ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 怪奇拾遺集
- 日時: 2011/03/19 18:22
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。
**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***
前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・
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- ついてくる① (怖い話) ( No.122 )
- 日時: 2011/02/21 18:33
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(語り部:羽柴貫兵衛)
短いけど我慢してくれ。あんまりこういうのは得意じゃないんだ。
突然だけど、『這う』ってさ、怖い単語だと思わないか?
なんていうかなあ、……すごい変だしぶっちゃけきしょいし、俺にとってはやな言葉に思えてしょうがないんだ。
生き物が普通行わない行動だからかな? それとも、ヘビとかナメクジあたりのおかしな生き物を想像させるからか……とにかく、『這う』って怖いよなあ。
それなのに、『這うもの』なんてよくわからない生き物の出没場所、お前が住んでる辺りなんだぞなんて話を言われたら……怖くてどうしようもなくなると思わないか?
(続く)
- ついてくる② ( No.123 )
- 日時: 2011/02/23 17:11
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
『這うもの』が出るって聞いたのは、兄さんからだった。噂好きな友 達から仕入れてきたんだそうだ。
それは夜、人通りの少ない細い路地などに出るらしい。
目撃証言は、『這っている』以外は統一性がないようだ。
動物に似てた人間っぽかった、白かった青かった、かさかさしてたつるっとしてた、目がいっぱい付いてた、背中にトゲが生えてた、『這っている』のに怖ろしい速さだった……。まあ、よくある都市伝説に過ぎないと思ったな、聞いた時には。
けど、身をもってその噂を体験してしまったのは、噂を知ってからちょうど一ヶ月後だった。
それは学校主催のボランティアに参加した帰り道。話好きで有名な町内会の爺さんに引き止められて、空の半分以上藍色に染まるまで捕まっていた。その日は従兄弟の藤次郎が来ることになってたから、さっさと帰りたかったんだけどね……。
やっと解放された時には、すでに約束の時間になってた。きっと藤次郎はもう家に来てるだろう。
鍵は渡してあるから問題ないとして、あまり遅くなると家のマッコリ(米を主原料とするアルコール発酵飲料で、朝鮮半島伝統酒の一種……うぃきから引用☆)が勝手に飲み干されてしまう!
だから急いで帰ろうと、普段通らないような細い路地を通ったんだ。まあ、それが間違いだったんだけど……。
頬を撫でる緩めの風が気持ち悪い、生ぬるい夜だった。人っ子一人いない路地を通るのは、やっぱり成長しても気味悪いよな。だから結構早足で歩いてたんだけど、ふとしたはずみで、気づいちゃったんだ。
俺の足音以外の音がすることに! コツコツという足音に、さあーさあーって、地面をこすりながら何かが動いてるような音が交じってるんだよ。
最初はゴミか何かが風に飛ばされでもしてんのかと思った。けど、だんだんそれは確かな生命力を持って動いているように聞こえてきたんだ。
俺はドキッとしたと同時に、ハッとした。最初に話した、噂を思い出したんだ。夜、人通りの少ない細い路地などに出る『這うもの』……これのことじゃないのか、ってな。
俺は振り返らず走り出した。すると音は速度を増してついてきた。とにかく路地を出ればよいかと思って大通りに出たけど、構わずついてきた。
俺はもうとにかく走って、また別の路地に逃げ込んで止まった。隠れて相手をやりすごし、相手がどこかへ行ってしまったら、また逃げようと思ったんだよ。俺はどきどきと跳ね回る心臓を押さえ、息を潜めた。
『這うもの』はやっぱり俺を追いかけてきたようだった。俺がポストの影に隠れてると、そいつがゆっくりと姿を現した。
それは全身真っ白で、……なんて言ったら説明したらいいのかな? 人間にちょっと似た、生き物だった。這ってたけどね。そして、頭部らしきところにはびっちりと、たくさんの目が瞬きしていた。それが月明かりや街灯に照らされ、青や緑にきらきらと光ってた。
這うものは俺の願い通り、細い道を素通りしてどこかへ行ってしまった。俺はその隙に道から出て、また走って家に帰った。
家では藤次郎がやっぱりマッコリ勝手に飲んでたけど。彼の顔見て、すっごい安心できたのは初めてだったな……。けど、この話はこれで終わらなかったんだよ。
(続く)
- ついてくる③ ( No.124 )
- 日時: 2011/02/27 13:46
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
それからというものの、夜になると這うものに追われるようになった。だから夜に外出できなくなった。昼にまで、姿は見えないけど音が聞こえるようになった。
俺はすっかり参ってしまって、親戚の姐さんに相談したんだよ。そしたら次の日からいなくなった。
お、やった解放された! なーんて思ったけど、次の日姐さんに胸倉つかまれてすんごい怒られた。
「ついてきたじゃないか!」
って。どうやら話を聞くとつくみたいでね……。しょうがないから、また俺が引き受けたんだけど……もし複数の人にいっぺんに話したらどうなるんだろ。
ん、もしこの中の誰かについちゃったらごめんね。勘弁して、俺もう堪えられないんだよ。
もしついてきたら……その時はまた別の奴に話してね。
(続く)
- 入りこもうとする・・・① (怖い話) ( No.125 )
- 日時: 2011/03/11 13:59
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(語り部:美作アンナ)
一昨年の秋のことだったな。その時は仕事があんまり忙しくって、家に帰る暇がなかったから、一年更新のマンションを仕事場の近くに借りたんだ。
正直わたしは職場から近ければどこでも良かったんだけどね。弟が最近どこも物騒なんですから危険があっては〜! とか騒いで色んな不動産回ってくれて、それでそこのパンフレットを持ってきてくれたの。
四階建ての、わりと可愛いマンションだった。鍵はオートロック。ちょうど最上階の角部屋が空いてて、管理人さんは在中じゃなかったけどすぐ隣に住んでたから、
「絶対にここにしなさい!」
身内がもう煩くって。あぁでももちろん、二つ返事でオッケーしたよ。何しろ仕事場まで自転車で十五分足らずで着いて、さらに最寄り駅からも近くてね。その上犬猫のペット可だったから。
隣に住んでる大学生の子もすごくいい子でね、ベランダ越しによくお喋りしたよ。管理人さんも……あ、おばあちゃんなんだけど……これまたすごく気さくな人で、困ったら何でも言いなさいねって、言ってくれて。
本当に、何の不満も無いマンションだった。……夜に、妙なことさえ起こらなければ。
わたし、言ったよね? オートロックだ、って。
当然なんだけど、内側から誰かが開けたりとかカードキーを持ってたりとかしないかぎり、誰も中には入れないわけだよね。だから絶対に勧誘なんかは入って来れないはずなんだけど……。
たまにね、夜中、帰ってきてのんびりしてると、十一時……十二時前くらいかな? ピンポンピンポンって無遠慮にチャイム鳴らして、その後ガンガンってドアを叩く人がいるんだよ。
最初はびっくりしたけど、もしかすると誰かについて入ってきてるのかな、とか……ご近所さんが酔っ払って部屋を間違えちゃってるのかなって思って、黙って静かにしてたの。
だって、あんまり騒がしくしちゃうとまた身内が心配するし……それに、やっとこの生活にも馴染んできてたから、変に問題を起こして引っ越ししなくちゃいけないのが嫌だったし。
だから、ほんとに息を潜めて、隠れんぼしてるみたいに静かにね。
(続く)
- 入りこもうとする・・・② ( No.126 )
- 日時: 2011/03/11 14:04
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
……いつだったかなぁ。そこに入って、たぶん半年くらいは経ってたと思う。その変な夜のノックの音にも慣れて、来たら息を殺すって生活を続けてた時。
その日もね、いつも通りきたんだよ。そのガンガンって音が。まぁその時にはもう慣れたものなんで、あぁまたかって思って息を潜めてた。
五分くらい我慢してれば諦めて帰ってくれるのがもうわかってたし。
でも、その日は結構長かったよ。十分くらいかな? 結構長いことガンガンしてた。今日はしつこいんだな、って、ちょっとイラッときた。でも怒鳴って下手に刺激するのも……で、やっと止まったと思ってホッとして玄関の方を振り返ったらね。
……考えられる? 新聞受けから、にょきって手が出てきたんだよ。
つまり、外から腕を突っ込んでるってことなんだけどね。うにょうにょって動き回るその腕、妙に長かったの。どれだけ背が高いんですか!? ってくらいに。
わたしが思わず固まって凝視してると、その腕、ドアのチェーンに一瞬だけ触ったの。ほんとに一瞬だったんだけど、
(あ、やばい)
ってまず思った。だって、本当に留守なら内側からチェーンロックがかけられるわけ無いでしょ?
その部屋はね、廊下のドアを開けっぱなしにしておくと玄関から部屋が丸見えになっちゃう構造になってて、その日はどうしてかドアを開けっぱなしにしておいたんだよね。
わたしは慌てて眠ってるペットのココマルと携帯を抱えて、唯一死角になるドアの陰に避難した。どうしてかって? うーん……たぶん反射的に、だと思う。あ、もし万が一新聞受けから中を覗かれたら、丸見えだったから、かな?
……その瞬間、だった。さっきより激しく、その長い腕の持ち主がドアを叩きはじめたの。
そりゃあもう、破られちゃうんじゃないかってドキッとしたくらい、ガンガン、ガンガンって。
「いるんだろいるんだろいるんだろいるんだろいるんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
って、男の人なのか女の人なのか良く分からない、でも何か気持ちの悪い声で大絶叫しながら、延延と、ガンガンガンガンガンガンガンガン!! って。
あんまりにも怖くって、携帯から管理人さんに助けてください! って、メールを打ったの。
(続く)
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