ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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怪奇拾遺集
日時: 2011/03/19 18:22
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。

**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***



前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・

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返信 ( No.32 )
日時: 2010/03/25 10:51
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: Kxa936Ty)

お返事が遅れて申し訳御座いません、樹様、闇の中の影様。

樹様>こちらこそお初にお目にかかります。よしなに。お楽しみ頂けて何よりで御座います。長い、ですよね……以後気をつけます。

闇の中の影様>ふふ……解釈は皆様の権利です。魔女はバッドエンドをイメィジして書いておりました。

書き込み有り難う御座いました。精進します。

魔女 ①(怖い話) ( No.33 )
日時: 2010/11/27 09:40
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

(語り部:春日野カスガノパトリシア)





 我が母国にも、なかなかおぞましい怪奇伝説が結構残っていてね。特にバーバヤガー……知ってるかい——は有名だ。
 彼女は大体において悪い妖婆として民話に登場する。彼女の外見? バーバヤガーはもの凄く、痩せているよ。足の骨なんて剥き出しさ。
 ……こういうのを、『業が深い』というのかな。
 バーバヤガーは人間を食べるから、そんな酷い容姿をになっているのだと、きっとみんな思っているのだろう。まあ、家の柵が、人間の骨でつくられているくらいだしね。解らなくもないが。
 対する自分達人間は、動物魚貝植物はては虫類だって食べるくせに、ね。ふふふ。

 ——ああ、すまない。話が逸れたね。
 今鶏と言ってしまったがね、バーバヤガーの家は、鶏の足の上に乗っているんだよ。家に鶏の足が生えている、と言うべきかな。とにかく、それで自由に動けるようになっているんだ。
 ちょっと想像するのは難しいかな。……本当に気持ち悪いものだよ、あれは。
 人食いは大罪だし、バーバヤガーはかなり惨い食べ方をするようだが、そんなことより、あの家さ。ああ、本当のところ、思い返すのも虫唾が走るね。
 我は、下半身だけが魚だとか、顔だけの動物だったりする生き物や、頭に角がある真っ赤な顔、蛇に髭が生えて空を飛ぶもの……そんなものは別に平気なんだがね。
 家に鶏の足が生えているのは、正直耐えられないよ。
 だって鶏の足なんて、そのままだって十分気味が悪いじゃないか。遠目にはちょこちょこ歩いて愛らしいかもしれないがね。
 変な色だし、ごつごつしているし、かと思えば枯れ枝如くぽきっと折れてしまいそうだし。
 ……そんな顔しているけどね。君達も実際あの家を目の当たりにすればきっと解かるよ。
                    (続く)

魔女② ( No.34 )
日時: 2010/11/27 09:49
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

 昔ね、わたしは狩りの途中で道に迷ってしまったことがあるんだ。
 森をさ迷っている内に、すっかり夜になってしまって……雪国の森はね、とても暗いんだよ。南の国は、暖かくて雨が沢山降るから、木が強くて緑が濃くなる。
 でも北国はそうはいかないんだ。そもそも緑自体が暗いんだよ。凄く暗い。落ちてくる葉っぱは細いのに、どうしてこんなにってくらいさ。
 昼間でも薄暗くて、気が滅入ってしまう。幸い夏だったから、そのままでも凍えるようなことにはならなかったんだろうけど。
 そんな逼迫状態だったから、窓から暖炉の火が見える、小さな番小屋を見つけた時は安心したよ。

 番小屋のおじさんは、見た目は陰気だったけど本当にいい人でね、暖炉の前の一番暖かいところを我に譲ってくれたんだよ。彼は我の後ろの方で、静かに斧を砥いでいた。
 ロシアでは客人をありったけ持て成すのが当たり前なんだが、冷え込みのきつい夜だったから、やはり嬉しかったな。
 ただ、夜中に聞く砥石の音というのは、何とも言えないね。あのシャーシャーっていう音を聞いていたら妙に眠くなって、我はその夜、すぐに眠ってしまった。

 でも夜中に、何だか凄く嫌な夢を見て、魘されたよ。
 初めは、ごそごそ動き回っている大きな蟋蟀コオロギがいた気がして、寝ぼけながら踏み潰したと思ったら、今度は世界がぐるぐる回っているような、そうかと思えばゆらゆら揺れているような、

 ぐるぐる、ゆらゆら、ごりごり、ぴちゃぴちゃ、ぱちぱち、じゅうじゅう

 ……本当に訳の解からない夢でね、長い間散散魘された挙句、目を覚ました我が最初に見たのは、充血しきった巨大な二つの目玉。
 我は慌てて寝ぼけた振りをして、もう一度目を閉じた。ほんの一瞬だったがね、嫌でも解かったよ。
 正面の壁際からこちらをじっと見つめていたのは——バーバヤガーだった。

 一回狸寝入りを決め込んでしまったから、何となく起きていることを伝えられなかった。
 でも、バーバヤガーは我の方をじっと見ながらおじさんを貪り喰らっているのが解って、ああ、彼女は我の方を食べたかったんだなと思った。
 我が悪い夢に魘されているのも、じっと見つめていたに違いない。
 絵に描いたご馳走を見ながら、石のように堅いパンと水っぽいスープを食べるように。
 ごりごりというのは骨の音、ぴちゃぴちゃというのは血を啜っている音、ぱちぱちじゅうじゅうというのは、暖炉の前の串に刺さった、腸詰ソーセージのようなものからしている。
 ならば、ぐるぐるゆらゆらはなんだ?
 ほんの少し突き詰めれば解かることだったのに、我は先延ばしにしていた。でも、そこまで考えたらもう無理だね。
 我は鶏の足の生えた家にいるんだ。バーバヤガーを中に入れるのにくるくると回転させられたに違いないこの家は、バーバヤガーと我と半分のおじさんを乗せて、鶏の足で移動している。
 あの、細くてごつごつして気味の悪いものが、今、自分を支えているんだ。

 ほら、そういうつもりでもう一度想像してみたまえ。
 鶏の足の生えた家が、自分の上をちょこちょこちょこちょこ歩き回るのだよ。そりゃァ酷いものさ。怖気が走る。
 ——ね。解かるだろう? 我も鶏肉は好きだがね、あんなもの耐えられないよ。それに気づいてしまった我は、最高に気持ちが悪かった。
 我がそんなことを考えている間、バーバヤガーが肘で……なぜだろうね、あの骨を剥き出した足だが、歩けないわけでもあるまいに。
 尖った肘をついて、じりじりと、ものすごく時間をかけて、我の方まで這って来ていた。時時床板がきしんで、耳障りな音を立てる。彼女は、本当にそのスピードのまま進んできた。
 我は鶏の足の生えた小屋で寝た振りをするだけで精一杯だったから、いっそもう飛び起きた方が楽に思えたよ。
 何でもない、忘れてしまえ——気にしまいとすればするほど、小屋がのしのしと歩いている振動が感じられた。
 どうしよう、あんな目玉の飛び出た顔をもう一度見るのは絶対避けたい。でもああ、この忌々しい家が自分を乗せて、それとも自分に乗って、

 ちょこちょこちくちくがさごそどたばた、

(ああっ、もう!)
                (続く)

魔女③ ( No.35 )
日時: 2010/11/27 09:56
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

 我が覚悟を決めて勢いよく起き上がった瞬間、二つの目玉にぶつかった。まさに目と鼻の先にバーバヤガーの顔があったんだ。
 バーバヤガーをあんなに真近でまじまじと見つめるなんて初めてだった。あとちょっと勢いがついていたら、鼻と鼻がぶつかっていたのじゃないかってくらい。
 骨をむき出した足で我の身体を跨いでしゃがみこんで、おじさんの指を、棒飴みたいにしゃぶりながら——いつからだろう。
 鶏の足の生えた小屋に苦しみつつも頑固に寝た振りを続けている我を、見下ろしていたんだ。我の骨肉の味を想像しながら。



 ……その後のことは、すまないね、実はあまり覚えてないんだ。我が次に目覚めたのは診療所のベッドの上だったのだからね。
 後で聞いたところによると、我は狩人の野営場所の近くで見つかったらしい。
 でも、鶏の足の生えた小屋で寝ている夢、我は、今でも時時見るよ。だから、バーバヤガーだけは絶対敵に回さないと決めているんだ。
 ある朝目が覚めたら、知らない森を家ごと走っていました。なんて、ごめんだ。

 ——君達もね、一回味わってみたらよくわかるよ。地面にしっかり建てられた家がどれだけありがたいか、ね。
                             (終わり)

跡地① (怖い話) ( No.36 )
日時: 2010/06/26 16:37
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

(語り部:毛利光秀モウリ・ミツヒデ





 ……あんまこーゆーの得意じゃねーんだけどよ。あ? 怖いとかそういう意味じゃねーぞ。そりゃオメーだろ、眉極太野郎。
 俺様はじっとして話すよりトラップでおどかす方が好きなんだよ。……あ? 今日はしてねーよ。集合時間ギリギリだったもんでね。まあ、話すぞ。

 これは最近の話じゃない。小学校四年生くらいの話だ。あ、ちなみに実体験な。
 小生の家族と従妹ん家族とキャンプに行った時のことだ。日は傾いてきていたがまだ空が青くて、テントを張るにはちっとばかし早い時間帯だったが、まあこーゆーのは早い者勝ちだからな。
 親父とおっさん達はテント張って、女性陣は夕飯づくり、小生はちょっとばかし暇を持て余していた。

(何しようか……)

 ちょうど小生が身体を一回転させた時、ちょうど暇潰しに良さげなものをみつけた。
 キャンプ場の端にはまーまーデカそうな森があって、小生はそこへ一人で入っていった。小僧がよくやるような探検だ。
 特に何も考えずにひたすらまっすぐ歩いていった。何か面白いモンでもねーかなときょろきょろしていたら、いつの間にかだだっ広い空き地みてーなトコに出た。
 やべ突き抜けちまったかと焦ったけど、向こうの方からこっちまで、ぐるっと木が取り囲んでいるのが見えて、そうじゃねーことはわかった。
 もっとよく見りゃ、そこはただのだだっ広い空き地じゃなくて湖だった。そよ風一つこねーし、どっかから川が流れているわけでもなさそうだった。何しろ水面は石を嵌めこんだみてーに真っ平らだったんだぜ。
 それが、耳鳴りがするほど静かな中で鏡みてーに金色を帯びた空を映しているもんだから、地面にも空があるように一瞬錯覚した。
 不気味って言やあ不気味だったぜ、今思えばな。
 でもそん時はその池の際まで歩いていたんだ。水はすっげー綺麗だった。湖の底がくっきり見えたくれーだ。
 汗だくになっていた小生はせめて顔ぐらいは洗いたくなって両手を突っ込んだんだ。飛び上がるぐれー冷たかったが、慣れればサイコーによかった。
 ふと空を見上げると、もう空は立派な夕暮れになっていて、もう戻らねーとなと思った。
 そん時、顔を伝った水が口ん中に入ったんだけど、そこでやっとはっきり変だな、って思ったんだ。
 一滴しか入ってねーのに異様に口ん中が鉄臭くなって、思わず顔をしかめた。そのままぱっと見た手に、小生は頭と目がおかしくなったのかと真剣に思ったな。
 水で濡れているだけのはずの掌が、夕焼け色した空気の中でもはっきりとわかるほどべったり赤黒くなっていたんだから。
 小生はそれを見たことがあると思った。ビル前で倒れていた兄ちゃんを揺さぶった時の手だ。
 その掌の先にある水面が小生の顔を映していたが、顔もトマト祭りにでも参加してきたみてーに真っ赤だった。
 小生がさっきまで触っちまったせいで水面がブレて、自分の顔は酷く歪んでいた。まあ当たり前だが。小生の顔から、手から、赤黒い滴が、池の水を汚すことなく落ちていった。
                                                                (続く)


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