ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 怪奇拾遺集
- 日時: 2011/03/19 18:22
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。
**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***
前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・
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- 今は昔② ( No.92 )
- 日時: 2011/03/19 18:13
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
次の朝のことだったかな。彼女の家にはオレみたいな人が押しかけてくることなんてザラみたいでーもうそりゃ手慣れたもんだよ。
やわらかいフトンからもそもそ抜け出したらミソスープとライス、あと軽くグリルしたサカナとツケモノが食卓に二人ぶん、きちんと並んでるんだよ?
それで枕元見たらきれいなパープル、いや。コンイロっていうんだっけー。きれいな色のユカタが置いてある。カッポーギっていうエプロンを着たオレの友達がそれを着てねって慣れたみたいに言うんだー。
今どきホテルでだってここまでしてくれないよ! やっぱり彼女はすごく懐が深いねー。
……なにさ、なんでそんな目で視るの。オレがなにしようたってお前には関係ないだろ。小言は後できくから今は黙っててよ、もう。
それでさ、朝ごはんをゴチソウになってそれから、オレの友達は出掛けたよ。お買い物だってさー。
オレはそのあいだすることがないからセンタクモノ干してた。オテツダイってやつ。“タダメシカックラッテ“るんだから労働しないとね。
それでさ、バスタオルがねー、ひゅるんって、飛んでいってさ。たいして強い風でもないのに奥の間まで、鳥みたいに飛んでいくんだ。
びっくりしたね。慌ててサンダル脱ぎ捨てて追っかけたよー。ほんと、今思うとなにか悪いものの仕業だったんじゃないかなって思ってる。
バスタオルを追いかけて奥の間まで走り込んだなんて、ちょっとシュチュエーションが違ったら童話になるねー。不思議の国のアメリカンってか。笑えないや。
それでさー、バスタオルを追いかけたのはいいんだよ、普通だよねー。奥の間に続くフスマが開いててねーその奥は電気もついてないんだ。そこにバスタオルがスルリって入っていってさー。オレも続いて踏み込んで、床に落ちたバスタル拾おうとした。
そのときなにを見たと思うー?
(続く)
- 今は昔③ ( No.93 )
- 日時: 2011/03/19 18:32
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
黒髪だよ。
拾い上げようとしたバスタオルの隙間からながーい黒い髪がはみ出てるんだ。
考えてみてよー、怖くてたまらないでしょ。
その後? もう引っ込みなんてつかないとこまでいってたのはわかってた。だってバスタオルをもう持ち上げてるんだからねー。でもね、見ちゃいけない、って、脳味噌が叫んでたんだよ。
もうバスタオルなんて放り出してむちゃくちゃに走ったよー。怖かったね。明るい居間まで辿り着いたはいいけどーしばらく腰が抜けたままだった。
いや、オレももう小さくないからそのまま布団に潜り込んだなんてことはないよ。
センタクモノ干しきって、洗濯籠を洗面所に返しに行ったんだけど、洗面所が明るいのが救いだったなー。洗面所が暗かったらきっとオレは出したものを片付けられないだらしない男だと思われただろうからねー。
……笑わないで聞いて欲しいんだけど、その日からは友達に頼み込んで一緒の部屋で寝させてもらったよー。
……あ、ちょっと、笑わないでよー。怖いのはこれからなんだってばー。
その夜のことだよ。見たのは途中からだと思うけどテレビで面白そうなアニメをやってたね。
ショートヘアの女の子とボーズアタマの男の子が出てくるんだー。女の子の名前はセツコ、って言ってたっけ? 独特の訛りがききとりづらくて男の子の名前がわからないんだけどねー、兄妹の日常を描いたアニメみたいだった。
すごく風景がきれいでオレは文字通り食い入るように見てたんだけどー、オレの友だちったらオレがそのアニメを見てるのに気付くなり、むしり取るようにオレの手からリモコンをひったくってー音楽番組にかえちゃったんだ。
オレはちょっとイラっときたけど、そもそも家に上がり込んでるのはオレの方だもん。ぐっと呑み込んでそのまま終わりまで見てたよー。オレの友だちがその途中、
「もう八月だね」
ってポソっと言ってさー。オレもちょっと、微妙な気分になったな。
ほら、八月って、結構ビミョーな月だよね。ほら、なんていうか。オレら自体になにかあったわけじゃないんだけど……昔はお互いの国同士いろいろあったでしょ……関係ない話でごめんねー。
それで、その後、お湯を借りてユカタも借りてー、そろそろ寝ましょうか、っていう友達に同意して布団に潜り込んだんだ。
布団に潜り込んでしばらくして、隣から寝息が聞こえてきた。あたりまえだけど寝たんだろうね。でもオレは、なんだかそのとき、ぜんぜん眠くなかった。なんでだろうねー。オレはそーとー疲れてたと思うよ。
それでさ、ふいにね、あの、置いてきぼりにしたバスタオルのことが気になったんだー。どうしてもあのバスタオルを取りに行かなきゃいけない気分になった。
今思えば正気の沙汰じゃないねー。ゼーッタイあやつられてたとしか思えない。
それでどうしたって? 行ったよー。怖いモノ見たさってやつだね。……この先はさ、オレは、すごーく怖かった
けど、笑い話になっちゃうねー。みんな信じちゃくれないさ。いや、まあ、いいよ。オレが怖いーって思ったことならたとえバスの定期券川に落としちゃった話でもホラーになるんだから!
……それで、話戻すけど、眠くなかったんだ。ぜんぜん。面白いぐらい目も頭も冴えちゃっててさー。
不思議だよねー。足が面白いぐらいスムーズに進んでー信じられないことにあの真っ暗なフスマの向こうにひょいひょい入って行けたんだよ。
てか馬鹿だよねー。どっかおかしいって、気づけてたらなー。
(続く)
- 今は昔④ ( No.94 )
- 日時: 2011/03/19 18:58
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
ばしん!
って音がして、いとも簡単にフスマは開いたよ。うすい月明かりが部屋の中を照らしてて、視界はばっちりだったねー。それでフスマの奥に、あのバスタオルがちょこんと置いてあったんだー。
なんだか、あのときオレはすごくぼーっとしていたかもしれない。結構、あいまいだよ。
あいまいなまま、バスタオルをとろうとしてしゃがんだんだ。ごくごくふつーにバスタオル持ち上げて、気づいたんだ。
月明かりの入ってきてるおっきいガラス戸にさ、写ってるんだ。血塗れの包帯まいて、手が無かったり足が無かったり蛆がたかってたり。呻いてたりしてる、人がいっぱい。いーっぱい兵隊が、そこに寝かされてたんだ。
オレもこういう光景なら何回も見たことあるよ。戦争したらどこもみんなこうなるからね。刀とか、星のマークを入れたヘルメットとかがあちこちに転がっててさ。
ピンときたね。戦時中のオレの友だちの国はこんなかんじだったんだろうって。
今思ってもそうだけどー、なんであんな冷静だったのかな。あのときのオレは。ホント正気もなにもあったもんじゃないよ。
でも、さすがにどうもできなくて本来バスタオルを拾い上げたオレが写ってるはずのおっきいガラス戸に写った包帯人間を見てた。
不思議だね、どうなってたんだろう、あのガラス戸。包帯まみれの人間の真ん中にバスタオル抱えたオレが座り込んでるんだよ。ちょーどオレが正しいふうにガラス戸に映ったらそうなるだろうっていう姿勢でね。それでさ、まるで、うす暗い和室の中に包帯まみれの人間がいっぱい横たわってるように見えたんだ。
いや、勘違いしないで欲しいけどー、オレがいた、その和室の畳にはバスタオルしか置いてなかったよ。もちろん、そのときも人が横たわってたなんてないしね。
それでだ。急にね。黒髪のセミショートのちっちゃい女の子がね、ガラス戸に映り込んだんだ。
その子は宙に浮いてて、オレをじいーっと見てるんだ。かわいい子だったけど、真っ黒い目がもう尋常じゃなかったね。
オレのことじいーっと睨んで、あの目は本気だった。オレのことを殺そうとしてる目だった。ちいさい拳をぎゅうーっと握って、
“おまえらが”
って、怨念の籠もった声で言うんだ。馬鹿みたいだろ? 陳腐なスリラー映画さ。一週間もせずにレイトショー行きなできばえだ。
だって宙に浮いた小さいアジア人の子供と死体の真ん中の日系アメリカ人なんてあんまりに馬鹿げてるから。
(続く)
- 今は昔⑤ ( No.95 )
- 日時: 2011/03/23 17:47
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
“殺してやる”
女の子はそう言ったよ。オレをしっかり見据えてそう言ったんだ。
“おまえらのせいでわがクニが”
“おまえらのせいでみんなが”
“おまえらのせいであたしは”
“おまえらのせいでこのクニは”
“おまえらのせいであたしたちのあるじは”
“おまえらのせいで……”
オレどうしたって? 叫んだね。キャーだなんて可愛いもんじゃないよ。うぎゃあああって、感じさ。
声が出てよかったよー。たぶんあれ近所じゅうに響くような声だったんだろうなー。でも声が出なかったら死んでただろうしー。大げさなんかじゃないよー。あれ、マジでピンチだった。
女の子の瞳孔が開いた真っ黒い目を見ながら、ああ死ぬんだなって思ってしばらくもしないうちに、ばこん! ってすごい音がして周囲が急に明るくなった。
血相変えた友だちがフスマをふっ飛ばして部屋の中に走り込んできたんだ。廊下の明かりが差し込んで、あたりがオレンジ色になってさー。
和室のアリサマを見てオレの友達、ボーゼンとしてたね。あのときのあの和室には地獄が充満してたんだから。
“どうしてこんなことに”
友達が言ってもガラス戸に映り込んだ死体も、女の子も消えてくれないんだ。
友だちがオレの肩をだきかかえるようにしてさ、
「お久しぶりですね」
女の子に向かって優しく言った後、
“こんなことは、しなくていいんです”
やけにはっきりした声でそう言ったね。
“私達はもう大丈夫です。癒えない傷なんて珍しくもないんです。だから、あなたがこんなことをしなくてもいいんです”
だったっけ? そんなこと言ってたかなー。とってもカッコ良かったよ。
けど、女の子はみるみる泣きそうな顔になっていってしまいに、
“だってこいつらのせいで、このキチクらのせいであなたたちは、”
泣き出したんだ。なにがどうなってたのかよくわからないけど(オレだって泣きたかったよ!)、あの女の子はオレのこと、てか、オレみたいな外国人をすごく恨んでるみたいだった。
それでもやっぱりオレの頭はぼーっとしてたね。
そしたら急に女の子が、すごい声で叫んだんだ。部屋がびりびり震えたのは覚えてる。
“ぜったい、コロシテヤル!”
そう叫ばれて目の前が真っ白になった。意識がゆっくりうすれていくんだけど、
“あなたが手を下さずともいつか私達が”
って言う声があたり一面から聞こえたんだ。雰囲気的に、なにかがいっぱいうごめいてるみたいでさ。
友達がオレの肩におもいっきり爪をたてたところで、意識が切れた。
最後に、ぼそっとなんか呟いたみたいなんだけど聞こえなかった。
すごい怖いこといわれたような気がするんだけどね……。
(続く)
- 今は昔⑥ ( No.96 )
- 日時: 2011/03/19 19:18
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
目が覚めたらテンプレ通りにフトンの上さー。
夢だったのかななんて思うけど、枕元にあのバスタオルが置いてあるうえに、肩口に殺すつもりだったのかっていうぐらいの爪あとが残ってたんだからそうも思えないよねー。
オレの友だちは、昨日と同じく朝ごはんの用意をはじめてた。オレはよくわからないけど、すごくノドが渇いてた。
でも——なんか、もう、出て行かなきゃならないような気がして、借りてたユカタをさっさと脱いでお礼を言ってそのまま帰ったよ。
オレの友達も、引き留めなかった。ていうか、なにも言わなかったんだ。
オレの話はここまでだよ。たいして怖くもなかったかな。チープな話になっちゃったね。オレとしては怖かったんだけどなー。
……それよりも、この部屋寒くなーい? オレね、ちょっとこのあいだから肩が重くてしょうがないんだー。新型ウィルスかなあー……。
(終わり)
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