ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 怪奇拾遺集
- 日時: 2011/03/19 18:22
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。
**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***
前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・
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- 手鏡④(怖い話) ( No.87 )
- 日時: 2010/08/28 11:08
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
それから二年経ちました。豪は魔麟学園を入学し、その八年後魔麟学院に進学しました。
そこで青木という字を承り、出会ったバイト仲間の土屋倉統(字は竜胆)と帰宅途中、彼の趣味に付き合い、骨董市に向かいました。
「あっ、そんな……!」
「どうした?」
一つの露店の前で叫んだ豪に、隣の統が訝しそうに振り向きます。
——彼の視線の先、ポツリと置かれていたのは、伯父と共に散ったはずの手鏡……。
(終わり)
- 開幕① ( No.88 )
- 日時: 2011/01/08 14:28
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(式辞:エリザベート・L・バーネット)
ご機嫌よう諸君。本日は怪談大会へお集まり頂き、心より感謝するぞ。
座布団がない奴はおらぬか? 全席に蝋燭とマッチは用意されておるか?
壁の染みや天井の木目が不気味だと? ふふ、これはこれで趣きというものがあるだろう。特に今回のような集まりにとしては、な。
ああ、此処は我が一族の別荘ではない。祖母の知人にお借りしたものだ。元来この離れは、普段は住居スペースとしては使っていない部屋らしいがな。
妾とて、もし何か起きた時、このような場所が住居スペースなど御免被るわ。
まあ、不埒者や迷子に使わせてやるのはいいかもしれぬ。
……ほれ、冗談じゃ若干数名達。そう悲痛な顔をするでない。
(続く)
- 開幕② ( No.89 )
- 日時: 2010/09/17 14:16
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
——さて皆の衆、突然だが夏はどんな季節だと思う?
例えば春は芽生えの季節。出会いと別れの季節と称されるように、変化の季節だ。花々の蕾は開き、草木は萌え、動物たちは恋に落ちる。要するに瑞々しい季節である。
秋はどうだ。葉っぱは色づき、または色あせて地面に降り積もる。澄み渡った空の下、植物たちがずっしりとした果実を生み出す豊穣の季節でもあるな。爽やかな実りの季節だろう。
では冬は? 冬は沈黙の季節。木枯らしが吹く中、あるものは雪の下で、またあるものは北風の中を、春を待ち望んでじっと息を殺している。しかし雪の下で育った野菜が甘いように、いずれは報われる筈の忍耐の季節である。
それでは、夏はどんな季節だろう?
我が祖国はかなりじめじめしているとよう言われるな。夕立という言葉が生まれるほど、急な雨が多いのが特徴でもある。そして勿論、とても暑いしな。
そして、夏になると怪談を多く語られるようになることも。
最近は少し減っているようだが、一時期テレビでは毎日怪談特集が流れていたな。
なら、夏に怪談が多いのはどうしてだと思う。人々が涼しさを求めて話をするから?
まあ、それもあるだろう。しかし、私の意見としては、それだけではないと思う。
四季を人間の生に例えてみようかの。
春に生まれて夏に育ち、秋に成熟して冬に終わりを迎える。すると夏は幼年期から青年期となる。ある意味一番美しくて、一番不安定な時期でもある。「生々しい」という言い方も出来るのだ。
そう、生々しいのだよ。夏という季節は。暑くてじめじめしていて、そして、とても生々しい季節だな。
生々しい季節に怪談など似合わない? そう思うか。
確かに幽霊というのは「生」の反対に位置する、いわば「死」に一番近い存在だろう。しかしどうだろか。
「死んだ」はずなのにそこに「居る」幽霊など、ある意味、生きている人間よりも「生々し」くないか?
(続く)
- 開幕③ ( No.90 )
- 日時: 2011/02/16 11:20
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
……あまり長々と妾が喋っていても仕方がない。さっさと始めなければ朝になってしまう。
それではこの「生々しい」夏の夜に行う百物語というものについて、僭越ながら妾から少し説明を致そう。
質問ばかりで申し訳ないが、皆は百物語という遊びを行ったことがあるか? 妾か? ああ、あるぞ。
余談だがその昔、江戸では大分流行ったらしいな。ふざけてやるべき儀式ではないと思うが、やはりいつの時代の人間も、そのようなことは嫌いではないんだな。その時に何かが起きたか?
ふむ……それは言わないでおこう。百物語を楽しんだのは、武士階級の方が多いようだ。それなのに誰それがおののいた話などをしたら、その方の霊が出てきてしまうかも知れないからな。
……おや、そこ、顔が真っ青だが大丈夫か?
ああ、気になるなら「稲生物怪録」という書物が残されているから、其方を読むがいい。百物語をしたことによって起きた怪異を綴った文書だ。
正しい作法やら何やらも色々あるのだが、今回はあまりそれには拘らないことにする。現代ではなかなか、用意するのも大変なのでな。
皆のもの、お手元の蝋燭を見よ。まだ火はついていないな? それに、これから火をつけて頂きたい。
元来の百物語では、蝋燭は使わん。大体百本の蝋燭に火をつけたら、暑くて怪談どころではなくなってしまうからな。この部屋は広いのである程度は平気だがな。
元々は灯心に火をつけ、それを行灯の中に入れておくものなのだ。また、青という色もよく使われた。行灯は青い紙を貼ったものだし、参加者も青い着物を着てくることが求められていた。
……ああ、だから今日、妾は青い着物を着てきたのだ。皆まで強要するのはどうかと思ったので言わなかったがの、妾くらいは古の作法に則ってみようと思っただけのこと。
そうそう、先程稲積に突っ込まれたのだが合わせが反対なのは、何も間違えたわけではないぞ。いくら私がやや日本伝統に疎いからといって間違えるものか……合わせが反対なのも、作法の一種じゃ。
逆袷の着物は死人のもの……これそこ、そんな顔をしなくても妾は生きておるから安心せい。
蝋燭の話に戻るぞ。
皆にはこの蝋燭に各自火をつけて貰い、それからこの部屋の電気を消す。そして、己が話をしている時、誰かの話を聞いている時には、火を灯したままにしておいてくれ。蝋燭の炎を消すのは自分の話が終わった時だ。
此方に紙とボールペンがあるから、話が終わる毎に此処に正の字を書くのを忘れるな。外国ではそのようにして五ずつの塊を作るのだがな。蝋燭を吹き消す前に線を一本足し、それから蝋燭を消してくれ。
これでその人間の番は仕舞いとなる。次の人に紙を回し、次の人が話し始めたら自分の蝋燭に再び火をつけよ。
今宵話して貰うのは、勿論怪談だ。妾は「怪談」というものは、何もホラー映画のような恐怖譚だけでは無いと思っている。
「怪」という漢字は「あやかし」と読むが、それには「不思議な事」という意味がある。つまり、日常から少し離れた不思議な出来事は、全て「怪談」という区切りで括ってしまっても良いと思うのだ。
人によって色々な考え方があるからな。何も妖怪や幽霊が出てくる話に拘る必要はないと先に言っておこう。ああ、勿論、身の毛がよだつような恐ろしい話も構わんぞ。
そして、最も重要なことは……必ず九十九話で止めること。百物語なのに、どうして九十九話で止めてしまうのか? ……そうだな。
「昏夜に鬼を語ることなかれ。鬼を語れば怪至る」
……この言葉を聞いたことのある方はおられるか? おお、意外とおるな。
誰から聞いた柏木? 白い服を着た女? おやおや、それははたして人間か?
これは「伽婢子」という本の一節だ。面白い本だぞ。先程述べた、百物語の作法なども載っているから其方をな。それで、先程の一節だが……「鬼」というのは「幽鬼」、つまり何か怖いもののことだな。
百物語をすると、百話目が話し終わった時に、何か恐ろしい怪異が起きるというのがお約束なのは知っているな。「必ず怪しき事怖しき事」がある故、九十九話で仕舞いにするのだ。
おやそこ、凄い勢いで震えているが大丈夫か?
まあ……初めに話しておかなければならないことはこのくらいだな。何か質問は?
話す順番? そうだな。座る時には適当に座って貰ったが……では私の左側の奴から話して貰うことにしよう。そこから反時計回りに。
もし手持ちの話が無かったり無くなってしまった場合は、話さずに隣に回しても構わん。無理に考えようとしても、無理だしな。そうやってどんどん回していけば、話せる人に回るだろう。
沙穂なぞ、山ほどお話をお持ちなのではないか? 楽しみにしておるぞ。
それではそろそろ始めようか。ああ、真ん中にあるお菓子は自由に摘んでくれ。アルコール類はあえて用意しなかったが、各種飲み物を揃えたぞ。
何だ小山? 炭酸? 言うと思ったわ。ちゃんと用意してある。感謝しろ。
ああ、そういえばアンナ、今日は小豆と抹茶のマッフィンがあるのだが、食べてみてくれ。姪の手作りなのだが、感想を聞かせてくれと言われたのでな。
どうした……ほう、乙女も色々と持ってきてくれたのか? 感謝するぞ!
ん、倫もか? 土屋倉まで! 皆準備が良いな。
では食べやすいように真ん中に並べておいてくれ。但し宴会ではないのだから程程しておけ。
そうそう、トイレはこの部屋を出て右だ。廊下をまっすぐ行き、突き当たりにある。男女兼用で一つしかないから限界まで我慢するのは止めておくがいい。
廊下は音鳴りが酷いのだが、まあ雰囲気があって良いだろう。途中にある姿見はもしかしたら罅が入っているかも知れないが、気にするな。
トイレの照明も薄暗くてな、もし何かが映り込んだら……まあそれは本人に任せるが。
……おや、怖がらせてしまったようだのう。お花を積みに行く時には誰かに付いてきて貰え。
では皆の集、そろそろ手持ちの蝋燭に火をつけよ。一応長持ちするものを選んだが、もし蝋燭が燃え尽きてしまったら言ってくれ。
つけたか? 電気を消すぞ。
……さあ、諸君。今宵、世にも恐ろしきお喋りを始めようではないか。
(終わり)
- 今は昔① ( No.91 )
- 日時: 2011/03/19 18:03
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(語り部:大和慶次(やまと・けいじ))
涼しくなるかどうかわからないけどー、ひとつ、話させてもらうことにするね。
真夏の真っ只中の日だったんじゃないかなー。
事情で名前は伏せさせてもらうけどー、オレの友人の一人に、すっごい純和風の家に住んでる友達がいるんだ。その家は現代の家とは思えないくらいレトロでー、なんとクーラーがついていないんだよ! 辛うじて扇風機がおいてあるくらいで。お世辞にも涼しくはなかったけど居心地が良いもんだからねー、よくお邪魔してるよ。
友達はー、オレと違ってアジア人なんだから当たり前に黒目黒髪なんだけどさーその子もほんと髪の目も真っ黒。でも肌はあんまり黄色くなくてー、よーするにすっごい綺麗な子なんだよねー。モノシズカだしーなんだかんだいってオレの言うことをきいてくれるしー、ちょっと言い方きついけど、いい子なんだ。
友達の家にお邪魔したときもいきなり行ったんだけど、嫌な顔ひとつせずに迎えてくれてなんだか申し訳なかったなー。
そうそう、彼女がごちそうしてくれたヒヤムギは美味しかったよ。味が薄いからって、オレがドレッシングをかけようとしたらすっごい怒られたなー。
彼女ったら口元だけ笑いながら言うんだよ。
“そんなものかけちゃ折角のフーミが薄れるでしょう”
だってさ。笑っちゃうねー。いつもはすごく大人しいのに食べもののことになると顔色が変わるからねー。
この子実は年サバ読んでんじゃないかってたまーに疑っちゃ……あはは、ごめんてば、名前は伏せてるんだからそんなに睨まないでよー。
……まぁいいや。それでねー、友達の家は、ほんと、結構じめじめしててね、オレが通された居間は明るくてきれいだったけど、奥の間ってあるだろ? あそこがねー、どうも、くさいんだ。いや、臭いじゃなくてね。
暗くてじめじめしてて、静かで、だーれもいない。イギリスとかージャパンのホラームービーで決まって
幽霊が出てくる場所だね。不気味だったよー。ほんと日の当たらない場所なんだ。
……それからどうしたって? どうもしなかったよー。その日はね。いくらオレだって転がり込んだ
当日にヒトサマの家を冒険したりなんかしないってー。
そのあと? 夕ご飯をごちそうしてもらってお風呂を借りて寝たよー。蒸し暑いかと思ったけどそうでもなかったな。
扇風機は意外と快適だったし蚊帳はエキゾチックで良かったよー。まだあちこち痒いけどね。
まーそれで、なにもなかったね。怖いぐらいに。
(続く)
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