった。彼らの真っすぐな瞳を、一度信じてみようと思ったのだ。



「お主らの健闘を祈っているぞ。儂等もリレイン王国をあるべき姿に戻したい。その気持ちは同じだ」
「あぁ。確かに受け取った。私達が必ずその檻から出してみせるさ。信じて待っていてほしい」



 アシッドがそう言った矢先、カノンがこちらにトコトコと歩いてきた。
 クッパから連絡が来たことを告げ、そろそろ面会時間が終わりに差し迫っていることを彼らに告げた。



「クッパ様が…そろそろ戻って来いと仰っている…。だから…面会は…ここまでだ…」
「あの気まぐれ大魔王に左右されるのかよ!まぁこっちはいさせてもらう側なんだし文句は言わねーけどよ」
「すみません…。では、直ぐに客室に案内しますね。別のクッパ軍団が玉座の間で待っていると思いますので、そこまでは案内いたします!」



 そう言って、カノンは地下牢の扉を開いて階段を昇って行った。それに続くように、ぞろぞろと1人、また1人と地下牢から姿を消していく。
 サクヤは部屋から出る前、ちらりと王家のいる檻の中を見やる。王は―――こちらを真っすぐ見据えていた。



「(……これは 失敗できませんね。彼らの為にも…)」



 彼らの信用を失墜させない為にも。必ず交渉を成功させると心に決めてサクヤは部屋を後にした。










 別のクッパ軍団に案内され、サクヤ達は客室で休ませてもらうことにした。流石に続けざまに帝国に交渉しに行くのは死活問題だと考えたからだった。
 客室の扉の前でナデシコは皆に向き直り、告げた。



「さて。これからの行動は…今日はもう遅い。今から移動して向こうからの襲撃を受けても、逃げ帰る体力もなければ困るだろう。明日の朝、大帝国に発つということでいいのだな?」
「それで大丈夫です。ナデシコさんはクッパ城に残って、連携を取るということでいいんですよね?」
「あぁ、そうだ。勿論歌姫もここに残ってもらうからな。全員で行って全滅しても意味がない。ある程度は戦力を分散させねばな」
「だったら…交渉に向かうべき人員を今のうちに決めてしまいましょう」



 仮に帝国への交渉が失敗した場合、危害がクッパ帝国にまで及ぶ可能性も示唆していた。王族への攻撃から守る為、ある程度の人員は残した方がいいとナデシコは続けて言った。
 話し合いの結果、ヴォイド帝国に向かうのはサクヤと大典太、ルーク、チェズレイ、アシッド、小狐丸というメンバーになった。

 刀を振るうつもりでいた鬼丸は不服そうだが、大典太が諭した。



「……鬼丸。ここへの襲撃の可能性も考えねばならん。そうならないのが一番だが…。万が一、ということもある。あんたは残ってくれ」
「―――ちっ。普段であれば嫌なんだがな」
「鬼丸殿。大典太さんの強さは貴方が一番よく知っていらっしゃる筈です!だから…大丈夫ですよ。僕達は僕達の主命を果たしましょう!」
「防衛も立派な任務ですよ、鬼丸殿」
「私も警戒はしておきます。必ず交渉を成功させましょうぞ」


「おじさんとアーロンは交渉事苦手だし、ここはそういうのに長けてる2人に任せた方がいいよね。最悪戦闘沙汰になる可能性は否めないけど…」
「メインが交渉な以上、僕とチェズレイが行った方がいい。アーロンとモクマさんはここに残って、クッパ軍団の人達と一緒に襲撃に備えてくれ」
「暴れられるならそれに越したことはねぇがな」
「相変わらず野蛮ですねェ。そうならないように頑張るのが我々の役目なのに。戦闘前提で話をされても困ります」
「喧嘩売ってんのかクソ詐欺師」
「いいえ?私は思ったことを正直に言ったまでですよ」
「アーロン!チェズレイ!明日早いんだしそこまでにしてくれ…」



 明日に向けての話を各々続けている最中、サクヤは部屋の前で待っているテレサと話をしていた。
 どうやらクッパがヴォイド帝国にアポを取ってくれるらしいが、すんなりと通してくれる可能性はあまりないと思った方がいいらしい、との答えが返って来た。



「それは…そうですよね。相手は巨大な軍事国家。出会い頭に剣先を向けられる可能性も視野に入れなければなりません」
「とにかく…気を付けてほしいんだゾ!クッパ様がこんなに手厚い援助をするなんて珍しいんだからナ!無事に戻ってこいヨ!」
「ありがとうございます。ノルンさんとカノンさんにもお礼を伝えておいていただけませんでしょうか?」
「そのくらいお安い御用だゾ!そんじゃーナ、ゆっくり休むんだゾ!」



 テレサを見送り、後ろから声をかけてきた大典太の方向を向きなおす。
 先程まで聞こえてきていた賑やかな声は既に静まり返っている。全員就寝の為に各々客室へと入って行ったのだろう。
 サクヤも早く休もうと、近侍と共に自分達に宛がわれた客室に入って行ったのだった。









「……主も前田も寝てしまったか」
「おまえも早く寝ろ。寝ずの番はおれがしてやる」
「別に野営ではないのだから…見張りはいらなくないか?あんたも寝た方がいい…」



 部屋に入って30分が経った。サクヤと前田は疲れからか用意されたベッドに潜りすやすやと寝息を立てている。
 大典太はその様子を優しく見守りながら、鬼丸に声をかける。見張りはいらないから寝た方がいい、と。
 鬼丸は肯定も否定もせず、眉間にしわを寄せたまま大典太をガン見している。やはり交渉に行けなかったことが気に障っているのだろう。
 これはもう彼は放置して自分も寝た方がいい。そう判断した大典太は電気のスイッチを落としに扉の方向へ向かうか、鬼丸の小さな声が大典太の足を止めた。



「……気配がする。邪神の気配だ」
「……?」
「大帝国の方角。もしかしたら…誰かに化けて機を熟している可能性がある。だからおれも行くと言ったんだがな」
「そうだったのか。なら主が起きた時にでも…」
「もう遅い。それに、おれが無理やり行くことを通したらおまえの強さを否定することになるだろ」
「……別に俺は強さなんて求めてない。……鬼丸。邪神の気配を感じるということは…あんた、まだ邪気が…」
「違うな。完全に取り込まれている時の後遺症がまだ少し残っているようだ。―――忌々しいものを残していきやがって」
「…………」



 鬼丸は"邪神の気配がする"と小さな声で言った。一度破壊をして祓った筈だが、まだ残っているのかと不安げな表情をして大典太は彼に問う。どうやらそうではなく、長年侵されてきた後遺症のようなものらしい。
 忌々しい、と不満気に漏らす鬼丸に大典太はサクヤに鬼丸も連れていくよう交渉しようとしていた気が完全に薄れてしまった。こんな状態では、邪神を見つけたら真っ先に斬りかかりそうだったからだ。



「くれぐれも気を付けろ。おれはおまえが折れた姿など見たくない」
「……せいぜい注意するさ。無事に交渉が成立したら一杯くらいは付き合ってほしいものだ…」
「一杯でも二杯でも付き合ってやる。だから…主と共に無事に戻ってこい」



 いつにも増して真面目な表情でそう訴える鬼丸の姿に、大典太はそれ以上は何も言わず静かに頷いた。
 途端、訪れる無言。お互いに会話のネタが尽きてしまったのだろう。このままぼーっとしていても時間が過ぎ去っていくだけだ。大典太は最初にやろうとしていた目的を果たす為、電気のスイッチがある場所にのそのそと歩いていく。
 鬼丸は無言で空いているベッドの上で布団を被ってしまった。



「(……邪神の気配、か。何事も無ければいいがな…)」




 そんな思いを胸に秘めたまま、大典太は電気を消し床につくのだった。

Re: 繋がる世界と未来の物語 ( No.26 )
日時: 2021/12/16 13:18
名前: おろさん ◆cSJ90ZEm0g (ID: C6aJsCIT)

どうも。お久しぶり(?)のこのタイミングでコメントさせてもらいますおろさんです。


・・・ついに新たなエピソードが始まりましたか。
刀剣男士や、他にも様々な方々と再開出来たのですか。
(但し『無事に』とは言いがたいのもいるようですけども・・・)

クッパ軍団とも再開したものの、よりにもよって敵陣に脅され、一国の王家の人達を閉じ込めるていたとは・・・


クッパ「むぅぅ・・・そっちの連中もタチの悪いことをしおって・・・」

うた「そういえば、こっちではアウトローに操られ「それは言うな!!」何で」



まだまだ嫌な予感もしますが、これから一体どうなるのか、無事も祈ってます。


今回はこれで失礼します。それでは。

Re: 繋がる世界と未来の物語 ( No.27 )
日時: 2021/12/17 22:15
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

どうもです。灯焔です。
寒くなる季節の中、皆様からいただけるコメントが暖かいです。ありがとうございます。
早速コメ返と参りたいと思います。



>>おろさん 様

どうもです。コメントありがとうございます。
ゆっくりではありますが、物語が進んでまいりました。訪れるごとに明らかになっていく、かつて絆を紡いだ人物達の現状……。無事だったり、無事ではなかったり。新たに邂逅した人物もいるようですね。

クッパ軍団も部下と仲間を守る為、渋々大帝国の命に従っています。何よりも部下を大切にするクッパだからこその苦渋の決断です。
サクヤ達は無事に王族を救うことが出来るのでしょうか。お話を楽しみに待っていてくださいね!

これからも応援よろしくお願いいたします!

Ep.01-1【舞い戻れ、新たな異世界】 ( No.28 )
日時: 2021/12/17 22:18
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 サクヤ達が床についてから一夜が明けた。
 現在彼女達は、ナデシコが宿泊していた部屋を拠点にして作戦会議を開いている。単純に彼女達が使っていた部屋が一番面積が大きかった、というのも集まった理由の1つだった。
 少数人数での交渉の為、素早く行って素早く戻ってこなければならなかった。それを前提に話し合いを続ける最中、客室の扉が勢いよく開いた。
 音の方向を振り向いてみると、そこにはクッパとノルン、カノンが立っていた。



「ガッハッハ!おはようございます!朝の挨拶は大事だからな!」
「おはよう…だけど…。大魔王なのに大魔王らしくないことしてる…」
「キサマらの顔を見ていれば分かるぞ!クッパ城のベッドは皆一流の素材ばかりを使っているからな!よく眠れただろう!」
「そうだな。ぐっすり眠れたよ。感謝せねばな。……して、我々は雑談をしている猶予はあまり残されていないのだが…。本題に移って貰えるかな? 大魔王」
「おっと、ワガハイとしたことが本来の目的を忘れかけていたぞ!オマエ達!ノルンとカノンも連れていけ!ワガハイの遣い、ということで話は通してある!」
「それは有難い話です。関係者がいれば、交渉はスムーズに進みやすいですからね。ありがとうございます」
「オレは話すのが苦手だが…ノルンはそういうことは得意だから…任せると良い…」
「か、カノンくん?!行く前からプレッシャーかけないでよぉ~!」



 昨晩、ヴォイド大帝国にアポを取っている最中にノルンとカノンを自らの遣いとして派遣すると言ってきたのだ。クッパ帝国とヴォイド大帝国は現状繋がりがある。ならば、何の関係もない者達で向かうよりか幾分かは戦闘沙汰を回避できる可能性が上がるとクッパは踏んで、2匹を寄越してきたのだった。
 彼の気遣いに感謝し、礼を言う。クッパは満足げに大笑いすると、"今日もマリオをジャマしに行くぞ~!" と自分の定位置に戻って行った。



「さて。では準備が出来た者からヘリに乗ってくれ。クッパ軍団に頼んで、昨日のうちに敷地内に移動してもらっているから安心してくれ」
「溶岩がひしめく中を歩く必要はないわけか。ひとまず安心した…」
「いつでも出発できるから、さっさと乗ってくれよな!俺だって暇なワケじゃないんだからさ~」



 おそ松がそう一同に伝え、ヘリコプターのある場所まで移動を始めた。
 彼が姿を消したと同時に、大帝国へ向かう面子は持ち物の確認を改めて始める。万が一戦闘沙汰になってしまった時に、武器の調子が悪ければ一気に劣勢になってしまう可能性があるからだ。
 ……大体の動きが止まったと察知したナデシコは、彼らに向き直り告げた。



「…皆、くれぐれも気を付けるように。このミッションは思った以上に厄介な代物になりそうだからな」
「……主君。無事に戻ってきてくださいね!みんなで待ってますから」
「はい。必ず戻ってまいります。王族の解放の言葉と共に」



 ナデシコが放った言葉を胸に刻み、大帝国に向かう面々が客室を後にした。
 彼らの背中を見守りながら、前田は改めて主君が、大典太が無事に戻ってくるように祈るのだった。









 ―――ヘリコプターは再び空を舞い、ヴォイド大帝国に舵を切っていた。
 窓の外から出も分かる。小さな村々の街頭に、不気味な赤黒い目玉がついたデザインの旗が掲げられている。おそらく、ヴォイド帝国内の敷地だということを示すものなのだろう。
 随分と長い距離を飛んでいるが、見える旗は同じものばかり。不思議に思った小狐丸が口を開いた。



「随分と敷地が大きな帝国なのですな」
「『ヴォイド大帝国』…。私も仕事上でしか敷地内に入ったことはないが、大陸の約5割を占有している大帝国だそうだ」
「5割…って、陸の半分近くを同じ国が占めているということですか?!」
「あぁ。かの国は軍事力が特に優れている。武器や魔法の開発にも積極的。技術の発展の為には、自らの技だけではなく他の技も吸収する柔軟な国、なんだが…。そのやり方が少々横暴でな。
 知識だけを吸収するには留まらず、国自体を自らの帝国へと吸収合併することも辞さない。そうして滅びた小国を、私はいくつも知っている」
「そうやって面積を広くしていき、今の大帝国になっている、という訳ですねェ。正に『侵略』という言葉がよくお似合いだ」
「……略奪の為には戦争も積極的に仕掛けていそうだからな、それだと…。兵力は相当に高いと考えた方がいい」
「軍事国家、ですか…。気を引き締めて取り掛からなければ」



 ヴォイド大帝国。
 東の大陸の約5割を占めている巨大な軍事国家である。今も国の面積と技術吸収の為、小さな国を次々と吸収合併して今の形態になっている、正に『侵略国』という異名が似合う国だ。
 そんな帝国と正面から交渉しに向かう。随分と大きな目標を立ててしまったとサクヤは思うが、必ず救出すると誓った王族がいる手前、売った喧嘩から逃げる術は持ち合わせていない。
 
 ルークは改めてナデシコから預かった地図のコピーをタブレットで開き、西の大陸と東の大陸を見比べてみる。確かにアシッドのいう通り、西の大陸には大きな、名のある国が転々と存在している。対照に、東の大陸は中心に『ヴォイド大帝国』と書かれている以外はぽつぽつと建物の名が記されている程度だった。
 クッパ帝国が侵略されなかったのは、火山に囲まれ攻めにくい地形だからというのもあるのかもしれない、と彼は想像した。



「皆さん!そろそろヴォイド大帝国の中核にあります『ヴォイド城』に到着いたします。シートベルトをお閉めください!」



 操縦士の指示に従い、一同は各々取り出していたものをしまい、着陸に備える。
 しばらくすると機体が一瞬揺れ、大人しくなった。窓の外から見えたのは―――。クッパ帝国とは比にならない程に大きい城門だった。
 ヴォイド大帝国の敷地内だ。これから何が起こるか分からない。警戒を怠らぬよう改めて確認した後、ヘリコプターから降りた。


 同時だった。









































『何者だ!!』




 ―――一番最初に降りたアシッドの首元に、槍の矛先が突きつけられていることに気付いたのは。

Ep.01-1【舞い戻れ、新たな異世界】 ( No.29 )
日時: 2021/12/17 22:21
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

「随分と物騒な出迎えだな。クッパ大魔王から連絡が行っていると思うのだが」
「確認をする。機体の中にいる全員も降ろせ。そしてその男の後ろに立て。下手なことをしたら首を跳ね飛ばす」
「そう言われなくても…我々には『降りる』という選択肢しかないのですが」
「つべこべ言っていないで黙って動け!死にたいのか!」
「ひ、ひぇ~!おっかない!」



 兵士に威嚇され、無言で機体に残っていた面子も降りた。武器を構えようものなら、アシッドの首が飛ぶ可能性がある。そう判断したサクヤ達は、兵士の言葉に従いアシッドの後ろに立った。
 しばらくにらみ合いが続いていた最中、確認を取っていたと思われる兵士が戻って来た。報告を受け、兵士はやっと首元に突きつけていた槍を下したのだった。



「確かに昨日、クッパ皇帝から連絡が来ている。……そこの亀が証人のようだな。付き人か?」
「は、はい!そうです!」
「皇帝陛下は謁見を許されたが、妙な真似をしたら首を跳ね飛ばす。そのつもりでいるんだな。大広間まで案内せよ!」
「はっ!」



 ピリピリとした空気が途切れぬまま、他の兵士に皇帝のいる場所まで連れて行ってもらえることになった。もしノルンとカノンを付き人として連れていかなかったなら…すんなりと城内に入ることはままならなかっただろう。サクヤは改めて、心の中でクッパに感謝を述べた。
 大広間へ向かう間、大典太はサクヤを隠すように歩いていた。自分の身長ならばサクヤをすっぽりと覆えるくらいの差だと自分でも分かっていたからだった。そして、"鬼丸を連れてこなくてよかった" と心の中で思った。






 ―――ヴォイド城の大広間。目が眩むような広さの奥の玉座に、見るからに気弱そうな藍色の髪をした青年が座っていた。その傍らには、黒いローブで顔を隠した人物が立っている。ローブで覆っている体つきから恐らく女性だと判断は出来たが、その"女性"にサクヤは言われようのない悪寒を感じていた。

 皇帝の座っている場所まで近づくと、青年は玉座から立ち上がり丁寧に礼をした。
 大帝国の評判とは打って変わって、第一印象はとても誠実な人間だという感想を抱いた。



「遠路はるばるご苦労様です。僕はヴォイド大帝国の第72代皇帝、"シャルト"と申します」
「こちらこそ謁見の許可をありがとうございます。失礼を承知で申し上げますが…シャルト皇帝陛下は最近皇帝の座を受け継がれたのですか? 私が以前仕事でこちらにお邪魔した時には、別の方が皇帝だったような記憶がございます」
「あぁ…。それなら、僕の父です。僕が皇帝の座に着いたのは1週間前…。まだまだ、周りも分からぬ新米の皇帝です」
「(1週間前…。チェズレイが抱いていた『人がいなくなった違和感』で具体的に示していた期間と一致するな)」
「貴方が帝国の現皇帝、という訳なのですね」



 お互いに自己紹介を済ませた後、シャルトは玉座に座り直す。そして、本題について早速話し合うことになった。
 ルークはシャルトが発した言葉を考えつつ、警戒を解かないでいた。恐らく、リレイン王国の王族を捕らえる命令を出したのは彼だと予測していたからだった。
 しかし、会話をすればするほど彼がそんな命令を出すような冷酷な人物には見えない。その為、よく観察する必要があったのだ。



「それで…本日は、リレイン王国王族の解放の交渉…ということでいらっしゃったと伺っています」
「はい。リレイン王国の方々とも少々お話を交えて参りました。彼らは何も悪事をしていない。それなのに唐突に別の大陸の国に連れ去られたと主張しております。
 同じ大陸にリレイン王国があるならば、吸収合併というていで侵略をするのは考えられます。ですが…実際にそうではない。皇帝陛下がもし判断した事項に迷っていらっしゃるのであれば、どうか『王族の解放』の宣言をお許しいただけませんでしょうか」
「え、えっと…」



 シャルトの瞳には迷いがあった。サクヤはそこで1つの可能性に行きついた。自己紹介の口ぶり、そしてその雰囲気から…『彼自身が自分の意思で王族を捕らえろと命じたのではない』ことだった。
 もし彼に裏の顔があり、冷酷であれば命令を出したかもしれない。しかし、サクヤにはどうも彼にそういう面があるとは思えなかった。

 そんな彼の耳元で、側近であろうローブの女性が口添えをした。あの、サクヤが悪寒を感じている女性が、だ。
 彼女の意見を貰ったシャルトは、改めて一同に向き直り口を開いた。



「確かに彼らを捕えるように命じたのは僕です。リレイン王国は大帝国を侵略しようとしている、だから早めに手を打てとの報告を受け……行動に移したまでのお話です。
 申し訳ありませんが、解放の宣言をすることは出来ません」
「ちょっと待ってください!僕達、少ししか彼らとお話が出来ていませんが…。そんな方々には見えませんでした。シャルト皇帝陛下は実際に、リレイン王国の王族と話をしたことがあるんでしょうか?」
「ボス。言い過ぎると首元を掠られますよ」
「でも…!」
「お気持ちは分かります。しかし、我々は戦争をしに来た訳ではないのです。もう少し言葉を引き出しましょう。
 彼に迷いが見られますが…どうも隣の女が余計な口出しをしているみたいですねェ。もしかしたら、その"リレイン王国は大帝国を侵略しようとしている"というのも…彼女の口車なのかもしれません」



 シャルトの言葉に納得できず、ルークが反論をする。ルークに向かって矛が向けられたことにチェズレイが気付き、彼を静かに制しながら自分の考えを小さく述べた。
 サクヤもルークと同じ気持ちを抱いていた。『偏見や色眼鏡で人の印象を決めつける』等、一番やってはいけないこと。神として世界を守護すると決めた際に、心の中で一番強く芯にしていた言葉だった。



「実際に会ったことはありません。しかし…配下が口を揃えて『リレイン王国は悪』だと言っていたという報告を受けております」
「……つまり、皇帝陛下自身は彼らを実際には知らない、と。そういう解釈でよろしいのですね?」
「は、はい…」
「陛下はこう仰っております。貴方がたが何を言われようとも、皇帝陛下のお気持ちは変わりません。お引き取り願えますか」



 シャルトの言葉にサクヤは強く違和感を覚えた。まるで、『1人から聞いたことをまるで全員から聞いたことだと思っている』ように感じたのだった。
 話が平行線を辿っているうちに、向こうが仕掛けてきた。余計な口出しをされるのを嫌がったのか、ローブの女性が遂に口を開いたのだ。その口ぶりは、明らかに自分達を邪魔者だと感じているようなものだった。
 このままでは王族との約束を守れず、彼の誤解も解けない。そう判断したサクヤはローブの女性の言葉を遮り、前に出た。今動かなければ、永遠に前に進まないと思っていたからこその行動だった。



「私は。皇帝陛下自身のお言葉をお聞きしたいです」
「……何を言っているのです?陛下のお言葉をお聞きになっていなかったのですか?」
「いいえ。先程申し上げられた言葉は…私にはまた聞きのようにしか聞こえませんでした。まるで…『1人から聞いたことを、まるで全員から聞いたことだと』思っているように。
 皇帝陛下。無礼を承知で質問いたします。その『リレイン王国が悪』だとは、実際に兵士の皆さんが口に出していた言葉なのですか?」
「皇帝陛下に許しも無く質問を投げるな無礼者!!」
「無礼はどちらですか。彼自身の意見を潰し、意のままに操っているのは貴方なのではないのですか?!私は "皇帝陛下自身のお気持ち" を知りたいだけです。その言葉に嘘はありません」
「…………」



 これ以上はまずい、と大典太はサクヤを制止しようと動いた。しかし、サクヤはそれに従わなかった。ローブの女性にどれだけ言葉で罵倒されようとも折れなかった。
 そして、大典太は気付いていた。ローブの女性が、サクヤ『だけ』に向けて明確な殺意を向けていることに。
 彼女は止まらなかった。自分の感じている悪寒に、彼を近付けさせてはならないという危機感も混じっていた。



「実際にお会いしたことがないというのであれば、この際ですので直接クッパ帝国まで来ていただき、直接お話をしていただければ解決すると思います。
 実際起きたことで判断せず、又聞きなどで色眼鏡をかけ、物事や人を判断するということが実に愚かなことをかを皇帝陛下には知っていただきたいと思っております。
 それに…皇帝陛下は即位して日が本当に浅い。他の国と交流を図るチャンスなのではないでしょうか」
「サクヤ。同じ思いだったが…流石に先走り過ぎだ」
「皇帝陛下も物凄い思い違いをしているようですが…。困りましたな、誤解というものは一度染みついてしまえば中々解ける代物ではありませぬ」
「…………」



 サクヤの言葉を真っすぐ受け止めているシャルトとは対照的に、ローブの女性からは怒りが感じられた。まるで、邪魔をするなと訴えているかのように。
 それを表すように、女性は声を荒げた。



「陛下。この者の言葉に耳を傾けることはありません。その女をすぐに殺しなさい!」
「えっ、でも…待って」
「いいえ。待っている暇はありません。この女もリレイン王国の差し金です。悪意の芽は芽のうちに摘んでおかねばなりません!
 何をぼーっとしている!!さっさとこの女を始末しろ!!周りにいる雑魚共諸共、だ!!!」



 兵士達も、シャルトとローブの女性の表情が全くの正反対なことに戸惑っていた。女性はサクヤ達をさっさと殺せと口に出しているが、シャルトは武器を構えないでほしいと目で訴えている。
 どちらも帝国の重鎮を担う大事な人物。即位した身ではあるが一番上の立場にいるシャルトに従うべきか、先代の皇帝から付き従っているローブの女性に従うべきか。迷っていた。

 誰も行動を起こさないことに苛立ったローブの女性は、目の前で呪詛を唱える。
 すると、近くにいた兵士が1人悶え始め、呻き声をあげながらサクヤ目掛けて槍を向けて突進してきたのだった。人間のはずなのに、発する声はまるで屍―――。言葉通りの『生ける屍』である。

 サクヤに向かって突進してくる男に大典太は刀を抜き、構える。
 戦闘が起きてしまう。誰もがそう思った、その時だった。













『やめてください!!!』













 ―――叫んだのは、皇帝陛下自身だった。



「アン。無理やり兵士を動かしたら駄目だと言っているだろう。やめてくれ」
「ですが…!」
「やめてくれ。兵士も苦しがっているじゃないか!!」
「……承知いたしました」



 アン、と呼ばれた女性がパチン、と一度指を鳴らすと、大典太の構えていた刀に触れそうだった槍が床に落ちる。それと同時に、呻き声を出していた兵士が我に帰った。混乱している男性に、仲間であろう兵士が駆け寄る。
 その様子を見て大典太は太刀を鞘に仕舞った。そして、アンの方向を向く。大典太は―――彼女が唱えていた呪詛に覚えがあった。



「(……あれは。あの時だ。確か、俺が幻の本丸の蔵の中に閉じ込められていた時と同じ…)」



「サクヤ殿。確かに貴方の言う通りです。実際に会って話をして、僕の目でリレイン王国が危険かどうかを判断したいと思います。それと…側近のアンモビウムが無礼を働いたこと、謹んでお詫び申し上げます」
「いいえ。分かってくれれば良いのです。それに…先程も申し上げました通り、皇帝陛下となられたのであれば…様々な国の情勢を直接目で見ておくのも大事です。先代の皇帝もきっと…そうだったのではないでしょうか?
 そうでなければ、ここまで国は大きくなっていません」
「……そうですね。僕はただでさえ新米中の新米なのだから、足を動かさないとですよね。それではすぐにクッパ帝国に向かいましょう。アン、それでいいよね?」
「―――皇帝陛下が仰ることであれば」
「(……随分と不服そうだ。皇帝が自分の意思を持つことを嫌がっているように見えますねェ。もしかすると―――先代の皇帝も…彼も…意思を発しなかった、のではなく。『発せなかった』…?)」



 希望に満ち溢れたシャルトの受け答えに対し、渋々了承を得るアンモビウムの姿。チェズレイは遠目に観察しながら様子を見ていた。口ぶりと兵士の反応からして、長く国の管理に関わっているのは明らかに彼女だ。
 だからこそ、チェズレイは思った。サクヤが先程発した言葉通り、皇帝自身の意思を封じているのではないかと。



「ケニス。しばらくこの国の管理を任せます。僕はこれからクッパ帝国に向かいます」
「承知いたしました。お戻りはいつごろになられますでしょうか」
「本日中には戻るよ。流石に長い間国を開ける訳にはいかないから…」



 シャルトは素早く近くにいた大臣を呼び出し、国の管理を暫く任せることを告げた。チェズレイは勿論彼のことも観察していたが、彼はアンモビウムではなく、シャルトに忠誠を誓っているように見えた。
 ケニスと呼ばれた大臣はすぐに兵士に他の大臣を呼びに行くことを伝え、部屋から去った。それを見守った後、シャルトはサクヤに向き直る。



「では、行きましょう。分かっておられるとは思いますが…ヴォイド大帝国はとても大きな国です。肯定ともあろう者が長期間席を空けていい国ではありませんので…」
「そうだな。では、素早く撤収するとしよう。あぁ、それと…」
「な…なんだね?!」
「これを。そこの女に呪詛をかけられた後遺症が残っているかもしれない。気分が落ち着いたら飲むと良い」
「あ…あぁ…」
「アンモビウム様が兵士に呪詛をかけるなんて…。彼のことは我々が介抱します。お気になさらずとも大丈夫です」
「そうか。だが、あの術式は元々人間にかけるものではないのでね。余計なお節介だったらすまないね」




 アシッドがそう言った時には、既にサクヤ達の姿は消えていた。恐らくアンモビウムがシャルトに付き従い部屋から出たタイミングを見計らって行動したのだろう。
 兵士は混乱していたが、素直に彼から薬の入った小瓶を受け取った。



「(あの呪詛…もしかして彼奴は…)」




 妙な違和感を抱えながらも、アシッドも兵士たちに別れを告げた後、大広間を後にしたのだった。
 そして―――一同を乗せたヘリコプターは、クッパ帝国へ戻る為、再び空路を進み始めたのだった。


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