ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

怪奇拾遺集
日時: 2011/03/19 18:22
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。

**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***



前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30



振り返ったら・・・ (怖い話) ( No.62 )
日時: 2010/10/25 22:30
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

(語り部:伊賀崎美羽イガサキ・ミワ





 あたしがこれから話すのは、この前夕方に体験したことだよ。

 あたしは見事な夕焼けに染まった道を、一人で歩いていたの。なんの用事の帰りかは忘れちゃったんだけど、とにかく家に帰る途中だったわ。
 不思議なことに、今思うとあたし以外には前を歩いている女の人が以外、動物一匹さえも道に出ていなかったのよね。
 人通りが少ない道ではないはずだったんだけど、まあ時間帯が時間帯だし、たまたまかと思って気にせず歩いていたわ。
 しばらく歩いているとあたしの方が歩くのが速かったのか、その女の人を追い越したの。けれど抜かした瞬間、なぜか違和感を感じた気がした。
 髪の長い女の人で、身体が血に染まっているとか歩き方がおかしいとか、別にそんなことはなかったと思うんだけど、なんだろね。どうしても気になって、立ち止まらないままふと振り向いてみたんだ。

 そうしたら、女の人は後ろを向いて歩いていたんだよ。
 ……ううん違う、後ろを向いていたというか……顔だけが……後ろ姿と全く同じだったんだ。

 ぞっとしたよ。前髪がすごく長いから顔が隠れているとか、そんなんじゃない。あれは絶対に後ろ姿だよ。
 白い手の甲、赤いマニキュアで塗られた爪、サンダルを履いた足の先……ここまで言ったらわかるでしょう?
 その女の人、全面、後ろ姿だったんだ。

 それで?
 もちろん気づかなかったふりして、すぐに走って逃げたよ。
 夕方って、そういうものが出やすいとは聞くからね。ほら、夜になる一瞬の時だから……ヒトとアヤカシが交じるんだよ。

 話を聞いただけじゃ、そんなに怖くないかもね。
 人じゃないから、ってだけで怖がったりするのはなんか失礼かもしれないけどね……あたしはもう二度と『彼女』と鉢合わせたくはないねえ……。
                            (終わり)

魔境 ( No.63 )
日時: 2011/02/14 11:28
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

(語り部:柴田継しばた・けい





「あれは、私が夏に実際体験した話だ……」

 私は目を閉じて、その景色を鮮明に思いだし、語りに入った。



 夏休みに故郷に帰省した時の話だ。あれは、蒸し風呂のように暑い日の夜だった。ちょうど今日のような。
 夏祭りが近付いていた日でもあったな。遠くから祭り囃子の音が聞こえてきて……そう、ちょうど今のように。

 昔、私の家には、姿映しの鏡があってな。等身大の、服屋に置いてあるくらいのものだ。
 いつからあったのかは正直覚えていない。ただ、壁にはりつけるようにしておいてあった。その鏡はネジで取り付けるでもなく、壁に嵌め込んでいるというわけでもないのに、どんなに大きな地震が来ても一度も倒れなかったのが、よく印象に残っている。

 ある夜……私ははっと目が覚めた。トイレというわけでもなく、通年通りの寝苦しい暑さの所為だ。太鼓の音や提灯の明かりが妙に遠く感じて、あまり遅い時間帯ではないことを知った。
 なんとなく喉が渇いて、布団からでて、台所に向かった。台所に行くまでの廊下の突き当たりにその鏡があってな。いつもその鏡が不気味だったんだ。
 夜だし、水だけということで電気もつけていないし、薄暗い中で鏡の反射だけがボヤッと私を映し出しているんだ。お化けの正体見たりなんとやらとは言うが、それでも怖くて仕方がなかった。
 足早に台所まで歩いて行き、水道水をコップに入れて、一気に飲み干した。日本だからできることだな。
 一気に水を飲んだらいろいろと吹っ切れて、怖さが飛んで行ってしまったような気がした。
 もう一度、ゆっくり水を飲み干して、落ち着きを取り戻した私は電気をつけて台所を出た。
 明るくなった廊下はあまり怖くなくて、鏡は背後だし、私は安心して廊下を歩いていた。
 その時……ズリッ……ズリッ……背後から何かを引きずるような音がして、バターンッッ!
 倒れたこともない鏡が倒れる音がした。
 私は反射的に振り向いた。……さて、そこで問題だ、何があったと思う……?

「鏡から、人が出てきた? そうだ、ジュリア、ピタリだな。そう、人、いや人間の形をした何かとでも言おうか。あれは——」

 その鏡から出てきたのは、格好以外は、私のコピー人間そのものだった。
 ひきずった音というのも、刀袋を引きづっていて……深緑の軍服に身を包み、頬に付着している赤をふきもせず、日本刀を狂気の瞳でベロリとなめ上げ、
倒れた鏡を踏みつけて私の方に向かってくる……そいつは確かに、私と同じ顔をしていた。
 否、私自身だった。ゆっくり、ゆっくり、口元に笑みを携えて、むき出しの刀を引きずって、私の方に、ゆっくりと、確実に。
 逃げたかった、逃げないといけないと思った、しかし足は動かない。全身、凍りついたみたいに。
 『私』は私にむかってきて、刀を振り上げて、馬鹿め。そう吐き捨てて笑い出したんだ。

 はは、は、はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、ハ、ハハ、ハハハハ、ハハ、ハハ、ハハハ、ハハ、ハハハハハハ、ハハ、ハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

 ……そうして私の右肩を切りつけて、驚くほど簡単に消えた。
 私もそこで金縛りが解け、気を失って、倒れるようにして廊下に伏せこんだ。
 もう、太鼓の音も聞こえないし提灯の明かりもなにも、見えなかった。



 鳥の鳴く声がして、はっと目が覚めると私は布団の中で寝ていた。
 一瞬、夢かと思ったんだが、すぐ右肩に鋭い痛みを感じて、見るとパックリ見事に切れていて……布団にもベットリと紅いものがついていたよ。
 肩の痛みを堪えて廊下に出ると、鏡はいつもの所にきちんと壁にかかっていた。しかし、鏡に映る自分は自分ではなかったよ。
 鏡の下には赤にまみれた日本刀が落ちていた。



「それ以来、その鏡を見るたびに戦争時代の私が私に話しかけてくる。迂闊に近づけば手が私の喉に伸びてきて締め上げられる。怖いぞ、しかも私以外には認知出来ないのだ。なので、親に我が儘を言って鏡を取り外してもらって、……ちょうど山吹やまぶきさんの座っていらっしゃる後ろあたりかな、そこにしまいこんでもらった」
「ぎゃ〜!? ウソマジ!? オーミオーミオーミ場所変わって〜!」
「うるせぇ! 耳元でがなんな!」
「大丈夫ですよ、奥の奥の方ですから」

 ……正直に言うと、どこにしまったかはあまり覚えてないんだが……とは言わないでおこうか。私は空気が読めるから。

「——これで、私の話は終わりだ。……ああ、あともうひとつこの鏡には不思議なことがある。ジュリアや不知火しらぬい東山ひがしやまさんなど、よくうちに来られる方はよくわかっていると思うのだが……」

 チラリとそちらをみる。
 ジュリアも東山さんもあの不知火さえも顔を青くして、絶句している。

「その鏡はな。なぜだかはわからないんだが、祭の時期や、夏が近付いてくる時期、季節の変わり目や新月の日にな、どこの屋内の壁にふっとあらわれるんだ……私が出すわけがないし、ましてやわざわざそんな日だけに出す律儀な人間なんて、うちにはいない……まあ、もし見かけたら、そっとしておくのがお奨めするぞ、私のようなめに会いたくなければ……」

 どこかから、太鼓の音が聞こえた。

Re: 怪奇拾遺集 ( No.64 )
日時: 2010/04/25 20:05
名前: 闇の中の影 ◆xr/5N93ZIY (ID: YDf5ZSPn)

うはっ。鏡怖い!!
ん?鏡と言えば……そうだ!
ありがとう!忘れていたネタを思い出した!

返信 ( No.65 )
日時: 2010/04/29 18:50
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: Kxa936Ty)

ご無沙汰しております、闇の中の影様。
私も魔女ですので、時に闇落ち致します。
鏡も怖いです、お風呂場にあるのが特に……(笑)
観覧有難う御座いました。

効果覿面の薬 ( No.66 )
日時: 2011/02/06 18:41
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

(語り部:朝野光梨アサノ・ヒカリ





 耳かっぽじって聞きなさいよね。



「むかーし昔、あるところにいた女の話をしてあげる。……その女はとんでもなく自意識過剰な人物で、『自分が世界で一番美しく、そして一番偉い』と思いこんでいたのよ。(え、目の前の誰かさんみたいですって? ……ふん、後で覚えてなさいよ)確かにその女はそう自惚れるくらいの美人で、財力もあり、とても頭の切れる女だった。その上国の王やお偉い方とも仲良くしていて……まあ世界に敵なしと言ったような状況だったのだけど。でもある時気づいた。自分に対して唯一、敵わない敵に……それは“老いること"よ」

 ここで一旦言葉を切ってみるか。
 ざっと周りを見渡せば、はてな。案の定、そんな雰囲気になっている。
 今まで立て続けに“怖い”話を聞いてたもんだから、鼻が鈍くなっているのね。
 あたしの話がどうすれば怖くなるのかわからないみたい。……さて続けるか。

「それで彼女は考えた……どうすれば永遠に今の姿のままを保っていられるのか、ってね。……そして彼女はとうとう妙案を思いついた……」

 ごくり——息をのむ音がきこえた。

「……薬、よ」

 途端につまらなそうな、がっかりしたような空気が流れる。
 ったく、怖い話ってのは最後まで聞いてナンボでしょうが。

「もちろん、普通の薬なんかじゃァないわよ? 原料は……“人の血液”。それも一人二人の血じゃァ足りない。彼女は山に籠もり、麓の若い娘を攫っては生きたまま皮を剥ぎ、その生き血を搾り取って秘薬を作った。……何よ、その作り方? 詳しいことは解ってないわ。第一、誰もそんなの知りたくはないだろうし? あと、殺された人数もわかってないの。行方不明者もとい被害者があまりにも多すぎてね、警察はおよそ666体(らしき遺体の残骸)見つけたところでサジを投げたらしいから。……ただわかってるのは、彼女が生まれたと確認できた年から四〇〇年がたっていたこと、『大量殺人犯』として捕まった時も、二十代そこそこにしか見えない容貌をしていたこと、そしてその“秘薬”飲めなくなってから三日後にはこの世のイキモノとは思えない顔になり、老衰で死んでいたことだけ。彼女、一体何人の血を定期的に飲んでたんだか……」

 ふふふと小さく笑い、あたしは話を終らせた。
 また周りを見回すと、血の気が引いた顔になってるヤツがちらほら見える。

 次に誰かがいちゃもんつけてきたら、試しに言ってみようかしらァ、

「薬にするわよ」

 ってね。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30



この掲示板は過去ログ化されています。