複雑・ファジー小説

変革戦記【フォルテ】
日時: 2019/02/05 22:35
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
参照: https://m.youtube.com/watch?v=oXxfk4iPPjY

※全年齢版


参照:イメージソング『Beat Your Heart』(ブブキ・ブランキ第1期OP)


国を守るための防衛兵器───巨大な機体、『フォルテッシモ』が普通になりつつあった時代。
突如としてフォルテと呼ばれる能力に目覚める者たち。フォルテを持つ彼らを、人々はフォルトゥナと呼ぶ。
しかし、彼らを狙い、彼らを連れ去って自己利益のためだけに利用しようと目論む悪の組織があった。その名も『グローリア』。あらゆるものを掌握し、いずれは国家転覆をも狙うフォルトゥナだけで構成された組織である。当然フォルテッシモも、グローリア専用機を大量に生産しており、かなりの数を所有している。
だがそれに大人しく屈服しているわけが無い。そのグローリアに対抗すべく、『マグノリア』という組織が作られた。未成年のフォルトゥナの少年少女たちで構成されている。
グローリアに支配されているこの状況に風穴を開けるため、グローリアを倒すため、何よりも家族や仲間を守るため、彼らは戦う!


※注意※
こちらの作品は、18禁板にて連載開始予定の小説、『f-フォルテ-』の全年齢熱血ロボアクション版になります。
こちらを見てから18禁板版を見ようとチャレンジするのは、大変おすすめ致しません。
こちらから先に見た方は、18禁フォルテの存在はそっと胸にしまっておきましょう。
そして18禁版からこちらを見た方は全力でお楽しみください。
もちろん、こちらから先に見た方も。
キングゲイナーやGガンダムのノリとほぼ同じです。雰囲気で楽しんでください。
この作品はフィクションです。実在する個人、団体、その他とは一切関係ありません。
(9/7 コメライ→複ファへ移動)


18禁と同じ点
・基本の組織や用語
・キャラクター(例外あり)
・世界観(例外あり)

異なる点
・話の内容
・話の明るさ
・結末
・連載する板


用語集>>1
登場人物一覧>>2
第1話【Magnolia】
>>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9
(まとめ読み用)>>3-9
第2話【Oshama Scramble!】
>>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16
>>17
(まとめ読み用)>>10->>17
第3話【fake town baby】
>>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24
(まとめ読み用)>>18-24
第4話【Distorted†Happiness】
>>25 >>26
第5話【Marionette】
第6話【Welcome to the Black Parade】
第7話【絵空事】
第8話【Red doors.】
第9話【Red Like Roses.】
第10話【サンクチュアリを謳って】

(応募スレはリク板をご覧ください)
※応募されたキャラクターについて
できる限り応募された内容に沿って使わせていただきます。どうしても全年齢に出るならばこうして欲しいというご要望がありましたら、随時受付を致します。可能な限りでお応えさせていただきます。
もちろん全年齢版のみ、または18禁版のみに出してほしいというご要望も受付します。
ご遠慮なくお申し出ください。

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Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.22 )
日時: 2018/11/28 20:38
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「んえ?」

 マグノリア医療部。そこで暇を持て余し、ベッドの上をゴロゴロとしていた御代は、突然開けられた部屋の扉へ目を向ける。そこに立っているのは、見間違えようがなく、リーダーの狂示であった。狂示はニヤニヤと何やら楽しげに、御代のもとへやってくる。うわ何だ気持ち悪い、何考えてんだ。
 狂示はクックックと笑いながら、御代に話しかける。

「喜べモーニングマウンテン。お前今から絶対安静撤回」
「はぁ?」
「なんでだと思う?」
「知らねーしわかるわけねーうぇい」
「だよなー!」

 どっと大きく笑うと、狂示は親指をぐっと立ててみせる。なんの意味があるんだそのポーズは、と思ってみるが、口に出すのはやめておく。絶対面倒くさいことになるから。御代は訝しげな目で狂示の次の言葉を待つ。

「青森でチームケイオスが戦闘に入った。グローリアの連中が嗅ぎつけたみてぇだ。つーわけでお前開放。早く行ってさっさと抑えてこい」
「いきなりうぇいね?」
「数は多けりゃいいだろ。ほれ行ってこい。どーせ暇してたんだろ?」

 さもねーと流星にお前が病室から脱走したってチクんぞ〜と、随分と楽しげに狂示は言う。どうしてこんなにも楽しそうに言うのだろうか。単に面白いのか、別の理由があるのか、そもそも頭がおかしいのか。考えれば選択肢はごまんとあるのだろうが、面倒くさくなってやめた。これ以上考えても無駄なだけだ。
 御代は背伸びをして体をほぐす。たった1日だけだが動かしていなかったためか、バキバキと音がなる。確かに暇はしていた。やることがないし、娯楽室に行こうにも、絶対安静を言渡されているために行きづらかった。だからベッドの上でゴロゴロするしかなかったのだが、正直飽きた。ならばこの狂示のこの誘い、乗らないわけには行かない。とにかく体を動かしたかった。

「よしっ、行ってくるうぇい!」

 ベッドから飛び降りると、御代は一目散に部屋から飛び出し、出撃室へと向かっていった。
 その後ろ姿を狂示は元気でいいねえと見送ると、懐からタバコの箱を取り出し、1本取って火をつけると、途端に顔つきを変える。

「……さてと。俺は『調べ物』をしとくか」

 タバコの煙は、ゆらりゆらりと不審に揺れる。





 先に仕掛けるはヒナタ。まずは腰に下げていたガンホルターからハンドガンを出して構え、誰に当てるでもなくひとつ弾丸を放つ。弾丸は狙ったとおりに、誰にも当たらず一定の距離まで行くとゆるゆると地に落ちる。それに続くように百合と柚子が動く。相対するグローリアの構成員も、彼らに向かってやってくる。百合と柚子、構成員数人がチリッと近づくと、百合の鞭、柚子の『指鉄砲』が相手側より早く動いた。

「───『君を、撃ちます。』」

 柚子の透明な声が響き渡ると、銃を撃つ真似事のように、指で作った鉄砲を上に上げる。するとその指鉄砲の先にいた構成員の1人の丁度胸のあたりが、見事に派手な音を立てて穴を開けた。『何も貫いていないにもかかわらず』。構成員は糸が切れたように地に伏せた。
 フォルテ、『ガン・ショット』。手を鉄砲のような形に作り、対象者にむけて『君を、撃ちます。』と言いながら銃を撃つ真似をすると、その相手を確実に撃ち抜けるというもの。弾丸も何も残らない、『何かと』便利なフォルテだ。
 柚子が相手を撃ち抜いた次の瞬間、横から百合の鞭が向かってきた残りの構成員を縛り上げる。そしてそのまま空中へ高く放りなげたと思えば、後ろから水木が手をそちらへ掲げ、念を込める。すると構成員はたちまち、どこからともなく現れた水球によって閉じ込められる。
 フォルテ、『水沫(みなわ)』。水場のない場所でも、水球を作り出せるフォルテ。その水球を大きく作れば、人をその中へ閉じ込めることもできる。勿論その中に閉じ込められた人間は、呼吸もできずに時間がくれば溺死、または窒息死する。そしてその水球をはじけさせ、大規模な火事を消すことだってできる。だから、だから。水木はこのフォルテが嫌いだった。何よりも嫌いだった。

「……あの時、これが発現してさえいれば」

 故郷は焼かれずに済んだのかもしれないのに。





 時は遡ること3年前。青森大火災。当時の水木は、眠り続ける『カナム』をやっとの思いで救出し、とにかく火のない安全な場所へと避難を急いでいた。その間、何度も何度も見た。人々が火に呑まれ、焼かれてもがき苦しんでいくさまを。その中には友人もいた、親戚もいた。そして、自らの親もいた。水木の両親は彼を逃し、言った。『お前だけでも生きろ』と。その直後に両親は火のるつぼとなった、かつての家に呑まれていった。最後に聞こえたのは、絶叫だった。

『────カナム、だけでも』

 彼はひたすらに逃れた。火の魔が及ばない、遠い遠い場所へと逃れた。カナムも連れて逃れた。水木は必死に逃れた。ただただ生きるために。死なないために。
 しばらくしないうちに火の手はもう来ない場所まで来たようだった。遠くに見えるは焼かれゆくかつての故郷。その場所に、友人も、両親もいる。手を付けられないほどに火の手が広まっている。水木は茫洋と故郷を見つめることしかできなかった。
 そんなときだった。

『え───』

 自らの手から、小さな水球が生まれていた。尽きることはなく、ポコポコと。それは水球どうしてくっつき、次第に大きくなっていく。やがてあれだけ小さかった水球たちは、ひとをひとり包み込めるくらいの大きさにまで膨らんでいた。そしてはじけた。はじけたそれは確かに『水』だった。間違えることなく、水木を水浸しにしたのだから。
 水木は己の手をまた見る。コポコポと再び水球が生まれる。水球どうしがくっつき、大きくなる。
 その意味を『全て理解した瞬間』、彼は絶望し、絶叫を上げる。


『ッあああああああああああああああ──────!!』


 その叫びはどこまでもこだましたが、彼を包み込むものは、憎らしく膨れ上がった水球しかなかった。





「……」

 ギリ、と奥歯を噛みしめる水木。自然と握り拳に力が入る。形相も怒りへと変わっていく。生み出される水球も数をだんだんと増やしていく。許さない。何を?過去の自分自身を。『フォルテが発現した過去の自分自身を』。あの日から彼は笑うことをやめた。夢を追うこともやめた。甘えることも、休むこともやめた。これも全て、許せないから。許さないから。

「許さない……」

 ついこぼれてしまうその一言に、水球はますます数を増やしていく。目障りなくらいに膨れ上がった水球も増えていく。すでに閉じ込めた構成員は、足をジタバタとさせ、もがき苦しんでいる。せいぜい苦しめばいい。せいぜい苦しんで死ねばいい。お前たちも許さない。水木は強く強く思う。

「死ね────ッ!」

 水球を空高く浮かばせ、更に高い場所でそれを弾けさせると、構成員を地に落とした。その瞬間、飛び散る脳漿。もはや人の形を保っていない。見るにたえないものがあたりに飛び散っている。

「水木くぅん、ちょっとやり過ぎだよ〜後処理大変じゃ〜ん?」
「……弥里さん」
「でもお、グッジョブ〜!後でご褒美にヒロポンあげるよ」
「お断りします」
「えぇ〜」

 それを後ろから見ていた弥里が水木に近づき、声をかける。水木は面倒なのに声をかけられた、と思いつつもしっかりと受け答えをする。もちろんヒロポンはきっちり断らせてもらった。そんなのは勘弁願いたい。たとえ死んだとしてもだ。

「それじゃあしばらく休んだら?ちょっと顔色悪いよ、怖い」
「はっきりいいますねえ…まあ、流石に言葉通り、休ませてもらいます」

 水木は一気にドシャっとその場に座り込む。彼のフォルテは維持をするのに、かなりの集中力と精神力、そして体力を必要とする。あれだけのことをやったのだ、水木の体は疲労がずっしりと乗っかっていた。
 それの前に出るように、弥里はやたらと大きい注射器を構える。中身はなにやら不健康そうな色をした薬品か何かが入っている。十中八九、というより確実に人体には有害なものが詰まっているだろう。

「今度は弥里ちゃんの出番っ、お薬の時間ですよぅ?」

 そう言いつつ、弥里は別の注射器を取り出し、自らの首にそれを打ち込んだ。





「お、来たみたい」
「びゃーっと登場うぇいっ!」
「ストップあさみよ。何かまだ出ちゃだめだってさ」
「へ?だめうぇい?」
「うん。お師匠がまだって。何のことか知らないけど」
「な、なんでっ?」 


「だって私は流れの魔法使い。姿を現すなら、それはもう奇跡。奇跡は突然くるものだからね」


続く

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.23 )
日時: 2018/11/28 20:40
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

 水木が数人を倒したことにより、チームケイオスは一気に連中との距離を詰める。詰めている最中にやってくる攻撃の数々は見事に、百合の鞭さばきで弾き返した。フォルテを使ったことにより、疲弊した水木は弥里の背によって守られる。水木を狙い、やってくる連中の攻撃も、弥里が防ぎ切る。少々危なっかしいところはあったものの、おかげで水木は無傷だ。弥里が渡したミネラルウォーターを少しずつのみ、消耗した体を癒やす。
 彼のフォルテは水を使う。フォルテを長い時間使ったり、また短時間でかなりの力を使うと、体中から水分が抜け落ちて行く。単にフォルテを使ったことによる体力的、精神的疲労もくるが、彼の場合はそれもあるため、休むときにはミネラルウォーターが欠かせない。多少なりとも、疲労回復はしてくれる。何かと楽な身体だな。水木は思う。
 距離を詰めたらやることは一つ。グローリアの連中を徹底的に叩き潰すだけ。否、距離を詰めなくともそうだと決まっている。残りの連中の1人に、まずヒナタが手をナイフに変えて切りかかる。動きを読まれていたのか、すぐにかわされてしまうが、それでもナイフの切っ先には血がついていた。かすり傷程度は負わせられたようである。
 ───フォルテ『銃刃変化』(じゅうじんへんげ)。体の一部を銃やナイフといった武器に変えることができるというもの。ただしそれには制限があり、『一度自らの目で見たことがあるもの、及び触れたことがあるもの』にしか、変化させることはできない。もしそうでなければ、あやふやな変化となってしまい、とてもじゃないが武器とは呼べるものではなくなってしまう。
 だからだろうか。ヒナタは服のそこかしこに武器を隠し持っている。種類は問わない。ただ『変化できる武器』であれば、かたっぱしから用意しているようだ。

「後ろに引いたって無駄だかんねっ!」

 すぐにヒナタはナイフから銃へと手を変化させ、一発鉛玉を撃つ。急所には当たらなかったが、ちょうど右肩のあたりに食らわすことはできたので良しとする。体に当てるより肩に当てる方が難しいと聞いた。あくまで聞いただけだが。だが相手もやられっぱなしではない。すぐにその傷はある1人の手によって塞がれてしまう。気がつけば水木が倒した───正確には『殺した』だが───奴らが、その1人の手によって回復していき、完全復活してしまう。どうやらかなり強い回復の力を持つフォルトゥナらしい。先程から傷を追わせた者に対し、ずっと回復をし続けている。その傷は完全に塞がれ、むしろ傷を負う前より良くなっていると言っていいほど。ならばそいつから倒すだけ。いち早く動いたのはれお子だった。
 れお子は仁王立ちになると、一気にポーズを決める。そして高らかに叫んだ。


「『英雄顕現(ヒーロー・ネクスト)』!!」


 その瞬間眩い爆発とともに、れお子の周りを虹色の光が包み込む。まるで特撮や子供向けの変身ヒーローのアニメを見ているかのような気分になる。
 れお子の服は地味なものから、ところどころに可愛らしい装飾のついた少し派手目なものへと変わっていく。髪の毛もいつものロングストレートから、サイドテールへと様変わりし、メイクもされていく。そして最後に手を叩けば、その手に手袋がはめられ、虹色の光が晴れる。
 そこに現れたれお子はもはや、いうなれば───そう、女児が一度は夢見たであろう『プリティでキュアキュア』な戦士。

「この私が成敗するッ!ハァッ!」

 その言葉とともに、れお子の強烈な蹴りが、回復薬のグローリアの人間の顔面にキレイに入る。蹴りを入れられたその者は、もろに食らったためか遠くへと吹き飛んだ。れお子は攻撃の手を緩めず、今度は強烈な拳を、近くにいた別のグローリアの人間のちょうど腹のあたりに叩き込む。叩き込まれたことによって相手の体制が崩れたので、そのまま後ろに回り、かかとを項のあたりに落とす。そのままその者は地に伏せ、動かなくなった。
 ───フォルテ『英雄顕現(ヒーロー・ネクスト)』。自身の思い描いた英雄像に変身するというもの。思い描いた英雄像が強く、そして固いものであればあるほど、その英雄に転身したときの力は計り知れないほど強くなる。逆に、英雄像が定まらず、転身するたびに姿が変わると、人より頭抜けて強い程度にしかならない。強い英雄像を描くには、確固たる心の思い、そして心の強さが必要になっていく。
 だがいまのれお子は、自身の思い描く英雄像は定まっておらず、自分自身にとっての『ヒーロー』が、まだはっきりと掴めていない状況にある。だからなのか。今彼女は『女児にとってのヒーロー』に変身しているが、本当に追い求めているのは『仮面のヒーロー』であり、変身しているものからは程遠い。だけどこのヒーローも好きだ、なりたい。そのあやふやさが、時として刃となる。
 それがいつ来るのかはわからない。けど今は、こうしてやってきたグローリアの連中を叩き潰すだけ。それ以外に戦う理由はない。たとえどんなヒーローになったとしても、その力をふるうのみ。
 その隣ではアスカが蘇ったグローリアの人間の1人に対し、攻撃を仕掛ける。ヒナタから借りたナイフを投擲し、更には懐に隠していた針も投擲する。大してダメージにはならなかったものの、そのものをよろけさせるには十分なものだった。いっきに距離を詰め、アスカは口元をゆっくりと上げて、目を細める。笑顔のように見えるが、その目は全く笑っちゃいなかった。

「ねえ、貴方。『どうして生きてるの?』」

 ゾッと言うような音が聞こえる気がする。アスカの口から紡がれた言葉は、たしかに相手の心に入り込む。そこからじわじわと、言葉は心を侵食する。アスカは変わらない笑顔で、問いかける。

「ねえ、『教えて?』」

 甘く、それでいて気味の悪い言葉は、じとじとと心を蝕む。入り込まれた場所から、腐って融けていくみたいだ。気がつけばその者は目尻に涙をため、口から唾液が垂れ流しになる。足はガクガク震え、まるで生まれたての子鹿のようだった。漏れでる声は、もはや言葉としての機能を為してはいない。喃語をひっきりなしに出していく。その間もアスカの『それ』は続いていく。教えて?教えて?と問うているだけなのに、相手はどんどん壊れていく。目はあらぬ方向を向き、ぷらんと手は垂れ下がり、しまいにはどしゃりと地に落ちる。それを見て、アスカはにっこりと微笑み

「おばかさん」

とだけ吐きすてた。
 何が起きたのかわからないこのフォルテ───『Tell me?』は、彼女が『知りたい』と思った相手にのみ効果を発揮する。彼女が『知りたい』と思った人間に、『知りたいこと』をただ『教えて』と乞う。ただそれだけのフォルテだが、実はその人物を内側からどんどん壊していく恐ろしいものだ。ただ教えてほしいと言い続けるだけ。『たったそれだけ』で、相手は心を蝕まれ、それはやがて表立って出てくる。先程のように。彼女は相手がどんな状況になろうが、ただ教えてと乞う。問い続ける。本当にそれだけ。

「えげつないなあ、アスカちゃん」
「それは貴方もでしょ、柚子くん」
「あはは。それほどじゃあ」
「でも本当にえげつないのは」
「……うん、彼女だよねえ」

 アスカと後からやってきた柚子は互いにある一方を見る。その視線の先には水木を庇いながら戦い続ける弥里の姿。なのだが、何やら様子がおかしい。よくよく見れば、妙な液体が入った注射器を、自らの首に差し込んで注入している。一瞬だけ見せられないような恍惚の表情をしたかと思えばすぐに治り、その同じ液体が入った注射器を、グローリアの連中の首元にどんどん刺していく。刺されて注入された者達は、所謂『ラリ』った状態になり、ひとしきり奇声を上げたあとに、血を吹き出して地に落ちる。その様子を見て、弥里はケタケタと笑いながら人間だったものを、つんつんとつつく。もちろん、指ではなく注射器の針で。後ろから見ていた水木の顔は、青ざめるとか、恐怖とか言ったものではなく、『ドン引き』の表情であった。

「まあ、ああなるよね」
「そりゃね」

 アスカと柚子はため息をついて、背後から襲ってくるグローリアの人間の攻撃を軽くのし、踏みつけたあとに戻ろっか、と一言つぶやいてもとの場所へ行こうとする。

「……ふ、ふふふ。バカめ、バカどもが。本当にバカどもが。我々とこんなふうに遊んでいる暇があるのなら、さっさと殺していればいいものをッ!」

 突然、柚子が踏みつけた場所から、そんな悪あがきのような声が聞こえたと思ったら、地面が揺れ動き始めた。あまりにも突然のことだったので、アスカと柚子はバランスを崩し、尻餅をついてしまう。周りもそんな状況だったようで、何が起きたんだという顔がほとんど。そんな中ひときわ大きく音がなる場所があった。そこに顔をバッと向けると、視界いっぱいに広がったのは、瓦礫の山々が自ら動いて形となっていく様。それらはやがてしっかりとした輪郭をとり、はっきりと形になる。
 それはまるで『フォルテッシモ』。瓦礫で作られたフォルテッシモだ。ただ普段見ているものより、かなり大きなサイズのものだ。
 そういえば奴ら、こちらを襲うにしてはなんだか力加減をされているようだった。なんどやっても回復してくる、なんどやっても殺そうという気が見えない。長期戦に持ち込むつもりかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。

「……はじめからこれ狙いか」

 流星はぽつりとつぶやく。だが、それに返すものはいなかった。すでにグローリアはその場から消え去っていた。十中八九グローリアの支部や本部へと帰ったのだろう。この『瓦礫フォルテッシモ』を残して。殺しの汚名を自らかぶらず、そこら辺のもので適当に作った何かによって、殺させる。それがいい策なのか汚いのかはさておいて。少しは頭が回るようだ。

「指揮官、どうします?」
「相手するにしても、このデカさは…」
「───大きさでとやかく言っていたら、何もならないだろうが。立ちふさがる敵は叩き潰すだけ。たったそれだけだ。いいな、チームケイオス」
「無茶苦茶言いますね!」

 まあでも仕方ないかなあ。最初に指示を求めたヒナタは、肩をがっくり落としてデカブツを見やる。この大きさ、たしかに叩き潰すだけならいいんだろうけど。周りに行く被害が尋常じゃなさそうだ。周りというのは建物や環境のことではなく、自分自身の周り。すなわちチームケイオスのメンバーたちのこと。もしこいつを倒せたとしても、瓦礫はガラガラと崩れ去り、我々を押しつぶして形を消していくだろう。そうなったら終わりだ。何がって人生が。

「やるしかないんですよねー」
「嫌なら帰ればいい」
「帰りませんよう」

 各々は自らの武器を構える。見据えるは、目の前の瓦礫で作り上げられたフォルテッシモもどきのみ。流星は刀を構え、ひとつながく息を吐き、少しの間を持って突っ込もうとした。
 その時である。



「────おっと、私達も参加いいかな?」



 突如として響く声。流星はピタリと動きを止め、ほかのメンバーたちも構えを少し解いてそちらを見る。そして視界に写った姿を見て、流星は目をカッと開く。

「やあ、久しぶりだね。『流星くん』」
「せんせ……指揮官。相変わらずすごい髪の毛ですね」

 流星はゆっくりと名前を紡ぐ。

「……竹澤吟子(たけざわぎんこ)、胡代翡翠(こしろひすい)?」
「ははは。フルネームじゃなくていいのに。変わらないなあ」


 あの時と変わらぬ姿で、『魔法使いと弟子』がやってきた。


続く

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.24 )
日時: 2018/11/29 22:14
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「久方振り……だな」
「そんなに固くならなくていいじゃない。お互いマグノリア古参メンバーなんだし」

 ケラケラと笑って答える魔法使いこと、竹澤吟子。杖を軽く振り回し、作り上げられた巨大物体から落ちてくる瓦礫たちを弾く。その巨大物体───瓦礫フォルテッシモを見上げ、ひゅう、と口笛を鳴らす。

「いやあ壮観だね。よく作り上げたねえ、奴さん」
「お師匠、これもフォルテ?」
「十中八九そうだろうね弟子くん。でなきゃ作れないよこんなの。自分の重みで崩れてるはずさあ」

 弟子くんと呼ばれた、吟子の傍らにいた胡代翡翠は、皮付きのみかんを頬張りながら同じように瓦礫フォルテッシモを見る。その後ろからアスカが、皮付きのみかんまるごと食べると美味しいよね、と翡翠に歩み寄る。その翡翠はもぐもぐと食べながら、バッグから皮つきのみかんを取り出してアスカの口の中へと突っ込む。
 そびえる瓦礫フォルテッシモはとにかく巨大だった。だが足元は不安定で、いつそれごと倒れてきてしまうかと、ヒヤヒヤしてしまうほど。否、もうすぐ倒れてしまうだろうと、断言できるほどだ。流星はひたすらに頭を回転させる。どうやって被害を最小限に食い止めるか、どうやってこいつを倒すか。いくら周囲転換で空間が切り離されているとはいえ、もし仮にこいつを正攻法で倒したとしたら、大量に瓦礫は崩れ落ち、こちらへくる被害は甚大なものとなるだろう。
 突然の救援で、吟子と翡翠が来たとはいえ、吟子のフォルテではこいつの崩壊を食い止めるには限界があるし、翡翠に至っては戦闘向きでもなければ、サポート向きでもない。強いて言うならば手にしている巨大なフォークで何かを刺すことくらい。今の状態では全く戦うということは考えられない。どうする、どうするか。

「指揮官、正直にここは壊しちゃいましょう」

 不意に、背後から声がかかる。そちらを見ればそこに立っていたのは、他の誰でもない───

「……藤山まろん、何を考えている?」
「私達の名前はそうでしょうけど、『あたし』としての名前は『藤田浪漫(ふじたろまん)』ですよ。前にも言った気がしますけどー?」

 先程までの空気とは打って変わって、どこか知的な雰囲気を漂わせる彼女───藤山まろんの中の、『藤田浪漫』は、口角を少しだけ上げて、瓦礫フォルテッシモを指差す。

「だってあれ、壊す以外に何かあります?ないでしょ。そんでもって壊す方法が何か安全なのあるかって言ったら、それもないでしょ?フォルテでどうにか被害が行かないように〜なんて言ったってですよ、体力持たないでしょあんな大きさじゃあ───。だったら真正面からぶっ壊す。単純明快、これのどこに迷う選択肢があるんです」

 まろん、否浪漫は、多少の身振り手振りをつけながら、まるで物語を語るかのように言葉をつらねた。その笑顔の本心は読めず、まるで『こう言ったけど責任は取らないよ』とでも言いたげである。流星はその浪漫に眉をひそめはするが、それで終わる。

「とりあえず頭からブッ壊しましょうよ。それならまだ」
「……ああ、そうだな。チームケイオス、戦闘準備。対象は瓦礫巨大物体。破壊方法は───」

 ひと呼吸おいて、流星は言う。


「真正面から、やる」





「───青森でぇ?」
「せやで〜、ほいこれ」

 一方、マグノリア本部のリーダー室。突然ノックもなしにやってきた那生に、狂示はしかめっ面をうかべるものの、彼から報告された事項に、思わず間抜けな声を出して復唱してしまう。青森大火災後の調査に行ったものの、やけに帰りが遅かったので流星に連絡を取ろうかと思っていたところでのこの報告。まさか、焼け野原の青森でグローリアとの戦闘があるとは。狂示は思わず大きなため息をつく。おいおい勘弁してくれよ。と。

「んーとな、まずグローリアがきたやろ。そんでもって周囲転換してー、ドタバタ戦闘でー、んで今は向こうさん、瓦礫で作ったでっかいフォルテッシモ作って逃げおったみたいや。チームケイオスはそれの処理に取り掛かり中言うところやんなぁ」
「はァー……奴ら面倒なのに巻きこまれたもんだな」

 ため息をついて椅子に深く座り込む狂示。流星も行っているとはいえ、随分と大変そうだなあ、などと他人事のように思う。まあでもあいつのことだ。さくっと終わらせるだろう。特に心配することといえば、青森大火災が起きたこの日に、燃え尽きた生まれ故郷に調査しに行った水木のメンタルか。それとヒナタが必要以上に脱いでいないか、とか。
 ふと、狂示は『魔法使いと弟子』のことを思い出す。そして那生に、そうだそうだと言いながら話をふる。

「お吟と翡翠は今どこにいんだ?」
「へ?ワイにもわからんわァ?どないしたん」
「うーむ…」

 神妙な顔になって考えこむ。那生はその様子の幼馴染をどこか不審に思いつつも、何かあったのかと聞いてみる。

「……オレの思いこみなら、いいんだけどな」
「?」

 ───面白半分でその現場にいねえだろうな。
 乾いた笑いを浮かべながら思ってしまったそれは、今現在まさにそれが起こっているとは知る由もなかった。

「あ、そういや病室から御代はん消えとったんやけど、狂示ィ……?」
「おっとぉオレァ今急に耳が悪くなったみてえだ、けぇれけぇれ」





「とっどっけえええええッ!」

 ヒナタの腕はフォルテによって大砲へと変わり、狙いを定め、瓦礫フォルテッシモの頭を撃ち抜く。ものの見事に頭部は弾けたものの、瓦礫は重力に従って落ちてくることなく、空中に漂う。そしてまたたく間に逆再生するかのように、もとに戻っていた。

「うえ、回復機能付きぃ?」
「これもフォルテのようだねえ。かけられてるフォルテは、様子を見るに『維持』系、『再生』系、『人形作成』系かな?他にもありそうだけど、というか瓦礫フォルテッシモっていうより、まんまゴーレムみたいだ」
「木っ端微塵にやればいんじゃね?アヒャヒャ」
「弥里ちゃん簡単に言うよねえ!」
「だがそれでいい。木っ端微塵に、跡形も残さず粉砕する。それだけだ」

 言うやいなや、流星はまっすぐに瓦礫フォルテッシモ───ゴーレムといったほうが正しいだろうそれに飛んでいく。両手の中にある青く輝き、電流を迸らせる刀たちをゴーレムへ突きつける。触れるか触れないかのところで、電流はゴーレムへと襲いかかり、体を作っていた瓦礫たちはそれを避けるように重力に従い落ちていく。だがすぐにその瓦礫たちは『吸われるように』もとの位置へ戻り、修復されていく。

「指揮官、引いて!」

 直後流星の背後から、れお子の声が響く。その声に従い、流星はゴーレムを蹴って更に上へと避ける。瞬間れお子は強烈な蹴りをゴーレムへとぶつける。派手な音を立てて体を作り上げている瓦礫たちは、いとも簡単に崩れ去って行く。

「────!」

 その時、その場にいたチームケイオスの面々はある物を目にする。それは落ちていく瓦礫の隙間から見えたが、すぐにまた瓦礫に覆われ見えなくなっていく。流星とれお子は体勢を立て直し、ゴーレムを仰ぎ見る。若干動きは鈍くなったかと思ったが、気のせいだったようだ。

「今の、ひし形の水晶は……」

 それを見た百合は無意識に口を開く。その疑問に答えたのは柚子だった。

「───『コア』ってヤツ?」
「おおかたそのとおりなんだろうね。お師匠」
「そうだね弟子くん。さっきの、あれを中心として瓦礫が来たから」
「あれが中心としたら、そのコアを叩けばいいってこと?」
「───恐らくは、そうだろう」

 各々はゴーレムのコアらしきものがあるであろう場所を睨む。ゴーレムはそれを気にせず、己の拳を握りしめ、腕をゆっくりと大きく振り上げる。

「来るぞ、お吟」
「わかってる」

 ゴーレムの拳がまっすぐに彼らのもとへと降りてくる。それよりも早く流星は吟子に声をかけ、彼女もまた手にする杖を振り上げる。瞬間、どこからともなく水が現れ、その水は彼らを覆う『壁』となる。それによりゴーレムの拳は派手な音を立てて弾かれる。役目を終えた水壁は音もなく消えていく。
 ───フォルテ『ソーサラー』。その名の通り魔法使い。様々な『奇跡』の力を借りて、自らや状況に影響を与える。吟子はこのフォルテをとても気に入っていた。魔法使い、なんて浪漫があることだろうか。昔口癖のように言っていたな、と流星は思い出す。その時の吟子の掴みづらさといったら。今もそんなに変わらないが。
 吟子はすかさず直接ゴーレムの足へと杖を軽く振り、どこからともなく吹いてきた風の刃でその足を切り刻む。切り刻まれた足はぐしゃっと崩れ、ゴーレムはバランスを崩す。すぐに再生しようと瓦礫は集まってくるが、それを阻止しようと、ヒナタが間髪入れずに腕を大砲に変え、渾身の一撃を放つ。
 その隙に柚子と水木が飛び、崩れた足とは反対にある腕を狙い、攻撃を仕掛ける。柚子が指鉄砲を作り肩の部分を撃って、水木は水球を作って一部を包み、水圧を強めて腕を破壊する。ガラガラと腕は落ちていく。
 そして流星と百合、れお子、弥里はゴーレムの胴体へ突っ込んでいく。流星は己の刀で瓦礫を切り刻み、百合は鞭でゴーレムの頭部を締め付けてそのまま潰し、れお子は強烈なキックを胴体へと再び食らわせ、トドメとばかりに弥里は手にしていた巨大な注射器をゴーレムへと打ち込み、怪しげな色をした薬品を注入する。
 戦闘向きではないフォルテを持つアスカ、まろん、翡翠はそれをただ見守るだけ。瓦礫からは吟子やヒナタが全て弾き返していたため、被害は特になかった。だがそれでいい。被害がないのが一番いい。
 弥里が注入した薬品が効いたのか、それとも蓄積されてきたダメージが爆発したのか、ゴーレムの胴体は一気にあたりに飛び散っていく。そして顕になる、ひし形水晶───そう、『コア』。流星は眼帯を外し、その『眼』でコアを睨む。瓦礫を踏み台にし、刀を構え、コアへと真っ直ぐに飛んでいこうとしたその時。


「ふっふっふ……あーっはっはっはっは!!うぇい!!」


 突如高らかに響く笑い声。それは空からやってきたらしい。流星ははっとそちらを見上げる。空に浮かぶは1つの影。その影は空中で仁王立ちをして、コアを見据える。そしてにやりと笑う。


「真打ちは、最後に登場───だうぇい!」


 刹那、その影は脚をコアへと真っ直ぐに。まるでそう、その構えはまさに『ライダーキック』そのもの。バキン、とガラスが割れたような音を立てて、コアの全体へヒビが入っていく。最後には一気に弾けて広くとびちって、何もなくなった。コアを消失したことにより、瓦礫もまたたく間に重力に従い崩れていく。

「………な、なんで」
「ふふふ、朝山御代!華麗に参上っ!」

 瓦礫が完全に崩れ落ち、あたりにはチームケイオスしかいなくなったとき、目の前にやってきた真打ちこと、『朝山御代』に注目が集められていた。その当の本人は本人が思う『かっこいいポーズ』を披露している。
 一時(いっとき)の静寂の後、柚子が口を開く。

「御代、どうしてここに?」
「チームケイオスが出撃してるのに、私が来ない理由がないうぇい。本当はお吟さんたちと一緒に来るはずだったんだぷてよ?」
「私が止めたんだ。『真打ちは最後に来るものだよ』ってね」

 くすりと笑う吟子。その隣では翡翠が懐からどら焼きを取り出して、食べ始めている。そのどら焼きを隣からアスカがこっそり取ろうとするのだが、翡翠の行動は早く、アスカの手をぺちりと叩いてみせた。だがそんな説明で流星が納得するわけもなく。

「朝山御代。3日間の絶対安静を言い渡したはずだ。命令違反と捉えるぞ」
「えーでもぉー。リーダーから『行ってこい』って言われたぷて。リーダーに文句言ってほしいうぇいよ」

 リーダー様々うぇい。そうつぶやいてくるくると回りだす。流星は眼帯を直し、深いため息をつくと、咳払いを一つ。

「……チームケイオス、任務終了。これより本部に帰還する」

 片手を上に上げると、指を鳴らす。その瞬間、チームケイオスの面々は消え去っていた。
 残されたものは何もない。





「おけーり」

 帰った先にはリーダーである狂示が待ち構えていた。隣には複雑な顔をした那生も。恐らく御代の事だろう。
 流星はのんきな顔をして出迎えた狂示に、これまた大きなため息をついて文句という名の抗議をしようとする。が、狂示はそれを手で制して、流星を押しのけて一緒についてきた吟子と翡翠に対して話しかける。

「よう。久しぶりだなァ魔法使い?」
「そっちも変わってなさそうだね。リーダー」
「まーおかげさまでな。(つーかオレの予感的中してたんかよ…)」

 狂示は内心乾いた笑いを浮かべる。まさか本当にいたとは。絶対面白半分で戦闘に加わっただろこいつら。その部分が当たっているのかはさておいて、隣の翡翠へと顔を向ける。だが翡翠は狂示に目を合わせることもなく、疲れていたのか眠いのか、さっさとその場を離れてどこかへといってしまった。嫌われたかね。そう思わず口に出すが、吟子はそれをすぐに否定した。眠いだけさ、と。

「さてとチームケイオス。まずはおつかれさん。しっかり体休めてこいよ。報告は流星たちから聞くからよ」

 狂示がそう言うやいなや、流星と吟子、百合を除いたメンバーは、わっと散り散りになった。残ったのはマグノリアでも、成人している数少ないメンバーだけ。

「さてと流星。お吟に百合。あっちであったことを事細かに教えてもらおうか?」
「その前に御代のことについて聞かせてもらおうか」
「ワイもそれ聞こう思てたんや。手伝ってくれへん?」
「ああ。任せろ」
「だぁらそこはもう話しただろうがうるせえな。さっさと報告しろや」
「まあまあここは私がやるよ。───あれは10年前のことで」
「お吟は今は黙っててくれややこしくなる。百合」
「お断りするわ」

 この日、マグノリア最古参メンバーである数少ない成人組は、らしくもなく子供のような戯れをしたとか、してないとか。





 ────チームケイオス。それは、毎日を面白おかしく生きてしまう、クセが強すぎるフォルトゥナたち。趣味も嗜好も何もかもが違うフォルトゥナたちが集まった、『よくわからない団体』。
 彼らは描き、書きしるす。その時であった『日々のスパイス』を。彼らは語る。毎日の生活で起こった、『小さい軌跡』を。



 ────毎日は、スパイスとほんの少しの『混沌』で満ちあふれている。



第3話【fake town baby】終

 

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.25 )
日時: 2018/11/28 23:27
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
参照: https://m.youtube.com/watch?v=r9hn3NRGKrI

 神様という存在は果たしているのか。それを確かめるすべはない。神様はいつもどこにいるのだろう。傍らに、空に、目の前に。神様は存在しうるのだろうか。
 神様はどんな形をしているのだろう。人のような形なのか、それとももっと違うのか。神様に名前はあるのか。発音できるのか。そもそもの話、神様とは何なのだろうか。考えれば考えるほど止まらなくなる。神様とは?


───神様って、なんだっけ。



第4話
【Distorted†Happiness】



 チームケイオスの青森の騒動から数日後。今まで休暇を取らされていた時雨と泥はマグノリアに帰還し、また超子やエレクシアたち、歌子も前線へと復帰していた。リーダー命令により病室から飛び出していた御代は、改めて休暇を言い渡され、娯楽室にてその休暇を持て余していた。ちなみに当のリーダー狂示は、流星と那生に何かとあれやこれやと言われたものの、どこ吹く風。リーダー命令だからと聞き流した。
 時雨たちは自分たちが休んでいる間、マグノリアで起こったことについて事細かに説明を聞いた。その間、超子が重症を負ったことに対し、くらっと来ていたようだが、超子の元気な姿を見て調子をどうにか取り戻していた。その後説明が終わると、各自解散の運びとなる。各々が散り散りになると、時雨も背伸びをしてさて図書館にでも行こうか、とそれまでいた会議室を出る。
 そんなとき、不意に横から声をかけられた。そちらを見れば、赤く充血した目で時雨をじっと見つめる、陰気な影。

「……芳賀(はか)?どうした、お前が『アレ』に乗ってないなんて珍しいな」
「たまには外にでろって、どこぞの妹からドヤされてな」
「ああ、メカニックの」

 時雨が思い起こしたのは、例のメカニック部門の事実上トップに座す少女。名字こそ違うが、彼女はこの芳賀の実の妹だ。その妹───一条常磐から突然、「引きこもりの陰気な兄貴に告げるっすー、外に出て散歩でもしやがれっすー、さもねーと『この球体』ぶち壊すっすよー」と、脅し同然のお言葉をもらい、嫌々渋々ながらこうして外に出てきたらしい。芳賀はただでさえ猫背な体勢を、さらに丸めてため息をつく。

「引きこもりに外にでろとか、死刑宣告同然だろうが」
「そうは言うがな……お前また充血酷くなってるぞ」
「あー……いんだよ俺が充血してなかったらそれこそ一大事だろうが」
「そこまで充血してることが一大事だからな」

 呆れたように言ってやると、うるせえと顔をそらす。

「そういやこれからお前は?」
「図書館に行くつもりだが、どうした」
「いや、少し聞いてもいいか?」
「何だ急に」

 芳賀は1つ間を開けると、口を開く。


「────お前、神様って信じるか?」



「!」

 はっと気がつく。目の前には開かれた本。その本には、『神』という存在がどういうものなのか、記されていた。時雨は落ち着いてあたりを見回す。時雨以外の人々は皆、思い思いに本を手に取り席につき、読書にふける。ゆっくりと息を吐いた。
 ここは図書館。時雨はあの後図書館に来て、芳賀の言葉が忘れられずに、片っ端から神にまつわる本を探してひたすら読んでいた。その途中で急な睡魔がやってきて、抗えずに眠ってしまったらしい。幸いにも本にダメージはなく、時雨は胸をなでおろした。

「……神、か」

 ぼそりとつぶやいてみる。芳賀のあの言葉は、たしかにこちらを試していた。信じると答えても、信じないと答えても、きっと良からぬ空気になっていただろう。だからこそ、時雨ははぐらかした。そもそも目に見えない、感じ取れないものは信じる信じないの話ではない、と。芳賀はその答えを予想していなかったようで、多少面食らったような顔をしていたものの、すぐにもとに戻り、「だろうな」と意味有りげに返した。変なこと聞いて悪かった。それだけいうと、芳賀はくるりと踵を返して去っていった。その様子を少し変だと思いつつも、時雨はそれ以上追わなかった。

「神様がいたとしたら。どうなっていたんだろうな」

 時雨はそんなことを思う。この国には八百万の神々と呼ばれるほど、神が存在すると謳われてきた。だがそうでなくて、『概念的なもの』。人々が無意識に思う、『神』。それが本当に存在していたら、今頃どうなっていたのか。想像などつかないが、1つだけ言えることがある。

「まあ、今より環境は悪くなっていただろうな」

 そう確信する。時雨はふうと息をつき、開いていた本を閉じる。結局のところ神については、『人々が思えばいるし、思わなければいない』のだろう。そう結論づけていいのかわからないが、そういうことにしておく。さて自室にでも戻ろうかと、席から立ち上がり本たちを棚に戻し、図書館を後にする。

「そういえば芳賀、あの球体どうしたんだろうな」

 ふと、芳賀とあった時のことを思い起こす。芳賀はいつも、『黒い球体』の中へ閉じこもり、暮らしている。その中でネットやゲーム、マグノリアとしての活動をすべてしていた。当然その中の光源はすべて液晶から出る光のみで、芳賀は1日じゅうそれとにらめっこをしている。それが原因となり、芳賀の目の充血はひどいものになっていた。そしてろくすっぽ寝ていないので、目の下のくまも凄まじいものになっている。もちろん栄養補給もちゃんとしておらず、1日の食事はサプリと栄養食のみ。不健康まっしぐらだ。だから、芳賀の項にはチューブをつなぐ『接続部品』がはめ込まれていた。そこから必要な栄養分を取るために。
 先程の芳賀はその球体から出て行動していた。しばらくあの中から出ていると、見れたものではないくらいの状態になるのだが、果たして大丈夫なのか。いや、多分大丈夫なのだろう。証拠はないが。

「……たまには娯楽室にでもいくか」

 このまま自室に戻ってもやることがない。なら、気分転換にちょうどいい場所に行ってみよう。時雨はついさっきまで考えていたことを隅に置き、娯楽室へと歩をすすめることにした。





「神様ぁ?」
「そ。芳賀くんが言ってたのを聞いちゃいました」

 所変わって医療部。那生が不在の今、ここにいるのは超子と弥里のみ。患者は全て個室へと閉じ込めた。その中で弥里は、たまたま通りがかったときに聞いた、芳賀の話を超子へと話していた。当の超子は医療部に薬を取りに来ていただけなのだが、その話を聞いていくうちに興味を持ち、勝手にお茶を作って飲んで、弥里のその話に聴き入っていた。

「神様を信じるか、ねえ。随分難しい質問されたわねー、時雨」
「神様とかキメれば普通に見えるのに」
「うん、弥里ちゃん多分その神様は神様と違う」

 にしても、神様か。超子は湯呑みに残っていたお茶を飲み干して、思考の海へ飛び込む。そういえば真面目に考えたこと、なかったなあ。つか考えることもないか。
 芳賀がそんな質問をするなんて珍しいな、と思いつつ、仕方ないのかな、とすら思う。というのも、芳賀の家族環境はかなり複雑で、所謂『そういうもの』が絡んできているせいで、芳賀はあのような性格になったと、言伝で聞いた。でもそれにしたって、なんて今そんなことになっているのだろうか。何かあったのかな。

「超子ちゃんは信じる?」
「へ?」
「神様がいるかって」
「あたし?え、えーと……うーん」

 弥里の質問で海から脱出した超子は、突然のことに戸惑いを隠せない。いきなり聞かれても困るものは困る。しかし弥里は興味深そうに超子の顔を覗き込む。
 ひたすら考えた後、なんとか超子は答えを絞り出した。

「あたしは……いる時といない時があるって思う」
「どういうこと?」
「人間の都合のいいときにいて、悪いときにはいないんだよ。って思う」
「へえ〜」
「で、なんで?」
「んーん、聞いてみたかっただけ」

 弥里は手にしていたいちご牛乳のパックについていたストローを、ずぞぞぞと吸い、飲み干す。その後ぐしゃっとパックを潰してゴミ箱にシュートすると、いつも那生が座っている椅子に深く腰掛ける。

「童貞遅いねー」
「流石に先生っていっとこ?でもほんとに遅いねえ」
「なーにやってんだろ」

 2人は特に意味もなく、那生の帰りを待つことにした。





 マグノリア、リーダー室。その場には狂示と那生、そして流星と吟子と百合が神妙な顔をしてひとつの資料に目を通していた。

「……『メシアの揺り籠』」
「昔からあったカルト宗教団体だが、最近また目立った活動をしだしたらしい。メシアにより、この世は新たなる舞台になる……ってのが売り文句だな」
「この宗教団体、グローリアと繋がってるんだったよね?」
「ああ。グローリアの一部の連中は、この信者だからな」

 メシアの揺り籠とは、地上に降り立つ唯一神とされる、『メシア』を崇め奉る宗教団体である。ただたんにメシアを崇めているだけならばいいものの、自らメシアのために生命を絶てば、メシアに認められて次なる使徒になれるだの、メシアを認めぬものに存在価値などないとして、虐殺をしたりだの、碌でもない行動ばかりが目立っている。そのメシアの揺り籠、一時期は活動を急にぱったりと潜めたものの、ここ最近また表に出てきて活動し始めたらしい。グローリアと繋がっている組織でもあるため、マグノリアに被害が行かないとは限らない。その対応をどうするか、ということで、今回彼らは狂示に集められた。

「たしかに対応策は考えなきゃいけないだろうけど……そうはいってもどうやるんだい?目の前の相手が信者だという証拠があるわけでもないだろう」
「そこなんだよな。奴ら、擬態がうまいから」
「……ん?そういや、このメシアの揺り籠って、芳賀はんの親が信者とちゃうかったか?」
「今日集めたのはそれもあんだよ……芳賀を連れ戻しに来るかもしれねえし」

 そこまで言うと狂示は椅子に深くもたれかかる。そう、厄介なことに芳賀の両親が、そのメシアの揺り籠の熱心な信者なのだ。団体の活動が表立ってきた今、いつ芳賀を狙ってくるのか正直ヒヤヒヤしているのだ。なんせ、こう言っちゃ悪いが芳賀はまともに動けない。主に体力と精神的な意味で。

「動こうって意志が本人にありゃなあ」
「これは、相当難しい課題になりそうだな」
「そうねえ。こればっかりはねえ」

 普段は頼れる大人たちも、珍しく1つのことで延々と頭を悩ませるのであった。





「で、なんで娯楽室でやる遊びが『かごめかごめ』なんです、歌子さん?」
「くじ引きで決めたんだよ〜」


続く

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.26 )
日時: 2019/02/05 22:35
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

『メシア様にお祈りすれば、救われる』
『メシア様を信じなさい』

 幼い頃から植え付けられた、その言葉。それは重荷になって、彼にずぅんとのしかかる。それは一種の呪い。信じる者は救われる、信じなければ天罰。毎日毎日、反吐が出るくらいに聞かされてきた。
 だから彼は逃避した。そして居場所を求めた。そうしていく中で見つけた、自分だけの居場所。それが、『ネット』と『ゲーム』だった。

「……」

 彼、電堂芳賀(でんどうはか)は今、自らが作り出した黒い球体───『アニマ』の中で、何もすることなくただぼんやりとモニターを見つめていた。片手にはスナック菓子のようにサプリメントをつまみ、それをひょいひょいと口の中に放る。ボリボリと咀嚼したのちに飲み込むと、大きなため息をつく。目の前のモニターに流れる、意味のない世間のニュースをただぼんやり見つめる。考えることもなく、思うこともなく。
 この黒い球体『アニマ』は、彼自身の手で生み出された、『家』に近しいものである。アニマの中には1つの座り心地の良いゲーミングチェアと、目の前に設置されたゲーミングキーボード。あたり一面に配置された生活雑貨や、極めつけはすぐ手の届く場所に大量のエナジードリンクが入った冷蔵庫。食事は携帯食料とサプリメントで事足りる。それで彼は満足していた。明かりはモニターの僅かな光でいい。
 ボリボリとサプリメントを咀嚼し、冷蔵庫から引っ張り出したエナジードリンクのプルタブを開けて、一気に飲み干す。目の前のモニターに流れるニュースは変わらない。そろそろゲームにログインしようかと、キーボードを操作してコントローラーを握りしめたちょうどその時だった。

『───では、次は巷で話題を呼んでいるメシアの揺り籠についてです』

 彼の動作をすべて止めさせるニュースが流れてきた。思わずコントローラーを投げ捨て、そのモニターにかじりつくように前のめりになる。

『近頃活発に活動をしているメシアの揺り籠。救済と安らぎを求め、この組織に入信する方も増えています。そのメシアの揺り籠に、番組は独占インタビューを試みましたが、残念ながら叶いませんでした』
「……」
『それでは次の───』
「チッ」

 薄い内容ですぐに次のものへと変わっていったそれに舌打ちをすると、芳賀はすぐにコントローラーを握りしめて、ゲームのログイン画面へと切り替える。期待はしてなかったが、あすこまで薄いとかえって腹が立つ。見なければよかった。
 とここでふと彼に一つの疑問。なぜ自分は期待もしていなかったのに、先程のニュースにかじりついたのだろうと。別に何も期待していないのならば、見ることもないだろうに。さっさとゲームにログインしていればいいのに。
 芳賀は苛立たしげにゲームへダイブした。





 かごめかごめ
 かごの中の鳥は
 いついつ出やる
 夜明けの晩に
 鶴と亀が滑った
 後ろの正面だあれ

 鈴のような声が部屋に響く。中心にいるは顔を隠した泥。その周りを囲んでぐるぐる回る、娯楽室に集まったメンバーたち。そしてそれを見守るのは、時雨と歌子。かごめかごめをやろうと言い出したときは、正気なのかとは思ったが、本人たちが楽しげなので特に何も言わず、かと言ってそれに混ざらずにこうして見つめていた。ちなみに歌子はそんな時雨を見ていたかったので、あえてかごめかごめに参加せずに隣にいる。

「よくよく歌詞を深読みすると、怖いですね」
「そう?」
「あくまで個人的な感想ですけどね」
「あー、もしかして『鳥籠の中に閉じ込められた子供』みたいな」
「そういうヤツです」

 歌子のその例えに、時雨はある1人の友の姿を思い起こす。ひきこもりで、陰気で、よほどのことがない限りまともな食事を取らない、ヘビーゲーマーでネット廃人の彼。言うまでもなく芳賀のことだが、彼の過去、というより家庭環境がまさしく、『籠の中の鳥』と言うにふさわしいものだったのだ。そのことに関しては、深いところまで彼の口から聞いている。どんな扱いを受けたのか、どんな生活だったのか、どんな親だったのか、どうやってここに逃げることができたのか。そして彼の親がそうなってしまった理由も。

 ───なあお前、神様って信じるか?
 
 芳賀から言われたその言葉は、今でも時雨の胸中を燻る。結局のところ神様とは何なのだろうか。人々にとっての精神安定剤のようなものなのか、ヤツの言う『神様』とやらは。そりゃあまあ、神話の中に登場する神様は信じてはいるが、『人々が作り上げた幻想の神様』とやらは、信じるかと言われたら否定するだろう。それこそ新興宗教で崇められている神様など、いるはずがないのに。もしそういう伝承があるのかと言われたらないのだろうが。

「おーいしーぐーれー、お前もやろうぜー」
「ヰ吊戯(いつるぎ)、僕はここでいい」

 不意に、それまでかごめかごめをやっていた遊喜───ヰ吊戯のことだが───に誘われた時雨は、思考の海から救われる。が、特にやろうという気はなかったので、誘いを断った。それ以前にそのかごめかごめに、少し恐怖心を抱いてしまった、というのもあるが。
 1人を多数で囲み、後ろにいる人間を当てる。当てたら交代、当てられなかったらやり直し。不正解が続けばずっとそのまま。『たったそれだけのこと』なのに、なんとも思っていなかったはずなのに、時雨はどうしても怖くなってしまった。今このとき、怖くなってしまったのだ。ぞくりと背筋に嫌なものが伝う。
 それを知ってか知らずか、歌子は時雨の様子を見て、いつの間にか震えていた彼の手を取り、声をかけた。

「……時雨くん。別のとこいこっか?」

 その言葉のあと、歌子はすっくと立ち上がり、時雨もそれに続くようにして娯楽室をあとにする。
 2人が去ったあとも、娯楽室ではあの歌が響いていた。


 かごめかごめ
 かごの中の鳥は
 いついつ出やる
 夜明けの晩に
 鶴と亀が滑った
 後ろの正面だあれ





 無機質な道を当てもなく歩いていく時雨と歌子。その手は握られたままで、時雨がフラ付けば歌子もフラつき、逆に歌子がフラ付けば時雨がそれを支える。端から見れば───

「あ、夫婦がいる」

 まさしくその言葉の通りであった。

「何を言ってるんだ泥」
「言ってみたかったんだ」
「言ってみたいほどの言葉か?」

 時雨たちは声が聞こえた背後に顔を向ける。彼らの顔がそちらへ向くと同時に、ふっと柔らかい笑みを浮かべて張本人───月紫泥は近づいていく。

「どこいくの?」
「歌子さん?」
「考えてなかった」
「……図書室にでも行きます?」
「あ、私ちょうどあの本読みたかったんだ」
「なになに?」
「『美味しい鶏肉の作り方』」
「素材からですか……?」

 2人と1人は結局、無難な場所選んでそこへと向かうことにした。途中で時雨だけ、ふりだしに戻ってるな、と心の中で思ったが、わいわいと楽しく話し込んでいる友人たちを見て、あえて何も言わないことにした。





「……俺は」

 モニターの光に当てられた少年はつぶやく。その声は震えていて、何かにおびえているようで。


「────神様の生贄じゃない」


続く

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