ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 怪奇拾遺集
- 日時: 2011/03/19 18:22
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。
**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***
前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・
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- Re: 怪奇拾遺集 ( No.37 )
- 日時: 2010/03/28 17:55
- 名前: ジョーカー ◆G6BAMv1Qf2 (ID: suMEt.SO)
とてもおもしろい話ですね
物語の風景が目に浮かぶようでした
- Re: 怪奇拾遺集 ( No.38 )
- 日時: 2010/03/28 20:37
- 名前: 闇の中の影 ◆xr/5N93ZIY (ID: YDf5ZSPn)
ととと、トマト祭りだと!怖っ!(そっち?
- 返信 ( No.39 )
- 日時: 2010/03/29 13:35
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: Kxa936Ty)
書き込み有り難う御座います
ジョーカー様>初めまして。恐縮です。もう少し読みやすくしたいのですが難しいものですね……
闇の中の影様>こんにちは。うふふ……続きをどうぞお楽しみに。アナタ様好みのオチであれば嬉しいものです
- 跡地② (怖い話) ( No.40 )
- 日時: 2010/04/24 19:01
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: Kxa936Ty)
気付けば池の水は黒さを増して、底が全く見えなくなっていた。鼻が曲がるかと思った、それくらい鉄臭さが辺りに充満していたな。
それまで小生は“まるで”血塗れだと思っていたんだが、そうじゃない、“本当に”血塗れだったんだ! 急にそう思った。
小生は無意識のうちに後ずさっていたらしい。しかも尻餅ついちまった。尻餅をついたのは、足が何かに引っかかったからだ。運動靴越しでもわかるほど、足首に何かが食い込んでいやがった。
こういう時ってさ、何だ? って見ちまうよな。そんで大抵はすぐ後悔するんだ。その時の小生もそうだった。見ずにそのまま振り払っちまえば良かった、ってな。
足首を掴んでいたのはボロボロになった腕だった。ボロボロ、としか言い表せない長袖の茶色い服を着ていて、それが池の中から生えてきていた。赤黒い水を吸ったおかげで重たく変色していたが、その布地に小生は見覚えがあった。
ドラマやアニメでよく見る、戦時中の兵隊さんだよ。
顔は全然知らんけどな。ガッリガリに痩せたオッサンが、呪詛ヨロシク小生の足首を掴んでいやがる。痛みを感じるほど、な。
それを見た瞬間、小生は動けなくなった。ただその腕を見ていた。自分の息遣いと動悸がうるさかった。
……どのくらいそうしていたかは知らねーが、あ、と思った時には既に膝まで浸かるほど引き摺られていた。だから抵抗する暇もなくドボン。しかもまだ引き摺ろうとしてやがる。
つかまろうにも誰もいねーし何もねーから、結局小生は立てた指と爪で土を掘り起こしながらそのまま引き摺られていった。残っている足をばたつかせたもんだから跳ね返った水が口ん中に入ってきてよ、濃い血の味で頭が痛くなってきた。おまけに水が揺れる度にムッとした臭気がたって吐き気がしたぜ。
座った状態で肩口くらいまで水位が上がった頃、土を引っ掻いていた指に何か違う感触のモンが引っかかったんだ。ぴたっ、と足を引く力が無くなった。
布だって思ったと同時に赤黒い水面を割って何かが首に絡みつきやがった。腕だ。ボロボロになった、さっきのヤツとはまた違う顔だが、やっぱり兵隊さんだった。その腕は小生の首を引っ掴んで、そのまま上へ引っ張り上げて止まった。急所を押さえられて膝立ちになった状態で、小生は『それ』を見た。
俄かに水の跳ねる音が喧しくなったと思ったら、あちこちから水面を割って色んな腕が突き出てきやがる。みんな顔かたちはバラバラだけどよ、水を吸って赤黒いってコトと兵隊さんだったってコトは共通していたな。——そしてみィんなこっちに向かって伸びてくるコトも、な。
反射的に逃げようとしたが、絡む腕がへし折ろうとするくらいの握力で握ってきたのと、首の腕が気管をそれなりに圧迫し始めたので、呆気なく阻止されちまった。あっという間に身体のあちこちにぼろぼろの腕がまとわりついてきやがって、いちいちキっツく握り締めてきやがる。
冗談抜きで身体中から軋む音が聞こえてきて、いてーのとこえーのでパニックだよ。どんな猛者でも耐えらんねーよ、おそらくな。
ぐうっと引っ張られて、小生は仰向けに倒れ込んだ。一瞬だけ見事な夕焼けが見えたが、すぐに赤黒い水しか見えなくなった。おまけに飲みたくもねーのにとうとうその水を飲み込んじまった。空の胃の中でそれが揺れるのがわかって、中から鉄臭さがこみ上げてくるようなカンジに気が遠くなった。
ずっと引き摺られていたらしかったが、急に目の前でキラっと何かが光ったんだ。
(続く)
- 跡地③ (怖い話) ( No.41 )
- 日時: 2010/06/02 19:32
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: Kxa936Ty)
叔母さんから貰った、十字架だ。服ん中仕舞っていたそいつが何かの拍子に出てきたみてーだ。今から思えば運が良かったんだな。
十字架が首の腕に軽く当たった瞬間、腕はぱっと首から離れていった。他の部分の腕も一気に力が弛んで、もうちっとで窒息死しそうだった小生は無我夢中でそいつらを振り払ってやっと水中から顔を出せた。
せきこみながら何とか立ってみれば、小生は殆ど池の真ん中まで来ていた。水位は、そうだな……鎖骨よりちょっと下か。だが濁った水ん中でまだ何かが蠢いていやがって、小生は何か適当なことを怒鳴りながら元いた岸辺に向かって水をかき分けてった。
その間、服から飛び出した十字架がずっと胸の辺りで揺れていた。進んでいくとすぐに腕に当たって、小生はそいつらを吹っ飛ばしながらひたすら歩いた。掴まれては振りほどき、振りほどいては掴まれて。そんなんを繰り返しながら、やっと小生は池から上がれた。
薄緑色のTシャツはぐっしょり赤黒い水を吸って身体中に重さがのしかかった。あんな重さもはや水じゃねーよ、重りだ。肩で息をしながら振り返ると、まだ池の中から腕が伸びてきやがる。
瞬間、冷えた頭にカッと血が上っていった。恐怖も焦りももう全然消えて無くなっていて、代わりに憤怒だけを感じたな。
うっせぇ黙りやがれ、これでもくれてやらあ!
って怒鳴りながら、小生は首から下げていた十字架を池に向かって思い切り投げ込んでやった。遠くの水面がちっさく跳ねたのと同時に、ぼろぼろの腕は一斉に池の中に戻り始めた。
波が引くように、辺りから赤みがどんどん失せていって、気がつけば辺りは全て元通りになっていた。
空は金を帯びはじめた水色、何も揺らすもんが無くなった水面は嵌めこんだ石みてーに黙っている。
噎せ返るほどの鉄臭さはおろか、小生の服は全くもって濡れた形跡すら無くなっていやがった。
来た時と全く同じ風景だったよ。
小生は耳が痛くなるような静かさの中で立ち尽くしていたが、切れ切れの雲が僅かに赤みを帯びたのに気づいた瞬間、そこから一目散に逃げ帰った。
ああいうとこを、“跡地”っつーんだろうな。何の、とは言うまでもねーが。
(終わり)
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