二次創作小説(新・総合)
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- 繋がる世界と未来の物語【Ep.03-ex完結】
- 日時: 2022/10/12 22:13
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
―――これは、"全てを元に戻す"物語。
それが例え、紡いできた絆が離れる結果となったとしても……。
どうもです、灯焔です。
新シリーズ発足です。大変お待たせいたしました。プロットの詳細を決めている間に相当時間がかかってしまいました。
サクヤ達がどういう運命を辿るのか。この終末の物語を、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
この作品は版権作品同士の『クロスオーバー』を前提としております。
また、オリジナルキャラクターも登場します。
苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。
※物語を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】 >>1
【取り扱いジャンル】 >>2
<目次>
Ep.00【舞い戻れ、新たな異世界】 完結
>>3-7 >>11 >>12-17
Ep.01-1【繋がりの王国】 完結
>>21-25 >>28-33 >>36-37
Ep.01-2【宇宙からの来訪者】 完結
>>39 >>40-48 >>49-53
Ep.02-1【強者どもの邂逅】 完結
>>55-56 >>57-59 >>60-63 >>66-67
Ep.02-2【黒と白と翡翠の車掌】 完結
>>70-73 >>74-76 >>77-78 >>79-81
>>82-85 >>86-89
Ep.03-1【ドルピックタウンにて最高のバカンスを!】 完結
>>112-113 >>114-119 >>122-126 >>127-130
Ep.03-2 【音の街と秘密の音楽祭】 完結
>>137-138 >>139-144 >>145-148
※サブエピソード※
Ep.01
【新たな世の初日の出】 >>38
【商人の魂百まで】 >>54
Ep.02
【夢の邪神の幸せなお店】 >>68
【襲来!エール団】 >>69
【線路はつづくよどこまでも】 >>90
【記憶はたゆたい 時をいざなう】 >>109-111
Ep.03
【合流!若きポケモン博士】 >>131
【六つの色が揃う時】 >>132
【狭間の世界での出来事】 >>133-134
【翡翠の地からの贈り物】 >>135-136
【繋がりの温泉街】 >>151
※エクストラエピソード※
Ep.02-ex【再度開催!メイドインワリオカップ】 完結
>>91-95 >>96-101 >>102-104 >>107-108
Ep.03-ex【とある本丸の審神者会議】 完結
>>152-154 >>155-160 >>161-163
<コメント返信>
>>8-10 >>18-20 >>26-27 >>34-35
>>64-65
>>105-106
>>120-121
>>149-150
最終更新日 2022/10/12
以上、よろしくお願いいたします。
- Ep.02-1【強者どもの邂逅】 ( No.60 )
- 日時: 2022/03/24 22:05
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
ダイヤモンドシティから暫く北方面に歩き、前方に巨大な街並みが見えてきた。
想像以上に大きいそれに思わず言葉を失った刀剣男士達を尻目に、ネズは変わらず猫背のまま歩き続ける。元々大きな森があったということで、道がないことを危惧していたがそんなことはなかった。一応、人が行き来できる道が存在したのは幸いだった。
徒歩で行き来できるということは、駅と駅が線路で繋がるまでの間交通の便に困ることはない、ということに他ならない。シュートシティにいる人間も、何とか連携できる術はありそうだと内心大典太は思った。
「少しかかっちまいましたが、徒歩でたどり着けましたね。ダイヤモンドシティから見てもよく分かりましたよ。やっぱり目立つね。あのタワーとか」
「ざっと片道20分くらいでしょうか。そこまで遠い場所でなくて良かったです」
「……まぁ、向こうに駅があるのならいずれ線路が繋がるだろう。それまではこの道を使って行き来することになりそうだな」
「あ。予め言っておきます。シュートシティ…とんでもなく広いんで、はぐれないようにしてくださいよ」
1人と二振がコンクリートの床を踏みしめる。本格的にシュートシティへと足を踏み入れた。
本当であれば、ここでそらとぶタクシーを使って目的地であるシュートスタジアムまで向かうのがいつもの行き方だった。
しかし、人はまばらにはいるもののかつての賑やかな雰囲気を失っている。シュートシティは、ガラルで一番大きな街。人が集うはずのその街に活気が溢れていないことに、ネズは新鮮さと共に寂しさも覚えていた。
無言で歩く青年の後ろを刀剣男士は黙ってついて行く。しばらく歩いた先に、目立つマゼンタの塗装の大きな建物が見えた。"あれが、シュートスタジアムです" 振り向いてネズが言った。
自動ドアを静かに潜り、まずは連絡を寄越してくれたキバナに挨拶しようとネズが足を進める。
それと同時に、彼の胸に飛び込んでくる人影があった。覚えのあるツインテール。妹であった。妹―――マリィは、そのまま勢いよくネズに抱き着く。胸元が濡れている。彼女は泣いていた。
「アニキのバカ!!本当に死んじゃうかと思ったと!!!」
「マリィ…。そんなに泣くまで何があったんです。色々ありましたが、おれはピンピンしていますよ」
「…………」
「―――ご自分が命の危機に瀕したこと、言いたくないのでしょうか…」
「あっ、ネズ!」
「少し遅れちまいましたかね。だけど、きっちり到着しましたよ」
バカ、バカとネズの胸を軽く叩き続けるマリィ。今まで自分がどれだけ心配していたかを兄に知ってもらいたかった。しかし、兄はきょとんとした表情でマリィの頭を優しく撫でる。本当に自分に何が起こっていたのか理解できていないのか、はぐらかしているのか…。ポーカーフェイスが得意なのか苦手なのかは分からないが、妹には絶対に自分の苦労した姿を見せたくないという姿勢は痛い程伝わってきた。
そうしている姿に気付いたのか、キバナがこちらに近付いてきた。相も変わらず不愛想なその表情と、対照的に泣きじゃくる妹の姿を見比べてキバナは言った。"自分に起きたこと理解してる?"と。
ネズは首を振った。本当に理解をしていないらしい。男は思わずため息をついた。
「ネズ。なんでマリィが泣いているのか理解してないようだな」
「正直、何が原因で意識を失っていたのかすら理解出来ていません。この人達が助けてくれたことは事実なんですが」
「あのねぇ。オマエ、死ぬ間際だったんだよ。オレさまとマリィが倒れてるネズを見つけて、意識失ってるしみんなのところ戻ろうと背負ったら身体とんでもなく冷てぇし!」
「おれの身体が冷たい…?元々おれは低体温気味ですよ」
「そういう意味じゃなか!というかアニキ、冷静に状況を分析しないで!」
「……でも、あの変なリーグスタッフに何か攻撃を受けたところまでは覚えてます。ポケモンも封じられて、でもユウリを助けなくちゃならなくて、動こうとした矢先に…。腹部に強烈な痛みを覚えました。槍で貫かれたような痛みですよ。でも…何かが実際に刺さったわけじゃなくて。おれが覚えているのはそこまでです」
「……そのせいだろうな。ネズの体温が異常に下がっていた…ネズの命が刈り取られようとしていた理由」
「成程、ね。やっと理解が出来ました。あのリーグスタッフはおれを殺すつもりで攻撃を仕掛けた、と」
「だから冷静に分析しないで!」
「妹よ、痛いです。……ですが、運よく彼らに助けられたので無事生きてます。ご迷惑をおかけしました」
ネズはやっと自分の身に起きたことが分かった。あの時、ユウリを連れ去ったリーグスタッフは確実に自分の命を狙っていたということも。見知らぬ土地に投げ出され、知らない内に生死の狭間を彷徨っていたことも。
冷静に分析するな、と先程より強く胸を叩かれ流石に痛い、とネズはマリィに辞めるよう諭した。その直後、感極まったのかキバナもネズに抱き着いて来ようとしていた為、マリィを撫でていた反対の掌をキバナの顔に向け、勢いよく抑えつけた。
「ネズ。痛い、痛い」
「だったら抱き着こうとするんじゃねぇ」
なおも諦めないキバナを抑えつけつつ、ネズはスタジアムをぐるりと見回す。大体知っているジムリーダーはいる。ちらほら、マイナーリーグだった筈のジムリーダーもいるような気がするが、今は気にする必要はないと頭を切り替えた。
しかし―――"いなければならない"人物の姿が無い。遂にネズはその名前を口にする。
「すみません。……ユウリは?」
「ユウリくん…。君と一緒なんだ。ぼく達が目覚めてから、一度も姿を表していない。彼女はぼく達全員の連絡先を知っているから、何かがあればすぐに連絡してくる子だとは思っているんだけど…」
「おかしいですよね。誰かしら…マリィさんやホップくんにならすぐ連絡しそうな子なんですが。もしかしたら、ネズさんのようにどこか別の場所に飛ばされてしまったとか…」
「そう、ですか…」
「ネズ。話したいから手除けて」
「だったら抱き着く素振りをやめやがれ」
ユウリのことについて触れると、向こうにいたジムリーダー達がぽつり、ぽつりと現状を話し始めた。どうやらユウリもネズと同じく、シュートシティにはいなかった。更に、今の今まで姿を見せていないと付け加えた。
マリィも泣き止んだ為、ネズから離れる。キバナの声に渋々応じ、掌を除けるとキバナは普通に姿勢を直したのだった。
「そっか。ユウリがおれが襲われたリーグスタッフに連れ去られたことはおれしか知らないのか…」
「だよなぁ。ネズを見つけた時には、行き止まりには誰もいなかったもん。なぁ、マリィ?」
「うん。倒れてたのはアニキだけだった。ユウリはいなかったよ」
「さっきのネズの話から推測すると、ユウリはそのリーグスタッフになんかされて倒れてたんだよな?それをネズが見つけて、助けようとして返り討ちに遭った。ネズが気絶する間にそのリーグスタッフはユウリを連れ去って、倒れてるネズをオレさまとマリィが見つけた。これでOK?」
「はい。合っています」
「つまりだ。ユウリくんはその"怪しいリーグスタッフ"とやらに拉致されたということで間違いないんだな」
「状況を鑑みると、その可能性が一番高いと考えられます」
「ユウリ…」
ネズが言っていることに嘘はない。ユウリが現れない以上、彼が嘘をつく理由がないからだ。
更に、ネズが大変なことになっていたのはキバナとマリィ、そして刀剣男士達が証人になれる。つまり、ユウリは"ネズを襲ったリーグスタッフ"に拉致された可能性が高いと。一同はそう結論を付けた。
せめて妹と共に、彼女は無事に現れることを祈っていた。ネズはやるせなくなり、表情を暗くする。そんな彼を心配しつつ、大典太はその"怪しいリーグスタッフ"という言葉に違和感を覚えていた。
その後、近況をお互いに話し合っていた矢先のことだった。ホップがネズの持っているタマゴに興味を示し、話しかけてきた。
「そういえば、そのタマゴなんだ?」
「おれが倒れていた場所の傍に一緒に落ちていたそうです。助けてくれた人がそう言っていました」
「そうか…。ネズさん、念のために聞くけど最近タマゴ孵化は…」
「してませんよ。チャンピオンからタマゴを預かった記憶もありません。丁度良かったです。ホップかソニアに調べてもらおうと思って一緒に持ってきたんですよ」
「何のタマゴか分からないのね」
「はい。だから、何のタマゴかせめて分かればいいと思いまして」
「とは言ってもなー…。ソニアも今どこにいるか分からないからなー…」
どうやらソニアもユウリと同じく現在行方不明らしい。ホップがいたから幸いだったが、もし2人共その場にいなければお手上げだったとネズは考えた。ソニアはシュートスタジアムには来ていない。ならば、1人別の場所で目を覚ましても不思議ではないとホップは答えた。
とりあえず何か調べてみれば分かるかもしれない。ホップはネズに、近くにある机にタマゴを置くよう頼む。指示に従い、割れないようにそっとタマゴを机に置いた。後のことはホップに任せ、ほんの少し下がる。それと同時にホップがタマゴに触れようとした瞬間だった。
タマゴが、唐突に光り出した。
「うおお?!」
「う、産まれそうですよ?!」
「既に孵化しそうだったってことですか…?!」
「分かんない。でも、このまま様子を見るぞ!」
光が徐々に消え、タマゴから産まれたポケモンが正体を現した。こきゅん、という可愛らしい声と共に現れたのは―――ゾロアだった。
ゾロアの視線はネズを捉えており、彼と主だと勘違いしたのか彼の手に擦り寄って来た。いくらタマゴから孵化したとはいえ、流石に人慣れし過ぎではないだろうか。ネズは少々心配な面持ちになった。
当のゾロアは尻尾を振り、嬉しそうにネズの手に頬を摺り寄せている。
「産まれたばかりとはいえ、流石に人慣れしすぎじゃないですか?」
「うーーん…。そもそもゾロア系統は鎧の孤島にしか生息していないんだぞ…。ネズさん、ゾロアークは育ててないよな?手持ちにいるなんて記憶オレにはないぞ」
「育ててないですね。いずれ育てたいとは思っていますが」
「ヒスイのゾロアークはもっとお前っぽいしな!前、ホップに少しだけ記事を見せてもらったから覚えている」
「ダンデ、今は話を逸らすの止めてもらっていいですか。ホップ、何か気になることでもあるんですか?しかめっ面が直ってないよ」
「うーーん…。タマゴから孵化してこんなに人懐っこいのも違和感だけど、なんか変なんだよなこのゾロア。色違いでもないし、見た目は普通のゾロアなんだけど…。なーんか、引っかかるんだぞ…。
でも、これ以上はオレには分からない。知りたいならどうにかしてソニアを見つけて、調べてもらわないとな」
そう言って、ホップは産まれたばかりのゾロアをじっと見る。ゾロアは相も変わらずネズに懐いているようで、グローブを嵌めている手をぺろぺろと舐めていた。
ソニアがいない為、これ以上のことは分からないとホップは結論を付けた。違和感はあるが、形状は普通のゾロア。鳴き声も普通のゾロアと変わりない為、現状は"普通に孵化したポケモン"として扱えばいいと未来のポケモン博士は答えたのだった。
- Ep.02-1【強者どもの邂逅】 ( No.61 )
- 日時: 2022/03/25 22:12
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
「アニキ、ゾロアどうすると?」
しばらく目の前のポケモンと触れ合っていたところ、マリィが口を開いた。
彼女の言葉を聞き、確かにそうだとネズは自覚をする。誰のタマゴかは分からないが、このまま野放しにする訳にはいかない。もし野生だったとしても、ここまで自分に懐いてしまった為"逃がす"という選択肢をこの男は取れなかった。ポケモンに対してはとても真摯で優しいのだ、ネズという男は。
彼は一旦ゾロアの好きにさせていた手を離し、無言で空のモンスターボールを取り出した。撫でていた暖かい手が離れ、ゾロアはしょんぼりとした表情になる。
「おれの手持ちに入れます。そもそもおれの倒れてた場所の近くにあったタマゴから産まれたんです。それに…ここまで懐いちまったら、例え野生でも引き取る責任があるというものです」
「責任感で連れて行くものじゃないぞ!」
「分かってます。あくまで選択肢はゾロアにあります。ここでボールに入るのを嫌がれば、野生に返すなり、ポケモンセンターや育て屋に預けるなり然るべき選択を取りますよ」
「だけどよ、ここまでネズにすり寄って来てるんだから…流石に"嫌がる"って可能性は潰しちゃってもいいんじゃねぇか?」
「だといいですけどね」
責任感もあるが、ここまで自分に甘えてきてくれたゾロアの思いに応えたい。そんな気持ちがネズの中に生まれていた。
彼は一旦一呼吸を置き、空のモンスターボールをゾロアの目の前に置いた。そして、ゾロアに優しく語りかける。
「あのね、ゾロア。おれはてんでだめなやつです。でもね。懐いてくれたおまえに悪い気を起こさせようという気はしません。だから…一緒に来てくれませんか。もし来てくれる覚悟があるのなら…このボタンを、おまえのタイミングで押してください。おれはこれ以上、ボールには触れません」
目線を合わせ、子供に優しく諭すようにネズは言った。あくまでも選択肢はポケモンにある。だから、ゾロアがどんな選択をしてもいいようにとネズは自分のモンスターボールから手を引いた。
ゾロアは目線を合わせたネズのエメラルドグリーンの瞳を見つめる。不思議と彼には心を許せた。暖かさを感じた。ゾロアの答えは、決まっていた。
元気よくこきゅん、と鳴いたゾロアは右足で置いてあるモンスターボールのスイッチに触れる。それと同時に、ゾロアの身体はボールの中に吸収される。暫く机の上を動き回った後、軽快な音を出してボールの揺れが収まった。
それは、ネズの手持ちになったことを意味する合図だった。
「ありがとうございます、ゾロア。おれの気持ちに答えてくれて」
優しい微笑みを浮かべながらネズはモンスターボールを手に取る。軽く放り投げてゾロアを外に出すと、再び楽しい景色が見れたのか床を走り始めた。
そして、あろうことか近くにいた大典太に興味を持ち、彼の身体を駆けあがり頭の上に乗っかってしまった。突拍子もない行動に大典太が固まる。大きなポケモンならまだしも、小動物を霊力で殺してしまわないかと内心震えていた。
「あんた、もしかして小動物…苦手なんですか?」
「……苦手なんじゃない。鳥を蔵から落とした過去があって…小さい動物が怖いんだ」
「深くは聞きませんけど。ゾロアはポケモンだから大丈夫ですよ。優しく抱えてあげてください」
様子を見ていたネズは、大典太の頭の上でくつろいでいるゾロアを持ち上げ、大典太に抱えさせる。腕が震えていた大典太だったが、一度抱えてゾロアと目線を合わせる。ゾロアは彼にも懐いたようで、彼の腕の中で元気よく鳴いた。
子犬のようだ、とそれを見ていた数珠丸は想像した。しかし、これがきっかけで少しは小動物への恐怖が薄れればそれはそれでいいとも同時に思った。
「おれだけじゃなくあんたにもすぐ懐くとはね。雰囲気が似てるからですかね」
「確かに言われてみれば、あなたとアニキ根っこが似てるというか…うん、あたしもゾロアがすぐ懐いたの分かる気がする」
「……俺はあんたの兄みたいに立派な存在じゃないんだぞ」
「すぐ自分を卑下するところも似てる」
「…………」
スパイクタウンの兄妹にそんなことを言われ、大典太はたじたじになってしまう。それと同時に、彼の腰から音が鳴り響いた。誰かからの通話だろうか。ゾロアを片手で抱え直し、スマートフォンを取り出す。通信の相手は、案の定ラルゴだった。いつもいつもタイミングが良すぎると呆れたが、彼はいつも通り通話ボタンをタップする。
画面上に笑顔のラルゴが映った。何か良いことでもあったのだろうか。
『光世ちゃん!数珠丸ちゃん!前田ちゃんからお話は聞いたわ。今後のことも含めて、シュートシティで一番偉い人とお話をしたいのだけれど…』
「……偉い人?」
『そうよ。街を取り纏める責任者さん。いらっしゃるかしら?』
「責任者…アニキでいいのか?」
「誰かから連絡が来ているのか?」
「我々が現在お世話になっている街の町長殿が、こちらの街の責任者とお話がしたいと連絡が来ているのですが…」
「そうか。ならオレが取りつごう。スマートフォンを貸してもらえるか?」
「……分かった」
大典太からスマートフォンを受け取ったダンデは、一同が集まっている場所とは少し離れた場所でラルゴと話を始めた。勝手にどこかに行かないようにホップが見張りを立候補し、ダンデの元へ走って行った。
彼の声の大きさもあり、会話の内容が少しだけ分かった。やはり、ガラル地方で今この世界に存在しているのはこの人工都市、"シュートシティ"だけらしい。シュートシティの外が右も左も分からないのにとても困っていた。
幸い、ユウリ以外のガラルスタートーナメントに参加しているトレーナーは全員無事だ。……スポンサー権限として参加していたあの双子の姿も見えないが、今は気にすることではない。
「コネクトワールドにガラル地方ごと飛ばされた時とは訳が違うからね…どうしたものか」
「前に飛ばされた時もびっくりしたけれど。異世界転生なんて経験、絶対に普通なら出来ないわよ」
「先程リーグスタッフの方が、シュートシティに立ち寄った行商人の方から地図をいただいたようです。そこにも、私達が知っている街の名前は何一つ載っていませんでした。地図にある、この森自体がシュートシティに変貌したと考えると……。この街以外は、見つからない可能性の方が高いかと」
摩訶不思議な現象に巻き込まれてもガラル地方のトレーナーは冷静だった。カブとユウリと協力した過去があり、更にコネクトワールドに飛ばされた経験もある。そこから原因を推測することは出来た。
大典太は説明が省けることに安心した一方、コネクトワールドが一度に、一気に混ぜられていないことにも気付く。自分達が確認しているのはガラル地方だけだが、もしかしたら他に似たような地域があって、巻き込まれているかもしれない。そんな不安が脳裏に過ぎった。
「……すまない。俺はポケモンの世界について何も知らない。だから教えてほしい。ガラル地方の他に、ポケモンと触れ合える地域はあるのか?」
「ん?沢山あるよ。カブさんの出身であるホウエン地方とか、ポケモンの伝説が色々眠っているシンオウやイッシュ……観光名所として有名なアローラとか。他にも沢山」
「ホウエン地方の人達も無事ならいいんだが…故郷がある人間としては、心配になってしまうよね」
「成程。もしかしたら…今後、他の地方の方々が巻き込まれてこちらで目を覚ます可能性も考えなければなりませんね。現時点では誰もいないように思えますが、ネズ殿のように単独違う場所に飛ばされている場合もあります」
「現地の人がいい人であればいいんですが…そうとも限らないのが人間だからね」
「アニキ…」
「……祈るしかない。俺達が実際に目にし、関わったのは今のところガラル地方だけだ。―――そういえば、前にマルスがどうたらこうたら言っていた行商人がいたな。マルスを通じて、あの右手の神に話を聞いてみてもいいかもしれん」
「マスターハンド殿ですね。彼ならば分かることもあると思います。私もその案には賛成いたします」
キバナがぽんぽんと口にした他の地方。ガラルと同じように巻き込まれている可能性も示唆しなければならない。現状無事なのはこのシュートシティだけである。安否を確認する方法など分かる筈がない。
大典太はせめて、巻き込まれた他の地方の人間とポケモンが無事であることを祈った。
その後、しばらく話を続けていた矢先であった。ダンデを見張っていた筈のホップが戻ってきた。
「ホップー。ダンデの目離して大丈夫なのかよ?」
「リーグスタッフの人についてもらってるから大丈夫だぞ!アニキが、話が纏まったからみんなを集めてくれってさ。あ、あとそこの背の高い2人も一緒に話聞いてもらいたいそうだぞ」
「……分かった。すぐ行こう」
ダンデとラルゴの話がまとまったらしい。大典太と数珠丸にも話を聞いてもらいたいとのことで、一同を呼びに来たのだった。
一同はダンデの元へ移動を始める。大典太と数珠丸も、彼らに遅れを取らぬよう後をついて行った。
- Ep.02-1【強者どもの邂逅】 ( No.62 )
- 日時: 2022/03/26 22:03
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
ジムリーダー達が揃ったのをダンデは確認し、ラルゴと話し合った内容を連携し始めた。
シュートシティとリレイン王国、ダイヤモンドシティで双方協力連携を取ることになったこと。交通の便を良くする為、シュートシティ駅とダイヤモンドシティ駅間の路線も急ピッチで繋ぐこと。
そして、リレイン王国はシュートシティの人間とポケモンを歓迎することが彼の口から語られた。結論からしてみれば、以前ダイヤモンドシティとリレイン城下町が双方協定関係を結ぶと報告を受けた時と同じような形で今後関わり合っていくらしい。
大体の連絡事項を終えたダンデだったが、その顔はあまり芳しくない。連携を取り合うとは話が纏まったが、やはり交通関係の件は壁が厚かった。
「だが、双方互いの街の間にある情報が何もない。駅が使えるようになるまでは、徒歩でここに来ることは覚悟した方がいいだろう。今後、誰か電車に詳しいヤツが現れれば話は別なんだが…」
「無い物ねだりをしても仕方ないぞアニキ!シュートシティだけじゃなくて、他の街の人達の力も借りれるようになったのは、大きな一歩だとオレは思うぞ!」
「そうだな。後、ラルゴ殿から"シュートシティの住人なら、城下町の施設を自由に使っていい"と許可を頂いている。今後のことに不安があることは分かる。しかし、そこで立ち止まっていたら何も進まない。
ユウリくんやソニアが今だ行方不明なことも、右も左も分からない事だらけだが、オレ達が出来ることをやっていこう!」
ダンデの叱咤激励に、落ち込んでいた空気が少し明るくなったような気がした。ユウリも、ソニアも、彼らに関わる今安否が分からない人々も。皆無事だと信じ、日々を過ごすことしか彼らには出来ないのだ。
彼の解散の一言で、集まっていたトレーナー達は各々行動を始めた。皆故郷である街を失っている為、今後の手筈を話し合いに行ったのだろう。
大典太と数珠丸も、あまり長居は出来ないと城下町に帰ることをダンデに伝える。すると、彼は"その前に"と彼らを呼び止めた。どうやら、まだ彼らに話足りないことがあるらしい。
「キミ達。リーグ委員長として、あいつの友として、改めて礼を言わせてくれ。ネズを助けてくれてありがとう」
「……大したことはしていない。改まらないでくれ」
「はい。手の届く者を助けるのも、我々刀剣男士の使命です。頭を上げてくださいダンデ殿」
「しかし、礼だけを言って終わる訳にもいかないな。うーん…何か返せないか。―――そうだ」
ダンデが改めてネズを助けた件についてお礼を言ってきた。刀剣男士として当然のことをしたまでだ、と頭を上げるように大典太と数珠丸は言った。
しかし、彼の気持ちが治まらないことは仕草からよく分かった。しばらくその様子を眺めていると、ふと何かを閃いたように預かっていたサクヤのスマホを手に取る。そして、"少しこれを貸してほしい"と口にした。
どういうことかと尋ねると、折角スマホを持っているのだからアップデートをさせてほしいとのことだった。具体的に言うと、大典太の預かったスマートフォンに"ロトム"というポケモンを入り込ませたいという話だった。
「スマホにロトムが入り込んだ状態…それをオレ達は"スマホロトム"と呼んでいるんだが、どうだ?今後、色々役に立つと思うんだが…」
「……気持ちは有難いが、これは俺の所有物じゃない。俺の主の借りものなんだ…。だから、俺の一存でおいそれと"はい"とは『構いませんよ』……主?」
大典太の持っているスマートフォンは、厳密にはサクヤから借りたものである。だから、勝手に改造を許可することはできないとやんわり拒否しようとする大典太だった。しかし、言葉を遮るようにサクヤからの通信が来た。
彼が通話ボタンを押していないのに、遂に勝手に繋がるようになったのかと呆れる大典太だったが、そんな彼の思惑も気にせずサクヤは話を続けた。
『今後役立つことであれば、取り入れてください。許可します』
「……主。そこまでいうなら主命に従うが、あんたはもう少し"拒否"することを覚えてくれ」
『私とて、嫌なものは嫌とはっきり言います。現に光世さんからのお酒のお誘いも丁重にお断りしているではありませんか』
「……そういう意味じゃないんだが。―――分かったよ…」
「大典太殿はもう少し"押し"を覚えた方がいいかもしれませんね」
「……主命には逆らえない」
サクヤもスマホロトムにアップデートすることに賛成している。あまりの主のフットワークの軽さに、思わず再びため息が零れる。そんな様子を見て、ダンデも"なんだかネズと話しているみたいだな!"と感想を漏らした。
ダンデにスマートフォンを預けることを話すと、彼は笑顔で頷いた。悪いようには絶対にしない。ガラル地方のポケモントレーナーならば大体の人間が持っている、と付け加えた上で大典太の肩を叩いた。
「10分くらいしたらすぐに返すさ。なに、悪いことは絶対にしないと約束するから安心してくれ!」
「アニキ!言った傍から逆方向だぞそっち!オレもついていくからスタジアムですら迷わないでくれ~!」
「……大丈夫なのか?」
「リーダーシップはしっかりあるんですが、方向音痴なのが凄く弱点なんですよね」
「親しみやすさの表れたい」
リーグスタッフがいる方向とはまたしても逆方向に進み始めた為、ホップが慌てて兄の姿を追いかけ姿を消した。
その様子を見守った後、ネズとマリィも大典太と数珠丸に向き直り改めて礼を言った。今ここに2人で立っていられるのは、奇跡が重なった結果だと。2人は胸に刻んでいた。
「おれからも改めて礼を言わせてください。助けてくれてありがとうございました」
「アニキを助けてくれてありがとね。あたし…アニキの顔見るまで気が気じゃなかったと」
「……血を分けた兄弟が離れ離れは悲しいだろう。あんた達の嬉しそうな顔が見れただけで充分だよ」
「うん。本当にそう思った。アニキに二度と会えなくなるかもって思ったら、涙が止まらなかったと」
「心配させて悪かったね。まぁ、仮におれとマリィの立場が逆でもおれは同じことを思ったと確信していますよ」
一連の話が終わった後、ネズはリレイン城下町の―――"議事堂"のことについて聞いてみることにした。もしかしたら、今燻ってる思いが少しでも伝わったらいいと思った末での行動だった。
ダイヤモンドシティに向かう途中までではあるが、明らかに人型をしていない存在も見受けられた。ポケモンと人が共存しているように、リレイン王国も"絆"を大切にしている国なのではないかと。そうであれば、もしかしたら自分の思っていることも話を聞いてもらえるかもしれないと。彼の胸の内ではそんな思いが生まれていた。
「あの。一つ質問いいですか?"議事堂"って、普段何をしているところなんですか」
「基本的には城下町の暮らしに関すること…施設の設立にかんすることや、行事の管理……一応、依頼なんかも受け付けています。"何でも屋さん"みたいな側面はありますね」
「そうですか…。―――無理を承知で、個人的な頼みを聞いてもらってもいいでしょうか」
「……どうした、改めて」
「ユウリの捜索を手伝ってほしいんです」
「アニキ…」
「…………」
ネズが切り出したのは、ユウリについての話だった。もしかしたら、郊外で倒れていた自分と同じような症状に陥り苦しんでいるかもしれない。だが、自分達が出来ることには限界がある。人ならざる存在に命を狙われれば、人間というものは簡単に命を落とす。ネズは今回のことで、痛い程にそれを学んでいた。
ポケモンの力を借りれば打破できることも、今回は絶対に無理だと確信をしていた。だからこそ、ネズは珍しく"他人を頼る"選択を取った。普段他人に大して警戒心が強いネズの行動に、マリィも表情は変えずとも驚いていた。
「本当はおれ達がやらなければならないことは分かっています。だけど…今回のことで痛い程分かりましたよ。出来ることには限界がある。その限界を超えて、生きていられる保証は無いんです。
例え自分の命と引き換えにユウリを見つけても、ユウリが喜ぶかと言ったら……答えは"No"だと思います。あの子はそういう子です。人が力を合わせても、ポケモンと力を合わせても。無理なものがあります。―――あんた達、"普通の人間"じゃないんでしょう?だから、お願いします。
―――ユウリを、一緒に探してくれませんか」
「ユウリはあたしの大親友やけん。だから…アニキと同じ。いなくなってほしくない!お願いします。アニキのお願い、聞いてあげてください!」
パンクな衣装に身を纏った兄妹は、再び丁寧に大典太と数珠丸に頭を下げた。心からユウリを助けたいという思いが2人から伝わってくる。その思いを汲み取ってやりたかった。
しかし、もしユウリ捜索が自分達の目的と少しでも掠らない場合―――自分達の手を下す必要がないことも彼らは分かっていた。
良心と義務の狭間で心が揺れ動く。大典太と数珠丸は、顔を見合わせて眉を下げたのだった。
- Ep.02-1【強者どもの邂逅】 ( No.63 )
- 日時: 2022/03/27 22:08
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
シュートスタジアムには既に賑やかだった気配は消えており、人もまばらになっている。しかし、頭を下げ続けるこの兄妹をまずは何とかしなければ変な目で見られてしまう。大典太と数珠丸は、その話は一旦保留にしてダンデを待ちたいと話を持ちかけた。
渋々ネズとマリィは顔を持ちあげる。しかし、見えた表情から大典太は確信した。彼らは答えを聞くまで、ダンデの用事が終わったらずっと頭を下げ続けるつもりだと。
返答をどうしようかと悩んでいる矢先、ダンデが大典太のスマートフォンを持って戻ってきた。
「待たせてすまない。今キミのスマホを返そう」
「……いや、あんたが来てくれて丁度良かった。こっちはこっちでちょっと面倒なことになっててな…」
「面倒なこと?」
「ダンデが今気にすることではないです」
「そうか。それなら今は深く聞かないでおこう。必要になった時に伝えてくれればいいぜ。さ、受け取ってくれ!」
そう言って、ダンデは大典太に預けていたスマートフォンを渡す。素直に受け取ろうとした瞬間、スマートフォンが突然自我を持ったように浮き始め大典太の周りを飛び始めた。
突拍子もない行動に思わず声を上げてしまう数珠丸だったが、何か似たような現象は無かったかと記憶を漁る。そうだ。キバナが同じようにスマートフォンを浮かせていたような気がする。
混乱している大典太と数珠丸に、ダンデはにこやかに生まれ変わったスマートフォン……"スマホロトム"についての説明を始めた。
「いや、随分と活発だな!今回アップデートさせてもらった"スマホロトム"なんだが、その名の通りスマートフォンにロトムが入り込んだ状態の物を差す。ポケモン図鑑の機能は勿論のこと、いままでスマートフォンで出来ていた一通りのこともロトムが肩代わりしてくれる。通話が来ても、画面を見なくても誰から来たかロトムが教えてくれるようになるな。
中々不思議なスマートフォンだったが、ロトムが入り込むのは問題なかった。キミのサポートに是非役立ててくれ」
「……感謝する」
ダンデの紹介が一通り終わると、スマホロトムは大典太の周りをふよふよと移動し"よろしくロト!"と明るい声で挨拶をした。
その声に凝視感を覚え、思わず数珠丸は大典太に耳打ちをする。
「……個人的な感想で申し訳ないのですが、大典太殿とお声が似ていらっしゃいませんか?」
「……気のせいだよ。気のせい…気のせいということにしておいてくれ…」
どうやら大典太も自覚があったらしい。妙に彼に似た高い声を出すスマホロトムは、口角を上げながら浮かび続けていた。時折抱えているゾロアが餌か何かと勘違いしたのか、スマホロトムを口に加えようとしてはそれを避けていた。
しばらくそのやり取りを見守っていると、早速スマホロトムへと通信が入る。"サクヤから連絡ロト~!"と元気いっぱいに答えた為、次からはボリュームを控えめにする様頼もうと大典太は心に誓った。
宙に浮いたスマートフォンの画面には、言葉通り主―――サクヤの姿があった。
『先程ぶりです。光世さん、スマートフォンのアップデートとやらは上手く行きましたか?』
「……問題なく出来たそうだ。色々賑やかな奴ではあるが、上手く付き合って行こうとは思っている…」
『光世さんのネガティブ脱却の手助けに一役買ってくれれば幸いですね。……さて、話題が逸れてしまう前に本題に移りましょう。詳しいお話を聞きたいので、そちらのネズさんの了承が取れ次第彼と一緒に城下町へと戻って来てほしいのです』
「大事な話…。何なのでしょう?」
「しかも、おれを直接ご指名ですね。何かあるんでしょう」
雑談も程々に、サクヤはネズと一緒に議事堂―――彼女から直接連絡が来ているということは"神域"に連れてきてほしいと口に出した。
オービュロンのことがあるとはいえ、ネズが神域に出入りできると決まった訳ではない。それなのに、サクヤは彼が神域に出入り"できる"ことを前提に話を進めている。彼女の心の内が全く読めない。
やんわりそのことを伝えると、サクヤは"もし入れなければ、スマホ越しに私室で話をする"と語尾を強めて言った。どうにも、ネズをこちらに連れてくるのを重要視しているようにも取れた。
「……どうしたものか。病み上がりの人間に無駄足を運ばせたくはないんだが」
『ユウリさんのことで、気になることもありますのでそれも交えて話がしたいのです。勿論ネズさんの承諾が取れてからで構いませんので、一緒に戻って来ていただけませんか?』
「……だが」
「構いませんよ。そちらがおれをご指名なら、断る理由はありません。あなた達の決定に従います」
「そんなあっさりと…」
「ユウリのことについても検討してくれるんでしょう?なら猶更ついていかない、なんて選択肢ありませんよ。それに…助けられた恩もあるからね」
ネズがそうはっきりと答える。大典太は遂に折れたのか、サクヤにネズを連れて戻ることを約束した。そのままスマホロトムに通信の切断を頼み、動かなくなったスマホロトムを懐にしまった。
それと同時に、後ろで話を聞いていたマリィとダンデが各々"自分もついていく"と口を開いた。
「アニキ。あたしも一緒に行く。連れてって」
「妹よ。流石に今回はそれは駄目です。大人しくシュートシティでお待ちなさい」
「とか言って、またアニキが危険な目に遭うのはあたし嫌だ」
「そっくりそのままお返しします。今回のことで彼らは信用できるに値する人物だと分かっていますが、それでも見知らぬ場所で、どこに危険が潜んでいるか分かりません。マリィが怪我をするのが、おれにとっては一番耐えられないのですよ」
「それに、ネズだけを連れてくるように頼まれてるわけじゃないんだろ?スマホ越しじゃ出来なかった話だってあるし、オレも一緒に行きたいんだが」
「おまえはもっと駄目でしょう。混乱状態のシュートシティを誰が引っ張っていくんですか。リーグ委員長であるおまえしかいないでしょう。だったら、ジムリーダーでもないリーグ部外者のおれが行くのが一番効率的な選択肢ですよ。ダンデ。理解してくださいよ」
「だが…!」
「アニキ!」
マリィはネズの身に危険がこれ以上起こってほしくないからと自分もついていくとごねている。彼女の気持ちもとても分かるが、それはそっくりマリィにも言える言葉だとネズは確信していた。更に、話に乗じてダンデもついていこうとしていた。街が混乱している今、責任者に近い立場にいるダンデが"今"を引っ張っていかねば駄目だとネズは説得を続けた。
それでも2人はネズについていくと納得が行っていない様子だった。これ以上は話し合いをしても平行線を辿ると、大典太に2人を連れて行ってもいいか確認を取ろうとした。それと同時に、後ろからキバナの声がする。
「"今回は"ネズに任せちまっていいんじゃねぇの?」
「キバナ」
「それとも、ネズの命を助けてくれた奴ら疑ってる訳?オレさまは、あいつら信じることにもう決めたもんね。人助けってさ、騙す目的でも相当な覚悟がないと出来ねぇじゃん?」
「……それは、そうだけど」
「ネズだってポケモントレーナーとして超優秀なのはダンデもマリィも知ってんだろ?だったらさ、信じて待ってようぜ。丁度、オレさまダンデに久々にリベンジを申し込むつもりだったし。非公式の試合だけどな」
「キバナ…。ありがとうございます。気を遣ってくれたんだよね」
「このままだと堂々巡りなのは目に見えてたからな~。それに、オレさまダンデにリベンジマッチ申し込みたかったのは本当のことだしな!ダンデとマリィはこのキバナさまに任せなネズ。ちゃんと話、して来てくれよ。
その代わり、話の結果はちゃんとオレさま達に連携すること!」
「……そうだな。少し周りが見えていなかったようだ。ありがとうキバナ。お礼にリベンジマッチ、喜んで受けて立とうじゃないか」
「アニキ。あたしもこの人達の事は信じてる。でも…気を付けて」
キバナは真っすぐ刀剣男士達の方向を向いて、ネズに任せてもいいと言い切った。彼の命を助けた事実もあるが、彼らの"眼"を見て、信用に値すると結論付けたらしい。
彼の説得で遂にダンデとマリィは折れた。落ち込むマリィに話し合ったことはしっかり伝える。連絡も無しにいなくならないと約束をした。
「それじゃあ、話も纏まりましたし戻りましょう。あまり待たせる余裕はないんでしょう」
「……そうだな。あんたのことは道中護衛するから、命の心配はしなくていい」
「"あくタイプの天才"が護衛される、ねぇ。口にしたら笑えちゃうよね」
軽口を叩けるなら大丈夫だろう。ネズについて考えるのを辞めた大典太はもう一度ダンデ達の方を向く。既にキバナとバトルについての話で盛り上がっていたところだった。
出来るだけ早く話を終わらせた方がいいと考えつつも、彼の護衛が最優先。そう判断し、入口で待っていた数珠丸と共にリレイン城下町への帰路に向かうのだった。
- Re: 繋がる世界と未来の物語 ( No.64 )
- 日時: 2022/03/27 23:51
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: gh05Z88y)
どうも、ずいぶんと時間が開いてしまいました柊です(土下座)
申し訳ないのですが、かなり長くなってしまいそうですのでEp.02-1からのコメントをさせていただきます…その前もきちんと読ませていただいております…!
Ep.02-1からは剣盾のキャラが出てくるのですね! ユウリちゃんの片想いにニヤニヤしていたらなんか怪しそうなスタッフ(仮)が…。ユウリちゃんが追いましたが、チャンピオンでもまだ子どもなので一人で追わない方がいいと思いつつ無理もないと思ってしまいました←
ネズさんたちも登場、流れてくる情報で知っていましたがまたダンデさん迷子になってたんですね← しかも引きずられて寝るとかすごく器用…。キバナさんは張り合わないで、それ張り合ってもダメなやつ←
ネズさんはこのトーナメントが終わったらイッシュに…確かにイッシュにはホミカいますし納得ですね。トレインの双子は48連勝まではいけなかった記憶←
ユウリちゃんが危険だー!? スタッフってユウリちゃんが追ったスタッフ(仮)でしょうか…?
そしてなんかやべーですねこのスタッフ(仮)!? ネズさんもやべーことになった…氷のようなって…!!
そりゃマリィちゃんも心配ですよね、お兄さんがこんなことになれば…その上、ガラル地方飲み込まれた…!?
次にリレイン王国ですね。オービュロンのことも好意的に受け止めてくれているようで何よりです。
青果店の奥さんの話では巨大な街が現れた、と…もしかして…?
オービュロンが下見に行くようですが、人型のオービュロン可愛いですね!
でもオービュロンが見つけたネズさん、やっぱり大変なことになってた!? 邪神の邪気、ってことはあのスタッフ…まさか…。
卵ごと議事堂にネズさんを運べたはいいけどそりゃ人型の時と容姿違いすぎますものね、気づかなくて当然といえば当然。
何にせよ間に合って良かったです。前田くんはさすが短刀と言ったところでしょうか←
医務室に運んで、卵について話している時にネズさんも目覚めましたね。
>>>借金取りのような風貌<<<
>>>仕方ないね!<<<
その…大典太は…でっかわいい優しい刀だから…!!←
確かにガラルは前も混ぜられていましたね…カブさんも出てきてた…←
ネズさん優しい←
そういえば、倒れた時にネズさんはタマゴ持ってませんでしたね。だとすると混ぜられた際にネズさんの近くに落ちたんですかね…?
キバナさんが心配するのも分かりますが少し笑ってしまいました← でも少なからずキバナさんやマリィちゃんが無事なことにホッとしました。
そしてまたバンドマンと言われる大典太。無理もないね!
大典太と数珠丸がネズさんとシュートシティに向かうようで…すごく…安心感が…。
タマゴのポケモンも気になりますね…一体どのポケモンなのか…。
徒歩で行ける圏内で良かった…けどそらとぶタクシーってことは相当広いんですね、シュートシティ…。
シュートスタジアムでマリィたちと再会、そりゃ最後が氷みたいに冷たければ心配しますよね、泣きますよね…。そんなマリィたちと対照的に冷静なネズさんェ…。そしてキバナさんに塩対応なネズさん…←
にしてもユウリちゃんはどこへ行ってしまったのか、ユウリちゃんのことも心配になりますし、ソニアさんも行方不明だとさらに心配に…。
タマゴから孵ったのは…あっゾロア可愛い…ゾロア可愛い…。何か引っ掛かるとは一体、あっゾロア可愛い…。
ネズさんはポケモンにも優しいのですね…(人間には塩対応する時はする)。しょんぼりするゾロア可愛い。
あくまでゾロアに選ばせてあげるネズさんかっこいいし優しい、右足でモンスターボールのスイッチ押すゾロア可愛い!!!!!!
でっかい大典太に登っちゃったんですね可愛い小さい動物ってなんか大きい人に登りたがるイメージあります可愛いゾロア抱っこする大典太可愛い抱っこされるゾロア可愛いもう可愛いが大渋滞しております←
ラルゴさんとダンデさんが話を始めて見張り…そんなにやべーんですかねダンデさんの方向音痴…。
あー、他の地方も巻き込まれてる可能性が…一人とか二人とかで別の場所に飛ばされた可能性もあると考えられることでしたね、ネズさんのこととかもあるし…。
とりあえずリレイン王国、ダイヤモンドシティ、シュートシティは協力関係になるのですね、そこは良かった…。
まだ問題はいくつかありますが、いい方向に転がっていくことを願うしかありませんね。
サクヤさんのスマホにロトム…サクヤさんも賛成で早速、ですね。そして思った以上だぞダンデさんの方向音痴…!
ユウリちゃんの捜索…そうですよね…もし同じような目に遭っていたとしたら大変すぎますし、またネズさんや他の人が命を奪われる危険に晒されると考えると仮にユウリちゃんが戻ってきても喜ばない気がします。
二振はどう答えるのか…。
と、そこにダンデさん戻ってきましたね。スマホがスマホロトムになって戻ってきました。調べたら…お声が似てるのも無理ないというかなんというか←
ゾロア、食べちゃダメです可愛い。
サクヤさんが議事堂、神域に来て欲しいとは…ユウリちゃんに関して気になることですか…。
マリィちゃんがごねましたが、キバナさんナイスです。でも確かに報連相、大事、超大事です。
かなりの乱文になっているかもしれません、すみません…!
次回も楽しみにしております、それでは!
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