ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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怪奇拾遺集
日時: 2011/03/19 18:22
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。

**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***



前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・

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とっておきの話③ ( No.132 )
日時: 2011/03/31 11:47
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)

 ふぃー、……さて、わたしの怖いお話はこれでおしまいですよ。怖かったですか?
 ……あれ? どうしたんですか。メイファちゃんだけじゃなくて皆さん顔色が悪いです……わたしのお話そんなに怖かったですか? うふふー、皆さん結構肝がリトルサイズなんですねー!
 ……え? わたしを起こしてくれたお姉さんのことを聞きたい……ですか?
 ……な、なんですかヨイチさん! 目、目つきが怖いですよ!
 もー皆さん揃いも揃って、とんだシャイズさんですねー! そんなの本人にじかに聞いた方が早いじゃないですか! ……そのお姉さんはどこに知ってるのかって? イヤですねーなにを言ってるんですか!
 今、ヨイチさんの背中に抱きついていらっしゃるじゃないですか。
                                  (終わり)

待っていたそいつ ① (不思議な話) ( No.133 )
日時: 2011/04/06 17:35
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)

(語り部:神風月光かみかぜ・げっこう





 しみったれたホテルだった。ほんと、泊まること以外に何の用事もつくれないような。
 ウィル、君は覚えているか? 秋冬しゅうとう街の端っこに建っていた、鉄筋コンクリート五階建てのアレだよ。一階が理容店、通りの真向かいにコンビニがあっただろ?
 僕は前に仕事で国際空港に行くために、そこへ一泊することになったんだ。理由は……説明が面倒から省略。
 スペース的が無理だったのか知らないけど、そのホテル、エレベーターが付いてなくて、必死になって四階まで階段上がる羽目になったぞ。くそ重いトランク引きずってな!
 階段部屋はどっからどう見ても非常階段だった。踊場のところに長方形の階数表示があるんだ、右は下三角と①、左は上三角と②って具合にね。
 音は何でもわんわん響くせいだからだろうけど、金属製の扉が結構重くて、開けるのに苦労した——廊下が狭いのに、何で外開きにしたんだか!

 次の日はかなり早く目が覚めた。え? ……ベッドが妙に固かったんだよ……あのな、贅沢とかそんなレベルじゃ無かったんだ! ……僕は朝飯を買いに、一人で通りの向かいのコンビニに行った。おにぎりとお茶を買ってホテルに戻って、うんざりしながら階段部屋に入った。
 普通に考えてみろ、朝っぱらから何が楽しくて四階まで階段上がんないといけないんだ、どこぞの体力バカじゃあるまいし。
 ちんたら階段を上がっていたんだけど、何気なく階数表示を見たら……なぜか、数字が消えてなくなっていたんだ。上三角と下三角だけで、自分が今何階にすぐ居るのかわからなくなった。
 それだけじゃないよ、フロアに通じる扉も無くなっていた。入り口も出口も無い階段部屋に閉じこめられちまった、ってわけ。
 かといってじっとしているのも嫌だったから、とりあえず僕は上へ上へ昇っていくことにした。下へ行く気にはならなかった。
 上には何かあって、それが凄く気になったんだ。——小説的な表現だが、まるで呼ばれているような。
 それでまたちんたら階段を上がっていきながら気付いたんだけど、何でかねえ、疲れないんだ。足だけじゃなく身体全部が軽いって感じかな。最終的には一段飛ばしですいすい階段を昇れるようになった。
 いつの間にか昇ること以外は考えずに無心で昇っていたから、急に大量の物が置いてあったのにはぎょっとした。
 一番手前にはやり掛けの刺繍一式が転がっていた。踊場から階段を見上げると、昇れる最低限のスペースを残して、ほんと、色んな物がごろごろ散乱していたんだ。
 僕は拾わないものの、また階段を上がりながら一つ一つ確認していった。
 何だったかわかるか?
                                     (続く)

待っていたそいつ ② ( No.134 )
日時: 2011/04/10 09:56
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)

 ひび割れたランプ。万年筆、底にごっそり穴が開いた笊、へこんだ麦藁帽子、汚れた日本手拭……全部日用雑貨品だった。
 まだ使えそうなもの、もう直しようもなさそうなもの、古すぎてもう一般の家にはなさそうなもの、まだ田舎の家にいけばありそうなもの。
 階段を昇るにつれ、年代が古くなっていった。もう古いなら何でも良いって感じだった。昇っていく内に、何も落ちていない所もあった。今までと違って、前と同じように、殺風景な階段が続いていた。
 この時ちらっと足が重くなった気がして、本能的に昇りたくないって思ったんだけど……結局足は無視してまた昇って踊場について、さっき同じように階段を見上げると、今度は階段全部を使うように重たい布が広げてあった。
 そこで階段は終わりで。最上階についたけど、何だ来なけりゃ良かったって思って、また両足が、今度ははっきり重くなった。
 それにしてもこの布——いや着物だな——とか思っていたら、あ、これ、うちの叔母の赤襦袢だと思い出した。
 それで階段の一番上を見たら、その、襦袢の端を踏む足が見えた。白い足袋に真っ赤な下駄。もっと見上げると黒い着物の裾と紫色の帯が見えた。さらに見上げると背負われた茶色い箱と白い項が見えた。
 全部見覚えがあったけど、……全然、知らない感じがした。瞬間、

(もうこの先は見たくない!)

 そう思ったけど、なぜか僕はそいつの顔を見るために目線を上げていったんだ。そいつはいつのまにかこっちを向いていた。
 細面で、印刷紙のような白い顔、真っ直ぐな黒髪を紅い紐で後ろに結っている。目元は逆行で見えなかったけど、鮮やかな紅を注したような朱唇が剃刀みたいにうっすら笑っているのが気味悪かった。
 全部知っていると思ったけど、全然知らない奴だとも思った。
 あえて言うなら……うちの叔母さん? わからん。んな格好していた覚えないし……やっぱり何か変な感じが……真面目に言ってんだよ!
 首が痛くなって見上げているのが辛くなっていて、自分の目線が低くなっているのに気付いた。
 血が下がるってのは、ああいうことを言うんだな。だって考えてもみろ、不審者と二人きりなのに幼くなるとか、恐怖以外の何ものでも無いだろ?
 馬鹿みたいに朝飯の袋を握り締めて、僕は最上階の暗闇から一歩前に立ってこっちを見下ろす『そいつ』を見上げていた。目線を外したら負け、違うな、終わりだって気がしたからな。
 どのくらいそうしていたのかわかんないけど、急にそいつが僕に向かってゆっくり手を伸ばしてきた——いや、僕に、『この手を取れ』って言わんばかりだった。剃刀みたいな笑顔で。
 僕はそこから逃げた。そいつに背中を見せるより、そこでにらめっこしている方が怖かったんだ。あいつが近づいてきたら絶対勝てねえ! 終わっちまう! って。
 今まで昇ってきた階段を全速力で下りていった。散乱していた物に躓いて転がり落ちたけど、痛いすら思わなかった。とにかく怖くて怖くて……死に物狂いだった。
 日用雑貨の山も通り抜けて、僕は一段飛ばしで階段を駆け下りた。走っている途中で、フロアに通じる扉が突然目に見えてきた。僕はドアノブに飛びついて扉を開けて、四階の廊下に躍り出た。
 後ろ手に閉めた扉が派手な音をたてたけど、そんなことには構わなかった。廊下は特に何も変わっていない、普通だった。屋上あそこから何とか逃げきれて、やっと階段部屋から出られた……。そこで安心したら、床に座り込んだきり暫く立ち上がれなかった。
 おかげで朝飯が食べられないまま仕事に行く羽目になったけど、まああいつから逃げられてよかったと思う。

 うん? ……いや、マジで知り合いなんかじゃないと思うな。あれは、何かどっかのバカが浅知恵捻り絞っただけだぜ、これは間違いない。あれは、僕の全然知らない何か、だったんだよ。
                                     (終わり)

身をもって知る話 ① (怖い話) ( No.135 )
日時: 2011/04/16 14:08
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)

(語り部:川村かわむらユリ)





 ……なんやうちもってきたおかしん(お菓子)へってないなあ。え、梅はおかしんとちゃう(違う)? 何ゆうてんの、この梅は蜂蜜漬けでめっちゃお茶請け向けのやつなんやで? 遠慮しやんと食べなぁよ(遠慮しないで食べてください)。



 未来が分かったらええなーとか思たことない? うちはあるよ。ちっとかり前までは、未来が分からんかなぁってそればっか考えてたわ。
 今は考えてへんのかって? ……まあねえ。やって未来を知るってそがなええものやないって気づいたから。うん、これはそがな話やねん。

 うちはある日記を近所の文房具屋の安売りデーで買ったんよ。皮製でな、ちっこい鍵付いちゃーる日記やったんやけど、なぁんも書かれてへんのに売られてた。紙はちっと古い感じやったけど、なんかええ感じやったからね。
 なんてよ(何だって)、うちが日記なんか書くんかって? あー、姉ちゃんに言われて書くことにしたんよ。ま、三日もたたん間に止めたけどな!
 そんでー、その日記は二日分の日常が書かれたまんまほりだし(放り出す)ちゃーったんやけど……ある時ふと思い出して、なんとなしページをめくったんよな。
 ほいたら(そしたら)どうなっちゃーったと思う? なんとそこにはな、うちが書いてへんはずの、日常が事細かに書かれちゃーったんやで!
 な、信じられへんやろ!? うちかて最初は信じられへんかったわ。けど、確かに書かれちゃーるんよ。しかもそれは、あいた(明日)の分まで書いてあったちゅわけよ。今日、まだ起きてへんぶんまできっちりな。
 例あげちゃろか? その日記の秘密を発見したのは夕方やったんやけど、

「夜中、親戚のおばあちゃんから電話がかかってきた」

 って書いちゃーったんよな。いやいやまっさかなーとは思ったんやけど、実際にかかってきたんやで! これはあれやね、なんかの小説で読んだことある、『未来日記』っちゅーやつかと思ったちゅわけよ。
 ちっとかりの間その日記は世話になったで。ほいで(そして)、どーやら書き込まれるんかは、日付が変わった瞬間やっちゅうことがわかった。午後十二時にそれ見ると、その日起きることがみな分かるねん。こがいなにおもろい(面白い)ものはないよなー?
 あ、アンタはいつかのこと分かったやろ? そうそう、うちがやけにあんばい(ちゃんと)やっとる時期あったやろ? うん、事務処理ばっか続いとったあのときな。
 傘を忘れへんし、仕事もちゃんとやっちゃーたやろ? やって日記に書いてあるからね。起きることがあらかじめ分かっちゃーったら、先回りは簡単や。
 でもあるとき、怖ろしいことが日記に書かれてたちゅわけよ。
                                               (続く)

身をもって知る話 ② ( No.136 )
日時: 2011/04/17 09:35
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)

「自動車にはねられる」

 ……まさか! ってはじめのときよりつよ思ったわ。まあ普通思うわな。
 ちゅうか、自動車にはねられる可能性があるなら、家から一歩も出えへんかったらええだけやないかとも思た。でもその日は用事があったから外に出たんやけど……絶対に車にはねられへんように、信号には心底気をつけたちゅわけよ。
 ああ、こういう風に使ったら事故も全部避けられるやん! さらに便利やん! とか思てたんやけど……その日、飲酒運転で歩道に乗り上げた車にはねられるまでは。
 幸いケガは大したことなかったんやけどな、なんて怖ろしいんだと思たで。
 入院しとる最中も未来日記は持ち込んだんやけど、ページにどんどん嫌なことが追加されるんよ。

「お風呂で転んだ」

とか

「デザート落とした」

 とか……もう、心底嫌になったわ。デザートはともかく、風呂いる(お風呂に入る)のは避けようがないやない!
 ああ、未来を知るのもええことばっかりやないんだなって思ったよ。



 結局退院した後、日記はすぐ焼やした。
 未来を知るって便利は便利やけど、避けようがない嫌なことを知ってしまうのはこらえられへん(我慢できない)から。そえに(それに)今後、交通事故なんかよりもおとろし(怖ろしい)こと書き込まれちゃーったら、うちの心臓もたへんし。
 ……未来ってのはな、ぜんぜん分からんからロマンに満ちとるんや。それを痛感したわあ。
 うん、お化け出てけえへん話で悪いんやけど、おとろしことやろ? そう? 怖いでー。
 ちょー(ちょっと)考えてみなぁよ。

「今日、腕がふっとばされた……」

 とか書かれてたらどーよ?
                                (終わり)


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